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『劇場版SAO』伊藤智彦監督の公式インタビュー到着

『劇場版ソードアート・オンライン』伊藤智彦監督は、オリジナルキャラ・エイジに共感していた!? 『君の名は。』ヒットについてもコメント

 現在大ヒット公開中のアニメ映画『劇場版 ソードアート・オンライン -オーディナル・スケール-』の観客動員数140万人、興行収入20億円突破を記念して、TVシリーズに続いて本作を監督した伊藤智彦氏への公式インタビューが公開されました!

 “なぜ『ソードアート・オンライン』(略称SAO)は多くの人を魅了するのか”“映画『君の名は。』ヒットに沸く日本のアニメ業界の今後について”“細田守監督から学んだ教え”などなど、ここだけのお話が語られています。早速ご紹介しましょう。

 本作は、第15回電撃小説大賞<大賞>を受賞した川原礫氏による小説『ソードアート・オンライン』の劇場アニメ化作品。今作では、AR空間を舞台に主人公キリトとアスナの活躍を描く完全オリジナルストーリーとして展開しています。2月18日(土)に全国公開して以降、まだまだ快進撃は止まりそうもありません。

「ソードアート・オンライン」の世界はいずれ実現する?
──今映画は、テレビアニメ「ソードアート・オンラインII」の後の世界を描いたものですが、映画から入っても楽しめますか?

伊藤智彦監督(以下、伊藤監督):「主人公としてキリトとアスナがいること」「舞台がゲームの世界であること」「キリトがゲーム内でものすごく強いってこと」の3つが分かっていれば大丈夫です。

──アニメや小説の世界観を知らずとも楽しめる?

伊藤監督:もちろん知っていればより楽しめますが。作品を知らなくても面白かった、という声もよく聞くんですよ。そこからハマって、じゃあDVDや過去シリーズも見てみようって流れになればいいなって。

──これまで「ソードアート・オンライン」は、VR(仮想現実)のお話でした。映画ではそちらではなくAR(拡張現実)を扱っていますね。

伊藤監督:はい。最初に原作者の川原 礫さんが『今回はARをやりましょう』と宣言をしたことで決まりました。聞いたときは『VRより技術的に後退しているのでは?』とスタッフもざわつきましたが。

──確かに一般的にVRの方が手間のかかる印象を受けます。

伊藤監督:物語でのVRは、ユーザーの意識をゲーム内に飛ばす夢の技術です。それに対して現実をベースにしたARは『地味なんじゃないか』『実際に体を動かすんでしょ?話として無理があるのでは』と、みんな気にしていました。でも、「ポケモンGO」の事例を見ると意外といけるのかも、と途中で心変わりしましたね。川原 礫さんは時代を見通す目を持っているな、と(笑)

▲ARの世界に入るキリトとアスナ

▲ARの世界に入るキリトとアスナ

──PlayStation(R)VRの出現やスマートフォン技術が進歩するなか、いずれ「ソードアート・オンライン」の世界は現実化すると思いますか?

伊藤監督:なくはない、と思います。いろいろと法整備などが必要になるでしょうけど。むしろなったらいいな、という側面も作品には込められているので。

──ARを映像表現するにあたって大変だった点はありますか?

伊藤監督:ARは表現としていくらでも地味にはできるんですよ。単純に物体の上にウィンドウ表示をつければ、それでARでござい、ということになってしまうので。地味にならないためにはどうするか、その点には苦労しました。そこで、街の背景を塗り替えるなどインパクトのある表現も使うように心がけましたね。

10億円突破が目的じゃない。伊藤監督の達成目標は……
──今作は映画初監督ながら、すでに興行成績13億円を突破する好成績です。今の率直なお気持ちは?(注釈:取材日時点)

伊藤監督:うれしいというよりホッとしている気持ちが大きいですかね。諸手を挙げてヤッター!というのも違うんですよ。10億円を突破することが自分の達成ポイントではないので。まず、しっかりと作品を完成させるのが第一。次にばく然と、みんなに見てもらえるといいな、といった気持ちでした。

──では、監督としてヤッター!ポイントはどこなのでしょうか?

伊藤監督:作ったスタッフが満足してくれたことでしょうかね。作り終わってから『面白くないっすよ。お酒が進まない』って感じだったら俺も落ち込みますよね。スタッフみんなから、良かったですって言われるのが自分の目標でした。

──今作を制作するうえで意識した作品はありますか?

伊藤監督:「君の名は。」の名前を出させようとしてません?(一同爆笑) 制作中に公開されたので見ましたけどね。どちらかというと「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」や、『アベンジャーズ』などのマーベルものですかね意識したのは。そうした作品は、大量に出るキャラクターをいかにさばくかも大事じゃないですか? 今回の映画では多くのキャラが動き回るので参考になりましたね

「君の名は。」を見て感じたこと「こういうのがいいんだ」
──「君の名は。」の話が出たのでお聞きしたいのですが、ご覧になっていかがでした?

伊藤監督:今の若い人たちはこういうのがいいんだな、と。時代の傾向として、理詰めよりは感情優先のものをみんな見たがっているんだろうと感じました。

──今作にその影響はありましたか?

伊藤監督:いえ。特にかじを切りかえることはしなかったですけど。無理に理詰めにこだわるより、感情を解放して楽しむことが、今の時代は大切なのだと知りましたね。

──しかし「君の名は。」は一部の評論家に理論的でないと口撃されてはいましたね。

伊藤監督:もちろん何割かの理屈は必要です。でも、その理をあえて抑えて感情を優先させるポイントがあるんじゃないかなって。できるなら俺は理のパーセンテージを高く持ちたいですが。

──なるほど。

伊藤監督:今後は『君の名は。』のヒットを受けて、そのプロットにのっとった劇場オリジナル作品がどんどん生まれてくると思います。。ただ、個人的にはあまりそうしたことに左右されずに細々と仕事を続けていきたいですね。

劇中で好きな意外キャラ「キリトくんよりよっぽど好きです」
──監督から見た今作の注目点は?

伊藤監督:アクションシーンです。MX4D(TM)などに限らず、劇場用に最適化された画と音にこだわりました。家庭環境では味わえない体験ができると思います。具体的にはラストバトルに注目してほしいですね。もう目を閉じることは許されない。まばたきするとカットに追い抜かれるというか。そこは目をかっぽじって見てほしいです。

▲目を閉じることは許されない、劇中のアクションシーン

▲目を閉じることは許されない、劇中のアクションシーン

▲劇中のアクションシーン

▲劇中のアクションシーン

▲劇中のアクションシーン

▲劇中のアクションシーン

──作品内で監督が好きなキャラクターは誰ですか?

伊藤監督:テレビシリーズではシノンという女性キャラが好きでしたが、劇場版ではオリジナルキャラのエイジですね。主人公と対立する役ですが、こいつが情けないやつなんですよ(笑)

▲監督のお気に入りキャラ・エイジ

▲監督のお気に入りキャラ・エイジ

──情けないのに好きなんですか?

伊藤監督:例えば、彼が最初の戦闘のとき『ついてこい!』って走り出すんですけど、誰もついてこない。かわいそうなやつなんです。最初、俺は気にならなかったんですけど、あとでスタッフに『いつもここで笑っちゃう』って言われて。なるほど、結構イタい子なのかなって。俺はそういうキャラが好きで、主人公のキリトくんより親身になれますよね。奥さんにも『主人公の言っていることはよく分からなかったけど、エイジのほうが共感できる』って言われました。

──キリトよりそっちに感情移入する観客が多かったら面白いですね。

伊藤監督:若い人たちは強いキリトくん、アスナさんに共感すると思うんです。なんでもできる万能感を持った世代ですから。でも、大人は違います。

──違いますか。

伊藤監督:世代で感情移入するキャラって変わると思うんです。子どもの頃、「ファーストガンダム」を見てアムロ目線でのめり込んで、大人になって見返すとブライト艦長の中間管理職的な立場に共感するような。

──大人目線で見るとエイジに対して「分かるぞ!」って気持ちになると(笑)

伊藤監督:はい。みんながみんないい思いをできるわけじゃないぞって。つらいところを多く背負っているキャラですね。彼目線で見ると切ない話になっちゃうかもしれませんが。

「ポスト宮崎駿」細田守監督から学んだこと
──細田守監督のアニメ映画「時をかける少女」や「サマーウォーズ」では助監督を務めた伊藤さん。細田さんから学んだことは何ですか?

伊藤監督:映画に立ち向かう姿勢ですね。テレビのエピソードを抜け出したものを映画と言って作るんじゃないよ、って。それ1本で劇場に来た人を満足させるものを作らねばならない、そしてエンターテインメントでなければならない、と

──その思想は伊藤さんに受け継がれて……。

伊藤監督:受け継がれてというか、マネをしたというか(笑)。当時、適当なことを言ってよく怒られました。『お前はもうちょっと考えて作りなさい!』なんて。

ガリガリが“超強い”の矛盾……「ゲーム内の世界だから許される」
──マルチなメディア展開を見せる「ソードアート・オンライン」ですが、なぜこれほど多くの人を引きつけるのでしょう?

伊藤監督:実は俺もよく分からないんです。なんとなくですが特筆した魅力というより、ドラマ性やアクション性、舞台設定などの複合的な評価によって多くの人に受け入れられた気がします。

──これだ!って分かりやすいポイントがあるわけじゃないんですね。

伊藤監督:あえて言うなら日本のアニメって、ひ弱な体型の男性が活躍する場合が多いじゃないですか。そこに批判的な意見も多いですよね。「ソードアート・オンライン」の場合だとゲーム内の世界だから“パラメーターが高いから強い”って理由付けがなされています。この、ある種のリアリティも人気の理由かもしれませんね。これはゲーム世界の物語だからさ、っていうエクスキューズがある。

──では、この作品をどんな人に見てもらいたいですか?

伊藤監督:アニメや原作のファンはぜひ見てください(笑)。キリト、アスナのラブストーリーも見どころなので「ソードアート・オンライン」を知らないカップルで見にいくのも楽しめると思います。

▲ラブストーリーとしての一面も

▲ラブストーリーとしての一面も

──ところで今後、どんなアニメがヒットするんでしょうか?

伊藤監督:それが分かっていたらむしろ黙ってる(笑)。そんなの絶対にバラしませんよ!

『劇場版 ソードアート・オンライン –オーディナル・スケール-』作品情報
タイトル:『劇場版 ソードアート・オンライン -オーディナル・スケール-』
大ヒット上映中!
配給:アニプレックス
上映時間:119分

●イントロダクション
TVアニメ『ソードアート・オンライン』シリーズは、第15回電撃小説大賞<大賞>を受賞した川原 礫氏による小説が原作となる、謎の次世代オンラインゲーム《ソードアート・オンライン》を舞台に繰り広げられる主人公・キリトの活躍を描いた作品である。2009年4月の原作小説第1巻発売以来高い人気を誇り、日本国内での累計発行部数は1,250万部を突破(全世界1,900万部)。そして2度のTVアニメ化やゲーム化、コミカライズ、グッズ制作などを行っており、幅広くメディアミックス展開されている。そして2017年春、川原 礫氏の完全書き下ろしによる『劇場版 ソードアート・オンライン -オーディナル・スケール-』の公開が決定。世界中のファンがその日を待ち望んでいる。

●ストーリー
2022年。天才プログラマー・茅場晶彦が開発した世界初のフルダイブ専用デバイス≪ナーヴギア≫―― その革新的マシンはVR(仮想現実)世界に無限の可能性をもたらした。それから4年……。≪ナーヴギア≫の後継VRマシン≪アミュスフィア≫に対抗するように、一つの次世代ウェアラブル・マルチデバイスが発売された。≪オーグマー≫。フルダイブ機能を排除した代わりに、AR(拡張現実)機能を最大限に広げた最先端マシン。≪オーグマー≫は覚醒状態で使用することが出来る安全性と利便性から瞬く間にユーザーへ広がっていった。その爆発的な広がりを牽引したのは、、≪オーディナル・スケール(OS)≫と呼ばれる≪オーグマー≫専用ARMMO RPGだった。アスナたちもプレイするそのゲーム に、キリトも参戦しようとするが……。

●オーディナル・スケールとは
≪オーグマー≫専用ARMMO RPG。最新技術を用いた次世代的ゲームとして話題となり、発売と同時に世間を席巻した。現実世界をフィールドとして、各所に出現するアイテムの蒐集、モンスター討伐などを経てプレイヤーの≪ランク≫を上げていく。≪オーディナル・スケール(OS))の特徴はこの≪ランキング・システム)で、全てのプレイヤーのステータスは、基数(カーディナル数)ではなく序数(オーディナル数)であるランクナンバーによって決定される。ゆえに、ランク上位のプレイヤーには圧倒的な力が与えられ、ソロのPvPにおいては、ランクの順位が勝敗の大きな要因となる。

●AR(拡張現実)型情報端末《オーグマー(Augma)》とは
小型のヘッドホンのような外見の次世代ウェアラブル・マルチデバイス。そのコンパクト性はVRマシン≪アミュスフィア≫をはるかに凌駕する。フルダイブ機能の代わりに、AR(拡張現実)機能を最大限に広げた。覚醒状態の人間に視覚・聴覚・触覚情報を送り込むことが可能で、フィットネスや健康管理をゲーム感覚で楽しんでいるユーザーも増えている。

●STAFF
原作:川原 礫(「電撃文庫」刊)
原作イラスト・キャラクターデザイン原案:abec
監督:伊藤智彦
脚本:川原 礫・伊藤智彦
キャラクターデザイン・総作画監督:足立慎吾
モンスターデザイン:柳 隆太
プロップデザイン:西口智也
UIデザイン:ワツジサトシ
美術監督:長島孝幸
美術監修:竹田悠介
美術設定:塩澤良憲
色彩設計:橋本 賢
コンセプトアート:堀 壮太郎
撮影監督:脇 顯太朗
CG監督:雲藤隆太
編集:西山 茂
音響監督:岩浪美和
音楽:梶浦由記
制作:A-1 Pictures
配給:アニプレックス
製作:SAO MOVIE Project

●CAST
キリト(桐ヶ谷和人):松岡禎丞
アスナ(結城明日奈):戸松遥
ユイ:伊藤かな恵
リーファ(桐ヶ谷直葉):竹達彩奈
シリカ(綾野珪子):日高里菜
リズベット(篠崎里香):高垣彩陽
シノン(朝田詩乃):沢城みゆき
クライン(壷井遼太郎):平田広明
エギル(アンドリュー・ギルバート・ミルズ):安元洋貴
茅場晶彦:山寺宏一
ユナ:神田沙也加
エイジ:井上芳雄
重村:鹿賀丈史

●主題歌
LiSA 「Catch the Moment」

>>『劇場版 ソードアート・オンライン –オーディナル・スケール-』公式サイト
>>アニメ「ソードアート・オンライン」公式ツイッター(@sao_anime)

(C)2016 川原 礫/KADOKAWA アスキー・メディアワークス刊/SAO MOVIE Project
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