16日には劇場公開イベントも『TO』曽利監督ロングインタビュー!

伝説的ハードSFコミックが驚異の3Dライブアニメで映像化!『TO(トゥー)-楕円軌道- -共生惑星-』監督の曽利文彦氏にロングインタビュー「SFはやっぱり劇場で観ないと!」

 80年代に連載され、日本では珍しい本格的ハードSFテイストのコミックとして高い評価を受け、世界中に翻訳された、伝説的な作品『2001夜物語』。アメコミ風のキャラクターとハイレベルな宇宙空間の作画と、物語の随所に盛り込まれた数々のSF作品へのオマージュが魅力の『2001夜物語』が、この秋『TO』として映像化。原作のハイクオリティそのままに我々の前に姿を現す。

 今回、映像化を手がけるのは、『アップルシード』や『ベクシル-2077 日本鎖国-』を世に送り出してきた曽利文彦監督。曽利監督は、『ピンポン』や『ICHI』といった実写の演出でも高い評価を受ける一方、“3Dライブアニメ”という手法を駆使して、04年に『アップルシード』をプロデュース。その後07年には『ベクシル-2077 日本鎖国-』を自身で監督し、その映像クオリティで世界中を衝撃の渦に巻き込んだ。今回、そのテクノロジーをさらに進化させ、実写やアニメといったカテゴライズを超越した映像表現で、『TO』として完全映像化した。

  約20“夜”にわたる1大“未来史”である『2001夜物語』から、『TO』で今回映像化されたのは「楕円軌道」と「共生惑星」の2作品。南北の経済格差とテロという現在に通じるテーマと、宇宙時代ならではの家族の愛の形を描いた「楕円軌道」。ベーシックなラブストーリーをベースに、ハードSFならではの意外性を持った“邂逅”から、人間のエゴイズムの浅はかさを浮き彫りにした「共生惑星」。どちらも観たあとに余韻の残る深い味わいに仕上がっている。

 また、今回の『TO』は、そのリリーススタイルも斬新だ。レンタル先行リリースの後にセル版が出るというこれまでにない手法に挑戦。テレビにも映画にも出来なかった新たな市場の開拓に挑んでいる。そして、10月16日には一夜限りの劇場公開イベントも決定。TOHOシネマズ六本木ヒルズ スクリーン1で19時からスタートとなる。大画面で観るチャンスだ。

 今回、アニメイトTVでは曽利監督にインタビュー。『2001夜』との出会いから、さらなる進化を遂げた“3Dライブアニメ”の今後や、もちろん『TO』2作品の観どころも余すところなくうかがった。


●ハードSFが好きだったので、『2001夜』は衝撃的でした

──もともと『2001夜物語』は以前からご存知だったのですか?

曽利監督:大学時代、連載されていた頃から読んでいて、大ファンでした。コミックの初版を持ってます。その頃、小説ではハードSFがあったんですが、映画などでは『スターウォーズ』のような、わりとドンパチ中心のものが流行っていて、そのなかで、星野先生の作品はハードSFをビジュアル的に表現していて、しかもそれが日本で描かれているってことがすごく面白かったです。海外の作品の匂いがあって、そこがすごく好きでしたね。日本人でもこういうものを書いている方がいらっしゃるんだと。その頃からいつかチャンスがあったら映像化してみたいと思っていました。


──ハードSFを読んでいたとのことですが、監督はどういった作品がお好きでしたか?

曽利監督:割と読んでました。『デューン(デューン/砂の惑星)』とか、アーサー・C・クラークとかを読んでいましたね。有名どころは一通り目を通した感じです。


──今回映像化の企画が動き出したきっかけは何だったんですか?

曽利監督:そもそもTVシリーズだったんですよ。『アップルシード』『ベクシル』でやってきて、“TVシリーズで3Dライブアニメをやりませんか?”というスタートだったんです。 そうすると長編ではなく短編ということになるんですが、昔から『2001夜物語』をやりたいというのがあったんで、今回ピッタリじゃないかと思ったんです。3Dライブアニメという技術もこなれてきたので、今この技術で取り組む題材として、ようやく星野先生の作品に取り組めるんじゃないかという思いもあって、星野先生に直接お願いに行ったのがスタートでした。
 技術的な成熟と、長編映画ではないというところで、ようやく『2001夜物語』に手が届いた感じでした。

⇒次ページでは3Dライブアニメの進化にせまる!

曽利文彦監督

曽利文彦監督

『TO 楕円軌道』

『TO 楕円軌道』

『TO 共生惑星』 ※2作品とも現在好評レンタル中

『TO 共生惑星』 ※2作品とも現在好評レンタル中

●技術の進化が、短時間でのハイクオリティと、“柔らかさ”を実現した

──最初はTVシリーズで企画が開始されたということですが、TVで制作するとなるとクオリティを保つのが難しいのではないかとも思えるのですが……? 今回2作ともクオリティは高いですよね。

曽利監督:TVシリーズといっても、30分4本ぐらいの予定だったんです。2時間映画サイズぐらいの。物量的には読めていたんですけど、ただ期間的に『ベクシル』などに比べても非常に短かくて。それは1つのチャレンジではあったんですけども、終わって思うのは、技術が進化していることもあって、短期間でも『ベクシル』を超えている部分もありました。スタッフがスキルアップしたこともあって、どんどん期間が短縮できているのは自分たちでも驚きですね。


――実写も手がけながら『アップルシード』『ベクシル』と3Dライブアニメ作品を手がけられてきたなかで、技術的に最も進歩したと感じるのはどの部分でしょうか?

曽利監督:CGが柔らかくなってきましたね。『アップルシード』の時は硬い印象があって、金属とか文字通り硬いものの表現は、あの頃から良いクオリティが出ていたと思うんですが、かたや人間の皮膚や服、爆発や砂煙、水や生物など柔らかいものは硬さが取れていなくて、『ベクシル』のときに少し硬さが取れてきたのですが、『TO』ではより人肌に近づいた気がします。全体の印象が柔らかくなった感じです。


――『TO』では、キャラクターがリアルになりつつも、手書きっぽくなった印象があります。柔らかくリアルになった質感と、手書きのアニメっぽいデザインとのバランスについてはどうお考えですか?

曽利監督:キャラのデザインそのものが、若干アニメ寄りになったかもしれないですね。『アップルシード』から『ベクシル』にかけては(デザインを)リアルに振ったかもしれません。でも『TO』は星野先生のキャラクターデザインを踏襲して、劇画テイストに戻ってるんです。でもそれはすごくいい落としどころだと思っていて、我々は決してリアルな表現をしたいわけではなく、キャラクターとしての成立を望んでいるので、一番しっくりくるキャラクター造形は何かを常に追っていくなかで、今回は星野先生のデザインを基にキャラクターを作りました。
 3Dライブアニメの今後についても、われわれはリアルを追及しているわけではないので、3Dライブアニメ、CGアニメというカテゴリのなかで、観ている方に違和感を与えないキャラクター表現はどこにあるのかをずっと追っています。専門的な方やアニメが好きな方から観ると、「これは2Dアニメで、これは3Dアニメで……」ということになるんですけど、そういったことを気にしていない一般の人から観ると、手書きなのかCGなのか、その辺境目がなくなってきている印象があります。そこまで違和感なく出来上がってきたのは嬉しいですね。今回、ある種のいい落としどころに近づいた気がします。


●『楕円軌道』と『共生惑星』はシリーズ第1弾として選びました

――『楕円軌道』と『共生惑星』の2作が今回パッケージ化。劇場公開イベントも行われますが、この2作を選んだ理由は?

曽利監督:まず星野先生の数ある作品のなかで、よりビジュアル的なアピ-ルができるものという観点で、いくつかエントリーしてそのなかから選びました。星野先生の作品のなかには、わりとメンタルな部分に及ぶ作品もあるわけで、シリーズとしてはそういったものも面白いと思うんですね。例えば“ライブでどの曲から演奏するのか”という感覚に近いものもありますが、シリーズの第1弾としてはこの2つが良いと思いました。
この2作はビジュアル的で個人的にも好きだというのもありますし、人間ドラマとしてラブストーリーなども入っていてより映画的なものということで、選びました。


――では、これがヒットすると続編にも期待していいんでしょうか?個人的には『悪魔の星』を観てみたいですが。

曽利監督:2本やって非常に満足しているので、また機会があればやりたいと思いますし、それは観てくださる皆さんの声は大きいと思いますし、望まれれば次もありますし、望まれなければないということでしょうし(笑)。


――いえいえ、今のアニメシーンでこういう作品へのニーズは少なからずあると思います。反応はかなりいいのではないでしょうか?2日にレンタル店をのぞいたらほとんど借りられていました。

曽利監督:ネットを観ているとすごい上位にいますよね。アニメーションもいろんなジャンルが作られたほうがいいと思うので、こういうジャンルもなくなっちゃうと寂しいですし、星野先生の作品は他にも色々あって、やってみたいと思うので、ぜひみなさん借りていただいて…(笑)。

⇒次ページではレンタル展開、劇場公開……今後の展開を聞きました!

『TO 楕円軌道』より (C)2009 星野之宣・双葉社/「TO」製作委員会

『TO 楕円軌道』より (C)2009 星野之宣・双葉社/「TO」製作委員会

『TO 楕円軌道』より (C)2009 星野之宣・双葉社/「TO」製作委員会

『TO 楕円軌道』より (C)2009 星野之宣・双葉社/「TO」製作委員会

『TO 楕円軌道』より (C)2009 星野之宣・双葉社/「TO」製作委員会

『TO 楕円軌道』より (C)2009 星野之宣・双葉社/「TO」製作委員会

『TO 楕円軌道』より (C)2009 星野之宣・双葉社/「TO」製作委員会

『TO 楕円軌道』より (C)2009 星野之宣・双葉社/「TO」製作委員会

『TO 楕円軌道』より (C)2009 星野之宣・双葉社/「TO」製作委員会

『TO 楕円軌道』より (C)2009 星野之宣・双葉社/「TO」製作委員会

●SFは大画面で観てこそ!16日の公開イベントにぜひ来てください

――今回、レンタル先行リリースという新しい手法ですが……

曽利監督:日本の今の商習慣ですと、映画も高いお金を払って観にいくわけですし、DVDやブルーレイはもっと高いわけで、昔で言うジャケ買いみたいな気軽な感じではなくなってきていますよね。劇場映画やっていてもそうですが、わりと中身がわかっちゃってて、安心して外れのないものに行っているところがあるようです。昔は予告編にだまされたりしてふらっと映画館に入るとか、そういうのがあったと思うんですけど、今は情報も多くてユーザーの方も賢くなってると思うので、レンタルで軽い気持ちで試していただいて(笑)、これで気にいっていただいたら、レンタルももちろんDVDクオリティなんですが、もっと高画質のセル版を買っていただくというのは、今の時代に合っている気がするんです。レンタルで観ていただいて…というのは、セールスチームは画期的な試みをしていると思います。
 クオリティ的には手抜きなしで作っていて、映像だけでなくサウンドなども含め、決して少しダウンサイズして作っているということはないんです。すぐにでも劇場でかけられるように作っているので、今回イベントで1度きりですが劇場でかけていただけるのは、すごくありがたいですし、やはり宇宙モノはでかいスクリーンで観るのが一番映えるんですね。われわれもでかいスクリーンで確認していますが全然印象が違います。SFは大きいスクリーンであるほどいいということが今回わかりました。同じストーリーなのに全然違う印象になります。


――16日には劇場で観られるイベントもありますから、ぜひ多くの方に観ていただきたいですね。

曽利監督:より大きな画面で観ていただきたいですし、もちろん5.1chサラウンドで音も味わっていただきたいですし、スクリーンが一番、この作品の良さをわかっていただけると思うので、嘘偽りなく我々の悲願として、16日に劇場でぜひ観ていただきたいです。


――16日ご覧になった方には、ぜひavexさんに劇場公開嘆願のメールをしていただいて(笑)

曽利監督:面白いですね。イベントのあとに追っかけで劇場公開というのも(笑)。


●一夜限りの劇場公開イベントが決定!

日時:2009年10月16日(金)/19:00開始
場所:TOHOシネマズ六本木ヒルズ スクリーン1
(東京都港区六本木6-10-2 六本木ヒルズけやき坂コンプレックス内)

<イベント内容>
・曽利文彦監督&マイケル・アリアス氏(『アニマトリックス』製作 『鉄コン筋クリート』監督)によるアニメクリエーター対談(予定)
・『TO 楕円軌道』『TO 共生惑星』上映

※チケットは「チケットぴあ」にて10月8日(木)より発売中。 1枚1,500円(税込)[全席指定席] Pコード:555-756
※参加者全員に限定グッズプレゼント


●曽利文彦氏プロフィール
90年代にデジタル・ドメイン社にて『タイタニック』にCGアニメーターとして参加。帰国後映画『ケイゾク』(00年)などでVFXスーパーバイザーを務める。その後02年に『ピンポン』で映画初監督。04年に3Dライブアニメ映画『アップルシード』をプロデュース。07年に3Dライブアニメ第二弾となる映画『ベクシル-2077 日本鎖国-』を監督。08年に映画『ICHI』を監督。TVドラマシーンでも、『ビューティフルライフ』(00年)や『池袋ウエストゲートパーク』(00年)などでVFXシーンなどを手がけている。

>>TO(トゥー)-楕円軌道- -共生惑星- 公式サイト

『TO 共生惑星』より (C)2009 星野之宣・双葉社/「TO」製作委員会

『TO 共生惑星』より (C)2009 星野之宣・双葉社/「TO」製作委員会

『TO 共生惑星』より (C)2009 星野之宣・双葉社/「TO」製作委員会

『TO 共生惑星』より (C)2009 星野之宣・双葉社/「TO」製作委員会

『TO 共生惑星』より (C)2009 星野之宣・双葉社/「TO」製作委員会

『TO 共生惑星』より (C)2009 星野之宣・双葉社/「TO」製作委員会

『TO 共生惑星』より (C)2009 星野之宣・双葉社/「TO」製作委員会

『TO 共生惑星』より (C)2009 星野之宣・双葉社/「TO」製作委員会

『TO 共生惑星』より (C)2009 星野之宣・双葉社/「TO」製作委員会

『TO 共生惑星』より (C)2009 星野之宣・双葉社/「TO」製作委員会

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