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『戦国乙女~桃色パラドックス~』の岡本英樹監督にインタビュー!

最終回直前!TVアニメ『戦国乙女~桃色パラドックス~』を手掛けた岡本英樹監督にインタビュー!! 「TVシリーズなので、途中でダレないよう複数の軸を同時進行させ、進行を切ったり復活させたり、アメリカのTVドラマのようなつくりを目指しました」(岡本監督)

 最終回を間近に控え、最高潮の盛り上がりを見せるTVアニメ『戦国乙女~桃色パラドックス~』。

 先月は豊臣ヒデヨシ役の日高里菜さんと伊達マサムネ役の平田裕香さんのスペシャルインタビューをお届けしたが、今回は監督の岡本英樹氏に、最終回直前のお話を伺った。

 異色の脚本作業や他に類を見ない挑戦まで、知られざる『戦国乙女』の秘密が明かされる!?

☆日高里菜さん&平田裕香さんスペシャルインタビューはこちら!

●「90%がオリジナル」~ストーリーのない「原作モノ」~

――いよいよ最終回を残すのみというところまで来ましたが、これまでを振り返って、まずは監督と『戦国乙女』という企画の出会いから伺いたいのですが。

岡本監督(以下、岡本):基本的には頂いたお話なんですけれども、パチンコが原作なので「原作」というほどには原作はなく、90%以上がオリジナルなんです。
パチンコを知っている方には解ると思うんですけれども、基本的にはキャラクターデザインと大まかな設定があるだけなので、それを徹底的に掘り下げていくよりも、既に確立されているキャラクターの魅力を最大限発揮できる舞台を用意してあげた方がいいんじゃないかと思い、結果的にはキャラクターだけを頂いて、あとはこちらで作らせて頂いたという感じです。そのキャラクター達も全てではなく、かなりこちらで作り込んだ部分がありますが。

――「90%以上がオリジナル」ということは、特にお話作りなどは相当苦労されたのではないでしょうか?

岡本:もうほとんどと言って良いくらい…99%近くオリジナルなんですが(笑)、むしろろゼロから作るよりも難しかったかも知れませんね。全てを自由に作り込めるのではなく、キャラクターの性格は既に設定があるので、シナリオを作っていても「このキャラはこういう事をしないだろう」となってしまえば、そのシナリオは全てダメになってしまいますし、全体のシリーズ構成を作って「全体はこういうお話で、このキャラクターはこういう風に動かす」という軸を作るまでが大変でした。
そこさえ決まってしまえば後はそれに沿わせてキャラを動かし、その中でそのキャラが最も面白く映るようにシナリオや絵コンテを作っていけば、そこから先はいつもの監督業と同じなんですが、そこに至るまでが大変でした。


●舞台はあくまで戦国時代!~ファンタジーにはしない為に~

――「歴史上の人物を女性化する」というストーリーは数ある中で、ヒデヨシやマサムネ(=伊達先生)の「タイムスリップして来た現代人」という設定などかなり個性的なストーリーになったと思うのですが、どのようにしてその着想を得たのでしょうか?

岡本:「戦国武将」という大本の設定がありますので、そこから考えて行くと、まず「かよわい女の子」というデザインは有り得ないんですけれども、かといって勇ましい女の子ばかりにしてしまうとお客さんがそのキャラ達を見てどう思うか、ということになりますし……と色々考えまして、最終的に「男性がいない世界」ということにして「女性しかいないんだからしょうがないよね」という理屈を通させるようにしました。
でも、それだけではただのファンタジーになってしまうので、アイデアのストックの中からタイムパラドックス系のネタを絡めてみたら「意外と面白いんじゃないか」ということになったので、それで行こうと。具体的にはヒデヨシの現代人の軸と、ノブナガ達の戦国時代の軸の二つの軸を作ることが出来たんで、そこで初めてフィルムとして特化した面白さを作ることが出来たんじゃないかと思います。

――たしかに、ヒデヨシがあの時代にかなり馴染んでいても、携帯電話などの小道具で現代人であることは常に強調されていました。

岡本:美術さんにも「実際にあの時代に無いものは描いちゃダメ」という事をお願いして、この物語の舞台が戦国時代であるということをかなり強調しました。そこに現代人であるヒデヨシを連れて来てどういうリアクションを取るか、というところを面白さとして切り取ろうと思ったので、ディティールにはこだわりました。逆に、そこはこだわっていかないと、キャラクターを実際の戦国武将をモチーフにしている意味が無くなっちゃうんです。例えば「織田信長」と聞くと「強い」とか「敵には容赦しない」とかそういうイメージや知識が皆さんの中にあると思うんですけど、それすら無視するともう戦国時代を舞台にしている意味が無くなってしまうんですよ。
更に、その武将のイメージとキャラクターをリンクさせることによって、各キャラクターの行動原理をすんなりと受け入れられやすいようにもしてあります。
原作の時点でキャラクターが必殺技を撃ったりと荒唐無稽なことをするので、それはそれで活かしつつキャラクターに説得力を持たせたかったんです。なので7話の「演劇乙女」で、ヒデヨシが結構マメに仕事をしていたりというのも、史実の豊臣秀吉から名前を貰っている以上は……という考えがあったからこそです。

――ストーリーだけでなく、キャラクターもかなり苦心して作られたようですが、監督のお気に入りのキャラクターはいますか?

岡本:一応、史実上の人物とキャラクターの性格を合わせて作ったので、どれも動かしやすいキャラにはなったんですけれども、そういう所を作り込まなくても動かしやすかったのはミツヒデですね。元々ギャグやコメディ系の作品をやってきたので、自分の中の引き出しが多いというのもあるんですが、そういった点ではヒデヨシ含めギャグっぽいキャラを動かすのは簡単でしたし、面白かったです。


※上記場面写は第12話より

※上記場面写は第12話より

●異色の脚本作業~アメリカドラマ式脚本作業~

――ではお気に入りのエピソードはやはりギャグ系の話ということでしょうか?

岡本:全体の構成を決めた後の個々のお話はエピソードオムニバス的なやり方で作っていて、バトルや演劇等、毎回違うテーマを決め、それに特化したストーリーにしていきました。なので、どのエピソードも良く出来ていると思っていますが、一番印象に残っているというというか、僕がやりたかったのは10話の“本能寺の変”です。安土城があり、ノブナガがいてミツヒデがいるのでこれをやらない訳にはいかないだろうと。このエピソードは全体の中の何処に入れてどういう意味合いの話にしようか、かなり考えましたね。

――オムニバス的なつくりの中にもイエヤスの野望であったり、ミツヒデのヒデヨシへの嫉妬だったりと、それまでの話の中で積み重なったものが一気に集中した感じでしたね。

岡本:そうですね、毎回のドタバタの中にもお互いのキャラの気持ちはその都度描いていましたので、それを6話で一度ちゃんと描きました。そこからノブナガやミツヒデ達の感情ラインの軸を一本出し、甲冑に対するマサムネの想いを一本出し、イエヤスの軸もあり、常に三本ぐらいのものを絡ませながら作っていたので、10話までにノブナガとミツヒデのラインを固めて、他のキャラクターのラインを12話までで固めて…というように作りました。
TVシリーズなので、途中でダレないように複数の軸を同時進行させて、ある時はそれを突然切り、ある時は突然復活したり、というアメリカのTVドラマのようなつくりを目指しました。おかげで、脚本会議は毎回難航しました(笑)

――そういった複雑な脚本作業を経たことで監督ご自身もかなり得たものはあったのではないでしょうか?

岡本:そうですね。面白い話を作る方法なんていくらでもあると思うんですけど、その中での一つの試金石にはなりましたし、お褒めの言葉も頂けたので、そういう意味では苦労はしましたが、それに合う分の結果は出せたと思いますが、まだ最終回を終えていないので、最終的な評価は解りません。ただ、作っている実感は持てたし、自己評価はできるかなと思います。あとは見て頂いたお客さんにそう思って貰えるかどうかですね。

――ということは今これを読んでいる読者の方には最終回までに積み重ねてきたものを確認したり、それを最終回でどうまとめるのか、一話から改めて見直して最終回に臨んで貰えたらいいですよね。

岡本:そうですね、年齢層も趣味嗜好も取っ払って、色々な方に見てもらって色々な視点から見て貰いたいですね。アニメファンの方や原作のファンの方だけでなく、例えば普通の小中学生の女の子にも見てもらって、その全ての方に「どうだった?」って聞いてみたいですね。

――最終回を楽しみに待っているファンの皆さんに、メッセージをお願いします。

岡本:甲冑に対して、武将達が全員「あんなものいらない」という形に終わらせることが出来たので、戦国時代の話に関しては大団円を迎えることが出来たのですが、現代人であるヒデヨシやマサムネ達の大団円はまだなんです。甲冑の力を知っているマサムネの気持ちや、ヒデヨシとマサムネは死ぬまでこのタイムパラドックスの世界で生きて行くのか?という答えを最終回で提示しての大団円ということになりますので、お楽しみに!

 「99%オリジナル」という非常に特殊な状況の中で、オリジナリティと面白さを追求し、両立するという非常に高度な作業をされた岡本監督。とても落ち着いた佇まいながらも、最後のメッセージには熱い思いが込められていた。最終回はいよいよ来週!お見逃しなく!!

<取材・文:渡辺佑>

>>『戦国乙女~桃色パラドックス~』
>>WEBラジオ『戦国乙女~ラジオパラドックス~』:音泉

※上記場面写は第12話より

※上記場面写は第12話より

※上記場面写は第12話より

※上記場面写は第12話より

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