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キュアモフルンは、初のズボン着用プリキュア!? その理由はなぜ?

キュアモフルンは、初のズボン着用プリキュア!? その理由はなぜ? 『映画魔法つかいプリキュア!奇跡の変身!キュアモフルン!』田中裕太監督インタビュー【前編】

 100年に一度、どんな願いも叶えてくれる《願いの石》に選ばれたモフルンが、まさかまさかのプリキュアに大変身! 『映画魔法つかいプリキュア! 奇跡の変身!キュアモフルン!』が、10月29日より全国で公開を迎えます(短編『キュアミラクルとモフルンの魔法レッスン!』との2本立て)。

 「キュアモフルン」のインパクトはもちろん、スタッフの布陣でも話題の本作。田中裕太監督を筆頭に、脚本の田中仁さん、そして神木優プロデューサーという、昨年放送のテレビシリーズ『Go!プリンセスプリキュア』の中心メンバーが再集結しています!

 『Go!プリンセスプリキュア』のスタッフが、『魔法つかいプリキュア!』で映画を作ると、いったいどんな作品になるのか。田中裕太監督へのインタビューを、ネタバレなしの【前編】と、ネタバレありの【後編】の2記事でお届けします。【前編】では、キュアモフルンのデザインや演技などについて語っていただきました。

▲画像右、田中裕太監督による自画像

▲画像右、田中裕太監督による自画像

 

妖精がプリキュアになるのは、そんなに珍しいことではない

――『Go!プリンセスプリキュア』(以下『ゴープリ』)を終えられてすぐの今作で、田中さんが監督を担当されることに驚いたファンも多いかと思います。

田中裕太監督(以下、田中):まさか、テレビシリーズが終わってすぐに、監督の話が来るとは思っていなかったです。時期的には、『ゴープリ』の終盤ごろに、なんとなく神木さんから話をされた気がします。(『ゴープリ』が)無事に完結するまであまり聞かないでおこう……と思っていたんですが、最終回が終わってしばらく休んでいたら、いつの間にかやることになっていて(笑)。とはいえ、プリキュアの秋の劇場版は一度やってみたいと思っていたので、じゃあやるか、と引き受けさせていただきました。

――田中裕太監督、神木プロデューサー、脚本の田中仁さんという、『ゴープリ』のスタッフ布陣になっている点も注目を集めています。田中さんが監督に決まって、そこから田中仁さんにお話を?

田中:そうですね。神木さん的にも(田中)仁さんでいきたいという意向があり、全く異存はありませんでした。一年間いっしょにテレビシリーズを作ったので、やりやすいですしね。

――田中監督にお話が来た段階では、モフルンがプリキュアになることは決まっていたのでしょうか?

田中:企画段階で決まっていました。「モフルンがプリキュアになります」と言われて、「はぁ……そうですか」という感じで(笑)。モフルンがすごく人気だということで、「プリキュアになる」というキャッチーなところを劇場版に持ってくるのは、当たり前といえば当たり前の判断だと思いました。妖精がプリキュアになるというのも、そんなに珍しいことではないですしね。「あぁ、そういう手でいくのね。ほうほう」と(笑)。


――ただ、そこから実際にやるのは簡単ではない……のでしょうか?

田中:やはりプリキュアが一人増えるというのは、けっこう労力がかかるんです。まずは何よりもデザインがかなり大変ですし、その変身までの物語やシチュエーションも納得できるものにする必要がありますからそう簡単にはいかない。新キャラならまだしもレギュラーの妖精が変身するわけだし……などと、本格的に動き出す前からぼんやりと思っていましたね。


――妖精がプリキュアに変身するケースとしては、これまでにミルキィローズ(*1)やキュアビート(*2)などがありました。それらを何か踏襲したり、あるいは外したりと、絡めて考えるようなこともあったのでしょうか?

田中:基本的には考えていません。「プリキュア」のメイン視聴者層の子どもたちは、だいたい3年くらいで卒業するということで、毎年視聴者が入れ替わっているという前提があるんです。『ゴープリ』の時もそうですが、1シリーズ前、2シリーズ前あたりの直近の作品との差別化は考えますが、それ以前の作品はもう、それほど気にしなくてもいいかなと思っています。ミルキィローズやキュアビートくらいになってくると、おそらく今のメイン視聴者層の子たちはあまり詳しくは知らないかなと。3~4年空いていれば大丈夫だろう、というのが僕の中のセーフラインです(笑)。

*1 『Yes!プリキュア5GoGo!』(07~08年)に登場。妖精・ミルクが、美々野くるみに変身し、さらにミルキィローズに変身している。CVは仙台エリさん。

*2 『スイートプリキュア♪』(11~12年)に登場。元は妖精・セイレーンだった黒川エレンが、キュアビートに変身している。CVは、豊口めぐみさん。

 
初めてのスカートではないプリキュアに

――「モフルンって女の子だったんだ!」とビックリしたファンも多かったと思うのですが、スタッフ間でそのあたりの議論はありましたか?

田中:モフルンに性別はないという設定をテレビシリーズのスタッフが共有していたので、そのまま引き継いだかたちです。「性別=モフルン」と言われているので、それほど気にせず作っていきました。スカートではなくズボンを履いているのもそのイメージにうまくはまった感じですね。おそらく、初のスカートじゃないプリキュアですよね。いちおうスカートっぽい飾りは付いていますけど、その下のかぼちゃパンツがメインになっています


――モフルンには性別がないということで、あまり女の子女の子しないようにデザインをしていった?

田中:キュアモフルンは劇場限定プリキュアということで、企画の段階ではグッズが発売される予定がないと聞いていたんです。商品化がないので、ある程度こちらの裁量で作って良いということだったんですね。それで割と自由に作らせてもらいました。まぁ、そのあと気がついたらいつの間にか発売されることになっていたんですけど(笑)。キュアモフルンをデザインする上で、特に何をやっちゃダメ、といったことはなかったです。


――顔を見てみると、パーツひとつひとつがモフルンのままですよね。メインキャストのみなさんも、キュアモフルンのビジュアルを初めて見たときに、「これ完全にモフルンだ!」と思ったそうです。

田中:それはうれしいですね。目に関して言うと、やっぱりモフルンのままでいこうと思いました。耳や尻尾もそうですね。ラフをゴリゴリ書いていたら、無意識のうちにこんな感じになってました。全体的に、モフルンらしいモフモフ感は意識しています。

――髪の毛に隠れて人間の耳は見えませんが、おそらく無いのでしょうか?

田中:それは~、わからないですねぇ(笑)。獣人……いや(笑)、この手のキャラクターによくありがちですけど、そこは見せないということで。耳はあくまでクマ耳ですね。一番さいしょのラフから、人間の耳は描いてなかった気がします。


――モフルンから、人間を経てキュアモフルンになる、という選択肢もあったのでしょうか?

田中:キュアモフルンというのが前提にあったので、人間形態を作ることはあまり考えませんでした。自分の頭の中では、まずモフルンの人間形態を想像して、そこからちょっと年齢を上げて……というステップでラフを書いていきましたけれど。シナリオを作る上で必要になったなら、人間形態を出す可能性もあったかもしれません。結果的に、「ワープ進化」(*3)になりましたね(笑)。

*3 「デジモン」シリーズでの、デジタルモンスターの進化パターンのひとつ。途中の何段階かを飛ばして、一度で最終形態に進化すること。


田中監督が手がける、プリキュアの華麗な変身シーン

――ワープ進化といえば、キュアフェリーチェの変身シーンで、生まれたばかりのはーちゃんからフェリーチェまで5段階の顔が重なっていくカットが印象的です。田中監督が絵コンテを担当されたそうですね。

田中:はーちゃんが最初の2クールで徐々に大きくなっていくということだったので、あれは入れようと思っていました。今後なにかのタイミングで小さいはーちゃんに戻ることがあるのかを三塚さん(*4)に聞いたところ、ないということなので、じゃあ変身シーンで毎週見ていただこうと(笑)。キュアフェリーチェになると、今のことは状態からも少し成長するので、その点も絡めて考えた結果です。

*4 『魔法つかいプリキュア!』のシリーズディレクター・三塚雅人さん。

――三塚SDからはどんなオーダーをいただいたのですか?

田中:モチーフが花である、ということでした。「花かぁ……去年やったなぁ」と思いつつ(笑)。さすがに1年も空いていないキュアフローラ(CV:嶋村侑)と似てしまうのは僕としてもアレだったので、どう差別化しようかと考えました。フェリーチェのデザインを見てみると、花だけではなく、蝶や草のモチーフも散りばめられていたので、僕の中では「花」だけでなく「草花」というイメージで統一して、コンテを作っていきました。

 作業する段階ではまだキャラの手がかりが少なかったので、探り探りで作ったコンテではあるんですけど、それほど修正されていないので、あれで良かった……のかな?(笑)。ただ、フェリーチェの変身バンクってすごく長いんです。いろいろ要素を詰め込んでコンテを描いてみたら、ミラクルとマジカルのバンクより10秒以上長くなってしまって。三塚さんに「これ、長いですよ」と言いつつ、第一稿を渡しました(笑)。


――はじめから長さが指定されているわけではないんですね。

田中:特にはなかったです。ただ、自分で去年やった経験上、バンクの尺はなるべく合わせたほうがきれいなので、短縮案も併せて提案しています。それを終えた段階で僕の役目は終わったんですけど、後から聞くとコンテのままフルで作っているとのことだったので、「マジか!」と思いつつ、「ありがとうございます!」という感じでした(笑)。


――ちなみに『Go!プリンセスプリキュア』の変身シーンでいうと、キュアトゥインクル(CV:山村響)が微妙に長いのでしょうか?

田中基本的にコンテ尺では、80秒くらいで3人ほぼ合わせてありました。そこから先は各アニメーターさんそれぞれの「息」みたいなものがあるので、ちょっと増減が発生するんです。特にバンクシーンを描く方となると、アレンジ色の強い方が多いので。例えばフローラでいうと、当初の僕の想定よりめちゃめちゃ短いです。逆にトゥインクルの作画を担当した板岡(錦)さんはツメツメなので、そこから少し削っています。


――フローラが両手をクロスしながら下ろしていくカットが作画段階でプラスされたそうですが、それでも総尺としては短いんですね。

田中:あれはまさに、作画の志田(直俊)さんにアレンジしていただいた部分ですね。内容は素晴らしいんですが、やはりトータル尺だとフローラだけ他の二人より短くなっていて。それでやっぱりキュアフローラの変身曲だけ長さが合わなかったのか、音楽の高木(洋)さんがいつの間にかアレンジで別バージョンを作ってくれていたんです。サントラ(*5)にも収録されている『プリキュア・プリンセスエンゲージ!~short ver. キュアフローラ edit~』がそうですね。

*5 『Go!プリンセスプリキュア オリジナル・サウンドトラック1 プリキュア・サウンド・エンゲージ!!』


――キュアモフルンにも、ミラクルたち3人のような変身シーンが?

田中:華々しい、近いものは作っています。テレビのようなフルバンクではありませんが、疑似バンクみたいな位置付けですね。


会議の末に決まった「モフモフモフルン! キュアモフルン!」

――齋藤彩夏さんが、田中監督から「キュアモフルンできるかチェック」なるものを受けたそうですが、どんなことをされたんですか?

田中:いちばん最初の予告編のアフレコをした時ですね。『まほプリ』って、フェリーチェが特に顕著ですけど、変身すると見た目の年齢も、芝居の年齢も少し上がりますよね。キュアモフルンもそのイメージでやろうと思って、ラフ段階だった設定とセリフのメモを齋藤さんに渡して、マイク前でちょっとやっていただいたんです。もう本編の脚本は上がっていたので、その中から3行くらい、アクションシーンも含めたセリフを拾ってお願いしました。


――やってみていかがでしたか?

田中:意図的に声を低くしたり、かっこよくしたりと、いろいろバランスを見ていったんですけど、最終的にはあまり変えなくていい方向に落ち着きました。性別のないのがモフルンですけど、かっこいい/凛々しい方向に演技を振っていくと、どんどん男の子になってモフルンから外れていっちゃったんです(笑)。なので意識は多少おきつつ、基本的にはいつものモフルンでいいかな、と。モフルンが戦うシチュエーションはこれまでなかったので、その意味で新しい引き出しを開けていただいた部分はあると思います。


――名乗りの「モフモフモフルン! キュアモフルン!」もやられたのでしょうか? 他の3人のプリキュアとはまた違う路線で、インパクトがありますよね。

田中:その時にもやったと思います。「モフモフモフルン! キュアモフルン!」に関しては、シナリオ打ちでいろいろ考えた末に出てきた案で。若干やけくそ気味ではありますが(笑)、割と論理的にはしっかりしているんです。フェリーチェ(「あまねく生命に祝福を、キュアフェリーチェ」)はちょっと別ですけど、ミラクルは「ふたりの奇跡! キュアミラクル!」、マジカルは「ふたりの魔法! キュアマジカル!」ですよね。それなら、モフモフのモフルンだから、「モフモフモフルン! キュアモフルン!」になるだろうと。


――ミラクルとマジカルと同じように、ちゃんと自分の説明になっているんですね(笑)

田中:僕も神木さんも仁さんも、みんな腑に落ちたので、これでいこう! と(笑)。「キュアモフルン」という名前を決める時も、いろいろ議論があって、他の可能性も模索したんですけど、結局「キュアモフルン」以外にないだろう! ということで落ち着きました(笑)。

 インタビュー【後編】では、田中監督ならではのギミック感あふれるアクションシーンや、モフルンと対をなすゲストキャラクター・クマタについてなど、<ネタバレあり>でうかがいます。映画を見た後にぜひ、チェックしてみてください!

[取材&文・小林真之輔]

『映画魔法つかいプリキュア!奇跡の変身!キュアモフルン!』 作品情報

※本作は短編と長編の2本立てとなります。
短編「キュアミラクルとモフルンの魔法レッスン!」
監督:真庭秀明
演出:日向 学

長編「奇跡の変身!キュアモフルン!」
監督:田中裕太
脚本:田中 仁
キャラクターデザイン・作画監督:上野ケン
音楽:高木 洋
美術監督:西田 渚
色彩設計:竹澤 聡
撮影監督:安西良行
製作担当:大町義則 

【ストーリー】
この秋、モフルンがプリキュアに!
わたし、朝日奈みらい!みんな、"願いの石"って知ってる?どんな願いも叶えてくれるすっごい石なの!今日はその復活をお祝いする、100年に一度の大魔法フェスティバル♪リコもはーちゃんも一緒に"願いの石"にお願いごとをしたんだけど、なんと石のちからに選ばれたのはモフルンだったの!ほんとワクワクもんだぁ!!なのに…とつぜんあらわれた謎のクマ・ダークマターに、モフルンが連れさられてしまったの!!モフルンは絶対に助けてみせる!離ればなれになっても、みんなの願いが奇跡をおこすよ!!と思ったら、え~~~!!モフルンがプリキュアになっちゃった~!?

【テーマソング】
「正しい魔法の使い方」 渡辺麻友(ソニー・ミュージックレコーズ)

【声の出演】
高橋李依、堀江由衣、早見沙織、齋藤彩夏、浪川大輔  ほか

映画魔法つかいプリキュア!製作委員会
東映アニメーション 東映 ABCアニメーション バンダイ アサツー ディ・ケイ マーベラス 木下グループ

配給:東映
>>『映画 魔法つかいプリキュア!奇跡の変身!キュアモフルン!』公式サイト

(C)2016 映画魔法つかいプリキュア!製作委員会
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