声優
『クレしん オトナ帝国』の原監督に最新作『百日紅』について聞いた

『映画 クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲』の原 恵一氏が贈る、江戸を生きた浮世絵師の熱く切ない物語、作品に込められた想いを聞いた!

『映画 クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲』や『河童のクゥと夏休み』など、数多くの名作を世に送り出した原 恵一監督。彼の最新作は、ご自身の敬愛する漫画家・杉浦日向子さんの『百日紅』だ。江戸時代後期を代表する浮世絵師の葛飾北斎の娘・お栄を主人公に、父・北斎や浮世絵の世界を生業とする絵師、そして江戸に息づく人々の息吹までも表現する映画になっている。

『カラフル』以来のアニメーション監督となる『百日紅』。映画化への経緯や原監督の作品に対する想いなどを語ってもらった。

 

■ 原作品の深い部分には、杉浦日向子作品の影響あり!

――本作のアニメーション化は、どういった形で決まったのでしょうか?

原 恵一氏(以下、原):前の『カラフル』を作った後、次の企画がなかなか決まらなかったんですよ。困っていた時にプロダクション・IGの石川さんの所に、「この作品が作りたいんですけど」と、杉浦日向子さんの別の漫画を持って相談しに行ったんです。その時に「実はうちで杉浦さんの『百日紅』の企画を動かしたことがあるんだよね。諦めたんだけど」という話を聞いたんです。それからしばらくして「この条件だったら『百日紅』の映画企画を動かすけど、原さん、監督をやりません?」とお話を頂いたので、是非やろうと決めたんです。それが、2012年でしたね。

――原作との出会いはどういった形だったのですか?

原:杉浦さんの作品を知ったのは『風流江戸雀』という漫画が最初です。それから杉浦さんの世界に魅了されて追いかけるようになりました。『百日紅』と出会ったのは20代後半の頃ですね。その頃は、ちょうど『エスパー魔美』にチーフディレクターとして参加していた時期ですね。

自分の作品にも影響されている部分も多いんですよ。リスペクトして生まれたシーンとしては『映画 クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ アッパレ! 戦国大合戦』で白木蓮が散るっていうシーンがあるのですが、あれなんかは『百日紅』の原作の「鬼」っていうエピソードのワンシーンからの引用だったりします。

――どのような事を意識して物語を組み立てていったのでしょう?

原:『百日紅』っていう作品は群像劇なんです。はっきりとした終わりもない。しかし映画だとそういうわけにはいかない。オムニバスにはしたくなかったので、縦の軸となるエピソードに、お栄とお猶(なお)の姉妹関係を持ってくることにしました。

当然90分という限られた時間の中だったので、入れたいけど入れられなかったエピソードもたくさんありましたが、杉浦さんは季節感をとても大事にしている方だったので、そこに注意しながら慎重に選択しました。

 
■ 野原一家のお二人が、キャスティングされた理由は!?

――キャストはどのように決まったのでしょうか?

原:お栄役の杏さんは歴史好きと言うことで、もしかしたら杉浦作品も読んでいるんじゃないかと思っていたんです。彼女の事は、山田太一さん脚本の『キルトの家』というドラマで知っていたんですが、『百日紅』の絵コンテを書き始めたかなり早い段階で「お栄さんは杏さんが良い」って感じていたんです。そんなこともあり、今回出演していただけることに決まりました。

――杏さんにお栄を演じていただいて、監督の感触はいかがでしたか?

原:流石は女優さんでしたね。素晴らしく思いました。彼女、アフレコの時に着物で現れたんですよ。それは決してパフォーマンスと言うことではなくて、「洋服と着物とでは出す声も違うはずだ」ということで、彼女なりに拘ってそうしてくれたんです。

――また今回、原監督とは関係の深い声優のお二人も参加されていますね。

原:矢島晶子さんと藤原啓治さんですね。やっぱり『クレヨンしんちゃん』の時からのお付き合いですから、「何か機会があれば出てもらいたい」と思っているんですよ。今回も特別、二人のために役を用意したわけではないですが、幸いにも適した役があったのでお願いしました。

矢島さんは少年をやらせれば絶品なので、それはしんのすけで証明されているし、世間も認めている。藤原さんは、僕が人間として好きなんですよ。それは見た目が渋くてカッコいいというわけではなく、変に営業的なことは言わない、人として正直なところが気に入っているんです。

――お二人以外にも、声優さんが参加していますね。

原:声優として活動されている方だと、吉弥を担当された入野自由さんですね。彼とは今回が初めてでした。プロデューサーから是非と紹介されたので担当して頂きました。普段から声の演技を生業にしている人なので流石に上手でした。僕から演技指導するとかも特になく、最初から吉弥というキャラクターにスッと入ってくれました。

▲写真左より、遣いの武士(CV:藤原啓治)、茶屋の子供(CV:矢島晶子)、吉弥(CV:入野自由)<br>※藤原啓治さんは、他にも「放し鳥売り」を担当。

▲写真左より、遣いの武士(CV:藤原啓治)、茶屋の子供(CV:矢島晶子)、吉弥(CV:入野自由)
※藤原啓治さんは、他にも「放し鳥売り」を担当。

※3人のコメント紹介記事「入野自由さんが美青年・吉弥役で、原恵一監督作品に初出演」は、こちら


■ 原監督が考えるお栄と北斎の親子の距離感

――お栄という人物を、監督はどう捉えていますか?

原:お栄と言うのは実在の人物なんです。(※編集部注 お栄は、「葛飾応為」の名で、少数ではあるものの作品を発表。映画のエンドロールには、応為の代表作「吉原格子先之図」が使われている)彼女には絵を描く才能があったけれど、たまたま父親が葛飾北斎という偉大な浮世絵師だったんです。憎まれ口を聞いたりもしているけれど、そんな父親からは逃げられない人だったのじゃないかと思っています。現に、彼女は一度嫁いではいるものの結局別れて、北斎が90歳で死ぬまでずっと一緒に暮らしたことになっています。それ程、北斎という存在が大きかったってことじゃないでしょうか。北斎みたいな親父が近くにいると、他の男が全部つまらなく見えてくるんじゃないですかね(笑)。

彼女は、北斎の代筆をしていたというのが定説です。だって90歳にもなるってひとが精密な絵をかけるとは思えないじゃないですか。めだっておとろえてくるだろうし、手だって自由に動かなくなってくる。だから北斎がある程度下書きしたものをお栄が完成させていたんじゃないかと僕は想像しています。

――最後に読者に向けてのメッセージをお願いします。

原:自分でいうのもなんですが、今回の作品は自信満々です。90分という時間があっという間に感じてしまう位に凝縮感のある作品に仕上がりました。絶対に損をさせないという気持ちで作ったので是非劇場で見てほしいと思っています。

――ありがとうございました。


◆作品情報

『百日紅~Miss HOKUSAI~』

5月9日(土)全国ロードショー

<STORY>
満ちあふれる喜怒哀楽、浮世はこんなにも美しい

活気あふれる江戸の街、両国橋の夏の昼日なたを真っ直ぐ歩いて来る意志の強そうな女ーーお栄、23歳、浮世絵師。
移りゆく四季とともに、父であり師匠の葛飾北斎や仲間たちと浮世絵を描いて暮らす日々。
そして、今日もまた浮世の街を歩いていく―。
本作は、天才浮世絵師・お栄が父・葛飾北斎や妹、仲間たちとともに自由闊達に生きる姿が、江戸の四季をとおして描かれる浮世エンターテインメント。日本が誇る最高のキャスト、スタッフが集結し、この5月美しく咲き誇る<百日紅(さるすべり)>を日本中にお届けします。

<STAFF&CAST>
監督:原 恵一(『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲』、『河童のクゥと夏休み』、『カラフル』)
原作:杉浦日向子「百日紅」
制作:Production I.G
配給:東京テアトル
出演:杏、松重豊、濱田岳、高良健吾、美保純、清水詩音、麻生久美子、筒井道隆、立川談春
入野自由、矢島晶子、藤原啓治



>>『百日紅~Miss HOKUSAI~』公式サイト
>>『百日紅~Miss HOKUSAI~』公式ツイッター(@sarusuberi_mov)
>>『百日紅~Miss HOKUSAI~』公式フェイスブック

(C)2014-2015杉浦日向子・MS.HS/「百日紅」製作委員会
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