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双又翔先生と上村祐翔さんが語るTVアニメ『ナンバカ』の秘密

台本が現場で変わる!?「もう終わった」と思ったオーディション!原作者・双又先生とジューゴ役・上村さんが語るTVアニメ『ナンバカ』の秘密

 ビビッドな色合いや個性が際立つキャラクターで人気を博している双又翔先生の『ナンバカ』(comico連載)。10月からは待望のTVアニメの放送がスタートします。TVアニメでは上村祐翔さん、柿原徹也さん、汐崎アイルさん、小林大紀さん、関智一さんら話題の声優陣がメインキャストとして出演。さらに監督はTVアニメ『銀魂』シリーズを手掛けた高松信司さん。双又先生が描く一風変わった監獄生活がアニメでどのように表現されるのか見ものです。

 そこで本稿では、原作者の双又先生とジューゴ役の上村さんへ対談インタビューを実施。上村さんが役を射止めた理由や、双又先生のアニメ化に対する思いなど、アニメ放送前にチェックしておきたいアレコレについてお聞きしました。

第1弾PVが双又先生の不安をかき消した!

──今日はよろしくお願いします。『ナンバカ』がアニメになると決まったときはいかがでしたか?

双又翔先生(以下、双又):もともとアニメが好きだったんですけど、自分のマンガがアニメになるってことを考えないで描いていた作品なので、だからいざアニメになるって言われても全然実感が湧きませんでした。「こんなに早くアニメ化していいのかな?」と率直に思いましたし、頭の中が真っ白になりました。


──オリジナル作品が少ない中でのアニメ化ですからね。

双又:そうですね、オリジナルは『ナンバカ』が2作目なんですけど、1作目はどちらかというと、おもしろおかしくやってただけで、特に設定とかストーリーを凝ろうとしていないマンガでした。『ナンバカ』は連載前提でスタートしたので、“ストーリー物の作品を描く”のはこれが初めてですね。


──まさかこんなに早く夢が叶ってしまうとはって感じですか?

双又:そうですね、早すぎて本当に実感がないです。「もっと段階踏まなきゃダメなんじゃないか」「こんな初めてで好き勝手に書いてるだけなのに、アニメになっちゃって大丈夫なのか?」って思いました。

マンガって自分を表現するものだと思うんです。マンガは私の分身みたいなものだから、私のマンガを知ってもらうっていうことは私のことも知ってもらうみたいなものなんです。でも、アニメを通して伝わるのか、正直不安でした。

──先生はそんな心境ですが、上村さんは作品をご覧になっていかがでしたか?

上村祐翔さん(以下、上村):僕はオーディションの時に、初めて作品を読ませていただきました。本当に色使いがすごく派手でギャグが多い作品なので、「これがアニメになった時、どういう風に描かれるんだろう」って思いました。原作の素晴らしいところをアニメでどういう風に描いていくのかは、すごく気になったところでした。

原作も展開が早いのですが、アニメではより一層早くなっている感じがしました。キャラクター達が生き生きと動いている作品になっているので、演じがいがあって僕も一生懸命やらせていただいています。

双又:PV第一弾でも疾走感がかなりありましたよね。

上村:すごかったですよね。



双又:色々考えることはありましたが、PV第一弾を見て全部吹っ飛んじゃいました。「ここまで再現するんだ!」みたいな。一気に不安がなくなりました。

上村:PVだけでも“物凄い盛り上がっているんだな”っていうのが伝わってきますよね。現場の雰囲気も読み取っていただけるんじゃないかなと。

双又:容赦ないテンションだと(笑)。「そうそう!こんな感じ!」って納得の出来です。

「あ、これは終わったな」と思ったオーディション

──ジューゴを演じてみていかがでしたか?

上村:僕、最初はニコ役でオーディションを受けていたんです。そのあとにジューゴの台詞も読んでみて下さいと言われて。ほぼ初見の状態で、不安を抱えながら「じゃあ本番行きますね」となって、「え、なんも用意してない」と思ってスタジオに入って、台詞を言い終わった後、すぐさま「お疲れさまでした」と。「あ、これは終わったな」と思いました(笑)。

一同:(笑)。

上村:本当にもう終わったなって思いました!そうしたらジューゴ役に決まったという連絡を事務所からもらって。オーディションの時、あまり考えすぎずに本能的に演じたのが良かったのかもしれません。第1話の収録のときに高松監督から「自分の好きなようにやってください」とディレクションがあって、そこからはどんどん回を重ねるごとに僕もジューゴというキャラクターを理解しながら演じられるようになりました。


──先生からオーダーみたいなのはあったんですか?

双又:こういう声がいい、この人がいいっていうのは、ほんのちょっとだけありました。その中でも一番声の想像ができなかったのがジューゴでした。「こいつを演じられる人はいるのかな」って思っちゃったんです。何考えてるかわかんない、すごくフワフワしているキャラクターなので。

だから、オーディションで自由にやってもらったのがよかったのかもしれませんね。キャラクターの詳細を教えられていないから、逆にすぐにスルっと出たものがOKだったのかなと。キャラクターを作っちゃうと、ジューゴにならないとは思っているので。

だからさっき上村さんのお話を聞いたときに、「なるほど」と納得しました。他のキャラクターは個性が強めに出ているから、それなりに情報を仕入れてそれっぽく演じてもらうのはわかるんですけど、ジューゴだけ情報が少ないから、役者さんが一番困るのではないかっていうのがありました。だからこそ、上村さんが決まったのを聞いて、「あぁ、ジューゴっぽいな」って本当に思いました。どうやって演じているんだろう、何考えてるんだろうなって思いましたね。でも、実は何も考えてなかったっていう(笑)。

一同:(笑)。

双又:完全にほっとしてます。本当に。

上村:ジューゴは脱獄しか取り柄がなくて、自分のアイデンティティーを確立できてないキャラクターなので、ある意味純粋なキャラクターなのかな、という風に思っています。不安や仲間といられる喜びだったりとか、そういう喜怒哀楽の部分をあまり作りすぎずに“楽しいから笑う”“悲しいから怒る”とシンプルな感情で出していけたらいいのかなと。

一度まだ収録も序盤の頃スタッフさんとキャストでご飯を食べに行くことがあって、そのときに先生とお話しさせていただいたんです。ジューゴは自分の中でも不思議なキャラクターで、何もない状態から始まって仲間たちに助けられながら、自分を見つけていくキャラクターなので、僕も演じていく中で不安があったんです。なので先生に「どうすればいいですか?」「僕の演技は合ってるんでしょうか?」みたいな相談をさせていただきました。

双又:言ってましたね。どういう風に演じたらいいのかとか、どんな感じに役を作ればいいのかみたいな。私、「何もしなくていいです」って言っちゃいました(笑)。「特に何も考えないで、ノリに合わせてやっていけば、ジューゴっぽいんじゃないですか?」とお話ししました。

自分では軽く言っちゃうんですけど、多分声優さんはキャラになりきらなきゃいけないから、余計混乱させてしまったかもしれませんね。自分でも後から「何も考えるなって言っちゃダメでしょ」って反省しました……。

上村:でもそう言っていただけたから、僕も今は不安もなく、現場でみんなと楽しく『ナンバカ』を作っていけているな、っていう風に感じるので。よかったです本当に!

──お互いにいろんな葛藤があったんですね。ジューゴはどのように考えて作ったキャラクターなんですか?

双又:「私があまり好きじゃない人」です。


──(笑)。好きじゃない人、ですか。

双又:私が友達として付き合いたくない人がモデルです。私は多趣味なので、趣味がいっぱいある人の方が好きなんです。逆に何も趣味を持ってない、特にやりたいことがないっていう人は苦手なんです。

だからそういう人をどうやったら好きになれるか、どうやったら馴染む環境ができるのかっていう風に考えて、じゃあとりあえずフワフワした何もない人を作ってみようかなっていう感じで作りました。そのキャラクターに目的を作ってあげて、やる気を出させてあげて、趣味とか好きなものに導いてあげるにはどうしたらいいかっていうことを考えています。


──嫌いな人をモデルにするって珍しいですね。

双又:そうですね。だからあんまり私もジューゴのことがわからないんです。描きながら“なんでこいつこうなっちゃうのかな”“なんですぐ沈んじゃうんだろう”って思っています。でも確かになぁって思うところもあるんですよ。だからジューゴは成長させていこうかな、とは思いますね。

アドリブ入れまくりで台詞が変わる!?

──ズバリ、TVアニメ『ナンバカ』の魅力は何でしょうか?

上村:ギャグ要素がすごい多いと思われると思うんですけど、シリアスな部分も結構多くて。それはジューゴがどういう人間なのかっていう大事なところで、アニメではガッツリ描かれているんです。

ジューゴは色んな事を考えていて、悩んでいるんです。いつも一緒につるんでいる4人組も大事なエッセンスで、ジューゴは一人では何もできないので、仲間の3人や看守、13舎以外のメンバー、そういういろんな人に支えられてジューゴっていうキャラクターが存在できていて、どんどん存在に色がついていくのかなと思います。

絆や友情みたいなものを感じるし、収録現場でもみんなで助け合いながら、キャストどうしが一生懸命『ナンバカ』っていう作品と向き合っているという感じがします。現場の雰囲気が作品にも現れているので、その結びつきが魅力的な作品だなと思いますね。

双又:アフレコ現場にお邪魔させていただいたこともあるんですけど、ほんとに騒がしいんですよ。登場キャラクターが多いから、ブースの中にキャストがいっぱいいるんです。終始笑いが絶えないんですよね。監督とか見てる側の方でもワイワイやってるんですよ。みんなが笑ってますよね。

──ちなみに声優さんの演技聞いてみてどうでしたか?

双又:迫力が凄いですね。「ここまで表現できるんだ!」って思いました。自分の作品なのに、第三者のように見ていて、自分でも新しい発見ばかりでしたね。ここってこうなるんだな、みたいな。

騒がしいのにも種類がいっぱいあって。監督がお茶目な人だから、いろんなところにアドリブを追加しているんです。一斉に3~4人でやったり、2人でやったり。足したり引いたり色々やっていて、わちゃわちゃしていて面白いですよ。

上村:台本も自分が言いやすいようにセリフを変えたりして、きっちり演じようというよりも空気感の中でお芝居作ってる感じがします。とても不思議な現場だなって思いますね。アニメの収録で、ここまで自由に、のびのびと、キャラクターと向き合える現場ってなかなか無いですよ。毎回楽しく、毎回違った何か面白さがあって、すごくいい現場だなって思っています。


──アフレコで何か楽しかったことはありましたか?

双又:こんなに楽しい現場なんだな、とは思いました。なんかわっちゃわっちゃしてるなぁと。セリフひとつでも雰囲気が変わるから、キャストさんがいろんなところ修正していて、それにつられて私は見てるだけのはずなのに、一緒にアイデアを出してしまったり(笑)。

だから、毎回毎回こんな感じなのかなって想像すると「あぁアニメはもっと面白くなるかも」って思いましたね。これだけ現場が騒がしいなら“アニメはもっと騒がしいでしょ”みたいな。音楽もついちゃうし、絵もついちゃうし、動いてるしって思ったら、その現場もネタになるぐらいの面白さがあると思いますね。


──そんなにセリフ変えるのはすごいですね。

上村:僕は第1話のダビングを終えたものを見させてもらったんですけど、やっぱり1話は物凄いわちゃわちゃしていて。自分達が演じてるときですら、色んなセリフが飛び交っていて、ものすごくテンポ早いなって思ったんですけど、映像になるとさらに早くて。30分のアニメなのに、半分くらいにしか感じなかったんですよ。あっという間に終わってしまって。目で追ってたら終わっちゃってみたいな。

双又:1話叫び声、多かったですよね。

上村:多かったですねー!

双又:あっちで叫んで、こっちで叫んで、4人で叫んでみたいな。「わー!」だの「きゃー!」だの、言いながらアフレコしていて。常にマイク前に二人ずつくらいいるんですよ。「第1話から飛ばすなぁ」って私も見ていたら、あっという間に終わっちゃったんです。

先生の爪は『ナンバカ』カラー!

──せっかくなので、お互いに聞きたいことがあれば、お聞きしてみたのですが。

双又:収録は進んでいますが、ジューゴを演じるコツっていうのはありますか? すぐやれって言われて、すぐパッて切り替えられるものなんでしょうか?

上村:うーん、でも大分慣れてきたなっていうのはありますね。話が進んでいく中でジューゴのパーソナルな部分を演じることが多くなったので。登場キャラクターが増えていって、そのキャラクター達と話していくことでわかっていった部分もあります。ジューゴは頭では理解するけど、それを前面に出しすぎないというか。それを踏まえたうえでの直感的な反応を出したいなと思っているので、あんまり考えすぎない方がいいんだなっていうのはあります。

双又:それでいいんじゃないでしょうか。最初のころは4人の明るいテンションについていく感じだったのに、自分のことになると急にテンションが落ちるから、上がり下がりが激しいじゃないですか。急に明るくなったり暗くなったり。どんどんテンションが変わっちゃうから、流されやすいですよね。だから演じるのが大変そうだなって思ってたんですけど、今の話をお聞きして安心しました。


──上村さんは双又先生に聞いてみたいことはありますか?

上村:前も聞いたんですけど……。みなさん気になっていると思うんですけど、先生の爪が。爪が長いので、どんなふうにマンガを描いているんだろうなって。

双又:普通に描いてますよ。これでも短いほうで、前はもっと長かったので。


──爪の手入れはご自身でやってるんですか?

双又:サロンでやってもらっています。大体2か月に一回くらい行っていて、そろそろ変える予定です。ペンタブで漫画を描いているので、ペン持つ分にはいいんですけど、セリフうちが一番キツくって。キーボードのキーを2つ同時に押しちゃうんですよ。ほとんど人差し指で、カタカタとやってるんですよね。時々、伸びすぎたときに、根元が凄く痛くって、最近親指でキーを押してます(笑)。親指でカタカタって。浅いキーボードならいいんですけど、私のはがっつり深いんで。しかも叩きすぎてて壊れ始めてて、うまく刺さってくれないんですよね。爪で押すから文字が削れちゃってて、タイピングミスが物凄く多いんですよ。「い」と「お」が逆になっちゃったりしていて。だからそれでミスが多くて誤字脱字が多かったりっていうのはありますね。

上村:そんな苦労もされて『ナンバカ』を作ってくださっているんですね(笑)。

双又:3巻が発売するときにネイルも変えようかと思っているんです。今はウノのカラーになっていて、その前はジューゴにしていました。だから次はまた3巻に合わせて変えるつもりです。

──先生の爪にも期待ですね(笑)。では最後に、アニメの放送を楽しみにしている皆さんにメッセージを頂こうかなと思います。

双又:アニメでは、マンガで伝わらない部分やマンガでは表現できない部分を表現してもらっています。終始マンガのテンションそのままなので、そのテンションでずっとアニメを見てもらいたいですね。

急に展開が変わるところも見てほしいし、新しいことやり始めるところも見てほしい。アニメを派手に作ってもらったので、こんなに騒がしくて、キラキラしているアニメは他にない、っていうところも見て欲しいです。他のアニメとはちょっと違うところを少しでも感じてもらえたらそれだけで嬉しいです。

上村:『ナンバカ』がアニメ化しますよって発表してからいろんな情報を出してきて、ようやくアニメをお届けすることができます。僕たちとしては、アニメは始まってないけど始まってるくらいのテンションでいつも思いっきり現場に臨ませてもらっています。キャストさんもいろんな方がいらっしゃって、声優の仕事が初めての方もいらっしゃいますし、新人の方からベテランの方まで、本当にたくさんの方が参加されています。そこで生まれる空気感が『ナンバカ』でしか出せませんし、すごく作品に現れているなって思います。

アニメでは原作の画の感じをより表現していますし、そこに僕たちは声と命を吹き込んでいるので、楽しんでいただける作品になっていると思います。ファンの皆様からの声もたくさんあって、楽しみにしてくださってる方がたくさんいらっしゃるので、是非、思いっきり、キャストと同じくらいのテンションで、皆さんにも楽しんでいただければと思います。


──ありがとうございました!

[インタビュー/石橋悠]

■ TVアニメ『ナンバカ』作品情報

10月4日から放送スタート!

◆放送情報
MBS 10月4日スタート 毎週火曜日27;00~
TOKYO MX 10月5日スタート 毎週水曜日 23:30 ~
BS11 10月6日スタート 毎週木曜日27;00~
※放送は都合により変更されることがあります。

◆スタッフ
原作:双又翔(comico連載)
監督:高松信司(『銀魂』ほか)
シリーズ構成:広田光毅(『新テニスの王子様』ほか)
キャラクターデザイン:戸谷賢都
音楽:藤澤健至
アニメーション制作:サテライト



◆キャスト
ジューゴ:上村祐翔
ウノ:柿原徹也
ロック:汐崎アイル
ニコ:小林大紀
九十九:豊永利行
ムサシ:細谷佳正
リャン:藤原祐規
ウパ:小林ゆう
チィー:大河元気
トロワ:安達勇人
ハニー:光富崇雄
双六 一:関 智一
百式百子:明坂聡美
一声三鶴:津田健次郎
三葉キジ:Kimeru
四桜犬士郎:山本匠馬
悟空猿門:保志総一朗
五代大和:武内駿輔
七夕星太郎:奥山敬人
双六仁志:筆村栄心


>>TVアニメ『ナンバカ』公式サイト
>>TVアニメ『ナンバカ』公式Twitter

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