声優
『狼と香辛料』10周年記念・小清水亜美さんインタビュー【前編】

悩んだときはホロが助けてくれたーー『狼と香辛料』ホロ ウエディングドレス ver. フィギュア発売記念・小清水亜美さんインタビュー【前編】

 2006年に第1巻が刊行され、5月10日にはファン待望の19巻(『狼と香辛料XIX Spring LogII』)が刊行、TVアニメは第2期にわたって放送された『狼と香辛料』。行商人、クラフト・ロレンスの不思議な旅が描かれた本作は、多くのファンに愛されながら、10周年を迎えることになりました。

『狼と香辛料』といえば、忘れてはならないのがヒロインであるホロの存在です。「わっち」という一人称が印象的な“おいらん言葉”とキュートなビジュアル、そしてどこか秘めたものがある、まさにヒロインとしての存在感は、ロレンスだけでなく、読者と視聴者を魅了しました。

 そんなホロが、『狼と香辛料』10周年という記念で、「ホロ ウエディングドレス ver.」としてフィギュアで登場します。アニメイトタイムズでは、フィギュアはもちろんのこと、原作やアニメのさらなる魅力を探るべく、ホロ役の小清水亜美さんにインタビューを行いました。

 インタビューは前半、後半の2本立てでお届け。前半となる今回は、小清水さんのアニメの思い出についてお伺いしていきました。苦労したというアフレコでは、意外な助け舟があったとか……。

◆『狼と香辛料』とは◆
第12回電撃小説大賞<銀賞>を受賞。
支倉凍砂が描く、剣も魔法も登場しない新感覚の経済ファンタジーライトノベル。
物語の主人公、行商人クラフト・ロレンスと、ロレンスが旅の途中で出会った、狼の耳、美しい毛並みの尾をもち、自らを”豊作の神”と名乗る可憐な少女、賢狼ホロとが織りなす経済冒険活劇。
2008年と2009年に、2度にわたりテレビアニメ化。さらにゲーム化、コミカライズとさまざまなコンテンツ展開に加え、英語、中国語、フランス語とローカライズ展開もされ、世界的人気を誇る作品。

2016年4月より10周年記念として、
新ストーリー「狼と香辛料 Spring Log」、「新説 狼と香辛料 狼と羊皮紙」をはじめとするさまざまなコンテンツを盛り込んだ10周年サイトを展開している。

>>狼と香辛料&支倉凍砂10周年公式サイト

◆[狼と香辛料10周年企画]ホロ ウエディングドレス ver. 1/8スケールフィギュア◆
“―わっちはぬしと旅がしたい。ダメかや?” 全てはその一言から始まった。長い、長い旅の集大成。ホロ ウエディング ver. 狼と香辛料10周年企画にしてついに立体化。



小清水さんもビックリなクオリティ
──今回は『狼と香辛料』10周年で、「ホロ ウエディングドレス ver.」のフィギュアが発売されることになりました。撮影中から早速、フィギュアを堪能されていましたね。

小清水亜美さん(以下、小清水):これ、本当にすごいんですよ。欲しいです。


──(笑)。今日はフィギュアと一緒に撮影もされましたが、いかがでしたか?

小清水:私は写真が得意な方ではないので、どうしたらいいか分からないところがあったんですが、素敵に撮っていただいて光栄です。


──ずっと「指示を出して下さい」と仰っていましたね。

小清水:ポーズを「フリースタイルで!」って言われると、困ってしまって(笑)。撮影のときはいつも「どうしよう……?」ってなるんですよ。


──でも、すごくいい写真ばかりでしたよ。

小清水:いろいろと工夫をしていただいて助かりました……(笑)。

実際の食生活にも影響するほどの美味しそうな食べ物
──10周年ということで、『狼と香辛料』の思い出もお伺いできればと。

小清水:アニメで一番印象に残っているは、やっぱり金貨のやり取りのシーンですね。同じ金貨でも、信用や金の含有量によって価値が少しずつ違うことを説明するというシーンです。

その説明をするシーンが長台詞で、練習をするのがすごく大変でした。金貨の名前や種類がたくさんあって、「頭が混乱する!」と思いながら(笑)。難しいシーンではありましたが、とても面白かったので、今でも鮮明に覚えています。

あとはホロが毛皮を売るシーン(※1)。ホロのアイデアで、ロレンスが買った毛皮の獣臭さを消すために、毛皮とリンゴを一緒に保存するんです。そして、「これは特別な毛皮だから、こんなにフローラルな香りがするんですよ」と銘打って、高額な値段を付けてもらうんですよ。

実際の毛皮にリンゴの香りが付いたら、どの程度匂いに変化が出るんだろうと思いましたね。

※1:アニメ第1期・第3話「狼と商才」での一幕。このシーンからホロは自分の食い扶持を稼ぐという名目で、旅をともにするロレンスの商売に口を出していく。


──あのシーンはホロのすごさがわかる印象的なシーンでした。

小清水:そうなんですよ。あと、印象的だったのは、リンゴと芋です。


──芋ですか(笑)。

小清水:蒸したじゃがいも(※2)と言えば、私からすると縁日でジャガバターとして食べることが主だったんです。でも『狼と香辛料』をきっかけに、蒸かしたじゃがいもの魅力に気づいてしまって。そこから蒸したじゃがいもを食べるようになって、塩辛乗せたら最高に美味しいと気づいたり……。「ホロよ、現代ではこんなに美味しいものが食えるぞ! 塩辛は最高だぞ!」なんて思いながら食べています(笑)

※2:アニメ第1期・第2話『狼と遠い過去』の一幕。お腹をすかせたホロに、ロレンスが蒸したじゃがいもを食べさせるが、あまりの空腹に喉をつまらせてしまう。


──(笑)。

小清水:そういった感じで、私生活における食への影響力がかなりありますね。『狼と香辛料』を思い出すと、「ああ、今日の夕飯はこれを食べたいなぁ」と感じさせてくれるものがあります。作品に登場する料理はどれも美味しそうなんですよ。

──ホロは食いしん坊ですし、いろんな料理が出てきますよね。

小清水:そうなんですよ! 桃の蜂蜜漬けもそうだし、本当に美味しそうなものばかり出てきますよね。


──今の言葉を使うと、“飯テロ”なアニメだったんじゃないかと。

小清水:それは間違いないですね!


──その他、印象に残っていることはありますか?

小清水:食べ物だけじゃなく、キャラクターも魅力的だったなと思います。羊飼いのノーラちゃん(ノーラ・アレント)もそうですし、ディアナ(ディアン・ルーベンス)もすごく好きだったんですよ。ディアナは、はじめはいかにも魔女といった出で立ちで登場して、「この人は一体何者なんだろう?」って思いました。

ホロには人によって見せ方を変えている部分があって、男性に対しては掌の上で転がすためにちょっと媚びたりするけど、女性の前だとまた違う自分の見せ方をしてみせたりします。でも、ディアナとのやり取りに関しては、狡猾な部分をホロ自身があえて分からせる感じで接していたなという記憶があります。他の女性キャラクターにはあまり見せない一面を見せていて、女の戦いがあって印象的でした。


──ホロと様々なキャラクターのやり取りも見どころでした。

小清水:そういえば求婚されたこともあったなあ(笑)(※3)。アニメ第2期の後半は、ホロをどう演じるのかが課題でした。ロレンスと感情的になって喧嘩するシーンでは、ホロとしてどの程度感情を露わにしようかなと、いろいろと考えて演じていました。

※3:アニメ第2期・第3話「狼と埋まらない溝」の一幕。一目惚れしたフェルミ・アマーティがホロに求婚。ロレンスとアマーティが、黄鉄鉱の信用売りによる決闘を行うことになった。

どう演じるのかを考えるのが楽しい
──『狼と香辛料』10周年についてもお伺いしていきます。10周年を振り返ってみていかがですか?

小清水:あっという間だったなと。アニメの放送も2009年からでしたし、気がつけばこんなに時が経ってしまっていましたね。

『狼と香辛料』も気持ち的には少し前にやっていたという意識はあるんですけど、10年も前という感覚ではなかったので、なんだか不思議な気持ちですね。『狼と香辛料』って、決して風化しないじゃないですか。文章の切り口もそうだし、アニメーションの世界観も、今見ても古臭くささを感じさせないんです。

改めて見直しても、新作のような気持ちで見れますよね。そして、ホロはいつ見ても綺麗でいてくれる。私の肉体は確実に年を重ねているんですけどね……(笑)。


──(笑)。

小清水:といっても、アニメが終わってから全くホロを演じていないわけでもなくて、アプリゲームのゲストキャラクターとして参加させていただくことが、ここ最近多かったんです。「久しぶりだからどうかな?」と思いながらの収録だったんですけど、ホロを演じている間に、だんだん当時の感じが戻っていきました。同時に、今の状態の方が、ホロが扱うおいらん言葉の芯が出るのかもしれないなと感じました。


──年を重ねたからこそわかる部分ですね。

小清水:こなれた、というわけでもないんですけどね。20代の私よりも今の自分の方が、おいらん言葉との相性は良いかもしれません(笑)。そういった意味では、年月を重ねることの面白さを感じました。これはどんな役にもあるというわけではないので。

──長く同じ役を演じる役者さんならではの感覚だと思います。

小清水:その感覚は、「10年間継続して演じている役」と、「10年ぶりに演じる役」でも違うと思います。10年間、少しずつ演じているものでは、役者もキャラクターと同じ時間を経ているので、根本は変わらなくても育っていくものがあります。10年前にやっていて、久しぶりに演じると、その間の経過で進化しているものが無いというか。キャラクターの時間が止まっていても、自分は年を重ねていきますよね。

もちろん声質といったベーシックな部分は変えていないんだけど、役者には10年間の経験値の蓄積があって、それを上乗せしてしまった時に「みなさんにどう思われるのか?」という葛藤があります。

当時の作品を見ていると、過去の自分ができなかったものが見えてくるんです。だから、今演じるときに、当時のままにするのか、今できるようになったものを出すべきなのかが難しくて。


──なるほど。

小清水:そこで新しい演技をした時に、「キャラが違う」と言われちゃうこともあるので、いつも悩みますね。


──視聴者の中ではキャラクターが育っているからこその違和感が出るのかもしれません。

小清水:いわゆる思い出補正というのがあるのかもしれません。もちろん、役者側にも。これが10年続いているものだと、グラデーションで少しずつ変わっていけるから、違和感なく演じられたりするんですよ。確実に進化しているけど、キャラが違うとは言われない。

間があいているという事に対して、ジレンマはあります。ですが、どう演じるのかを考えるのが楽しいし、勉強にもなるんですよ。つらさを感じるときはもちろんありますけどね(笑)。

ホロがニュッと出てきて、助けてくれました
──今振り返ってみて、当時の自分をどう思いますか?

小清水:当時、精一杯演じていた部分は、今の私が演じてもすごく悩むと思います。それはさじ加減であったり見せ方という部分ですね。キャラクターとの距離感やストーリーのシーンを壊さないようにと、いろいろと考えていると難しいですね。今の自分でも最善手を打てるかどうか………。やってみないことには分かりません。


──ホロはいろんな面を見せてくれるキャラクターなので、それに応じて演じ分ける姿は、当時からすごいなと思いながらアニメを見させていただいていました。

小清水:ホロを演じる上でたくさんの選択肢があって、どれが正解か分からない中で、いつも必死に頭を悩ませながら演じていました。そもそも、おいらん言葉が難しくて、聞いたことはあっても、なかなか触れることがなかったんです。

そんなときに、アフレコチェック用のVTRに映っているホロの表情を見ると、不思議となんだか救われたような気持ちになれたんですよ。

実際に存在しているキャラクターではないはずなのに、私の頭の中ではホロがニュッと出てきて、助けてくれましたね(笑)。「選択肢がいっぱいあるかもしれないけど大丈夫だから、やってごらん」みたいな。ホロは気持ちの面で、私を何度も支えてくれました。だからこそ私の中で、印象深いキャラクターなのかもしれませんね。

 小清水さんの中でも、ホロは特別な存在なのだと感じることができるインタビューでした。後半では、「ホロが好かれる理由」をはじめ、ホロ自身の魅力について探っていきます。後半もお楽しみに!

>>[狼と香辛料10周年企画]ホロ ウエディングドレス ver. 1/8スケールフィギュア 商品紹介ページ

[撮影/アイザワヒロアキ インタビュー/石橋悠]

[狼と香辛料10周年企画]ホロ ウエディングドレス ver. 1/8スケールフィギュア 商品情報

商品名:狼と香辛料 ホロ ウエディングドレス ver.
作品名:狼と香辛料
価格:11800円(税抜)
発売時期:2017年11月予定
仕様:ABS&PVC・1/8スケールフィギュア
販売元:Tokyo Otaku Mode Inc.
製造元:Myethos



フィギュアの細部を一挙ご紹介!



(C)支倉凍砂/アスキー・メディアワークス/「狼と香辛料Ⅱ」製作委員会
おすすめタグ
あわせて読みたい

関連商品

おすすめ特集

今期アニメ曜日別一覧
2024年春アニメ一覧 4月放送開始
2024年冬アニメ一覧 1月放送開始
2024年夏アニメ一覧 7月放送開始
2024年秋アニメ一覧 10月放送開始
2024春アニメ何観る
2024年春アニメ最速放送日
2024春アニメも声優で観る!
アニメ化決定一覧
声優さんお誕生日記念みんなの考える代表作を紹介!
平成アニメランキング