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劇場版『若おかみは小学生!』高坂希太郎監督×小林星蘭さんインタビュー

劇場版『若おかみは小学生!』高坂希太郎監督×小林星蘭さんインタビュー│豪華声優陣が演じるキャラクターに隠されたもうひとりのおっことは

「講談社青い鳥文庫」で累計発行部数300万部を誇る人気シリーズ『若おかみは小学生!』(原作:令丈ヒロ子・絵:亜沙美)。2018年4月からはTVアニメの放送もスタートし、児童を中心に根強い人気を誇っています。

そんな本作が劇場版『若おかみは小学生!』として、2018年9月21日(金)より全国公開中! 主人公・おっこはTVがシリーズに引き続き小林星蘭さんが、監督は『もののけ姫』や『千と千尋の神隠し』など、数多くのスタジオジブリ映画の作画監督でも知られる高坂希太郎氏が務めます。

この度、アニメイトタイムズは高坂監督と小林さんにインタビューを実施! アフレコ現場の雰囲気や作品を彩る豪華声優陣について、作中のキーマンにまつわる裏話など、様々なお話をお伺いしました!

「好きな作品なので嬉しくて嬉しくて涙が出てきてしまいました」

──まず監督が本作に携わることになった経緯についてお聞かせください。

高坂希太郎監督(以下、高坂):最初に友人から「TVシリーズの企画があるからイメージキャラクターを描いてくれ」と頼まれたことがきっかけですね。それで10点くらい描いてからしばらく音沙汰が無かったのですが、ある日呼ばれて「劇場アニメをやりたいから監督をお願いできないかな?」と言われ久しぶりに監督をやってみるのも面白いかもと思い、本作のお話を引き受ける事にしました。

──本作は女子児童を中心に人気を博している作品ですが、原作をご覧になっていかがでしたか?

高坂:最初は自分がこういう子供向け、女の子向けの作品をやることに違和感を持っていたんです。あまりそういう作品を見る機会もなかったですし、中年のおやじですから抵抗感もありました。でも、いざ読んでみると流石ベストセラーなだけあり、色々な登場人物や出来事が上手く作品に盛り込まれていて「令丈ヒロ子先生はお上手だな」と感心しました。そのことが、作品に引き込まれるきっかけになりましたね。

──小林さんはTVシリーズ・劇場版ともに、おっこ(関織子)を演じることになります。もともと今回の劇場版ありきでのオーディションだったかと思いますが、おっこ役に決まったときのお気持ちはいかがでしたか?

小林星蘭さん(以下、小林):小学校の時に学校の図書室で原作を読んだことがあって、みんなに大人気だったんです。もう借りるのは争奪戦でした。なのでオーディションのお話をいただいた時も「やる!」と即決をして、受かったかどうかを毎日マネージャーさんに確認していました(笑)。

一同:(笑)。

小林:それで合格したことを聞いたときは、本当に大好きな作品なので嬉しくて嬉しくて涙が出てきてしまいました。

──ちなみに小林さんがおっこ役に選ばれた決め手はどういった点なのでしょう?

高坂:お子さんがメインターゲットの一つでもあるので、大人が演じる子供よりは実際の子役にやっていただけると、より親近感が沸くのかなという思いはありましたね。

ただ、劇場版ではシリアスなシーンもありますので、そこを子役に頼むことで上手く演じられるかという心配はありましたが、小林さんにはオーディションの時からフレキシブルに演じていただけたので即決しました。

──なるほど。監督からご覧になって小林さんの演技はどう映りましたか?

高坂:すでにTVシリーズでアフレコを経験されていて、比較的慣れた状態でしたので大きなリテイクもなく、非常にスムーズに進んだと思います。ちょっとした要求にもすごく柔軟に対応していただけて感心しました。

──小林さんは劇場版とTVシリーズでアフレコの雰囲気は違いましたか?

小林:そうですね、心なしか劇場版の方が緊張感はありました。尺が長いこともありますし、絵も細かいのでどう表現したらいいかを考えて演じていました。また、劇場版はゲスト声優さんもいらっしゃいますが、TVシリーズと同様に松田颯水さん(ウリ坊役)をはじめ、いつものキャストのみなさんとも一緒に収録することができました。

TVシリーズの収録が始まるときは、今まで声優としての経験はほとんどなくて。ましてや声優として主演を務めさせていただくことも、もちろん初めてだったので最初は不安でした。でも周りの皆さんがとても優しくて、私がどう演技すればいいかを分かりやすく伝えてくれるので安心して演じられたかなと思います。

高坂:本作のアフレコでは、ゲスト声優のみなさんはまだ収録されていなかったので、エツ子さん役の一龍斎貞友さんが代役をして助けてくれましたよね。グローリー・水領役をやってくれたり。それも感じが出ていて凄くいい(笑)。

小林:周りの声優さんがたくさん支えてくださったので、私ものびのび演じさせていただくことができました。本当にありがたく思います。

春の屋を訪れるキーマンたちが映し出すおっこの可能性

──アフレコ現場においてもTVシリーズがいい方向に作用したわけですね。ゲスト声優のお話が出ていましたが、監督は公式コメントにておっこの両親である関正次(声:薬丸裕英)と関咲子(声:鈴木杏樹)の演技について触れていましたよね。おっこと両親のやり取りは作中でも重要なシーンかと思います。

高坂:薬丸さんと鈴木さんには、おっこの両親として上手に演じていただけて非常に満足しています。やっぱり快活な主人公おっこの人間性を育んだ両親なので、それを担保する存在感のようなものも表現していただけたかなと思います。

──見ていて非常に安心感のある、いい意味でありふれた親子のやり取りが繰り広げられていた印象を受けました。

高坂:親には、いつまでも子供を子供のままと思いたい親心があるじゃないですか。子供の方は成長しているのに、まだ幼いままのつもりでいる親。そんな親子ならではの雰囲気がよく出ていました。

実は、私はもうちょっとおっこの両親には大人な人間像を描いていたのですが、それをいい意味で裏切られたと言いますか。そんな親心が作品内で上手くコントラストとして効いてきたので良かったなと思います。

──「自分はもっとできるのに!」と思っているのに両親からは甘やかされる。そういう経験は小林さんにもありましたか?

小林:小学校6年生なのにまだ小さい子扱いされるという経験は私も実際にありました。なので、おっこに共感しながら演じていました。また、薬丸さんと鈴木さんの声には包容力があるので、その時点で理想の両親像だと個人的に思っていて(笑)。

──なるほど(笑)。その他、キーとなる人物も豪華な声優陣のみなさんが演じられています。

高坂:グローリー・水領役のホラン千秋さんはキラキラしていて、声も澄んでいて星蘭さんとも重なるところがあり、本当に上手にグローリーを演じていただきました。「あ、グローリーってこんな人なんだ」と思えるような芝居でしたね。ちなみに映画の中でのグローリーは、未来のおっこを意識しながら表現していただいたんです。

小林:え!? 今、初めて知りました!

高坂:あれ、言ってませんでした? ホランさんには言ってあったんですけどね(笑)。なのでそういう意味でもキャラクターと演技が上手く作用していると思いますし、もうちょっと登場させても良かった気がします(笑)。

あと、同じくお客さんとして訪れる神田あかね(声:小松未可子)は、現在のおっこをイメージしています。

──たしかに、おっこと似ていたり通ずる点に思い当たる節が……!

高坂:ただ、それが劇中に何か作用されるわけではないので。ちょっと詰まった時にどういう方向で表現するかの目印として、そういう設定を自分の中に持っていて、それぞれがおっこの成長を見守るような位置づけです。

小林:言われてみればグローリーさんって思ったことをズバッと言うタイプの人だなって思っていたので、おっこに似た部分があるのかも、と今言われてから気づきましたね。

高坂:(占い師も)同じお客さんを相手にする仕事ですしね。

小林:こういうのを聞いてしまうと何回も観たくなってしまいます!

成長し続けるおっこの原動力と、劇場版だからこそ秘められているメッセージとは

──まだ登場人物はいますし、そういった裏設定が隠されていそうですね。そんな彼女たちをはじめ様々なキャラクターが登場しますが、小林さんがおっこに大きく影響を与えたと思うキャラクターは?

小林:TVシリーズの頃からライバルとして登場している秋野真月さん(声:水樹奈々)でしょうか。見た目的にも性格的にも存在感があるような子で、おっこと同じく旅館の跡継ぎとなっていますが、ふたりはお互いがお互いを引き立てている様な気がします。

今作ではふたりが大きく喧嘩するシーンが描かれますが、それはお互いに旅館に対して熱意を持っているからこそ言い合えることなんだろうなと思います。真月さんがいるからこそおっこが引き立てられるし、おっこがいるからこそ真月さんが引き立てられているのかなと感じました。

高坂:真月はおっこと正反対なんですね。おっこは勉強は苦手だけど、真月は秀才。それと同時に真月の役割はある種、花の湯温泉街の象徴なんですよ。だから都会から来たおっこに対して、そう簡単に受け入れないという対応をずっとしているんです。

おっこがだんだん花の湯温泉街に染まっていくと言いますか、影響されて成長していくにつれて、花の湯温泉街を象徴する真月もだんだん受け入れていくという流れですよね。

──なるほど。様々な出来事を経験しながら若おかみとして成長し続けるおっこですが、小林さんからご覧になって彼女の元気の源はなんだと思いますか?

小林:おっこの元気は、やっぱりおばあちゃんやユーレイたちなど、周りで支えてくれる人達の存在がかなり大きいと思います。みんなで旅館の掃除を手伝うようなほのぼのしたシーンもそうですし、真月さんと喧嘩をしてしまったときも、いつでも一番近くにいて支えてくれる存在って大事だと思っています。

おばあちゃんや真月さんが周りにいて、さらにもっと近くにユーレイ達が存在していて。ユーレイも視えるおっこだからこそ成り立っていることがあると思いますし、みんなの存在が彼女の元気の源になっているように感じました。

──また、本シリーズは原作の文庫やTVシリーズなど幅広く展開していますが、劇場版だからこそ監督が伝えたかったこととは?

高坂:やっぱり旅館業なので、自分の気持ちを分かってほしいとか、本当の自分について考えることより、“まず人のことを大事にする”、“お客さんのことを考える”という態度。そして最後におっこ一人では解決できない壁が現れた時に、自分じゃない存在になる、若女将になる事で問題を収める振舞い。

そういう態度や考え方の変化、成長は一つの魅力ですし、やってみたら面白いんじゃないかなと思い、本作の制作の軸にしています。また、おっこが都会ではあまり経験したことのなかった成功体験や気づきの積み重ねも、成長する上では大事な要素だと思いますね。

──最後に本作を楽しみにしている方へ向けて、見どころについて教えてください。。

小林:今回、TVシリーズに続き、劇場版として上映されるということで、TVシリーズよりも深く、おっこの両親やユーレイ達の話に踏み込んでいる作品になったと思います。おっこの旅館に来たお客さん達に対する思いやりや、それを支えている周りの人達の優しさが本作を通して伝わればいいなと思います。また、お子さんから大人の方まで家族みんなで観ても楽しめる作品だと思うので、ぜひ細かいところまで楽しんでいただけたら嬉しいです。

高坂:もう小林さんに全部言われてしまいましたね(笑)。きっと親子連れでご覧になる方も多いと思います。大人の目線と子供の目線では見方が変わる作品だと思いますので、それぞれ映画を観終わった後に意見交換をしていただき、より相互理解を深めてもらうことができれば嬉しいですね。

──ありがとうございました。

[取材・文・写真/鳥谷部宏平]

作品情報

2018年9月21日(金)TOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー

【STORY】
小学6年生のおっこ(関織子)は交通事故で両親を亡くし、おばあちゃんが経営する花の湯温泉の旅館<春の屋>で若おかみ修業をしています。どじでおっちょこちょいのおっこは、ライバル旅館の跡取りで同級生の"ピンふり"こと真月から「あなた若おかみじゃなくて、バカおかみなの!?」とからかわれながらも、旅館に昔から住み着いているユーレイのウリ坊や、美陽、子鬼の鈴鬼たちに励まされながら、持ち前の明るさと頑張りで、お客様をもてなしていくのでした。いろんなお客様と出会い、触れあっていくにつれ、旅館の仕事の素晴らしさに気づき少しずつ自信をつけていくおっこ。やがて心も元気になっていきましたが、突然の別れの時がおとずれて―。

【STAFF】
原作:令丈ヒロ子・亜沙美(絵)(講談社青い鳥文庫『若おかみは小学生!』シリーズ)
監督:高坂希太郎
脚本:吉田玲子
音楽:鈴木慶一 他
製作:若おかみは小学生!製作委員会アニメーション
制作:DLE、マッドハウス
配給:ギャガ

【CAST】
小林星蘭
水樹奈々
松田颯水
薬丸裕英
鈴木杏樹
ホラン千秋
設楽統(バナナマン)
山寺宏一
遠藤璃菜
小桜エツコ
一龍斎春水
一龍斎貞友
てらそままさき
小松未可子
花澤香菜
田中誠人 他

公式サイト
アニメ公式Twitter(@anime_wakaokami)

(C)令丈ヒロ子・亜沙美・講談社/若おかみは小学生!製作委員会
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