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小野大輔さんも騙された『トリックスター』!【取材手帳 第12回】

小野大輔さんも騙された! TVアニメ『トリックスター』声優インタビュー【少年探偵団 取材手帳 第12回】

 2016年10月より放送がスタートしたTVアニメ『TRICKSTER -江戸川乱歩「少年探偵団」より-』(以下、トリックスター)。アニメもいよいよラストへ。相変わらず、予測不能のストーリー展開から、目が離せません。

 アニメイトタイムズでは【少年探偵団 取材手帳】と題し、声優やスタッフのインタビューを交えながら、作品の世界を深めていける連載企画が掲載中。

 連載第12回は、明智小五郎役の小野大輔さんにインタビュー。作品の見どころはもちろん、オリジナル作品ならではの役作りのお話なども語っていただきました。

 今回の連載では、驚きのコメントが飛び出すかも……。今、取材手帳の第12ページ目が開かれます。

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演じていてもイライラする!? 明智小五郎の理解不能な行動
──明智小五郎というキャラクターは、どのような人物だと思いますか?

明智小五郎役・小野大輔さん(以下、小野):江戸川乱歩原作の『少年探偵団』の中でも、明智小五郎というキャラクターは、世間一般のイメージが明確にある役柄だと思います。明智小五郎は、少年探偵団を導いてゆく存在。少年探偵団のメンバーにとっても、小説を読んでいる人にとっても、完全無欠のヒーローではないかと思っていました。なので、明智小五郎という役を任せていただけるとなった時に、すごく緊張したのを覚えていますね。


──本作で明智小五郎という人物を演じるにあたって、心がけた点がありましたら、お聞かせください。

小野:明智小五郎は、ちゃんとした大人というイメージがあったので、そこは意識しました。僕も38歳になりましたし、今作の明智小五郎も30代後半という設定になっているので、責任感や大人な部分をしっかり持って演じようと思っていたんです。でも、今作の明智小五郎は、ひと言でいうと、「ダメ人間」!

──(笑)。今回の作品はどのキャラクターもそうですよね。登場人物が全員「クズ」というのは、連載のインタビューでも度々話題に出ました。

小野:そうなんですよ。最初に持っていたイメージをいい意味で覆されました。『トリックスター』の明智小五郎は、大人に見えてその実、中身はとても自己中心的で、本当に大人になりきれていない子供の部分があったので、そういう意味では「ちゃんとしすぎない」のを心がけました。


──ちゃんとしすぎないというのも難しいですね。

小野:明智はずっと飄々としていて、何を考えているのかわからない部分があって、「この人は何に幸せを感じて生きているのか?」というのが前半から中盤にかけてはわからなかったんです。そういったことがストーリーで語られていませんし、真相に触れそうになると、すぐに彼ははぐらかすんですよ。そして、その場から去るんですよね。

第1クールの最後(11話)あたりから、花崎(花崎健介、CV:逢坂良太さん)が怪人二十面相(CV:GACKTさん)の側に行ってしまって、奪還するというストーリーがあるんです。みんなが花崎を助けようとしている中、明智は花崎に聞かれてもおかしくない状況で、「あいつはダメだ。探偵失格だ」と話をするシーンがあって、そのシーンの意図がわかんなかったんです。

「明智は何を言っているんだろう?」って……。しかも、それを花崎に聞かれちゃっているわけですよ。はっきりいって、迂闊すぎるし、それをどういう意味で言っているのか、さっぱりわからなくって……。

──確かに。

小野:スタッフさんに聞いたところ、あれ、わざと言っているわけじゃないんですって。


──そうなんですか?

小野:だから、聞かれていることを意図して、明智はあのセリフを言ったわけではなく、たまたま井上(井上了、CV: 梅原裕一郎さん)に言っていたことを花崎に聞かれていたんです。ただ、迂闊すぎるじゃないですか。あれって、言わなくていいことなんですよ。

花崎を突き放すようなことを花崎に言うならわかるんですけど、井上に言って、その場を去っていく。その後に至っては、行方をくらます。

二十面相を追って、イスタンブールへ行っていたのかな……。少年探偵団を置いて、フラフラと去っていくという流れ、そのストーリー展開は明智に対して本当にイライラしました。「何やってんの? 大人としてダメでしょう!」って……。子供を放っておいて、自分の正義感だけで、何も言わずに動いちゃっているんですよね。

明智は無言実行なんですよ。でも、事前に何も言わないし、何をしているかさっぱり見当もつかないし、最終的に人を巻き込むんですよ。


──当初抱いていた、大人としての責任感とは真逆のキャラクターですね。

小野:真逆でしたね。でもそれって、オリジナル作品の妙だと思うんです……。明智を酷評してきましたが、ここから褒めます。大丈夫です(笑)。

どんな役でも「この人は何が幸せで、何に向かって生きているのか」を決めて演じる
──オリジナル作品の妙というのは?

小野:当初は、明智は飄々としていて、周りに真意が伺えないんですが、信念を持っていて、裏では根回しをして、少年探偵団のために、人のために動いているんだろうなと思っていたんです。しかし、本当に真逆だったんです。それって、この作品の『トリックスター』(※)というタイトルに集約されていると思うんですよね。演者すら騙されてしまう。

※TRICKSTER(trickster)は日本語で、詐欺師やペテン師という意味もある。

演者としては、明智は信念を持っていて、絶対に誰も裏切らない人なんだろうなと思っていたんですけど、逆に最後までダメな人間だってことを一貫して描かれていたんですよね。

それがわかった瞬間に「えぇ!?」って思いました。僕の中にあった前半から中盤にかけてのモヤモヤは、後半で一気に晴れましたよ。「ダメな大人を演じればいいんだ」「それを裏返さなくていいんだ」って。僕は結局はいい人だったと裏返るとばかり思っていました。


──視聴者も明智を信じていたと思います。

小野:そうですよね。彼は素晴らしい大人なんだと思い込んでしまう……。だから最後に、二十面相を勧善懲悪で懲らしめて、次の世代へと渡していくんだなと思っていたんですけど、最後の最後まで自分のかっこいいところを見せて、自分がやりたいことをやって衝撃的な結末を迎えるんです……。

──これまでの明智を見てきて、この人は見ていないところで、いろいろとやってくれているんだと思っていました。演じられている小野さんご自身もいろいろな思いを持って演じられていたんですね。

小野:どんな役でもそうなんですけど、「この人は何が幸せで。何に向かって生きているのか」っていうのを決めないと僕は演技ができないんですよ。悪役には、悪役の生きる目的があるじゃないですか。お金が欲しいでもいいんですよ。お金が欲しいから、悪に手を伸ばして盗みを働くとか。でもそれって(信念と行動が)一貫しているから、わかりやすいんですよ。

例えば、蕗屋(蕗屋清二、CV:松風雅也さん)の場合だと、人を実験台にしてその反応を楽しむのが、おそらく彼にとっての快楽であり、一番の幸せだったんですよね。

でも、「明智にとっては、何が幸せなんだろう?」と疑問だったんです。僕は演者として、「人のために、生きている人なんじゃないか」と勝手に決めちゃっていたんですよね。そう思ってずっと演じてきたんですけど、全部自分のためだったんです。


──意外でしたね。

小野:意外でした。逆に、二十面相は全然ブレていないんですよ。「僕は明智くんのために全部やっている。だって、刺激が欲しいじゃない? 僕は君のことを思っているから、君のために事件を起こす。でも人は殺さない。君のために、ずっと刺激を与え続ける」というスタンス。何て一途なんだろうと思いました。

二十面相の信念と行動は、歪んでいると思います。歪んでいるけど、一貫してるなと思いましたね。どっちが正しい生き方なのかと言われたら、わかりません。

逆に明智は、人を殺めて自己中心的に自分のためだけに生きている。でも周りには飄々として、それを見せていないままずっと生きているという……。

小野さんがしびれる真のトリックスターとは?
──この取材手帳の連載で、怪人二十面相役を演じているGACKTさんにもインタビューしたんですが、「トリックスターって、誰のことなんだろうね?」っておっしゃっていたんですよ。

小野:あぁ~!


──小野さんのお話を聞いていて、その言葉を思い出しました。

小野:まさしくトリックスターは、二十面相であるとも思いますし、明智もそうだった、ということなんじゃないでしょうか。でも、僕たち演者からしてみれば、一番のトリックスターは、監督を始めとするスタッフみなさんのことだなと、今改めて思っています(笑)。


──そうでしたか(笑)。

小野:原作者のJordan森杉さん、「ジョーダン盛りすぎだよ!」って思いましたね(笑)。

──(笑)。

小野:こんな展開になるとは思いもしなかったので、「やめてぇ!」って、正直思いました(笑)。

制作している時に、演者としてわからないことはスタッフに聞くんですけど、「そこは、他意はないです。意味はそんなに深くありません」と言われるのが、けっこうあったんですよ。でも、どうしても演者としては意味をつけたくなっちゃうんですよ。「何で、このセリフを言ってるんだろう?」って。

例えば、先ほどの話しに戻りますが、「これ、明智は花崎に聞かれているのに、気づいていますか?」って聞いたら、「全然気づいていません」とサラリと答えられたりしました。でもその時に、不可解だったんですよね。「じゃあ、何を意図して、このセリフを言っているんだろう?」って。

実はそういうシーンがいっぱいあるんです。「何でイスタンブールへ行ってんの?」とか。電話しているシーンで、女性の客室乗務員に気を取られて、電話を切るシーンがあるんですけど、誰か重要人物がいて、それを追いかけていくのかなと思ったら……、「全然他意はないです。女の子好きですから、だから気を取られています」って言われて。


──えぇ~!?

小野:僕も「えぇ~?!」って思って……。でも全部その通りなんですよ。スタッフさんも嘘をついているわけじゃなくて、深い意味は本当にないんです。僕は演者として、ミスリードをしまくりながら、その都度「意味ないです」って言われてきました。ずっと半信半疑のまま、とにかくその通りやってみようとやっていたら、最後にタネ明かしがあったという感じですね。

──最後に意外なタネ明かしがあったんですね。

小野:最後というか、奈緒ちゃん(中村奈緒CV:田所あずささん)が二十面相側に完全に囚われちゃっているというのがわかった辺りが一番わかりやすかったですね。明智がただ自分のために生きているんだと何となくわかってくるんです。奈緒ちゃんのことをすごく想っているのかなと思ったんですけど、そうじゃない。

僕は「健康ランドで待ち合わせして、休みの半日をもらったりするかな?」とか想像して、ふたりがすごく親密なイメージがありましたけどね……。


──以前、中村さん役の田所あずささんにお話をうかがった時に、明智と中村さんは親密なイメージを持っているとお話されていました。

小野:田所さんから「これ、明智とどうなるんですかね?」って聞かれて、「わかんないんだよね。俺も」と答えていました。「ふたりが親密だったら、そういうお芝居も乗せられるし、その方が関係性としては面白いよね」と話していたんですけど、何のことはない、ただのビジネスパートナーだったっていうことですよね。

──そんなぁ~。

小野:でも、そうですよね? 奈緒ちゃんが二十面相に操られていたとわかった時点で、もしそうなら、もっと怒るはずなんですよ。

二十面相への怒りはありつつも、自分に刺激を与えてくれていることの喜びさえもあるのかなと思っています。だから、二十面相をいつでも殺せたはずなのに殺さない。

僕はもう殺しちゃえばいいのにって思っていたんですよ(笑)。明智はその気になれば、第1話の二十面相が作業員に化けているあの時点で殺せたはずなんです。でもずっと二十面相を殺さないで、追いかけるのは、例えば、トムとジェリー、ルパンと銭形みたいな関係性ですよね。追いかけているけど、捕まえちゃったら終わっちゃう。その状況を楽しんでいる感じがしましたね。


──お話を聞いて、誰よりも明智を想っている二十面相の言っていること、刺激が欲しいと言っているその言葉が正しかったんだと思いました。

小野:二十面相って、純粋なただのいいヤツなのかもしれませんね(笑)。やり方が間違っているだけで、全て明智のために行動している。

明智が抗わずに受け止めてあげているか、逆に「俺は刺激はいらない。もうやめろ。もうこれ以上、刺激を与えるために他の人を傷つけるんだったら、お前を殺す」って言えば決着がつくんですよ。そうすればいいのに、しないんです。それって、もう確実に「もっと刺激をちょうだい」って言っているのと同じですよね。

僕は、明智が抗っている時は、本当に抗っていると思っていたんですよ。でも今考えると、抗いながらも「うわぁ~、やめろ~! もっとちょうだい!」って思っていたんだなと(笑)。


──演者にもそんなふうに思わせるのは、すごいですよね。

小野:でも今思うと、こうやって収録がすべて終わった後にしゃべれると、すごくスッキリします。逆に、途中の取材が大変でした。明智が何を考えているか、手探り状態でしたから(笑)。

キャストの間でも人気! パンチの効いたキャラクター・中村さん 
──田所さんにお話を聞いた時は、中村さんと明智がうまくいってほしいともおっしゃっていました。

小野:そうそう! キャストでそういう話をしていました。そうなった方が、キャラクターが幸せだなって思っていたんですよ。でも結果、奈緒ちゃんは逮捕されて、拘留されてしまう。


──中村さんは重要なポイントで活躍しているのが特徴的でした。

小野:しかも、キャラクターデザインのPEACH-PITさんが描いたかわいい感じに反して、年齢的に30歳っていう……。


──そのお話はこれまでの取材手帳でも話題になりました(笑)。

小野:あれくらいパンチの効いたキャラクターって、昨今なかなかいない気がするんですよ。めっちゃかわいいですよね。どのキャラクターよりも頬がピンク色で、萌え系なんですよね。

そんなキャラクターだけど、キャリア組。周りのノンキャリから煙たがられていて、でも部下には慕われていたり、上司には疎まれていたりする。相当アクが強いキャラクターだと思うので、そんなキャラクターが一瞬にして、フェードアウトしていくっていうのは、ショッキングすぎて……(笑)。

──しかも、明智の元・恋人である文代さん(CV:堀江由衣さん)と中村さんは、どことなく、似た面影があって……。明智と中村さんはそういうこともあって、仲がいいと推測していました。

小野:僕も正直途中までそう思っていたんですけど、やっぱりそうじゃなかったんだということも衝撃的でした。


──いい意味で裏切られたんですね。

小野:全部そうなんです。裏腹なんですよ。演者が「こうなったらいいんじゃないかな」と思っていたことは全部外れているんじゃないですかね(笑)。

この連載でも、他のキャストが「こうなったらいいんですけど、わからないんですよね」って言っていたと思うんですよね。でもほとんどがその逆になっている。

結果、描かれていたのは、全部シンプルにキャラクターのそのままの姿を描いていただけなんです。演者含めて観ている人みんながミスリードしていたってことですよね。

だから22話まで観てきていて、さらに、これからもっと最終話に向けて、観る方は絶対に騙されますよ(笑)。

小野さんが語る今後の注目ポイント
──作品について、今後の見どころや小野さんが注目してほしいポイントを教えてください。

小野:コンビっていうのは、今作のテーマとしては大切で、魅力的な要素だと思っています。明智と二十面相はもちろんのこと、小林と花崎の関係性も気になります。僕は「明智と二十面相」=「花崎と小林」だと思っているんです。明智が花崎であり、二十面相が小林。二十面相と小林はギフトつながりでもありますし。でも、ギフトに関して、全く説明はないんですけどね……(笑)。


──そうなんですよね(笑)。

小野:言葉から察するに、生まれながらに持ってしまっていた能力で、振り回される人もいれば、それを利用する人もいる。その中で、二十面相も自分の持っている能力に振り回された少年期もあった上で、今の性格付けになっているのかなと思っています。

明智と出会ったことによって、ギフトの使い方をみつけるんです。ギフトとは人をキスすることによって操る能力。「何に使う? 明智くんに刺激を与えるために使おう」と思ったんでしょう……。だから、ギフトを持った上で、生きていく意味がそこで生まれて、明智に執着し始めると思うんです。

小林は死にたいと思うと、生きてしまうという能力が発動してしまう。その能力をなくしたいと思っているんですが、花崎と出会うことによって、自分のギフトを受け入れ始める。小林は生きたいと思えば思うほど、その能力が少なくなっていくことを無意識的にも、意識的にも、花崎のおかげでわかってきて、生きる目的をみつけていくという流れがありますよね。

ボーイ・ミーツ・ガールではないですけど、それぞれのコンビの関係性は、人と人の出会いが人を変えるっていうことの象徴だと思うんです。作品を観ていて、人はひとりで生きてはいけないなと思うんですよね。

僕らも日常生活に照らし合わせればこういうことってありますよね。この人がいてくれたから救われたっていうのは誰しもがある経験だと思います。特に、井上と勝田の関係性もそうです。

──井上と勝田のコンビもいいですね。

小野:井上と勝田は、ひとりだと絶対に生きていけない人だと思うので、お互いに足りないものを支え合っているのが見えます。


──大友(大友久、CV:古川慎さん)と山根(山根たすく、CV:山谷祥生さん)もそうですね。

小野:大友と山根は、オープニングが印象的ですね。

話しは変わりますが、大友のしゃべり方ってすごいですよね。「大友、何でそんなしゃべり方すんの?」っていつも思っていました……(笑)。


──(笑)。

小野:セリフの尺やしゃべり方が、もうすでに決められているので、やらざるを得ない部分もあるんですが、癖をつけてしゃべればしゃべるほど、大友の真意がわからなくなっています。大友って、たぶん1回も自分の心の中のことを言ってないですよね。

──そうかもしれませんね。

小野:(大友の口調で)「明智嫌いだし、何であんなヤツの手助けしなきゃいけないの?」っていうようなことを言うじゃないですか。


──(笑)。

小野:でも、ここまでくると、あれは本心を全部言っていたんじゃないかなって思うんです。含んで言っているように聞こえますけど、あれも全部そのまま本心を言っていただけなんだって思ったら……。


──そうかもしれません。

小野:(大友の口調で)「面倒くさい~」みたいな感じで、「手助けするのも面倒くさい」、「明智に手を貸すのも面倒くさい」って言いながら、本心では明智のことを尊敬しているとか、明智のことを思っていて、優しい気持ちがあるのかなと思っていたんですけど、別になさそうなんですよね(笑)。

逆に「明智のことは嫌いだけど、少年探偵団のみんなのことは好きだ」って言ってるんです。これもそのまんまで、「あ~、いいヤツだ。こいつ!」って気づきました。「別に明智のことは、何とも思ってないけど、俺の友達が必死になって戦ってるとか、困ってるんだったら、じゃあ助けるよ」と言っているところはすごくかっこいいなと、いいキャラだなと思いました。

──大友のコンビである山根に関しては、14話のお当番回が、キャストさんたちからも人気がありました。

小野:僕は山根と大友を見て、「何で少年探偵団にいるのかな?」と最初は思っていたんですが、今は「なるほどな」と思っています。やはり彼らは、彼らどうしで足りないものを補い合っていて、大友の素直に出せない気持ちを、山根が大きく表現することで、バランスを取っているんですよ。


──ふたりが一緒にいるのがわかりますよね。

小野:そうなんです。そうなってくると、特殊なのが野呂ちゃん(野呂誠、CV:木戸衣吹さん)ですよね。野呂ちゃんにとっては、ずっと相手がいるようで、いない気がするんです。彼女は、スタンドアローンなんです。ひとりで何でもできちゃう、完璧少女です。

頭もいいし、ルームトレーナーで鍛えているから体力もある。作品に、「この子、ちゃんとしてる」っていう描写がたくさん出てくるんですよ。栄養も取っているし。

全てにおいて、野呂ちゃんは完璧な女の子なんですよ。彼女にとって、「パートナー的な存在、足りないものを補う存在って誰なのかな?」って思っていたんですけど、花崎や小林とのやりとりを見ていると、この子はもう全方向に愛を持っていて、みんなのことを見ているお母さんみたいな存在だと感じました。


──お母さんですか。

小野:そう思ったら、また完璧な要素が増えちゃったんですけどね(笑)。司令塔として、探偵団のみんなに見えてないところが野呂ちゃんには見えていて、核心に触れた指摘を背に受けてメンバーは突っ走っていく。彼女にとってのパートナーとは、少年探偵団のみんなのことなんじゃないかと思います。

あの不愛想であまりしゃべらない寡黙な男・勝田ですら、野呂ちゃんとは意思疎通しているんですよ。勝田が作ったご飯はおいしい、と野呂ちゃんが評するシーンがありましたよね。

手料理を食べるって、もう家族じゃないですか。彼女にとっての少年探偵団って、家族なんだなと思いますし、そこもひとりじゃ生きていけないという象徴だなと思いました。そういう友情であったり、愛情であったりを、それぞれのコンビから感じていただけると、作品の観方としては一番幸せなんじゃないかなと思います。

肩肘張らずに楽しめるドラマCD
──そんな本編とは一転、ドラマCDはだいぶコミカルな内容になっていますね。

小野:本編からは逸脱して、ナンセンスな事柄を面白おかしくしていくドラマCDになっています。中身に関して言うと、中身はないです(笑)。


──(笑)。

小野:オリジナル作品で2クールのアニメをやっていくということは、演者の僕らにとっても本当に試行錯誤の日々でした。だからこそ、本編のアニメを収録している時は、僕らも考えることが多いし、ミスリードも多いんです。その都度、スタッフと打ち合わせをして、すり合わせて、時間をかけて、考えて作ってきた部分がありました。それを踏まえて言うと、やっぱりドラマCDの内容は何もないです(笑)。

──(笑)。

小野:僕らがスタッフさんと一緒に構築していったキャラクターで遊ぶというドラマCDになっているので、あんまり肩肘張らずに、キャラクターのこともそんなに深く考えずに聴いていただいた方が楽しめると思いますね。

それから、GACKTさんと一緒に収録ができたというのがすごく楽しかったですね。


──GACKTさんと共演されていかがでしたか?

小野:いい匂いがしました(笑)。


──(笑)。

小野:GACKTさんについて、みなさんそうおっしゃいますよね(笑)。最初にお会いした時に、まず固い握手をしていただいて、「一緒に面白いものを作りましょう」って言ってくださいました。

収録中に誰よりも面白いことをしかけていたのはGACKTさんだったと思うんですよ。おばあちゃん役やチャラ男役を演じたりとか、全くおちゃらけたドラマCDなんですけど……(笑)。そういうものにも、すごく真摯に役作りや演技プランを練って取り組んでくださっていて、現場で大笑いしながらも、役者冥利に尽きるなと思いました。

GACKTさんはすごく声優をリスペクトしてくださっていて、声優に真摯に取り組んでくださっている姿がすごく印象的でした。あと、フリートークも面白かったです(笑)。

──こちらも楽しみですね(笑)。では最後に、ラストスパートを楽しみにしているみなさんへメッセージをお願いします。

小野:オリジナル作品に取り組むということで、これまで若いキャスト陣が試行錯誤を繰り返し、もがきながら、この作品に取り組んできました。その集大成として、小林と花崎を始めとするメンバーみんなが熱量を全て込めて演じて、『トリックスター』という文字通りのエンディングを迎えるために魂を込めています。

見届けていただければ、『トリックスター』というタイトルの意味がわかっていただけると思いますし、僕個人としても、演者としても、オリジナル作品2クールをしっかりと全うすることができたと思っております。

若いキャストたちの役に込めた魂や生き様を最後まで見届けていただけたら嬉しく思います。


──ありがとうございました。

[取材・文/宋 莉淑(ソン・リスク)]


TVアニメ『TRICKSTER -江戸川乱歩「少年探偵団」より-』作品情報
<放送情報>
TOKYO MXほかにて第2クール好評放送中!
TOKYO MX:毎週月曜25:05~
読売テレビ:毎週月曜25:59~
BS11:毎週火曜25:30~
※放送時間は予定です。変更になる場合がございますので、予めご了承ください。

<あらすじ>
彼は死ぬために、探偵の道を選ぶ……
時は2030年代。謎の探偵、明智小五郎の下に集う『少年探偵団』。
彼らは大小様々な事件を持ち前の行動力で解決に導いてきた。
ある日、メンバーの花崎健介は謎の少年、小林芳雄と出会う。
『正体不明の靄(もや)』により「死ねない」身体となってしまった小林は、自身の死を望み、他人との接触を拒んでいた。
そんな彼の存在に興味を抱いた花崎は「『少年探偵団』へ入らないか」と持ちかける・・・
小林と花崎。彼らの出会いはやがて、世紀の犯罪者である怪人二十面相と明智小五郎の因縁と絡み合い、
二人の運命を動かしていく・・・

<STAFF>
監督:向井雅浩
脚本・シリーズ構成:吉田恵里香
キャラクターデザイン:PEACH-PIT
アニメーションキャラクターデザイン:ヤマダシンヤ
音楽:林ゆうき
アニメーション制作:トムス・エンタテインメント、シンエイ動画
OP主題歌:田所あずさ「運命ジレンマ」
ED主題歌: GACKT「罪の継承~ORIGINAL SIN~」

<CAST>
小林 芳雄:山下大輝
花崎 健介:逢坂良太
井上 了:梅原裕一郎
野呂 誠:木戸衣吹
勝田雅治:増元拓也
大友 久:古川慎
山根たすく:山谷祥生
中村奈緒:田所あずさ
明智小五郎:小野大輔
怪人二十面相:GACKT ほか

>>『TRICKSTER -江戸川乱歩「少年探偵団」より-』公式サイト
>>『TRICKSTER -江戸川乱歩「少年探偵団」より-』公式ツイッター(@trickster_anime)

(C)Jordan森杉 / TRICKSTER製作委員会
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