連続企画『うみものがたり~あなたがいてくれたコト~』佐藤順一..

『うみものがたり~あなたがいてくれたコト~』連続企画第1弾 佐藤順一監督インタビュー「テーマは“愛” キーワードは“許し”微妙な感情表現を観てください」

 人気パチンコ機として多くのファンに愛され、今年でシリーズ10周年を迎える『海物語』。パチンコユーザーでなくとも、TVCMなどでその名前を聞いたことがある人間は多いはずだ。

 その『海物語』の人気キャラクターが、『うみものがたり~あなたがいてくれたコト~』として、この夏TVアニメ化される。これまでも、人気アニメ作品のパチンコやスロット化の例は数多く存在したが、その逆となる本作。どう『海物語』がTVアニメになるのだろうか?

 すでに第1話が放送された地域もあるが、改めてアニメ版の物語をおさらいすると、ヒロインのマリンとその妹のウリンは、海底に住む人間の姿をした“海人”。マリンがある日、海の上から落ちてきた指輪を広い、持ち主にその指輪を返そうと、ウリンと共に、人間の住む地上の世界“空の世界”へ旅立ち、指輪の持ち主である女子高生・宮守夏音(かのん)と出会う。誰にでも心を開いていくマリンと、反対に心を閉ざした夏音の対比、そんな夏音にいい感情を持たないウリンの、3人の人間模様を中心に物語が展開するようだ。ウリンが間違って石棺の蓋の封印を解くことで現れる謎の黒い雲のような存在も気がかりだ。次回が楽しみなファンも多いことだろう。

 今作の監督をしているのは、『ケロロ軍曹』や『カレイドスター』、『ARIA』シリーズなど、幅広い作風で知られる佐藤順一氏。これまで様々なヒロインを描いてきた監督だが、試写会で語られた今回のテーマは“愛”。第1話でも「愛してる」というマリンのセリフが印象深い。

今回は、佐藤監督にインタビュー。本作の観どころや、マリンたちの今後。そして試写会でも話題となった奄美大島でのロケまで、今後の『うみものがたり』を観る上で知っておきたい様々なことをうかがった。マリンはどんな愛を本作で観る者に伝えてくれるのだろうか?


●最初はもっとたくさん変身して戦う予定だったんです

──最初に『海物語』アニメ化の話をお聞きになったのはいつ頃だったのですか?

佐藤監督:これは……いつだったかな?去年の早い時期ですね。「放送まで時間がたっぷりあるね~」って話していましたね(笑)。


──お話を聞いて、どうアニメ化しようとお考えになりましたか?

佐藤監督:最初にお話をもらった時に、“変身して悪者と戦うアニメにする”というのはすでに決まってたんですよ。パチンコでよく見るマリンちゃんを、どう変身させて戦わせるかというのが最初のハードルとしてありました。そのときはもっとキャラクターを多く出して、大勢が変身して戦う話でしたね。その後、試行錯誤して今の形になったんです。


──もっと大勢で戦うアニメだったんですね(笑)。それがマリンと夏音の2人が変身して戦うアニメになったと……。

佐藤監督:しかも毎回(変身するわけ)でもないという(笑)。変身少女アニメとしては“ゆるめ”な感じにしました。


──変身して戦いつつも、試写会でもお話されていましたが、テーマは「愛」ということで、テーマを「愛」にした理由は?

佐藤監督:“この作品で語れるのはなんだろう”というのが1つあり、奄美大島で取材して得たものなどを考えて、「愛」が一番いいのではないかと。


──「愛」といっても、いろいろな「愛」があると思います。今回はどんな愛をテーマにされるのでしょうか?

佐藤監督:愛というより、もっと平たく“好きっていうこと”みたいな、単純に「私はあなたを好き」っていうような愛ですね。


──「好き」と聞くと、恋愛的な雰囲気も感じられますが。

佐藤監督:マリンとウリンの姉妹も互いのことを好きだし、恋愛もそうですが人と人との間のことですね。戦いも、設定的には“海の巫女”と“空の巫女”になって戦うので、“浄化”に近いイメージです。もともとそれほど悪意のない存在が向かってきて、それを元に戻してあげるような。向かってくる者自体が、何かを滅ぼそうとか、何か目的があって向かってくるわけではないので、それを「お前、本当はそういうことしたくないのにね」って、戻してあげるような話です。


──そんな戦いのなかで2人が仲良くなって、互いを好きになっていく部分も、テーマとリンクしていくのですね。

佐藤監督:そうです。1話の段階では、ウリンは姉のマリンが好きで、マリンはウリンも好きだけど夏音も好きだし、全ての人を好きになる。夏音は、誰も好きにならないようにしている。
そういう三者の違いがあって、ウリンは夏音のことが嫌いになるし、夏音は誰も好きにならないようにしているけど、マリンのことを好きになっていき、マリンは、自分が原因で、ウリンが夏音のことを嫌いになったり、自分の好きという気持ちにウリンが答えてくれなくなっていくことに困惑すると。
三者三様のドラマがあり、それを経た上で3人が互いに大切な存在になっていくお話になります。


●難易度の高い感情表現を読み取ってください。

──1話を観たみなさんは、今後の展開に期待していると思いますが、今後の見どころや、今までにない挑戦をしている部分などはありますか?

佐藤監督:ドラマを盛り上げるための、人物の感情の激しい変化みたいなことは描くつもりはないです。もっとシンプルに、たとえば憎しみが愛情の裏返しだったりというのが恋愛にかぎらず、それが兄弟だったり友達だったり、いろんな角度で微妙に変化していくとか。何気ないことなんですけど、ちょっとしたニュアンスの違いで伝わったり伝わらなかったりする、人と人の間の空気感みたいなものを大事にしたいなと思っています。結構微妙な芝居を要求されるので、キャストのみなさんに求められる難易度も高いと思いますが、とても素晴らしい到達度です。そんなところをしっかり見届けていただければと思います。


──制作するうえでスタッフやキャストの方にリクエストしたことはありますか?

佐藤監督:アニメーションってある種の文法というか、定番の表現がありますよね。たとえば喜怒哀楽の表現もそうですけど、それに流されすぎないことですね。例えば「ありがとう」って言うときの表情が、よくあるいつもの「ありがとう」ではない可能性があるんですよ。


──アニメの記号化された描かれ方ではないと?

佐藤監督:端的にいうと、1話で、マリンは「愛してる」という言葉を連発し、夏音は「死にたい」という言葉を使っています。それがこの作品では1つの定番で、「夏音ちゃん愛してる」って言うところに、あまり含みはないです。でもこの「愛してる」が、最終回で違って聞こえたらいいなと。夏音であれば、なにげなく「死にたい」って言ってたのに言えなくなる。「もうその言葉は言えない」と気持ちが変わる瞬間。その後は、同じ事を言ったとしても、相当違う意味になっていく。12話のなかで、ゆるやかに、あるときはドラマティックに、そういう変化が描かれます。


──12話でその変化を描くということは、密度が濃い内容になりそうな予感が……。

佐藤監督:マリンとウリンと夏音と、家族や友人なども登場しますが、軸はこの3人に絞られてるので、そんな複雑にならずシンプルになると思います。感情の描写がデリケートだけに、話を大きくすると空気感が埋没してしまうというか、流されちゃう感じがするので、いたずらに劇的にせず、シンプルにしていければと思います。


●キーワードは「どれだけ許せるか?」

──試写会でも奄美ロケの話をされていましたが、奄美ロケで得たものを、どうアニメに反映させたのでしょうか?

佐藤監督:そもそも奄美に行った大きな理由というのはなくて、島でサンゴが近くにあって海がきれいで、海から街が見えて、そんなに巨大な都市はない。那覇だと大きいので、もう少し素朴なところがないかと考えて、それで奄美大島に行ったんです。
 色々と話を聞くと、琉球王朝、薩摩藩、そして戦争と、いろいろと支配されたり、奪われたり、それはそれでシビアな歴史だったりするのですが、島を歩くと、とても平和で、いがみあいや、誰かが誰かを恨んでいたり、というのが感じられなくて、いったい何事だろう?というのが最初の印象でした。
 なんで、そんな過激な歴史を送ってきたのに、そんなに平和なのかと。島唄を歌って、巫女が明日を占って、上手くやっている。アニメでは、その空気ごと伝えられればいいなと。
 アニメでも「どれだけ許せるのか」それが重要なキーワードになっているんですよ。好きっていうのは、相手からの気持ちを求める以上、必ずどっかで壁にぶつかる。相手の気持ちが自分に帰ってこなくても、好きでいられるか。そのあたりに踏み込んでいけたらいいかなと思っています。


──最後に視聴者と読者へメッセージをお願いします。

佐藤監督:観ている人も、誰かのことは好きだと思うんですよね。その“好き”って気持ちが、往々にして自分を苦しめたりすることがあると思いますが、それを考えるヒントになればいいなと思っています。シンプルな言い方をすれば、みんなマリンと一緒に「愛してる」って言えればいいですよね。なかなか言えないけれど「愛してるっ」て言ってみたらどうですか?(笑)。


<放送情報>
CBC(東海) 毎週水曜 深夜1:29~
TBS(関東) 6月26日スタート 毎週金曜 深夜2:25~
MBS(関西) 7月6日スタート 毎週月曜 深夜2:35~
RKB(福岡) 7月1日スタート 毎週水曜 深夜3:00~
HBC(北海道) 6月27日スタート 毎週土曜 深夜2:13~
TBC(宮城) 7月2日スタート 毎週木曜 深夜1:34~ (7/2は深夜2:34~)
SBS(静岡) 7月3日スタート 毎週金曜 深夜2:10~
RCC(広島) 7月3日スタート 毎週金曜 深夜2:40~(7/3,7/10は深夜3:10~)
AT―X 7月20日(海の日)スタート 毎週月曜 9:00~、21:00~/毎週木曜 15:00~、27:00~
BIGLOBEのアニメサイト『アニメワン』にて7月7日よりネット無料配信決定

<STAFF>
原案:海物語シリーズ
ストーリー原案:築地俊彦
監督:佐藤順一
シリーズディレクター:紅優
シリーズ構成:山田由香
脚本:横谷昌宏、吉田玲子
キャラクターデザイン:飯塚晴子
美術監督:小林七郎
撮影監督:太田和亨
色彩設計:川上善美
音楽:村松健
アニメーション制作:ZEXCS
製作:うみものがたり製作委員会

<キャスト>
マリン:阿澄佳奈
宮守夏音(みやもり かのん):寿美菜子
ウリン:堀江由衣

マリン(CV:阿澄佳奈)

マリン(CV:阿澄佳奈)

ウリン(CV:堀江由衣)

ウリン(CV:堀江由衣)

(C)SANYO BUSSAN CO.,LTD. /うみものがたり製作委員会
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