声優
羽多野渉さんが語るミニアルバムの楽曲のストーリーと聴き所

目指すは「世界を旅出来るような気分になれるアルバム」――羽多野渉さんが5周年の節目に贈るミニアルバム「キャラバンはフィリアを奏でる」を解説

 TVアニメ『ユーリ!!! on ICE』EDテーマ「You Only Live Once」を2016年11月23日にリリースし、アーティスト活動5周年記念プロジェクトも進行中の声優・羽多野渉さん。そのプロジェクトのひとつとして、5曲入りの5th Anniversaryミニアルバム「キャラバンはフィリアを奏でる」が12月21日(水)に発売されます。

 今回のアルバムでは、羽多野さんが書き下ろしたショートストーリーを基に、羽多野さんが過去歌ってきた楽曲を制作した方達に依頼し、アルバムが完成したとのこと。インタビューでは楽曲についてはもちろん、羽多野さんが描いたストーリーについてなどもお伺いしました。

 

世界を巡る5曲に込められたストーリーとは
――まず、今回の5th Anniversaryミニアルバム「キャラバンはフィリアを奏でる」はどのような経緯で出されることとなったのでしょうか。

羽多野渉さん(以下、羽多野):5周年プロジェクトで5つの事をやりたいとなった時に、ミニアルバムを入れたいっていう話が最初にありました。そして相談していく中で、5周年なので5トラックでミニアルバムを作ろうということになったんです。

その後、コンセプトを設けたアルバムにしようと決まり、今回のコンセプトは声優というお仕事をしている都合上、休みが不定期で旅行になかなか行けないということもあって、「このアルバムを聞いたら世界を旅出来るような気分になれるものが良い」と、「世界と時空を旅する」と言うテーマを提案しました。

「キャラバンはフィリアを奏でる」というタイトルも、キャラバンというのは旅をしていく隊商、フィリアは親愛という意味なので、親愛で繋がった皆で世界を旅したら面白いんじゃないかなと思って決めました。

[注釈]
フィリア……「愛」「友情」「親愛」を意味するギリシャ語。

――楽曲制作を依頼する際に、羽多野さんがショートストーリーを書いたということですが、それはなぜだったのでしょうか。

羽多野:過去に音楽活動でお世話になった作家の方々に楽曲を依頼したのですが、曲のイメージを言葉で伝えるのが難しかったんです。それで、1番分かりやすいのは何かと考えた時に、物語を用意して、そのテーマソングを作って頂くのが1番伝わりやすいんじゃないかなと思ったんです。

なので、作家さんとお会いする時に、小説と言うほど立派なものじゃないですが、ストーリーを読んで頂いて楽曲を作って頂きました。出来上がったものを聴いた時に、自分の頭の中で鳴っていた音楽を作って頂けたので嬉しかったですね。ストーリーを描くのは楽な作業では無かったのですが、楽しんでやらせて頂いて、そこで作家さんとのひとつのコラボレーションができたかなと思います。

――ショートストーリーを考えるのはなかなか難しい作業ですよね。

羽多野:妄想したり、想像したりするのは昔から大好きだったんですけど、それを文字で表現するっていうのは難しかったですね。1回書いても次の日の朝に読み返してみると「駄目だな。書き直そう」ということの連続でした。でも、作詞家や作曲家の方々が意図を汲み取って下さって、何倍もお洒落な言葉で歌詞にして下さっているので、楽しめると思います。

――アルバムに収録される5つの楽曲ですが、それぞれショートストーリーで描かれたストーリーと合わせて、楽曲を聴いた時の印象についてご紹介頂けますか。まずは1曲目の“流転流浪”はいかがですか。

羽多野:“流転流浪”は旅のスタートで、日本を出発してアジア大陸に渡って旅人が朽ち果てた古代遺跡の記憶に触れるというのをテーマに作って頂きました。ストーリーは古代遺跡が栄えていた時代のお姫様と従者の切ない恋のお話を描きました。

楽曲では僕のデビューシングルである「はじまりの日に」を作って下さった山下洋介さんに「アジア大陸で使われている楽器を入れて下さい」と頼んだら、二胡という楽器を使って下さいまして、それが凄く切ない響きで壮大な楽曲になりました。

――続いて“リトル・レジスタンス”はいかがでしたか。

羽多野:“リトル・レジスタンス”はアジア大陸からシルクロードを通って、ヨーロッパのとある森をイメージした楽曲です。森の中というと子供たちが秘密基地を作って遊ぶというイメージがあって、自分自身の子供時代を回想するという楽曲になっています。アコースティックなサウンドで温かみのある曲になって、歌い方も若さを意識して歌いました。

――3曲目の“Never be too late”はいかがですか。

羽多野:“Never be too late”は大西洋を渡った先のアメリカ大陸でのお話です。アメリカ大陸の文化や人種が混在しているようなイメージで音楽にも色々な要素を混ぜようとクラップや、ジャズっぽいピアノなどを混ぜて頂きました。

制作して頂いたのは「覚醒のAir」(TVアニメ『Dance with Devils』オープニングテーマ)を制作していただいたElements Gardenの藤田淳平さんで、『Dance with Devils』の関連曲はクールでカッコいい曲が多かったのに対して、“Never be too late”は非常に明るくて前向きでダンサブルな曲で、レコーディングも終始楽しかったです。

コーラスもゴスペルのような響きのあるものにしていただいたりだとか、収録中にもアイデアを出し合ったりして、クリエイティブで面白かったです。アルバムの中でも1番盛り上がる山場になっているんじゃないかなと思います。

――和風なロックテイストの楽曲となった“明日の篝火”はいかがですか。

羽多野:“明日の篝火”はアメリカ大陸から渡って日本に帰ってきて、日本のお祭りをイメージした楽曲を作って頂きました。この楽曲は、そのお祭りが何を祀って若者たちが盛り上がっているのかという基を辿る、時空の旅がテーマになっています。ショートストーリーでは、大昔に民たちを苦しめていた妖怪と戦う男の民話みたいな形で描いて、楽曲は妖怪と男の戦いのテーマソングを作っていただこうと思いました。

アルバムに収録される曲はミドルテンポのものが多かったので、この曲ではちょっと早いテンポでロックだけど和風という依頼をしたのですが、ありがたいことに「任せて下さい」と仰って頂きました。歌詞も楽曲も素晴らしいものがあがってきて、自分も勢いのある和風な歌い方っていうのが初めてだったので、レコーディングは1番時間がかかったと思います。でも、自分の描いたストーリーに曲が付いた嬉しさがあって気合が入りましたね。

――最後に“You Only Live Once -everlasting-”はいかがですか。

羽多野:“You Only Live Once -everlasting-”の“-everlasting-”は自分で付けさせて頂いたんですけど、“You Only Live Once”は「人生は一度きり」という意味で、“everlasting”は「永遠につづく」という意味なので、繋げると矛盾してしまうんです。

でも、「人生は一度きり」という想いが親から子へ永遠に受け継がれていけば良いなと思っているんです。“You Only Live Once”は『ユーリ!!! on ICE』の為に生まれた楽曲ではあるんですが、作品から離れてもこの言葉を大切にしてもらえたら良いなという想いで“everlasting”と付けました。

この曲は歌声自体の再録などはしていないですが、エディットと呼ばれる曲を完成させるまでの工程をやり直して貰っているんです。シングルの方では氷の上とか空中での浮遊感をイメージして、声に加工をかけて機械的な声にして貰っていました。

でも、アルバムに収録されているバージョンは旅の中で見た景色や、旅の途中で感じた風の匂いとかをイメージして、歌声も生声に近い感じにしています。

こちらは是非フルサイズを聴いて確かめて頂きたいと思っていて、確信しているのは『ユーリ!!! on ICE』を観て「You Only Live Once」を好きと言って下さった方は間違いなくアルバムバージョンも気に入って頂けると思っています。

僕も楽曲が完成して聴かせてもらった時に鳥肌が立つ様な感じがして、スタッフ一同愛情をもってこの曲とまた向き合っているので、是非皆さんのお気に入りの一曲にして頂けたら嬉しいなと思います。

――依頼してあがってきた楽曲を聴いた中で、これは想像以上だったという楽曲などはありましたか?

“流転流浪”は驚きましたね。というのも、自分的には寂しげな世界の歌というイメージをしていたんです。でも、切ない歌を寂しい楽器編成で演奏すると、どこにも救いが無い感じがしますが、制作して頂いた楽曲はオーケストラだったんです。男と女という狭い世界を壮大な音楽で表現することで、かえって切なさが深まったかなと思います。

――“Never be too late”はMVも制作されていますが、出来上がった物を観た印象はいかがですか。

羽多野:楽曲とマッチしたダンサブルなものになって、自分のMVの中でも最多出演者になったんじゃないかなと思います。ダンサーさん、パフォーマーさん、エキストラさんを入れると60人くらいの出演者に出て頂きまして、賑やかなMVになりました。



――ダンスやスケートボードやバスケットなど、アメリカのストリート文化も盛り込まれた映像になっていて、そこもストーリーとリンクしているような印象を受けました。

羽多野:鮮やかなイメージがMVの中に入ったら良いなと思い、お願いをしたところ、監督さんやスタッフさんが素晴らしいロケーションを見つけて下さいました。撮影ではとにかく沢山の人数の方が必要だったので、事務所の後輩たちに声をかけさせてもらったんですが、50人以上集まるとは思っていなくて(笑)。

――出演されている方のほとんどが後輩の方なんですか。

羽多野:ダンサーさんとパフォ―マーさん以外は後輩です。踊りもカンペキに覚えてきてくれて非常にスムーズな撮影でした。みんなで笑いながら、楽しい気持ちで撮影できたのは嬉しかったです。


フォトブック撮影では富士の樹海に興奮!?
――初回生産限定盤にはフォトブックが付いてきますが、こちらにはどのような写真が収録されているんでしょうか。

羽多野:フォトブックの撮影では富士山のふもとや、樹海に行きました。カメラマンさんも仰っていたんですけど、とても日本離れした風景で少し西洋っぽさもあるんです。

撮影したのは秋の始まりくらいの時期なんですが、写真を見ると枯れているものがあったり、緑のままのものがあったり、少し悲しい雰囲気もありますね。コンセプトとしては「ここはどこで、彼は誰なんだろう」というものにしたいとカメラマンさんと相談していて、メインの黒いジャケットとストールを巻いている衣装も、何か秘密があって色々な時代を旅している旅人という設定なんです。

僕は都市伝説が大好きで、その中には未来人が現代に来たとか、現代の人がいるはずの無い過去の写真に写っているという都市伝説があって、そういう写真を目指しました。他にも、パーカーにベストを着ている写真は等身大の自分を表現していたり、ポンチョを被っているのは自分の書いたショートストーリーの中の人物を表していたりとかは、自分の中で設定として持っていました。

――アルバムの内容とリンクしている部分もあるんですか。

羽多野:神社の写真では“明日の篝火”の和風な感じを表現していたりだとか、緑豊かな場所で等身大の自分を使って“リトル・レジスタンス”の世界を描いていたりしています。“リトル・レジスタンス”の写真では、僕が子供の頃から大好きだった鉄塔をカメラマンさんが見つけて、「羽多野さん、鉄塔好きでしょ。あの中入りませんか」って言われて、まんまと入りました(笑)。

――都市伝説好きの羽多野さんにとって、樹海での撮影はいかがでしたか。

羽多野:楽しかったですね。ワクワクしました。特に写真チェックの時が楽しくて、「何か写り込んでないかな」って自分の表情そっちのけで探してました(笑)。

――そして、2016年2月7日に川崎CLUB CITTAで行われたソロライブ「Wataru Hatano Live 2016 “Synchronicity”」のDVDの発売も2017年1月25日と迫っていますが、簡単に見所などありましたら教えてください。

羽多野:当日会場に来られなかった方に観て頂きたいのはもちろんですが、舞台裏の様子などが収録されていますので、会場に来た方にも、楽屋の様子とかも楽しんで頂けるんじゃないかなと思います。それを観て「Wataru Hatano Live Tour 2017 “Live CARAVAN”」に来て頂けたら1番嬉しいなと思いますね。

――最後にアルバム全体の聞き所と合わせて、ファンの皆様へ向けてメッセージをお願い致します。

羽多野:自分にとっても、5年間応援してくださったファンの方にとってもひとつの記念になればいいなと思って制作して頂きました。羽多野渉と皆さんとを繋ぐフィリアをそのまま音楽にしてもらったという感じなので、是非楽しんで頂きたいです。これからもよろしくお願いしますという気持ちで送り出します。

[文/磯部新]

リリース情報
■『キャラバンはフィリアを奏でる』
2016年12月21日(水)発売
《CD+フォトブック》3,000円+税 EYCA-11229
《CD only》 2,500円+税 EYCA-11230

Tr.1 流転流浪 作詞:古屋 真 作曲・編曲:山下洋介
Tr.2 リトル・レジスタンス 作詞:永谷たかお、キミオ、作曲・編曲:永谷たかお
Tr.3 Never be too late 作詞: RUCCA  作曲・編曲:藤田淳平(Elements Garden)
Tr.4 明日の篝火 作詞:真崎エリカ 作曲:桑原聖(Arte Refact) 編曲:山本恭平(Arte Refact)
Tr.5 You Only Live Once -everlasting- 作詞:西寺郷太 作曲・編曲:彦田元気

これまで羽多野渉の楽曲を制作した作曲家が、“世界と時空を旅する”をテーマに、今の羽多野渉に楽曲を提供! 各楽曲のショートストーリーを自身で執筆し、それを元に、楽曲発注も羽多野自身が行った5周年にふさわしいミニアルバムです。さらに豪華版は羽多野渉初! フォトブックのついたスペシャル仕様です。

■『Wataru Hatano Live 2016 “Synchronicity” Live DVD』
2017年1月25日(水)発売
7,500円+税  EYBA-11228

<収録内容>
[本編映像]
1.オープニング
2.覚醒のAir
3.MC1
4.運命のCoda
5.Hikari
6.MC2
7.マドモ★アゼル
8.DANCE SHOW
9.Synchronic
10.Mach1.67
11.MC3
12.君はぼくが帰る場所
13.君がいるセカイ、君のいない世界。
14.あなたへ
15.MC4
16.わすれもの
17.MC5
18.I'm a Voice Actor
19.Rolling life
20.The Last Show
21.アンコールトーク
22.流星飛行
23.MC6
24.はじまりの日に
25.エンディング

[特典映像]
●アンバランスに愛して(昼の部より)
●RUNNER(昼の部より)
●約束(昼の部より)
●アンコールトーク(昼の部より)
●羽多野渉バックステージコメント 2016.2.07

2016年2月7日に川崎CLUB CITTA’で行われた「Wataru Hatano Live 2016 ”Synchronicity”」の夜の部を本編として収録! 特典として、昼の部のみで歌われた「アンバランスに愛して」、「RUNNER」、「約束」の3曲と昼の部のアンコールトークも収録します。さらに、ライブの前後で収録されたバックステージコメントは、ライブにかける羽多野渉の想いを垣間見ることの出来る、貴重な映像になっています。


>>羽多野渉オフィシャルサイト

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