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アニソン界のレジェントが「テレビまんが主題歌」の時代を振り返る!

アニソン界のレジェントが「テレビまんが主題歌」の時代を振り返る! ささきいさおさんインタビュー

今年デビュー55周年を迎えるアニソンシンガーの第一人者でもある「ささきいさお」さんが、デビュー55周年を記念したアルバム『ささきいさお ベスト・オブ・ベスト』を4月1日に発売した。中には、彼の代表曲を25曲網羅。5月17日には、「ささきいさお デビュー55周年記念バースデーライブ」もよみうり大手町ホールにて開催。ここでは、ささきいさおさんのアニソン……というよりも、テレビまんが主題歌に賭けた想いをいろいろと伺った。

▲ささきいさおさん<br>代表曲は『宇宙戦艦ヤマト』、『行け行け飛雄馬』、『銀河鉄道999』など。

▲ささきいさおさん
代表曲は『宇宙戦艦ヤマト』、『行け行け飛雄馬』、『銀河鉄道999』など。

 

■ 「テレビまんが主題歌」制作の裏には、様々なエピソードが……

――『ささきいさお ベスト・オブ・ベスト』を聴きながら感じた印象が、「テレビまんが主題歌」と呼ばれていた頃のアニソンには、「表情豊かな歌声や曲調の楽曲が多い」ということでした。

ささきいさおさん(以下、ささきいさお):そうなんです。あの頃の作曲家の先生方の感性はバラエティーに富んでいたのはもちろんですが、一人一人の先生方がいろんなことを考え、こだわりを持ちながら楽曲をお作りになっていましたからね(本ベストアルバムに収録されている楽曲も、菊池俊輔、宮川泰、渡辺宙明、小林亜星など、昭和を代表する作曲家ばかり)。

――『破裏拳ポリマー』の主題歌「戦え!ポリマー」では、いきなり「破・裏・拳!♪」という叫び声から始まるように、本作を聴きながら、改めてぶっ飛んだ曲展開や表情豊かな声の色を描いてた楽曲が多かったんだな」と実感しました。

ささきいさお:「戦え!ポリマー」の頭の叫び声は、ポリマーの戦闘時の動きが空手を元にしていたことから、「破・裏・拳!♪」と空手風の叫び声として入れたんです。また、サビで「破裏拳ポリマー♪」と高く伸ばして唄うんですけど、そこは「ローハイド」(1960年代前後に放送されたアメリカのテレビドラマ)の歌を参考にしたものなんですよ。というのも、僕自身が「ローハイド」の歌が好きで、レコーディングの現場でその話をしていたら、「それを取り入れましょう」ということで、ガーッと引き延ばした歌い方をすることになったんです。

――当時は、現場で臨機応変に対応していく動きなど、いろいろとあったのでしょうか?

ささきいさお:両方ありました。「戦え!ポリマー」を例題にするなら、冒頭の「破・裏・拳!♪」のセリフ自体は作曲家の(鳥海尽三)先生が最初から想定していたものでしたが、間奏に出てくる「ダンダンダンダン~」などの叫び声は、レコーディングしている最中に浮かんだアイデアから入れたものです。あの歌は本当に、レコーディングでもイベントでも唄うのが大変ですからね(笑)

――かなり力の籠もった叫び声を多用していますよね。

ささきいさお:そう。興奮呼び起こす楽曲だから、歌ってると必要以上に声を出しちゃうんだよね。レコーディングであれば、歌を録った後に掛け声などを録るから、まだ喉のペース配分が出来るんだけど、イベントやライブでは一気に唄う場合は、喉にかなりの負担がかかっちゃうんだよねぇ。

――先ほどの「ローハイド」話じゃないですけど、アニメソングの場合、サビの終わりを伸ばして唄うことも多くないですか?

ささきいさお:「たたかえ!キャシャーン」のときも、そういう話になって語尾を伸ばして唄った記憶がありますからね。あの頃は、現場でいろいろアイデアを交わしながら、より精度の高い歌を求めていくことが多かったんです。だから、楽曲によっていろんな歌い方をしているように、とてもバラエティに富んでいるでしょ?

――そうなんです。しかも「子供向け」の歌にも関わらず、とても緻密に作り上げています。アレンジセンスの高い楽曲の数々は嬉しい驚きでした。

ささきいさお:あの当時の制作者たちは、相手が「子供だから」こそ、よりクオリティの高い音楽を届けようと努力をしていました。だから、オーケストラの生演奏で楽曲も録れば、精度を高めた歌声をいろいろと描き出していたわけですからね。『宇宙戦艦ヤマト』に至っては、フルオーケストラで録りつつ、ヴォーカルをいくつも重ねながら録音したしね。あの頃は、週に何曲も録ることがも珍しくなく、忙しかったんけど、どの現場も、1曲1曲とても凝ったレコーディングで、かなりこだわりを持った環境ばかりでした。歌入れだけで1曲最低2時間はかけていました。『宇宙戦艦ヤマト』に至っては、1曲に4・5時間かけていたんじゃないかな。

――今聞いても、あの音圧や重厚な楽曲の構成、緻密に構築した歌声からは、職人的なこだわりが伝わってきます。

ささきいさお:とくにあの時代は生演奏での響きが良くってね。今とは異なる、いい時代だったなと思います。

――アニメソングの場合、作品ごとに、いろんな特徴を持った叫び声を入れてますよね。あれも、ベストな形を探りながら制作していた形だったのでしょうか?

ささきいさお:僕自身も、毎回いくつかのパターンの歌い方を考えてレコーディングに臨めば、現場のディレクターの方々もいろんなアイデアをぶつけて来ましたからね。

――アニメや特撮ソングの場合、『秘密戦隊ゴレンジャー』の冒頭を飾った「バンバラバンバンバン♪」など、不思議な言葉もたくさん登場します。そこにも、アニソンや特撮ソングならではという大きな特徴を感じさせられます。

ささきいさお:あれは確か、作曲家の渡辺宙明さんのアイデアでしたね。歌謡曲では絶対に有り得ない始まり方、そういうアイデアを、あの当時の方々はみんな楽しんで実戦していました。『秘密戦隊ゴレンジャー』に関しては僕も、あえてエルビス・プレスリー風の歌い方の要素も混ぜてみたり。当時、テレビから流れた歌を聞いたうちの女房が、「子供番組なのに、あんなに色っぽく歌っていいの?」と言ってたくらいでしたから(笑)。

――あの当時のアニメソングは、『合体!ゲッターロボ』に代表されるよう児童合唱団"コロムビアゆりかご会"と一緒に唄うことも多かったですよね。

ささきいさお:子供たちと一緒の歌も多かったですね。子供たちってリズムや楽譜へ正しく沿って唄うから、リズムやピッチが正確なんですよ。だからと言って、僕までそこに合わせることなく、あえてズラしてみたりなど、そこは自由に歌っていました。

自由と言えば、『われらガッチャマン』では、「ささきさんは、『科学忍者隊ガッチャマン』でコンドルのジョーとして声優もやっているんだから、中に出てくるセリフもお願いします」と言われ、いろんな役柄のセリフまで一手に引き受けたり(笑)。レコーディングは大変だったとはいえ、そこは歌としての統一感が出るので、いくつものセリフを自分で担当するのも、結果的には良かったなとは思いましたね。

――あの頃のアニメソングは、どんな心がけで作っていたんですか?

ささきいさお:あの頃は「作品があっての歌」だったから、けっして「作品から外れた歌」は作んないわけですよ。むしろ、「その作品のイメージを上げるためにはどういう風にやるか?」「どう、いろんな変化を付けていくか?!」をみなさん心がけていましたからね。

 
■ 「テレビまんが主題歌」と「アニメソング」の精神的な違いとは……!?

――『ささきいさお ベスト・オブ・ベスト』を聞いてて、一番何に興奮したって、弦楽や管楽器なども多用したりと、1曲1曲凝った作りを施していたことなんです。

ささきいさお:よくオーケストラで録っていましたからね。しかも当時は、アナログ録音ですから、一度オケを録ったは良いけど、歌のキーとの相性が合わないから少しキーを変えようという話になったら、また1から録り直すわけですよ。言ってしまえば子供向けのレコードですから、どこまでヒットするかわからない。もっと言うなら、儲かるか儲からないかさえ未知数なわけなんです。なのに、オーケストラで録り直しとか、あのこだわりはすごいこと。でも、そこにみんなの「いい歌を届ける」というプライドがあったわけです。

――ささきいさおさんは、テレビまんが主題歌の黎明期から一緒に良質な歌の制作に携わってきた方。まさに、このシーンの第一人者だなと実感させられます。

ささきいさお:自分では第一人者とか思ってないんだけどね(笑)。水木(一郎)にも「まずはささきさんがアニソン界の大王でいてもらわないと。その位置づけこそが大事だから」と言われるんだけど。そう言われると、むしろ照れちゃうんですよね、僕は(笑)。

――でも、実際にアニメ界の歴史を担ってきた方なのは間違いないですから。

ささきいさお:僕自身はそうは思ってないんだけど、まわりがそう観てくれるのなら、そこは素直に受け止めておこうというところですかね。

――アニメソングは……。とくにささきさんが歌っていた時代のアニメの歌は、まさに世代を超えて人を繋げるスタンダードナンバーだとさえ感じています。

ささきいさお:まぁ、うちの孫もね、親が聞かせるもんだから、よく「宇宙戦艦ヤーマートー♪」って歌ってますからね(笑)。当時のアニメソングは、子供たちにも歌いやすくっていいんじゃないかな? まぁ『宇宙戦艦ヤマト』はけっこう難しい歌だし、実際に『宇宙戦艦ヤマト』の大ヒットをきっかけに、だんだん難しい歌が増えだすんだけど。でも、ある時期から、「アニメソングは子供のものだから、もっと親しみやすい歌に戻そう」という動きが出始めていくんですよ。『すきだッ ダンガードA』は、まさにその頃の歌だからね。

――「テレビまんが主題歌」と言われてた頃の楽曲と、今の「アニメソング」ではまったく違うものになっているから、今や、そんな話さえも出てきません。

ささきいさお:今は、アニメのテーマ曲と冠は付きながらも、自分のオリジナル曲の一つというポップスに近い形だからね。もはや、僕らが歌っていた頃とは作り方や発想の向け方自体が違っていますから。やっぱりアニメソングというのは、作品のテーマに寄り添ったものでないと。それこそ、作品のことを知らないと「この歌は一体何なの?」となってゆく歌ほど、作品とリンクしたときにすごく寄り添っていけるものになる。『宇宙戦艦ヤマト』の「さらば地球よ♪」の歌い出しだって、『宇宙戦艦ヤマト』の世界観を知っているからこそ、あの言葉が持つ意味がズシッと来るわけで。作品を知らなければ、「どういうこと?」になる。でも、そこがアニメソングであることの意味なんですよ。

――確かにそうだと思います。しかもそれをささきいさおさんの低音声で歌われると、ますます感情がグッと高ぶってゆくという。

ささきいさお:僕は、どっちかと言うと低音の得意な歌い手だからね。

――だからこそ、歌に重量感が出るのも実感します。『宇宙戦艦ヤマト』のテーマ曲たちは、まさに、ささきいさおさんでないとしっくり来ませんから。

ささきいさお:声の相性の良い作品に出会えたのは、嬉しいことですよね。たまに、アニソン系のイベントの最後に、出演者みんなで『宇宙戦艦ヤマト』を唄ったりすることもあるんだけど、意外とみんな低いキーが出ないというか、もともとかなり低いところから始まる歌だから、みなさん苦労するみたいですね(笑)。

その声のハマった感を見初められ、その後『行け行け飛雄馬』を歌わせていただいたり。あのときも、「低音の響く歌でないと試練に立ち向かう男の力強さが出ないんで、ささき君ぜひ歌ってくれる?」と言われてましたから(笑)。

 
■ 「いい作品とは何か?、それは自分の中にある訴えたいテーマを、どう面白く描いていくか」

――5月17日には、よみうり大手町ホールを舞台に、「ささきいさお デビュー55周年記念バースデーライブ」の開催も決定しています。この日は、『ささきいさお ベスト・オブ・ベスト』の楽曲を中心に行う形なのでしょうか?

ささきいさお:基本はアニメソングや特撮ナンバーを中心にしながら、その間に僕のルーツでもあるエルビス・プレスリーの歌も入れようかなとは思っています。

――こうやって歴史を担ってきた曲たちを語り継いでくのも大切なことだなと、改めて感じています。

ささきいさお:よく「タツノコプロ」の吉田竜夫さんも、「いい作品とは何か? それは自分の中にある訴えたいテーマを、どう面白く描いていくかだ」と言いながら、いろんな名作アニメを作ってきましたし。そういう作品たちは、今でもずっと愛され続けている。あの頃の制作者たちはみんな、子供たちにどういうメッセージや想いを届けていくかに一生懸命だったんですよね。けっして今のように、数字ありきだったり、オモチャありきでは無かった。それが、何時の間にかその姿勢が変わってしまった。だからアニソンに関しても、今では、なかなかスタンダードナンバーというものが生まれてこない。むしろ、『ささきいさお ベスト・オブ・ベスト』に収録した時代の曲たちのよう、アニメ作品の意志を受け継いだ曲たちであるほど、長く受け継がれていくものだと思うんです。
吉田さんが、「別に詠み人知らずで構わない、その作品が長く受け継がれていくことが何よりも大切なこと」とおっしゃっていたように、僕の歌ってきた曲たちもそうでありたい。だからこそ、もっともっと今の若い世代の人たちも、僕の歌ってきた曲たちを歌い継いでもらえたらなと思ってる。

――ささきいさおさん自身が、構成へ語り継ぎたいアニメには、何がありますか?

ささきいさお:やはり『宇宙戦艦ヤマト』『銀河鉄道999』『科学忍者隊ガッチャマン』ですね。『宇宙戦艦ヤマト』と『銀河鉄道999』には、生き方を問いかける壮大なテーマが貫かれていますし。『科学忍者隊ガッチャマン』には、吉田竜夫さんの意志がすごく生きている。これらの作品は、ぜひ観ていただきたいですね。
後世に残していきたい歌として語るなら、『超人機メタルダー』の主題歌「君の青春は輝いているか」です。この歌詞には、作詞を手がけたジェームズ三木先生の好きな言葉がズラッと羅列してあるんです。僕自身が、歌ってて感銘を受けちゃうくらいだからね。あとは、アルバムには入ってないんだけど、アニメ『銀河鉄道物語』のテーマ曲たちですね。

――ありがとうございます。では最後に、ささきいさおさんにとって「アニソン」とは?

ささきいさお:やっぱり、いろんな歌の変化球を投げれることですね。歌謡曲だと、歌える幅が決まっちゃうけど、アニソンはいろんなテーマから想いをぶつけていける。そこがアニソンの魅力だと僕は思っています。そして何より「歌詞ありき…作品ありきの歌である」こと。そういう歌こそ、作品に込めた愛が伝わってきますからね。

TEXT:長澤智典

『ベスト・オブ・ベスト ささきいさお』<br>2015/04/01発売/¥2

『ベスト・オブ・ベスト ささきいさお』
2015/04/01発売/¥2

アニソン・レジェンドの決定盤。
色褪せることのない記憶と共に――
「宇宙戦艦ヤマト」「銀河鉄道999」などのアニメソングはもちろん、「秘密戦隊ゴレンジャー」などの特撮ソングで常に時代を彩り続けたささきいさおのベストアルバム!!

≪収録曲≫
1.たたかえ!キャシャーン/「新造人間キャシャーン」OPテーマ
2.おれは新造人間/「新造人間キャシャーン」EDテーマ
3.ゲッターロボ!/「ゲッターロボ」OPテーマ
4.合体!ゲッターロボ/「ゲッターロボ」EDテーマ
5.戦え!ポリマー/「破裏拳ポリマー」OPテーマ
6.宇宙戦艦ヤマト/「宇宙戦艦ヤマト」OPテーマ
7.真赤なスカーフ/「宇宙戦艦ヤマト」EDテーマ
8.進め!ゴレンジャー/「秘密戦隊ゴレンジャー」OPテーマ
9.秘密戦隊ゴレンジャー/「秘密戦隊ゴレンジャー」EDテーマ
10.とべ!グレンダイザー/「UFOロボ グレンダイザー」OPテーマ
11.宇宙鉄人キョーダイン/「宇宙鉄人キョーダイン」OPテーマ
12.大空魔竜ガイキング/「大空魔竜ガイキング」OPテーマ
13.斗え!!超神ビビューン/「超神ビビューン」OPテーマ
14.すきだッ ダンガードA(エース)/「惑星ロボ ダンガードA(エース)」OPテーマ
15.ジャッカー電撃隊/「ジャッカー電撃隊」OPテーマ
16.超常スマッシュ!ギンガイザー/「超合体魔術ロボ ギンガイザー」OPテーマ
17.行け行け飛雄馬/「新巨人の星」OPテーマ
18.立て!闘将ダイモス/「闘将ダイモス」OPテーマ
19.スタージンガーの歌/「SF西遊記スタージンガー」OPテーマ
20.銀河鉄道999/「銀河鉄道999」OPテーマ
21.青い地球/「銀河鉄道999」EDテーマ
22.われらガッチャマン/「科学忍者隊ガッチャマンII」OPテーマ
23.ザ・ウルトラマン/「ザ☆ウルトラマン」OPテーマ
24.がんばれ!宇宙の戦士/「宇宙大帝ゴッドシグマ」OPテーマ
25.君の青春は輝いているか/「超人機メタルダー」OPテーマ

>>日本コロムビア | ささきいさお

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