2016/1/9 9:00

特別な存在になったからこそ眷属に。『傷物語』キスショット役・坂本真綾さんインタビュー!

 ファイナルシーズンとして放送された『終物語』が無事最終回を迎えた『〈物語〉シリーズ』。その劇場映画として製作が発表されていた前日譚『傷物語』が、鉄血篇、熱血篇、冷血篇の三部作として順次公開されます。

 本稿では、遂に公開されたその第1部2016年1月8日(金)公開の鉄血篇に際して、今回の三部作の副題ともなっている鉄血にして熱血にして冷血の吸血鬼、キスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレードを演じる坂本真綾さんにお話を伺いましたので、その模様をお届けします!

 
──遂に今回『傷物語』の公開が正式に発表されましたが、この5年間どんなことを感じていたかお聞かせください。

キスショット役・坂本真綾さん(以下、坂本):『<物語>シリーズ』の一番最初のアニメ『化物語』には、まだ出演していませんでしたが、凄く人気のあるアニメだということは知っていました。その後『傷物語』と『偽物語』を映画とTVアニメでやることが決まって、それに際してキスショット役のオーディションを受けたのがきっかけでこの役と出会いました。なので、当時は『傷物語』と『偽物語』のためだけのオーディションだったんです。どちらのエピソードも、キスショットがすごく活躍するお話なので、いろんな年齢の時の声を演じ分けるようなオーディションが行われたんです。『偽物語』の後も、たくさんのシリーズに参加させていただきましたが、一体いつ『傷物語』を録るんだろうと思ったまま、気づいたらもう5年くらい経っていたという感じです。

素晴らしいことに本当に人気のある作品で、原作者の西尾先生もアニメを見て創作意欲が刺激され、あらゆるキャラクターがそれぞれ描かれ続け、それがさらにアニメになることが決まるという、まさか私も初めてこの役に出会った時は、こんなにたくさん色々な形でこの役を演じるなんて思っていなかったし、多分誰も思っていなかったと思います。嬉しいことですよね、そんなにもみんなの観たいという気持ちと作りたいっていう気持ちが合致して、何年もずっと活発に描かれ続けてきたのですから。

また、5年前のオーディションの時に私をキスショットに推してくださったのが「傷物語」の尾石達也監督だったらしいんです。なので今回はじめてアフレコでご一緒したときに、やっとお会いできましたと言われて、数年前に私をこの役に引き合わせてくださったのがこの方だったんだなと謎が解けたところです。ついに来たかと思ったらまさかの三部作で、まだまだ終わりがないんだなって感じですけれども。

──『傷物語』は『〈物語〉シリーズ』の時系列としては最初の作品だと思うのですが、既にいくつか作品を重ねていることと思います。今回『傷物語』のキスショットを演じるにあたって、時系列を遡る時に気を付けたことなどはありますか?

坂本:そうですね、気を付けたというか『傷物語』は映像が半分くらいできている状態でアフレコしたのですが、最近見慣れてきた忍よりも表情がちょっと大人びているような印象を受けたんですね。最近忍が小さい姿でいることに私たちも見慣れていますし、本人も多分慣れてきたんじゃないかと。これは私の想像ですけれど(笑)。

最初の内は、中身はあくまで威厳のある怪異の王というのをどんなに幼女の姿でも保ってほしいという演出のオーダーもあったのですが、最近はあえて子供っぽい振る舞いをしたり可愛い台詞を言う場面もあって、忍自身が子供の体を満喫し始めたんですよね。

でもこの『傷物語』の後半で初めて体が小さくなった場面で、暦になんでそんなに小さくなってるんだ? と聞かれとても恥ずかしそうにするんです。でも、ずっと見慣れてきた私たちとしては、何が恥ずかしいんだろうと思うんですけれど、自分に置き換えてみると怪異の王として物凄く強いものだったのに、力が弱まって無防備な姿を晒すのは結構屈辱的なんじゃないかなと。
だから、まだ子供の姿でも自分は子供じゃないぞって威厳を保とうとする台詞が結構あって、そういった意味では最近演じてきた忍野忍とはちょっとムードが違うんだなというところは意識したところです。

──予告などではかなり鬼気迫る演技をしていましたが、こちらについて心がけた点はありますか?

坂本:予告は予告用に録ったものなのですが、本編のほうには数分間にわたるワンシーンがあって、そこはあれを何倍にもした鬼気迫った状況を、細かく描いた結構ショッキングな絵で表現していて、TVシリーズではここまで描けないのではという劇場版ならではの生々しい場面になっています。

そういった恐ろしさのなかでも、キスショットが時々物凄く美しい表情を見せるんです。そういった怖さと美しさが両方入っていて、目を覆いたくなるような表現すらも魅力的に見えると言うんですかね。これはすごく上手い描かれ方をしているなって思って、演じる側としては、これまで演じたことの無い取り乱したキスショットの姿を、絵に引っ張られて楽しみながら演じられましたし、予告の時よりもっとインパクトのあるシーンになっているなと思います。

 
──共演のキャストさん方とは今回の『傷物語』について何か話したりは?

坂本:共演の人が3人しかいないという驚愕の作品ですが、本当に映画で4人しか出ていないなんて初めてでした。それで、アフレコは前半と後半の2日間に分けて録らせてもらっていて、私は前半ひとりで録ったんですね。だから私は神谷さんが既に収録されているものを聞きながらアフレコしたんです。

その時はまだ神谷さんとは具体的にお話はしていなかったのですが、キスショットと暦が初めて出会うシーンの声を聞きながらやっていたら、今まで神谷さんとはずっと会話してきたはずなのに暦がちょっといつもと違った印象だったんですね。

声は同じなんですけど、まだ怪異と関わっていない普通の高校生としての姿を声の演技からも感じたので、神谷さん何かアプローチを変えてるんだろうなっていうのが伝わってきたんですよね。それはすごく参考になりましたし、5年も一緒にいろいろやってきて、初めて出会うシーンを演じるのはすごく難しいことだったと思うのですけれど、神谷さんのそういった何か違うなっていう演技を受けて、私も演じさせていただきました。

あとは忍野メメと3人で話すシーンは、今までもTVシリーズで知ってはいましたけど、飄々とした掴みどころのない物腰の柔らかい話し方なのに、心を許してはいけないような、お腹のなかで何を考えているのかというような怪しさを持ったところが、映像だけでなく声が発せられたことでより増していましたね。

特にキャスト同士ってそんなに演技について語り合うことはあまりないんですけれど、それぞれキャスト陣ひとりひとりが声に力があるというか台詞に重みのある役者さんばかりなので、そのなかで演技するというのはすごい刺激になりました。

 
──この『<物語>シリーズ』との出会いは、坂本さんにとってどんなものですか?

坂本:最初にオーディションで選んでいただいた時に、今まであまり小さい子供の声を演じたことがなかったので凄く意外だったんですよね。それで、難しい役に出会ったなと思って、ずっとやりながらもがき苦しんでいたというか、私で良かったのかなと思うことが多々あって。

でもそんななか、普段アニメをあまり見ないという方からも「面白い作品に出てるね」っていっぱい声をかけていただいて、色んな人がこのシリーズを見ているんだなって実感しました。
それによって、『<物語>シリーズ』の忍の声をやってるんだってみんなが認識してくれることも多くなって、気が付けば私にとっての代表作ともいえる作品になっていました。
私も今までやったことのない役に挑戦させてもらっているので、本当に勉強させてもらっている場という感じですね。

オンエアを見た時に、今までに見たことのない演出にビックリして、ミュージッククリップみたいだなって思ったんですよね。ひとつのシーンの中にたくさんのイメージカットが入ってきたり、難しい言葉がいっぱい出てくるところも絵で緩和、あるいは文字で補助することで見やすくなっていてテンポが良いので、あっという間に引き込まれて気づいたら見終わっているんですね。だから、すごく実験的な見せ方をしてるなって初めは思ったんです。そういったところが、ミュージッククリップを見ているみたいだなと思うところがあったので、そういう映像作りに興味を持った方もいたんじゃないかなと。

──そのミュージッククリップ感は劇場版では?

坂本:まだこのお話しをしているタイミングでは完成した本編を見ていないので実際に見てみないと私もわからないのですが、けっこう長い台詞のシーンもあって、だから耳だけで聞いているとかなり頭の中が混乱してくるところもあるんですけど、大きな木の幹をパンアップしていく絵だったり、駅の中や町の中に普通だったらたくさん人がいる所なのに、誰もキャラクターがいないんです。その誰もいないことによる不気味さだったり、非日常感といいますか、凄然とした無音のなかで繰り広げられる会話劇だったりが面白いのではと思います。ミュージッククリップもそうですよね。一見普通の風景なんですけど、ちょっと違う切り取り方をしているといいますか。そういうところなのかなと思います。

 
──本作の見どころなどは?

坂本:原作を元々読んでいて、映像化を楽しみに待っているという方もいると思うんですけれど、TVで話題になってから初めて映像で見ているという方もいると思うんですね。そういう人たちにとっては、このふたりが初めて出会ったエピソードゼロといいますか、そこに触れるのは初めてになるわけで、そうするとなぜこのふたりがここまで強い絆で結ばれることになったのか、キスショットが本当はどんな女性なのかというところが紐解かれることになります。

ずっとTVで見てきた人たちにとっては、謎が解けることもいっぱいあると思いますし、この『傷物語』を知ったうえでシリーズの他のエピソードを見ると、また違ったように見えるかもしれない。何度でもいろんな切り口で楽しめると思うので、アニメから入ったファンの方もより各キャラクターの理解が深まるんじゃないかと思います。

──ちなみにシリーズ恒例の副音声は、今回も……?

坂本:そうなんです! 私、実は心配しているんです。4人しか出てないから誰がやるんだろうって。多分暦はやらないんじゃないかなとか……暦はあんまり副音声には出てないので。そうすると私かな…って(笑)。

一同:(笑)。

 
──やっぱり大変なんですか?

坂本:大変です! TVシリーズの1話分を録るよりも4、5倍の労力がかかるので、我々役者もスタッフさんも大変なんですけど、あの副音声のすごいところってやっぱりすべて原作者の西尾先生の書き下ろしというところですよね。

だからそこで初めて明かされる裏エピソードがあったりとか、さらっと重要な情報が混ざってくるので聞き逃せないし気合を入れて、「副音声と言いつつ全然サブじゃないんじゃないか」と思いながら挑んでいます。ただ、本編尺が長いので三部作全部これをやることになったらどうしようって思いますが、もし出演することになったら頑張ります!

──先ほど暦との出会いのエピソードだとおっしゃいましたが、シリーズで時系列的には先になるのエピソードはもう演じていますよね。先のエピソードと今回の『傷物語』で暦との関係性の違いみたいなところを感じたところはありますか?

坂本:改めて暦は普通の高校生だったんだよな、というところですね。最近は超人的な感じに見えているところもあったんですけれど、元々普通の高校生なんだよなっていうところを私も思い出すことができました。

そんな普通の高校生が、普通だったら受け止めきれないこの世の物とは思えない現場に居合わせた時に、一度はパニックに陥って逃げ出してしまうんですね。だけどその後に戻ってくるというところが暦の稀有なところで、なんだかんだいって最後はすべて受け止めることができる懐の深い人間というのが彼なんですね。

それは今までのTVシリーズでも、色々なことがあっても最後は暦が全部受け止めてくれるからいろいろなキャラクターが彼に素直になるというか、信頼するんですよね。それが彼のすごい才能であり、他の人と違うところだなって今回改めて思います。

それをキスショットは出会った瞬間に見抜いて、そこらじゅうにいる普通の人間のひとりにしか見えなかった暦が、一瞬にして多分特別な人間になって、その後に眷属になったんだなと。だから暦はやっぱり不思議な、普通に見えて誰よりも普通じゃない人間なんだなという、その瞬間を新ためて見たなという感じですね。

──暦はいろんな女の子と接触がありますし、恋人は戦場ヶ原さんですけれど、その辺りはキスショットを演じる坂本さんとしては?

坂本:キスショットは全ての場面を見ているわけなので、その辺りはある程度超越しているんでしょうけれど、私個人としてキスショットに共感して物語を見ていて、いろいろな女の子と仲良くしているとザワッとしますね。だけど戦場ヶ原さんだけはザワッとしないんですよ。

これがまた凄いところで、やっぱり戦場ヶ原さんも超越していて、さらに声優さんの演技も相まってこの人は特別、なんか違うって思っちゃって。こんな特別な女の子を彼女にしてる暦ってやっぱりすごい! と思って、このふたりはなんかいいなって思っています。

また一歩離れて見てみると、暦ってとっても健全だなとも感じます。本当に色んな女の子が好きで、色んな女の子の様々な場面でいちいち興奮してドキドキしていて、不埒に見える瞬間もあるんですけど、そこすらも普通なんだなと。それを隠していないと言うか、そこを視聴者のみなさんが目撃しているだけなのかなと

 
──最後にファンのみなさんへメッセージをお願いします。

坂本:TVシリーズで色んな場面を見てきた方も劇場版ならではのテンポ感といいますか、見ながら考えたり、想い巡らせるような時間が用意されていて、噛み締めながら見て頂くような作品になっています。TVシリーズのスピード感のある見せ方だけでなく、しっとりとした邦画のような演出もあって映画館で見る作品ならではの『<物語>シリーズ』の世界がここにあります。

やっぱり言葉の意味を噛み締めたくて何度も見てしまうのがこのシリーズなので、劇場でじっくり腰を据えて、『<物語>シリーズ』が大好きな人たちとその空間を共有して見るというのは素敵なことだと思いますので、空間ごと楽しんで貰えたらなと。

──ありがとうございました。

■『傷物語〈I鉄血篇〉』作品概要

高校二年生の阿良々木暦は春休みのある夜、伝説の吸血鬼であり、“怪異の王”キスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレードと衝撃的な出会いを果たす。

まばゆいほどに美しく。
血も凍るほどに恐ろしく。
四肢を失い、痛々しくも無残な伝説の吸血鬼。

ようこそ、夜の世界へ

――全ての〈物語〉はここから始まる。

【INTRODUCTION】

2014年のオリコン作家別売上ランキングにて、第1位を獲得した作家・西尾維新。代表作〈物語〉シリーズは、2009年の『化物語』を皮切りに、監督・新房昭之×制作・シャフト(代表作『魔法少女まどか☆マギカ』)によってTVアニメ化。先鋭的な演出と魅力的なキャラクター造形、原作の文体を忠実に再現した台詞まわしで大きな話題を集め、Blu-ray、DVD全27タイトルが累計出荷枚数200万枚を突破。異例のセールスを記録した。現在『暦物語』までのアニメ化が決定している、まさに2010年代を代表するアニメシリーズのひとつである。今回、劇場作品として公開される『傷物語』全三部作では、<物語>シリーズ最初のエピソードが語られる。スタイリッシュな映像とともに描き出される「〈物語〉の始まり」は、多くの観客に衝撃を持って受け止められることだろう。

【STORY】

それは3月25日——春休みのある日のこと。私立直江津高校に通う高校二年生・阿良々木暦は、偶然に学校一の優等生・羽川翼と知り合う。彼女の口から飛び出したのは、最近出没するという「金髪の吸血鬼」の噂だった。普段人との関わりを避けているものの、気さくな翼のことを好ましく思う暦。その夜、暦は噂の吸血鬼と遭遇する。“怪異の王”キスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレード。金髪金眼の彼女は、四肢を切断され、周囲に血を撒き散らしながら、暦に助けを請う。求められるままに、キスショットに自分の血を与える暦。次に目覚めたとき、彼は彼女の眷属に生まれ変わっていた。戸惑う暦に、キスショットは告げる。「ようこそ、夜の世界へ」と……。

【解説/〈物語〉シリーズとは】

2006年に講談社BOXより発表された第一作『化物語』から、2016年1月刊行の最新作『業物語』までで20巻に達し、またアニメ化作品も2009年の『化物語』を筆頭に、現在までで6作・全75話を数える人気シリーズである。吸血鬼体質となった高校生・阿良々木暦が、“怪異”に悩まされる少女たちを助けるべく奔走する本シリーズは、巻数を追うごとに、ヒロインそれぞれにスポットを当て、より深くキャラクターを掘り下げていく構成が採られている。ほぼすべての作品がシリーズの出発点であり、また阿良々木が“吸血鬼”になった経緯を描く『傷物語』から、わずか1年以内の出来事を描いているというのも、特筆すべきポイントである。

【STAFF】

原作:西尾維新「傷物語」(講談社 BOX)
総監督:新房昭之
監督:尾石達也
キャラクターデザイン:渡辺明夫、守岡英行
音響監督:鶴岡陽太
音楽:神前暁
アニメーション制作:シャフト
製作:アニプレックス、講談社、シャフト
配給:東宝映像事業部

【CAST】

阿良々木暦:神谷浩史
キスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレード:坂本真綾
羽川翼:堀江由衣
忍野メメ:櫻井孝宏

■公開情報
『傷物語〈I鉄血篇〉』2016年1月8日(金)全国ロードショー
配給:東宝映像事業部

■関連情報
TVアニメ「終物語」Blu-ray&DVD 第1巻 12月23日(水)より発売中
<物語>シリーズ最新作「愚物語」(講談社BOX) 発売中
『傷物語〈II熱血篇〉』2016年夏 全国ロードショー
『傷物語〈II熱血篇〉』特典クリアファイル付き全国共通特別前売券&ムビチケ
1,300円(税込) 2016年1月8日より発売決定

>>劇場アニメ『傷物語』公式サイト





(C)西尾維新/講談社・アニプレックス・シャフト

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