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『さらい屋五葉』連続インタビュー企画開始!第1弾は望月智充監督

TVアニメ『さらい屋五葉』連続インタビュー企画第1弾! 望月智充監督が語った演出のこだわり――「『さらい屋五葉』はリアルな江戸時代を舞台にした青春ストーリーです」

 原作オノ・ナツメ氏(「リストランテ・パラディーゾ」等)、アニメーション制作をマングローブ(「サムライチャンプルー」、「ミチコとハッチン」等)、キャラクターデザインに中澤一登氏(「サムライチャンプルー」、「キル・ビル」アニメパート監督等)そして監督に望月智充氏(「海がきこえる」、「ふたつのスピカ」等)、そして放映はアニメ界の最注目枠「ノイタミナ」という最強の布陣で絶賛放映中の『さらい屋五葉』。

 今回はキャラクターの会話等における独特の“間”や、リアリティを重視した丁寧な時代描写など、既存のTVアニメでは見られない演出に辣腕を振るう望月監督にお話を伺った。数々の名作をものにしてきた監督が監督、音響監督、脚本とあらゆる角度から作りあげた作品世界の魅力に迫る――

──これだけ個性の強い原作をアニメにするのは、かなりハードルが高かったのではと思うのですが?

望月監督(以下・望月):実を言うとそれほどハードルの高さというものは感じませんでした。簡単だったという意味ではありませんが、“やりよう”によっては、原作の持ち味をアニメーションでも出せるのではないかと考えました。


──設定や時代考証なども難しかったのでは?

望月:わりとこれまでも現実的な舞台の作品が多かったので、そういう意味では、江戸時代が舞台ですけどそれを現実的に描こうと思っただけですね。原作もそういったマンガですし、荒唐無稽な部分がほとんど無い作品なので、原作の雰囲気も重視しながら作っていくというのは、自分としてはやりやすい部分でもありましたし。
 江戸時代というのは資料も多いし(当時の)現物もたくさんあるので、それにもとづいて、その時代の生活観を膨らませているという感じです。


──着物の動きなどはアニメで描くのが難しいのではないかと思うのですが?

望月:作画的には着物はとても難しいですし、髪型にしても着物にしても構造から理解していないと描けないので、誰にでも描けるというわけではないです。その辺はキャラクターデザインの中澤さんをはじめ、優秀な作画スタッフに助けられながら作ってはいますが、そこをなんとかするのも、こういうものを作る面白さの一つでもありますので。


──具体的にはどのような工夫をされているのでしょうか?

望月:具体的な手法は現代劇と変わらないです。アイテムが違うだけで。ただ殺陣(アクション)も少なくて、当時の庶民、町人の生活の部分を中心に描いています。その雰囲気が非常にのんびりしているので、タイミング、“間”みたいなものを重視しました。
 この作品ではキャラクターが普通に道を歩いている場面でも、一般的なアニメよりも“一歩”がものすごく遅いのです。一歩にかかる時間、動きが遅いという事は枚数がかかるという事で、そういう意味で作画も難しくなってくるし、アニメーター一人ひとりのセンスが問われる部分ではあります。そういうところを総合的に考えて、この作品ならではの独特さが出せればと思っています。
 もう1つは“暗い”というところですね。江戸時代は明かりがロウソクか行灯しかないということで、とにかく暗い。特に夜は非常に暗い。昼間でも部屋の中はとても暗い。明かりが無いから。これらを含めて、この作品ならではの雰囲気、見ている人が江戸時代をリアルに感じられる方向に全体を持っていこうと作りはじめました。

──動きや音も少ない画面で、“間”を視聴者に見せるというのはかなり冒険ですよね?

望月:危険はありますね。すごくテンポの速い、動きの早いものを見たい人にとっては、退屈に思うかも知れません。それはこの作品の個性でもあるので、良いと感じる人も入れば、そうでない人もいるのはしょうがない事なので、自分で思ったように作るしかないですよね。


──“間”がこの作品のキモであると

望月:そうですね。4話だったと思うんですけど、政之助が「松吉殿は帰ってしまったでござる」と言って、弥一が「そういう奴だ」と答えるシーンがあるんですが、受け答えの間が20秒あるんです。「これは恐ろしいことだなぁ」と思いつつ、なんとか成り立たせたいと考えて作ってはいますけど。


──その“間”を持たせるための演出テクニックというのはどんなものでしょうか?

望月:“間”といってもちゃんと時間が流れています。我々の日常会話でも、何かを聞かれて答えを考え込んじゃって、答えるのに時間がかかってしまうことがあると思います。そういう人間の会話とかを再現したいのです。
 今回は音響監督も兼任してますが、音楽や効果音もひっくるめてのテンポなので、総合的にやれたら良いなと思って作っています。


──音響監督も兼ねられたという事は、役者さんへの演技もディレクションされているという事ですよね?

望月:これは大変ありますね。まずこの作品は“しゃべり”のテンポがそうとう遅くしてあります。一秒でしゃべる文字数といいますか。それに加えて、役者の人全員にとにかく「声を張らない」という事と、「芝居を付けすぎない」ということをお願いしてやってもらいました。言葉は悪いですけど、「変に芝居をするよりは棒読みでやってくれ」と。


──先ほどの“20秒の間”も、実際にそのまま役者さんに20秒マイクの前で“間”を作っていただくわけですか?

望月:そうですね。役者さんはかなり緊張すると思いますよ。劇伴の楽器も生楽器が多いですし、SE(効果音)もほとんどが生音です。だから役者が黙っているのも“沈黙という音”がそこにあるような作品世界になっていればいいなという。
 問答や会話が最初から用意されているように積み重ねていくのではなく、言いよどんだり、結局答えなかったり、そういう“生々しさ”みたいなものを出したいと。


秋津政之助

秋津政之助

弥一

弥一

おたけ

おたけ

梅造

梅造

松吉

松吉

──脚本も全話書かれていますよね。脚本、音響監督、監督と、トータルに関わって作品世界の雰囲気を統一したかったのですか?

望月:そうですね、できればと思ってやっていますけれど。


──主人公が悩み続けていたり、いわゆる“犯罪者側”が主人公のアニメや映画では珍しい雰囲気を感じます。

望月:自分としては“サークル活動もの”として作ってます。クラブ活動というか、部室に集まってときにはダラダラしたり、ときには仕事してたりという。梅蔵の店が部室(=溜まり場)であって、そこにいくと誰かがいて、しゃべっていると楽しいみたいな。自分はそういうものだと考えています。だから犯罪者っていうところは置いといて、この“五葉”のメンバーに入りたいなと思えるような形に作っています。
 そういう場なので、会話も段取り通りに進むはずがないわけです。とかく物語を描くのがシナリオですから、会話も予定されたものになっていきがちですけど、そうじゃなくて何か聞かれても答えないままだったり、目つきだけで答えたりとか、段取りになってない会話みたいなもの。そういうことを全部ひっくるめて、この『さらい屋五葉』という作品の何か独特な雰囲気が作れればと思っています。


──江戸時代版青春ストーリーのような!?

望月:ええ、だからこの1クールを通して描かれている事というのは、弥一が連れてきた政之助という頼りない男をメンバーのみんなが好きになっていく話です。シンプルに言ってしまうとそういう話なのではないかと思っています。


──そう考えると基本は非常にスタンダードなんですね

望月:そうだと思います。現代だと成り立たない部分があるストーリーですが、最近のアニメやマンガで見かけるような、時代劇なのに変に現代的なものを入れ込んでいるようなものにはしたくありませんでした。本当にその時代、江戸時代を描きたかったっていうのはあります。
 かといって自分がそれほど時代劇が好きだとかってわけじゃないのですけど。だからこそ資料や本で色々調べて「なるほど、この頃の生活ってこうだったんだ」っていうことを入れていって、逆にその辺が画面上で堅実な部分になって、リアリティにつながればと。


4話より

4話より

4話より

4話より

4話より

4話より

4話より

4話より

4話より

4話より

──確かにここまで時代描写に気を配ったアニメってあまりないですよね。モノクロ時代の時代劇のような雰囲気を感じます

望月:そう見えたら成功だと思います。影の部分の多さとか、絵の暗さに関しては「こんなに暗くして大丈夫なのか?」とか、美術の人が「昼間の軒下でもここまで影が黒いのは……」という話もありましたけど、その辺は「かっこいいからいいんじゃない?」と、どんどんやってきているというような感じですね。


──最後に、制作もかなり大詰めの段階に入ったと思うのですが、監督がこの作品で目指したことに対しての、手ごたえや出来栄えなどをお聞かせください

望月:画面的なことに関しては非常に良いと思います。美術にしてもキャラクターにしても、やりたいと思ったことを自分なりに出来ているかなと。ただ“俺”という監督がなかなか“一般ウケ”しないタイプなので、どれだけ受け入れられているかというところでは、なんともいえない部分ではありますけど(笑)。


<取材・文:渡辺 佑>

<STORY>
 気弱ではずかしがり屋な性格のせいで浪人となり、田舎から江戸に出てきた秋津政之助は、偶然出会った遊び人風の男・弥一の用心棒になるよう頼まれるが、政が守ることになった弥一こそ、拐かし(かどわかし)を生業とする賊「五葉」の一味。政之助は剣の腕を見込まれて、「五葉」一味に加えられてしまう。
 仕方なく五葉を手伝う政之助だったが、ひとクセもふたクセもある個性的な面々が揃っている「五葉」の仕事を通じて、彼らが抱える個々の事情に関わってゆく事となり、人として成長を遂げていく。

※スタッフ、キャスト、最新情報などは公式サイトをチェック!

TVアニメ 『さらい屋五葉』
フジテレビ“ノイタミナ”にて毎週木曜25:15~
関西テレビにて毎週火曜25:59~
東海テレビにて毎週木曜26:45~
テレビ熊本にて毎週月曜26:10~
BSフジにて毎週土曜25:30~ 放送中
DVD第一巻は7月23日発売!詳細は公式HPへ

>>TVアニメ 『さらい屋五葉』 公式サイト

<b>DVD第1巻 7月23日発売</b><br>5775円(税込)<br>発売:メディアファクトリー<br>※イラストはデザイン前のものです<br>(C)2010 オノ・ナツメ/小学館・さらい屋五葉製作委員会

DVD第1巻 7月23日発売
5775円(税込)
発売:メディアファクトリー
※イラストはデザイン前のものです
(C)2010 オノ・ナツメ/小学館・さらい屋五葉製作委員会

(C)2010 オノ・ナツメ/小学館・さらい屋五葉製作委員会
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