斉藤壮馬さんからのメッセージ『Infini-T Force(インフィニティ フォース)』で見てほしいヒーローたちの姿とは? 声優インタビュー
数々の名作アニメを生み出したタツノコプロ生誕55周年記念作品『Infini-T Force(インフィニティ フォース)』が2017年10月よりTVアニメとして放送中です。
本作では、人気ヒーローのガッチャマン、テッカマン、ポリマー、キャシャーンが協力して、新たな敵と戦う姿が描かれます。
ヒーローの中でも1人だけ人間ではないキャシャーン。そんな難しい役に斉藤壮馬さんが魂を込めています。
そんな斉藤さんにインタビューを実施。今だからこそ見てほしい、タツノコヒーローたちの魅力をお伺いしました!
壮大なプロジェクトに参加した緊張感
──本作は、タツノコプロ55周年を記念して制作されました。まずは、本作に出演が決まった時の感想からお聞かせください。
斉藤壮馬さん(以下、斉藤):『Infini-T Force』は、幅広い年代の方に愛されている、各ヒーローたちが集結する作品です。
オーディションのときは、まさか自分がキャシャーンを演じさせていただける日が来るとは思っていませんでした。
本当に嬉しいという気持ちと、壮大なプロジェクトにしっかり気持ちを据えて取り組まなければいけないという責任感をすごく感じましたね。
──キャシャーンを演じるにあたって、意識されたことはありましたか?
斉藤:キャシャーンは、自分のアイデンティティはどこにあるのかを、戦いの中で探し求めていくキャラクターです。
今回は特に、他の3人の年代が上なのに対して、キャシャーン/鉄也(東鉄也)は無機質な感じを持たせつつも、どこか少年らしい可愛げというものを出せればと考えました。
普段のセリフはともかく、逆に叫ぶ場面などはどこまで出してしまっていいのか、単に100%の力で叫びすぎてキャラクターを外れてしまうというのも違うだろうと思いましたね。
バランス調整が難しかったかなという印象です。
──アフレコ現場で印象的だったことはありますか?
斉藤:先輩方が優しい方ばかりで、何気ない会話をしつつ、マイク前では生の掛け合いでしかできない緊張感を味わえました。
鈴村健一さんがすごくグルメなので、近所の美味しいお店を教えてもらったり(笑)。
他には、みなさんゲームがお好きだったりするので、ゲームの話をしたり。
あと僕が子供の頃にリアルタイムでタツノコヒーローたちに触れてきたわけではなかったので、教えていただきましたね。ほんわかした現場で、みなさん優しかったです。
──タツノコヒーローについて、どんなことを教えてもらったんですか?
斉藤:例えば最初ポリマーのバトルシーンを見た時に、「このポリマーって何でカンフーぽい感じになってるんですか?」と聞いたら、「これはもともとブルースリー風にという演出があって云々」みたいな。
本当にみなさんヒーローが大好きなので、目がすごくキラキラしているなって思いました(笑)。
それを聞いてると、こちらもすごくワクワクしてくるというか。そんな現場でした。
3人とも頼れるお兄ちゃんみたいな感じがあって好き
──斉藤さんは『新造人間キャシャーン』は、ご存知でしたか?
斉藤:オリジナルは観てなかったんですけど、2008年に放送された『キャシャーン Sins』は見ていたんです。それが初めて僕がタツノコヒーローに触れた作品でした。
『キャシャーン』って勧善懲悪でもないというか、割と悲壮感や悲哀を感じる世界観があるんです。『キャシャーン Sins』もその雰囲気を感じますよね。
『キャシャーン Sins』を見はじめたころくらいの年代から、僕もそういうダークなものに傾倒し始めたんです(笑)。
オープンエンドがすごくカッコ良くて、それも好きだったし、印象に残ってました。
──『キャシャーン Sins』と今作とそれぞれで印象が変わったりしましたか?
斉藤:今回は『キャシャーン』という作品ではないので、わりと軽妙なキャラ同士の掛け合いがあったりします。
鉄也はそこまでありませんが、健(鷲尾健)がフレンダーに追いかけ回されたりしていますよね。
CGの綺麗さも相まって、テンポの良さもすごくいいんです。
その中で鉄也は鉄也で、自分のアイデンティティを探していきます。
城二のものですが、「仲間に出会えたっていうのは幸せなことだよ」みたいな、サラっと聞こえるようでいて重みがある台詞などもあったりして、武士(鎧武士)に付けられたあだ名じゃ無いですけど、“少年感”が出ていると思いますね。
──あんな寡黙なキャラクターでも、あれだけ楽しい雰囲気になるんだなと思いました。
斉藤:3人が世界の説明をしているのに、エミ(界堂笑)と鉄也が廃墟のスロープをスィ〜って飛んだりとかしているんです(笑)。「全然話聞いてない!?」みたいな(笑)。それも年下感あって可愛いなって思いました。
──今回演じられたキャシャーンの魅力を教えてください。
斉藤:底抜けに明るい人も素敵だと思うんですけど、キャシャーンは、どこか心に影を抱えているというか、土台のところで自分は人間じゃないんだというペシミズムみたいなものがあります。
端整な顔で、表情にはそこまで乗せないまでも、本人はすごく苦しい思いをしている「悲しい運命萌え」みたいなのがあるんじゃないのかなって思います(笑)。
登場人物たちはみんな嘘をつかないんです。裏表のない人達がチームになっていて、裏表がないからこそ、普通の人の文脈とは違う受け答えをしてしまう天然っぽさもある。
本心を隠しきれないというか、言葉にニュアンスは乗せないけど、「僕は人間じゃないから」って言っちゃうみたいな、そのストレートないじらしさも魅力なんじゃないかなと思います。
──他のヒーロー達はどうでしょう?
斉藤:一番の萌えキャラは健ですよね。科学戦隊なのにIH知らんのかいみたいな(笑)。それがもう可愛くて。
対する武士と城二(南城二)は、すごく現代に適応していたり。
でも、健がいざという時に直情的ではあるんですけど、「大丈夫だ」って言ってくれるとやっぱり心強いです。
城二は一番セリフが多いと思うんですけど、全ての説明を担ってくれる。しかも『テッカマン』もめっちゃ強い。
『ポリマー』はみんなのムードメーカーですね。僕も武士のオーディションを受けていて、「鈴村さんです」と聞いた時は「なるほどな!」と思いました。
お調子もののキャラのようでいて一番大人というか、周りのことが見えています。
基本タイプは違えど、3人とも頼れるお兄ちゃんみたいな感じがあって好きです。
実はヒーローより悪役が好き?
──印象的だったシーンはありますか?
斉藤:バトルシーンや2話で鉄也の悲しいシーンが伏線になってくるところも印象的なんですけど、アボカドのクリームパスタを作るシーンが……!
城二が、アボカドを半分に切って、包丁にくっついたままの種を包丁を振ってシュッと捨てるんです。それがまさに僕が家のキッチンでやっているのと同じ動作なんですよ(笑)。
従来のアニメってそういう描写って割と省かれがちだったと思うんですけど、『Infini-T Force』は、細部にこだわりがあるみたいで。
モーションキャプチャーを使って、アクターさんが一度演じているからこそ、そういう細かいところにリアリティが出るのかなと思いました。
そういうバトル以外の細かい表情を大きいスクリーンで見て欲しいな、と思いましたね。
──斉藤さんはアボカド食べてそうだなと思いました(笑)。
斉藤:そうですね(笑)。僕もアボカドのクリームパスタ好きです(笑)。
──原作のキャシャーンから意識的に拾っている部分はありますか?
斉藤:タツノコプロさんの作品の男気みたいな要素を、けっこう他のキャラクターが担保しているかなと思ったんです。
逆に鉄也の場合は、今回のこのビジュアルと今作の設定に重きを置いて作っています。
無理して引っ張ってこようという意識はしなかったんですが、さっき話をしたように根本的な心持ちというか、自分のアイデンティティの揺らぎではないですけど、それが敵との戦いのキーポイントにもなってくると思います。
体は機械で心を移植して、「じゃあ心っていうものは一体なんなのか?」っていうのが彼の人生のテーマだと思うんです。
その根本的な部分は全くブレていないと思います。別に無口なだけであって、ナヨナヨしている人というわけではありません。
真の強さというか、軸に持っている思いの熱さみたいなものを持って、マイク前に立とうというのは決めて臨ませていただきました。
──斉藤さんが思い描いていたヒーロー像とはどんなものでしょうか?
斉藤:子供の頃はヒーローものとか戦隊ものをよく観ていました。
でも、昔から正義のヒーローに憧れるというよりは、敵の怪獣とかに憧れていて。
ドラマを背負わされている敵とかいるじゃないですか。そういうのに昔から心惹かれるものがあるんです。
例えば戦隊のメンバーなら、レッドよりはブルーかブラックみたいな(笑)。
シックスマン的なものが好きでしたね。
そいつって意外と敵か味方か分からないみたいなところがあるじゃないですか。そういうトリックスターが好きでやりたかったんです。
──今作に登場しているヒーローの中に、憧れているキャラクターいますか?
斉藤:僕はキャラクターとしては武士が一番好きなんです。誰に助けて欲しいかといえば……やっぱり「ガッチャマン』ですかね。
鍵ってまさにレッドみたいな感じじゃないですか。自分の中に全く無い要素なので。
でもやっぱり、敵チームが好きですけどね。ダミアン(ダミアン・グレイ)とか! 「タケェシィ〜」っていう台詞の数を毎回数えています(笑)。
──やっぱり敵キャラクターが気になるんですね。
斉藤:みんな好きなんですけど、立ち位置的にはダミアンが一番好きかな。
確か僕、ダミアンもオーディションを受けていて。ずっとこういうアクの強いやつをやりたいと思っていたんですけど、平川大輔さんに決まってとても納得したのを覚えています。
まさに本音を見せないというか。やっぱり、こういう立ち位置のキャラクターが好きなんだなって思いましたね。
あとはベル・リンさんが可愛い(笑)。これはねぇ……キッズにこういうの見せて良いんですか?(笑)
僕がキッズだったら間違いなく将来の好きなタイプはこういう感じになっちゃうと思います。
ラジャ・カーンはこれからキャシャーン的には気になってくると思います。ラジャ・カーンが一番真人間というか、良い人だなと思いますよ。
キッズたちにはぜひ純粋な目で見て欲しいですし、タツノコヒーローが好きだった方は昔を思い出しながら今を楽しんで欲しいです。
初めて見る方には違うものが見えるんだろうなと思うので。
──エミ(界堂笑)はどうですか?
斉藤:登場キャラクターたちが、キャラクターとして完成しているので、エミみたいな引っかき回す中心人物がいないと話が進みません。
エミは人に愛されたり、人を信じるということ全然知らずに育ってきました。
健から「100%信じろ」っていきなり言われても、視聴者の方もなかなか感情移入できないと思います。
それをエミが「そんなこと言われたって、急には信用できないよ」って突っぱねて行くのが、観てくださっている方に寄りそってストーリーが展開している一つの要素なのかなと思います。
こちら側からすると、「もう少しいうこと聞いてくれないかな?」みたいな気持ちが無いわけでは無いんですけど(笑)。
ある意味この作品で一番成長するのはエミなのかなと思います。
健も言ってましたけど、「お前の名前は笑(エミ)っていうのに、お前は全然笑わないな」っていう。そのエミが果たして心からの笑みを出せる日が来るのか……それは3話以降に乞うご期待です!(笑)
──(笑)。僕はエミの部屋着が好きです。
斉藤:ホットパンツ! あれは本当にもう……ホットパンツで締めて良いんですかね(笑)。
いつの間にか「マジうざい!」って言われる側の気持ちで観ちゃう
──今後のキャシャーンの見所や、ストーリーの魅力も教えていただけますか?
斉藤:徐々に敵チームの存在が明らかになっていくとともに、熱い戦いが描かれていきます。僕も戦闘シーンを見たときに、ものすごい衝撃を受けました。
信念のぶつかり合いというか、気持ちの対話が鍵になってくると思うので、ぜひその熱さを楽しみにしていただければなと思います。
──ヒーローに憧れている子供に向けて、観て欲しいポイントはありますか?
斉藤:自分の心に正直になることや、自分が絶対に貫くと決めた思いを疑わずにいることってやっぱり難しいですよね。
例えば僕だって「一生声優の道で行くんだ」って思ってこの道に入ったけど、楽しいことばかりではなくて、うまくいかないこともあります。
それでもやり続けるんだっていう、ある意味それは意地かもしれないですけど、そしたら楽しいこともやって来ると思うんです。
結局最後は続けたもの勝ちなので、もし今やりたいこととか悩んでることがあったら、環境を変えるというのも大事だと思うんですけど、ぜひ貫き通してみるという選択肢があるということも知って欲しいなと思います。
──本作を若い世代の子たちはどのように見ると思いますか?
斉藤: 僕は子供の頃にヒーローものを観ていた熱い気持ちを思い出したので、そういう経験がある方は、今の10代の方にもいっぱいいるのかなと思います。
そして、親子二世代で楽しめる作品だなと。
僕自身も『新造人間キャシャーン』を含め、すべてのアニメを全話網羅しているわけではないので、初めて触れるキャラクターもけっこういたんです。
そういう意味では、今回の『Infini-T Force』に影響を受けている1人なのかもしれません。
最初、企画のお話を頂いた時には、どういう風に広がるのかと思ったんですが、反応を見ていて、かなり幅広い世代の方に受け入れてもらえているようです。
カッコつけるんじゃなくてカッコいいというか。世代を超えて、DNAや魂的なもので通じるものがあると思います。
ただ、自分もいつの間にか歳を重ねていたなというか、10代の頃とかに、「マジうざい!」って思っていたのに、いつの間にか「マジうざい!」って言われる側の気持ちで観ちゃうんだっていう(笑)。
それはすごく感じましたね(笑)。
[インタビュー/石橋悠]
1989年(平成元年)生まれ、福岡県出身。アニメとゲームと某王国とHip Hopと自炊を愛するアニメイトタイムズの中堅編集者兼ナイスガイ。アニメイトタイムズで連載中の『BL塾』の書籍版をライターの阿部裕華さんと執筆など、ジャンルを問わずに活躍中。座右の銘は「明日死ぬか、100年後に死ぬか」。好きな言葉は「俺の意見より嫁の機嫌」。
作品情報
TVアニメ『Infini-T Force(インフィニティ フォース)』
●放送情報
日本テレビ:毎週火曜25:59~
読売テレビ:毎週月曜26:29〜
福岡放送:毎週火曜26:29~
札幌テレビ放送:毎週水曜25:34~
広島テレビ放送:毎週水曜25:59~(第2話は26:29~予定)
中京テレビ:2017年10月13日(金)25:53~
ミヤギテレビ:毎週金曜25:59~
静岡第一テレビ:毎週土曜26:20~
※放送時間は都合により変更になる可能性があります。
●配信情報
Hulu:毎週火曜00:00先行独占配信中
URL:https://www.happyon.jp/
●見逃し配信
日テレ無料・TVer・GYAO!:毎週火曜26:25~
ニコニコ生放送:毎週水曜24:00~
●解説
2017年は日本でアニメが誕生してから100周年に当たる年です。その年に日本を代表するアニメーションスタジオ、タツノコプロが55周年を迎えます。
その55周年を記念してタツノコレジェンズの4大キャラが集結! 世界に誇る1970年代を代表するヒーロー作品『科学忍者隊ガッチャマン』『宇宙の騎士テッカマン』『破裏拳ポリマー』『新造人間キャシャーン』を最大限にリスペクトしつつリデザインされ、新たな装いで蘇ります!
本作は、単独でも十分映像化が出来る強度を持ったキャラクター達を新生させ、タツノコプロの複数ヒーローが共闘し、悪に立ち向かう物語を描きます。
今回のアニメ化にあたり、豪華スタッフ陣が集結しました! 初監督作品となる鈴木清崇(『PSYCHO-PASS 2』シリーズディレクター)を筆頭に、シリーズ構成を大野敏哉(『スイートプリキュア♪』)、キャラクター原案は大暮維人(『天上天下』)、ヒーローデザイン原案はさとうけいいち(『TIGER&BUNNY』)、スーツ・メカニックデザインは中北晃二(『GATCHAMAN CROWDS』)が担当。
さらに3DCG制作を『GANTZ:O』や『デスノート Light up the NEW world』など実写・アニメーションのジャンルを問わず数々の大ヒット作を手掛けてきたデジタル・フロンティアが務めます。
●STAFF
監督:鈴木清崇
シリーズ構成:大野敏哉
キャラクター原案:大暮維人
ヒーローデザイン原案:さとうけいいち
スーツ・メカニックデザイン:中北晃二
制作:タツノコプロ
3DCG制作:デジタル・フロンティア
●CAST
ガッチャマン(G-1号)/鷲尾健:関智一
テッカマン/南城二:櫻井孝宏
ポリマー/鎧武士:鈴村健一
キャシャーン/東鉄也:斉藤壮馬
界堂笑(エミ):茅野愛衣
Z:斧アツシ
ラジャ・カーン:安元洋貴
ダミアン・グレイ:平川大輔
ベル・リン:花澤香菜
映画化プロジェクト情報
◆タイトル:劇場版Infini-T Force(仮)
◆公開時期:2018年2月
◆配給:松竹
◆出演:
関智一(ガッチャマン/鷲尾健役)
櫻井孝宏(テッカマン/南城二役)
鈴村健一(ポリマー/鎧武士役)
斉藤壮馬(キャシャーン/東鉄也役)
>>『Infini-T Force』公式サイト
>>『Infini-T Force』公式ツイッター(@Infini_TForce)