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映画『さよならの朝に約束の花をかざろう』岡田麿里監督インタビュー

映画『さよならの朝に約束の花をかざろう』岡田麿里監督インタビュー――「なんとなく」の領域まで到達できる脚本、物語を作りたかった

『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』、『凪のあすから』、『心が叫びたがってるんだ。』などの脚本家・岡田麿里さんの初監督作となる劇場アニメ『さよならの朝に約束の花をかざろう』(以下、『さよ朝』)が、2月24日(土)に公開を迎えます。

同作は、数百年の寿命をもつイオルフの少女・マキア(CV:石見舞菜香)が、親を亡くした赤ん坊のエリアル(CV:入野自由)と出会い、長い時間を一緒に過ごしていく物語。色合いを変えていく二人の絆を丁寧に追った、オリジナルのファンタジー作品です。

そんな同作について、アニメイトタイムズでは岡田麿里監督にインタビュー。「岡田さんの100パーセントを出した作品を見てみたい」というプロデューサーの言葉を受けて、自ら監督を務めたいと申し出た岡田さん。その決意の裏にある脚本家としての思いや、『さよ朝』での挑戦について、たっぷり語っていただきました。

 

「岡田麿里100パーセント」なら制作のすべてにかかわりたい

――『さよ朝』で、脚本に加えて監督も担当しようと決めた理由を教えてください。

監督・脚本 岡田麿里さん(以下、岡田):P.A.WORKSの堀川(憲司)社長に言っていただいた「岡田さんの100パーセントをさらけだした作品を見てみたい」という言葉を真に受けて、本当にそれを実現するために、監督として制作のすべてにかかわりたいと思ったのがスタートでした。アニメ制作のすべての工程に参加できたなら、普段よりもう少し突っ込んだ脚本、もう少し突っ込んだ物語が作れるのではと思ったんです。

あと、スタッフみんなと一緒に最後まで作品に付き合ってみたいという気持ちもありましたね。脚本家はアニメ制作のトップバッターで、作品にかかわれるのは決定稿が出るところまで。いわゆる「現場の人間」にカウントされていないところがあるんです。普段だったら監督やスタッフのみなさんにお任せして去ってしまうところを、留まってみたいなと思いました。
 


――エンドクレジットを見ると絵コンテにも岡田さんの名前がありましたが、通常の監督と同じ作業内容を担ったのですか?

岡田:監督をやるにあたって堀川さんから、「すべてのパートに関わること」「カットごとの作打ちなども、人任せにしないで出ること」という条件をいただいていました。堀川さんは、ちょっと先生っぽいんです(笑)。なので、全パートの打ち合わせに出て、自分なりに監督としてお話させていただいています。

コンテに関しては、パートごとに複数の方へお願いしつつ、私はあるキャラクターが出産をするシーンなど所々で担当させていただきました。ちなみに、その出産シーンの作監は田中将賀さん(*1)です。田中さん以外にも、ふだん本読みで顔を合わせるような人たちに会うと、「みんなこうやって仕事してるんだなぁ」と思ったりしました(笑)。


*1 アニメーター、キャラクターデザイナー。『あの花』、『ここさけ』など、岡田麿里さん脚本作品も多く手がけている

 

――監督としての打ち合わせもコンテを切るのも初めてだったかと思いますが、やってみてどうでしたか?

岡田:脚本家として参加する本読み(シナリオ打ち合わせ)なら、「こう言っていけば自分の意見が言える」みたいな自分なりの方法論があるんですけど、監督としての打ち合わせには、そのまま当てはめられなかったですね。私の拙い絵や説明から演出意図を読みとってくれたアニメーターさんたちには、とても感謝しています。何を説明して何を省略するべきなのかのさじ加減が難しくて、打ち合わせ時間がすごく長くなってしまいました。

コンテは副監督の篠原(俊哉)さんに教えていただきながら、なんとかやっていった形です。コンテから3Dレイアウトを起こすのも大変でした。私、学生時代は美術部だったんですけど……これじゃ嘘だなって、無力さを感じました(笑)。

――篠原さんのお名前が出ましたが、メインスタッフの座組みの狙いを教えてください。

岡田:副監督の篠原さん、キャラクターデザイン・総作画監督の石井(百合子)さん、美術監督の東地(和生)さんは、『凪のあすから』などでご一緒させていただきその才能に惚れこんでいて、ぜひ入っていただきたいメンバーでした。篠原さんはもはや、作品の父といえる存在です。私のやりたいことを実現させながら、それに伴う負担にも一生懸命向き合ってくださって。篠原さんが支えてくださらなかったら、この作品はなかったと思います。

 
吉田(明彦)さんは……私自身が本当にファンなので(笑)。「オウガバトル」シリーズ(*2)世代で、吉田さんのキャラクターにずっと惹かれてきたんです。そのうえで、劇場作品ということもあり、時代に左右されない普遍的なキャラの魅力がほしいという側面もありました。吉田さんのデザインと石井(百合子)さんの繊細で優しいタッチは、タイプこそ違いますが、良い形で合致する予感もしていましたね。

 
*2 『伝説のオウガバトル』(1993年)をはじめとするスーパーファミコン用シミュレーションRPGシリーズ。吉田明彦さんはキャラクターデザインなどを担当

 
コア・ディレクターの平松(禎史)さん、メインアニメーターの井上(俊之)さんは、堀川さんがオファーしてくださいました。堀川さんがラインプロデューサーを務めるのは今回で最後ということで、これまでに出会ったクリエイターさんのなかから、思い出深い方、「この人こそ」という方にお声がけをしてくださったんです。平松さんは担当パートだけでなくラッシュチェックでもたくさんのアイデアを出してくださって、井上さんもお忙しいなか相当の枚数を描いてくださいました。本当にスタッフに恵まれた作品になったと思っています。

 

「なんとなく」の表現にまで踏み込んだ脚本を

――さきほど、「自分が監督するのなら普段よりもう少し突っ込んだ脚本の書き方ができるのでは」というお話がありました。普段より突っ込んだ脚本とは、どんなものなのでしょうか?

岡田:普通に脚本家として作品に関わる場合、その監督が求める書き方をとりながら、共同作業のための伝わりやすい脚本を書いていきますが、今回はそうではなく、伝わりにくいけど映像として一つになるとわかる脚本……というイメージでした。

セリフの意味って、必ずしも言葉どおりではなくて、そのキャラクターの表情や仕草、背景や音楽と一緒になって初めて浮かびあがるものですよね。でも、その微妙な表現には、脚本単体では到達できないんです。「好き」というセリフに「微笑みながら」といったト書きは入れられるけど、微笑みのちょっとしたバランスだけで意味が全然違ってきますし、「切なくなるような空が広がっている」と書いても、どう切ないのか、どんな色合いなのかは監督にお任せするしかない。そういった「なんとなく」の領域に脚本単体で踏み込もうとしたら、どうしてもセリフで多くを語る形になってしまうと思います。

でも、自分が監督をするなら、違う書き方ができるんじゃないかと。キャラクターの微笑みのバランスも背景の空の色もわかるから、シンプルなセリフを維持したままでも、「なんとなく」の部分まで到達できる脚本になるのではないかと思いました。微妙なところですが、自分のなかでは結構大きな違いだと思っています。

  

――たとえば過去に担当した作品で、完成映像を観たときに「ちょっと違うな……」と感じるようなこともあったのでしょうか?

岡田:若いころにはありましたけど、最近はないです。熱意のある監督やスタッフさんと関わらせていただくことが多いので、脚本から変わること自体はあっても「こうなっちゃったか……」という感じにはならないというか。なので、そういった不満を感じていたわけではないんです。「岡田麿里の100パーセント」というテーマがなかったら、特にコンテや演出に口を出したいとは思わないですね。

――岡田さんの自伝(*3)でも、「脚本は監督に捧げるもの」と書かれていました。

岡田:そうですね。脚本を書く目的は、監督に「この脚本なら良い作品ができる」と確信してもらうことだと思っています。監督が「こうしたい」と思う話を書きたいと思うし、決定稿を出す監督の脳内には私とは違う意図があっても、それは別に構わないというか。監督には決定稿にしただけの「強度」があると思うので、もう私の範疇ではないんですよね。監督の抱いた感想が、その現場において正しいんだと思っています。

今回は自分が監督なので、脚本家と同じ感想を抱くはず……だったんですが、実際はそうでもなくて(笑)。コンテまでに時間を置いたことや、現場のいろんな要素によって、変わっていった部分もあって面白かったですね。

 
*3 『学校へ行けなかった私が「あの花」「ここさけ」を書くまで』(文藝春秋 2017年)。不登校だった学生時代の葛藤と脚本家に至るまでの経緯と心境を記した自伝本。

 

脚本家としての20年で挑戦できなかったものと向き合いたい

――自伝によると、『あの花』も「岡田さんの本当に書きたいものを書いてください」というオファーから始まったそうですね。同じお題でも、今作とカラーがまったく違うのが興味深いです。

岡田:『あの花』のときは、学校に行けていなかった時代を、まだ引きずっていたんですよね。何年も前のことだし、そんなこと関係なく仕事をしているんですけど、どこか過去から抜け出せていない感覚があって。だから、もし登校拒否児をヒーローとして描けたなら、自分のなかの何かが変わるんじゃないかと思い始めた。当時は、自分のパーソナルな部分から何かを仕事に昇華できないか、という意識が強かったと思います。

今回はちょっと違っていて、脚本の仕事を始めてからの20年のなかで挑戦できなかったものと向き合いたい、という気持ちでした。「なんとなく」の部分まで到達できる脚本を書きたい、ファンタジーに挑戦したい、などですね。

 

――ファンタジーに挑戦したいと思ったのは、どんなところから?

岡田:『さよ朝』は結局、強い人間関係がいっぱいある物語、誰かと強くつながりたいと願う人たちの話にしたかったんですが、それを現代日本のお話でやると、ちょっと悪目立ちしてしまうので。ファンタジーという現実にはあり得ない設定のなかで、現実と地続きの気持ちを描けていけたらと考えました。

――主人公・マキアの種族「イオルフ」が特にファンタジー要素を担っていますね。

岡田:そうですね。イオルフのコンセプトは、潔癖なまでに美しい人たち。美しいところに住んでいた美しい人たちが、外に出て汚れていくことでいろんな感情を得ていく、という話をやりたかったんです。

なので、イオルフの里は当初、草木もまったく生えていない無菌室のような潔癖な場所を考えていました。だから、空には鳥がいないし、水のなかには魚がいないんです。でも、それを徹底すると画的にかなり寂しくなるということで、美術設定・コンセプトデザインの岡田(有章)さんや美術監督の東地(和生)さんは里のあちこちに花を置くという提案をくださったりして。ここの折り合いをどう付けるのかは、けっこう悩んだところでしたね。

結論としては、花の代わりにイオルフの織物「ヒビオル」を置くことにしました。そもそもイオルフの里には生き物がいないから、何かを作って外の世界と交易をしているんじゃないか、長命のイオルフだからこそ作りそうなものがあるんじゃないかと考えたところ……織物かなと。長い時間をかけて、この人たちは歴史を織っていくんだと。そんな経緯で、織り手の日々の出来事や思いを文字のように織り込んだ「ヒビオル」の設定ができました。現場とのディスカッションがあったからこそできた設定だと思っています。



 

――イオルフの、「数百年の寿命を持つ“別れの一族”」いう設定に関してはいかがですか?

岡田:その点は、強い人間関係を描くという目的からの設定です。もともと私は、時間による心の変化を描いた物語が好きで、『凪のあすから』や『あの花』でも取り入れていましたが、今回はそれをもう一歩進めた形のお話を作りたいと思っていました。

――その強い人間関係を、今作では「親子」という形に託しています。ここには、どんな狙いがあるのでしょうか?

岡田:マキアはただでさえ“別れの一族”なのに、親もいない。友達であるレイリア(CV:茅野愛衣)やクリム(CV:梶裕貴)と一緒に過ごしても、夕方になれば二人は家族のもとへ楽しそうに帰っていく。そんな日常のなかで、自分を一人ぼっちだと思い、誰かと強く結びつきたいと願うようになったのがマキアです。

そんな彼女が「壊れない強い人間関係ってなんだろう?」と考えたなら、やっぱり自分に親がいないからこそ、親子関係に行き着くんじゃないかと思いました。人と人との関係って、どれも解消しようと思えばできますけど、親子にはそれができない強さがあると思います。

▲レイリア(CV:茅野愛衣)とクリム(CV:梶裕貴)

▲レイリア(CV:茅野愛衣)とクリム(CV:梶裕貴)

 
親子というモチーフに惹かれたもう一つの理由は、関係に「役割」があるからです。自分を母親という役割に置くことで安心したり、逆に自分を追い詰めちゃったりする。まして本当の親子ではないので、すごくもがく部分があるだろうと思いました。

誰かをすごく求める気持ちと、それゆえの苦しみ。気持ちの歪みに向き合ったとき、物語として「もうちょっと自由になってもいいんだよ」と言えるのかどうか。そこも描きていきたいポイントでした。

 

石見さんならではの、子どもエリアルを怒る演技

――そんなマキアの声優に、石見舞菜香さんをキャスティングした決め手はなんだったのでしょう?

岡田:マキアは基本的に少女らしい子ですけど、数百年を生きるイオルフなので、長く生きていくうちに経験も積んでいって、大人の女性らしい感覚を得ていきます。だから声質には、純粋さに加えて芯の強さみたいなものがほしかった。石見さんはそのバランスがすごく良かったんですよね。オーディションで石見さんの演技を聞いたとき、手元の紙に「見つけた」って書いちゃったくらい(笑)。篠原さんと堀川さんも同じ思いだったようで、一緒に盛り上がりました。

特に良いと思ったのは、子ども時代のエリアルを怒るシーンでした。普通は、すごく怒るか、優しく諭すようにするか、もしくはセリフのキツさを和らげるためにかわいらしい方向に振ってくださるかだと思うんですけど、石見さんはどれとも違っていて。エリアルに怒るというよりも、マキア自身が母親としてやっていくことにいっぱいいっぱいになっていて、感情があふれてしまうようなイメージだったんです。息子を嫌っているわけじゃなく、自分に向けて怒っているような。まさにそのシーンの狙いどおりでした。

――石見さん自身には、現場でどんな印象を持ちましたか?

岡田:とってもピュアな子で、アフレコでは感情移入してくれたのか、涙を堪えているタイミングもありましたね。2日間あった収録のうち、1日目には読み合わせのときよりも少しパワーダウンしてしたようにも見えたんですが、2日目にはめちゃくちゃ良い演技をしてくれて。立て直すって、一番難しいことだと思うんです。

石見さんがP.A.WORKSに来て、石井さんとマキアについてお話をしたこともありました。アニメって絵と声が合わさって一人の役者さんだと思うんですが、石井さんの描かれる絵と石見さんの声がすごく合っているなぁと思っています。生きているキャラクターにしていただけて、本当に助けられましたね。

▲マキア(CV:石見舞菜香)

▲マキア(CV:石見舞菜香)

 

――エリアル役に入野自由さんをキャスティングしたのは、どういったことを期待されて?

岡田:エリアルは、ファンタジー設定に現実と地続きの気持ちを入れていく今回のドラマにおいて、あくまで普通の男の子として描きたいキャラクターでした。

現実にいるような男の子が、マキアのような特殊な存在と出会って一緒に過ごしたとき、どう動いていくのか。そこを描いていくわけですね。普通の子なので、反抗期もあって、マキアにひどいことも言ってしまうけれど、ちゃんと後悔をして、ちゃんと大人になっていきます。エリアルは決して完璧ではないけど、真摯な子なんです。

そういった現実の普通の少年らしい繊細さを表現できるのは誰だろうと考えたとき、最初に入野さんが浮かびましたね。たぶん入野さんが良いんだろうなぁって思いながら書いてたところもありました。

私のなかでは『あの花』のじんたん(宿海仁太)のイメージも強かったんですが、オーディションで声を聞いてみたら、やっぱり納得感があって。入野さんの声がもつ繊細さややんちゃさが、良い感じにエリアルに入ってくれていました。

特定のキャラに感情移入して書くことってあまりないんですが、今回は最初のころ、エリアルにすごく感情移入して書いていた気がします。こういう状況ならこうしちゃうかもって、自分に重ねながら書いたりしていて。エリアルも大好きなキャラクターになりましたね。

▲エリア(CV:入野自由)

▲エリア(CV:入野自由)

 

誰か一人の100パーセントなんていうアニメはあり得ない

――作品全体を通じて、画作りの面で特に注目してほしい部分などはありますか?

岡田:私としては、背景の「黒」が大好きなんです。劇場作品だからというのもありますが、私は温度のある黒が好きで、今回は多めに取り入れていただきました。キャラクターの感情と背景を合致させるなかで、背景に黒色を多めに使えば、そのぶん感情の高低差を出せるんじゃないかとも思ったんです。制作過程で、それは素人考えだって気付いたんですけれど……(笑)。

素人考えなので一時は控えていたんですが、「やっぱり言うべきだった」「やっぱりあそこは直すべきだった」と、やっぱり諦めきれなくて。結局は黒を多めに使うリテイクをお願いして、みなさんに迷惑をかけちゃいましたね……。それでも理解を示してくれて、すごくありがたかったです。「監督、どうせこうしたいんですよね?」「ハイ、そうしたいです」みたいなやりとりをしながら、東地さんもすごく支えてくださいました(笑)。

――企画当初から目指していた「なんとなくの部分まで到達できる脚本」は、どんな形で実現できましたか?

岡田:一つ例をあげると、序盤でマキアが初めてイオルフの里から外に出て世界の美しさに気付くシーンと、終盤で紆余曲折を経たマキアが改めて世界の美しさを実感するシーンでしょうか。ふたつのシーンは、伏線を敷く・回収する関係になっているんですが、その機能を、セリフではなく「背景の美しさ」に担わせる挑戦ができました。ト書きには、背景を指して「その美しさ」とだけ書いています。

もちろん、「初めて外に出て見た世界も今日のように美しかった」みたいなセリフで回収することもできるし、そうしたほうが楽で確実ではあります。でも東地さんの描く美しい背景が語るからこそ、セリフの純度を保ったまま、マキアの気持ちがなんとなく伝わるシーンにできた。印象的なシーンにできたと思っています。

――監督・脚本としての挑戦を経たいま、通常の脚本仕事に不自由さを感じる心配はありませんか?

岡田:自分で監督するのとは別の、「この監督はこれを求めてるんだ、よし!」っていう攻略の喜びがあるので大丈夫だと思います(笑)。脚本の必要性に迷った時期もあったんですが、監督を今回やってみて、脚本の良さを再認識できたところがありましたね。自分の想像以上に、現場のスタッフが脚本について話してくれていることもわかりました。

「岡田麿里100パーセントのアニメを作る」というところから始まりましたけど、誰か一人の100パーセントなんていうアニメはあり得なくて、ありえないからこそ良さがあるんだと改めて思えました。だから逆に、監督にアイデアを提供する脚本家の仕事に、改めて面白さを見いだせた気がしています。

  

――また監督をやってみたい気持ちはありますか?

岡田:いまは考えられませんが、題材によってはそう思うのかもしれません。でも、このスタッフじゃなきゃ無理ですね(笑)。それだけスタッフが頑張ってくれて完成に漕ぎ着けた面が大きいです。

監督をしてみて一番感じたのは、現場は生き物だということ。たとえば良い絵が上がってきたときに、現場のテンションが一気に上がることがあるんです。これって、やろうと思ってできるものではないんですよね。

1年前にはベテランの井上さんが「過去に例を見ないほど危機的な状況だね」っておっしゃるようなスケジュール感だったんですけど、なんとか乗り越えて。特に最後の2か月は、「ゾーンに入った!」って言い合うくらい、スタッフみんなが熱意をもってガーって進めてくださいました。

とりあえずの完成が見えてきたタイミングだったんですが、「それならもっと行ける!」と現場の全員が思っているような空気感があって……。本当にビックリするほど素晴らしい映像になりました。

その熱意に本当に打たれたし、渦中で一緒に作品を作れたことが本当にありがたかったですね。私の100パーセントなんてとうに超えた、スタッフの熱意が詰まった『さよ朝』を、早くたくさんの方に観ていただきたいです。

[取材&文・小林真之輔]

 

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作品情報

2018年2月24日(土)ロードショー

2018年2月24日(土)ロードショー

ストーリー

縦糸は流れ行く月日。横糸は人のなりわい。

人里離れた土地に住み、ヒビオルと呼ばれる布に日々の出来事を織り込みながら静かに暮らすイオルフの民。10代半ばで外見の成長が止まり数百年の寿命を持つ彼らは、“別れの一族”と呼ばれ、生ける伝説とされていた。

両親のいないイオルフの少女マキアは、仲間に囲まれた穏やかな日々を過ごしながらも、どこかで“ひとりぼっち”を感じていた。そんな彼らの日々は、一瞬で崩れ去る。

イオルフの長寿の血を求め、レナトと呼ばれる古の獣に跨りメザーテ軍が攻め込んできたのだ。絶望と混乱の中、イオルフ一番の美女レイリアはメザーテに連れさられ、マキアが密かに想いを寄せる少年クリムは行方不明に。

マキアはなんとか逃げ出したが、仲間も帰る場所も失ってしまう…。虚ろな心で暗い森をさまようマキア。そこで呼び寄せられるように出会ったのは、親を亡くしたばかりの“ひとりぼっち”の赤ん坊だった。

少年へ成長していくエリアル。時が経っても少女のままのマキア。同じ季節に、異なる時の流れ。変化する時代の中で、色合いを変えていく二人の絆―。ひとりぼっちがひとりぼっちと出会い紡ぎ出される、かけがえのない時間の物語。

 

スタッフ

監督・脚本:岡田麿里
副監督:篠原俊哉
キャラクター原案:吉田明彦
キャラクターデザイン・総作画監督:石井百合子
メインアニメーター:井上俊之
コア・ディレクター:平松禎史
美術監督:東地和生
美術設定・コンセプトデザイン:岡田有章
音楽:川井憲次
音響監督:若林和弘
主題歌:rionos「ウィアートル」(ランティス)作詞:riya 作曲・編曲:rionos
アニメーション制作:P.A.WORKS
製作:バンダイビジュアル/博報堂 DY ミュージック&ピクチャーズ/ランティス/P.A.WORKS/Cygames
配給:ショウゲート

 

キャスト

マキア:石見舞菜香
エリアル:入野自由
レイリア:茅野愛衣
クリム:梶 裕貴
ラシーヌ:沢城みゆき
ラング:細谷佳正
ミド:佐藤利奈
ディタ:日笠陽子
メドメル:久野美咲
イゾル:杉田智和
バロウ:平田広明

『さよならの朝に約束の花をかざろう』公式ホームページ
『さよならの朝に約束の花をかざろう』公式Twitter

(C)PROJECT MAQUIA

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