2016/9/20 20:00

樋上いたるさんがビジュアルアーツを退社! なぜ独立の道を選んだのか…独占インタビュー!

人気絵師・樋上いたる先生が独立! フリーになる心境を独占取材!!

『Kanon』『AIR』『CLANNAD』など、ゲーム史に残る大ヒットを飛ばした作品のキャラクターデザイン・原画を担当してきた人気絵師・樋上いたる先生が、ビジュアルアーツを退社、フリーになるという衝撃のニュースが入ってきた!

はたして独立を決意するに至った経緯とは? そしてこの機会に、「いたる絵」がどのようにしてでき上がっていったのか、心無い批判をどのように受け止めていたのか等、様々な「聞いてみたかったこと」をぶつけてみたぞ!

これが樋上いたる先生の「今の気持ち」だ!

樋上いたる(ひのうえ いたる)/3月1日生まれ。大阪府出身。ゲーム原画家。代表作は『Kanon』『AIR』『CLANNAD』『リトルバスターズ!』『Rewrite』ほか。最新作は『Harmonia -ハルモニア-』(近日発売予定)。Keyの立ち上げメンバーとして活動してきたが、このたびビジュアルアーツを退社し、フリーに。


●泣いて、もがいて……樋上いたる奮闘記

——まずは…幼少期に影響を受けた作家さんなどはいるんですか

樋上いたるさん(以下、樋上):小学生の頃は『ウイングマン』の桂正和さんがすごい好きでした。あと、楠桂さんのホラーが好きで、ずっと読んでいました。そうしたらだんだん絵も影響を受けてきましたね。高校に入ってからは『ウィングス』を読むようになって、その時も楠桂さんと、高河ゆんさんにハマりました。高河ゆんさんはすごい真似して描いて、自分の絵の髪の毛とかにまだ若干、癖が残っているかなと思います。

——楠桂さんや高河ゆんさんといえば、雑誌の投稿や同人活動で人気の作家が、次々と商業誌でデビューする新しい時代の旗手という感じでしたね。『鎧伝サムライトルーパー』の頃は、同人からプロ化という流れが本格化していた印象があります。

樋上:『サムライトルーパー』は、周りの友達がみんなハマって、「このキャラ描いて」って絵をいっぱい描かされたんですよ。

——それが誰かのために絵を描いた、最初の経験?

樋上:そうですね。当麻と征士はよく描いてましたね。

——そこからさらに自分の絵ができ上がっていく上で、直接的な影響を受けた方はいるのでしょうか?

樋上:もしかしたら、もっと元になっているのは高橋留美子さんかなって思います。高校生の頃は『らんま1/2』をやっていたので、頭身とかは高橋留美子さんの影響が大きいかもしれないですね。

——プロの絵描きを目指そうと思ったのは、何かきっかけがある?

樋上:元々はマンガ家になりたかったんですけど、どうしてもネームが描けなくて、話を考えるというのも苦手だったんですよ。専門学校の漫画家コースに入って、マンガをがんばろうと思っていたんですけど、同じコースに行っていた友達が『同級生』(エルフから発売されたPCゲーム。18禁)を教えてくれて、「あっ、こんな仕事があるんだ」と知ったんです。それからPCゲームをやるようになって、「自分はこの仕事がやりたい!」と。

 とにかく竹井正樹さんの絵がものすごくて。それまではドット絵のゲームをずっとやっていたので、ゲーム画面でこんなにきれいに絵が表現できるんだというのは衝撃的でした。それで「この道に行ってみたい! 原画を描きたい!」と思ったんですけど、まずはグラフィックを知ることが先かなと思って専門学校で担任の先生に相談したら、「それはゲーム科じゃないと求人が来ないし、ゲーム科の求人を奪うわけにはいかないから、自分で探してください」って言われたんです。

 そこで専門学校を卒業してから、まずはゲームというものを知るためにグラフィック志望でいろんなゲーム会社を受けました。そして受かったのが、TGLなんです。それまでパソコンをゲーム以外で触ったことがなかったので、山本和枝さんの下でドットの置き方とかCGを1から全部教えてもらって、グラフィックをやっていました。

 その後ビジュアルアーティストオフィス…今のビジュアルアーツにグラフィッカーで入ったんです。そこでもずっとドットで色を塗っていて、その後ネクストンに入ったら急に256色に変わって、パソコンもMacになったので電源の入れ方もわからなかったんです(笑)。そこで塗り方とかも勉強し直しました。

——その間、自分の絵を見せる機会はなかった?

樋上:ビジュアルアーティストオフィスの時に、「原画描きたいんですけど」っていう話はしたことあります。1回社長に見てもらって、「まだまだやな」って言われて、「そうすか〜」って感じでしたけど(笑)。

——原画で行けそうとなったのは、いつ頃から?

樋上:ネクストンには最初から原画で入ったので、原画を描かせてもらって、自分でも塗りつつと両方をやっていました。たぶんビジュアルアーティストオフィスを辞めた後に、原画を描けるところを探していたのかもしれないですね。その辺りは記憶があやふやですけど。

——いよいよプロの原画家ということですが、自分の絵はどのように作っていったのでしょうか?

樋上:グラフィックを先にやっていたので、原画を描く時は、グラフィッカーさんがどうしたら一番塗りやすいだろうというのを考えながら描いているんです。ここのパーツは分けたほうがいいとか、塗りやすいように必ず線をくっつけるとか。そういう描き方はグラフィッカー時代の経験が活かされているのかなと思いますね。

——作業効率から画風を作っていったのは面白いですね。その後、キャラクターデザインという話が来たのはいつ頃?

樋上:ネクストンに入ってすぐです。いきなり「1本描いてくれ」みたいな感じでした。チームがいろいろ分かれていて、その中の1本を任されたんです。

——デザインとなると、自分のセンスで勝負することになるわけですが、顔つきや髪型、ファッションまで、かなり大変だったのでは?

樋上:私はけっこう叩かれていたので(笑)。

——最初は「それでもやるしかない!」という感じ?

樋上:そうですね。とにかくネットではすごい叩かれて、「この絵なんかないほうがマシだ!」くらい言われていたんです。服を描く時も、いろんな本を持ってきて、どういう服がいいかシナリオさんと相談したりとか。髪型とかもいろんな雑誌を見て、研究して、というのはとにかく常にやっている感じです。今もそういう情報は常に入れておかないといけないと思っているので、絵に使えそうなものはどんどん吸収しているんですけど、それがセンスにつながっているかどうかはわからないです(笑)。引き出しがなくなるということがないように、努力はしています。

——当時は叩かれて、枕を濡らすようなこともありましたか?

樋上いやもう泣いてました! 本当につらくて……。つらかったけど、自分のやりたいことをやっているので、とにかく認めてもらえるようにがんばらないとと思っていました。シナリオも音楽も評価が高いので、「その2人の足を引っ張らないように。自分の絵で作品の評価を下げてしまうのはイヤだ!」と思って、必死で描いていました。『Kanon』で悪いと言われているところを少し直そうと思って、『AIR』で若干頭身が上がった感じになっているんです。

——つまり他のクリエイターの影響はあまり受けず、周りからの評価を受けて自分でどんどん絵を変えて、自分の絵を作っていった感じ?

樋上:そうですね。とにかく必死でした。

——同時に「いたる絵」と呼ばれる独特の絵にハマる人たちもいたわけですが、そちらの印象は?

樋上:なんか、不思議でした(笑)。あっ、自分では自分の絵がすごい好きなんですよ。それをすごく叩かれて、でもその中で「好き」と言ってくれる人もいて、それがすごい不思議だったんです。あれだけ言われている中で「好き」と言ってくれるのは嬉しいんですけど、「どこがいいのかな?」っていう(笑)。

——その後、ゲームが大ヒットしてアニメ化されることになり、自分の絵がアニメ用にデザインされていくわけですが、そちらはいかがでしたか?

樋上:いやもう、素晴らしい絵になって帰ってきました!(笑) 本当に嬉しかったです。『Kanon』とかは地上波でやっていましたから、みんなが観れるじゃないですか。自分はこういう仕事をしていたんだというのを身内に言いまくりましたね。

——それまでは言っていなかった?

樋上:18禁だったので、あんまり……(笑)。親は、絵で食べてるということくらいしか知らなくて、一応『Kanon』のアニメのことも言ったんですけど、あんまり興味はなかったみたいです(笑)。ただ、自分が『リトルバスターズ!』で表紙を描いた『電撃G's magazine』を1冊だけ実家にそっと置いていったんですけど、いまだにそれは置いてありますね。ということは、ちょっとは喜んでくれてるのかなと思っています。

——アニメ化された絵に、逆に自分が影響を受けるようなことはありましたか?

樋上:アニメーターさんが描くからバランスとかも取れているし、自分ができないところがちゃんと形になっているので、すごい勉強になりました。アニメの絵を参考にして描くことはあります。

——ゲームが売れてアニメ化され、劇場版まで作られるなど作品が絶頂期を迎えていた頃、作り手側の実感はどうだった?

樋上:ずーっと絵を描いていました。ゲームがマスターアップしても、次は店舗特典の絵とか、販促用とか、絵描きだけは同じ絵を描き続けないといけないから、マスターアップした気になれないんですよね。それで、ようやく終わったと思ったら、すぐに次回作のキャラデザっていう感じなので。

——そうなると、アニメの打ち上げのような華やかな場に参加したことは?

樋上:まったくないです。ゲームの打ち上げはありますけど、アニメは行かせてもらえなかったんです(笑)。ゲームの打ち上げは、毎回焼肉屋さんに行って食べるくらいでした。

——それでは、この仕事をしていて良かったなと思ったことは?

樋上藤島康介さんと対談した時は、本当にこの仕事をやっていて良かったと思いました。ずーっと作品を読んでいたので、まさか対談できるとはって感動しました。

 あと、当時のPCゲームには声がついていなかったんですよ。それをコンシューマに移植する時に、初めて声を入れたんですけど、『AIR』の時に緑川光さんが大阪まで来て、収録してくれたんですよ。そこで初めて声優さんの仕事を見学して、なんかもう腰が抜けて(笑)、「すごいいい声! ヤバい!」って。そのことを緑川さんのラジオ番組で話したら、「いいこと言ったね! そういうの待ってたよ」って言われました。

●独立に至る心境と、これから

——自分の絵に対する評価は、来る仕事の量がそのまま自信になっていた感じ?

樋上:そうかもしれないですね。仕事がいっぱい来ると、心が落ち着きます。

——自分の中で、絵描きとして自信を持てた作品、納得できた絵などはありますか?

樋上:う〜ん……。納得できているかといえば、できてない……。なんかもう、常に勉強中みたいな感じですね。毎回作品ごとに絵を研究しているんです、一応。今まで散々「いらない」って言われてきたから、「ひとりでも多くの人に、自分の絵を好きになってもらいたい」という目標があるので、常に「受け入れやすい」というのを目指してきたんです。でもそれをやると「個性がなくなる」と言われて、そこがどうしたものやらと毎回悩むところではあります。

——これまでで一番気に入っている絵とは?

樋上:いま振り返ると、『Harmonia -ハルモニア-』の絵が一番好きなんです。

——どこがお気に入りなんですか?

樋上:目のタッチはかなり変えていると思いますけど、やっぱりですね。自分ではこの顔が一番なんですよ。でも、もっともっと研究するところはあると思うので、まだまだです。

——今後はどんな絵を描きたい?

樋上:学園モノばっかり20年間も描いてきたので、ファンタジーとかをずっと描きたいなと思っていたんですよ。制服ばっかりデザインしていたので、鎧とかも描いてみたいし。

——独立しようと思ったのは、どんな経緯から?

樋上:会社でゲームの作業をしている期間は、自分の絵が表に出ることはないんですよ。発売数ヶ月前から営業がかかって、そこから出るんですけど、Keyは特に開発期間が長いので、その間自分の絵が出ないと「忘れられちゃう」っていう危機感がずっとあったんです。

 だから、次回作の区切りで外に出て、もうちょっと活動範囲を広げてみたいなという気持ちがあって、何回か退職願は出しているんですよ。もちろんいつも引き止められるんですけど、今回は「何を言われようが辞めます」と言いました。

——まずは何をやりたいですか?

樋上:アニメというものに自分はすごい価値を持っているんですけど、自分が関わったのはゲーム原作があってのアニメ化なんですよ。オリジナルアニメというのを今までやったことがないんです。その後会社ではオリジナルアニメをやったんですけど、後から入ってきた原画の人が先にオリジナルでアニメデビューをしちゃったわけですよ。それがすごく悔しくって……。

「私の夢を、あの人が先に叶えてしまった」と思って……。でもそれは会社にいると、自分にはなかなか回ってこない仕事なんですよね。目指しているのは、オリジナルで、アニメのためのキャラクターを作って、それが動くというのが自分にとってはすごい魅力的な仕事なんです。

 それから、ホラーとかも作りたいんですよ。とにかく後ろを振り返れないくらいの怖さのホラーを作りたいっていうのは前から言っていたんです。演出とかにもばんばん口出して、すっごい怖いのを作ってみたい。(笑)

 あとは『シン・ゴジラ』の同人誌を作りたいな、とか(笑)。四コマで描きたいんですよ(笑)。

——いいと思います!

樋上:それと実は、10年分の同人誌の原稿を集めた総集編を作っています。描き下ろし多めで、最新のイラストも入れて、けっこう厚みがでそうです。同人誌って、作って完売したらそれで終わって、再販もしてこなかったんですよ。

——それから、アニメイトタイムズでも何か企画をやるらしいですね!?

樋上:ですね(笑)。お仕事募集のページがあるのでそちらもぜひ見て下さい。あと、いつかアニメイトさんで、グッズを並べてほしいです。

——これからの活動を楽しみにしているファンに、最後にメッセージをお願いします。

樋上:これからは、いろんなことに挑戦できるような状況になっているので、もっともっと活動の幅を広げて、もっともっとみなさんの身近に触れられるよう、いっぱい仕事をしたいです。よろしくお願いしますいたる。

——語尾キャラ!?


お忙しい中、インタビューさせていただきありがとうございました。今後の樋上いたる先生の動きにご期待下さい! そしてアニメイトタイムズでは樋上いたる先生とコラボが決定! 描き下ろしオリジナルキャラクターの名前や性格を募集するキャンペーンを実施!抽選で1名さまにサイン色紙をプレゼント! 詳細は 特設ページをご覧ください!

[文=設楽英一 編集=長谷憲]

>>樋上いたる×アニメイトタイムズ キャンペーンページ 
>>公式ウェブサイト 
>>樋上いたる Twitter

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