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放送開始「ラディアン」岸監督&福岡SDインタビュー

重い世界観をセトの明るさで吹き飛ばす! いよいよ始まった「ラディアン」の見どころを岸誠二監督&福岡大生シリーズディレクターに直撃!

2018年10月6日(土)午後5:35よりNHK Eテレにて放送がスタートした、フランス発の少年冒険ファンタジー『ラディアン』!

最初から世界展開を狙っていることも、PR特番『空前絶後の冒険アニメ「ラディアン」』内で比嘉勇二アニメーションプロデューサーより明かされた本作品。

今回は岸誠二監督とシリーズディレクターの福岡大生さんに、本作をアニメ化する上でどんなところがポイントだったのかを伺いました。やはり原作者がフランス人のトニー・ヴァレント氏ということで、日本とは違う社会問題などが作品にも影響しているとか……。

また、前回の紹介記事『セト役・花守ゆみりさんがEテレにて10月6日スタートの「ラディアン」の魅力を語る!』で登場した花守ゆみりさんのお芝居に対しても、意外な注文がつけられていたことが発覚!?

スタッフが精魂込めて作り上げた『ラディアン』、世界に向けて発進します!

岸誠二(きし せいじ)
アニメーション演出家、アニメーション監督。株式会社ロジスティックス・アニメーション事業部「チームティルドーン」代表。
主な監督作品『瀬戸の花嫁』『天体戦士サンレッド』『Angel Beats!』『ダンガンロンパ 希望の学園と絶望の高校生 THE ANIMATION』『蒼き鋼のアルペジオ -アルス・ノヴァ-』『Persona4 the ANIMATION』『結城友奈は勇者である』『暗殺教室』『あそびあそばせ』ほか

福岡大生(ふくおか だいき)
アニメーション演出家、アニメーション監督。
主な監督作品『ダンガンロンパ3 -The End of 希望ヶ峰学園- 未来編』『ダンガンロンパ3 -The End of 希望ヶ峰学園- 絶望編』『ダンガンロンパ3 -The End of 希望ヶ峰学園- 希望編』『結城友奈は勇者である 鷲尾須美の章』『結城友奈は勇者である 勇者の章』ほか


原作者が褒めてくれるというのは初めて!?

――まずは作品の第一印象を教えてください。

岸誠二監督(以下、岸):原作はフランスのマンガですが、Lerche(ラルケ)さんからお話をいただいた時に、何も言わずに原作を渡されたんです。だから最初は詳細を知らずに手に取って、「すごい少年マンガらしい少年マンガだね。どこの雑誌で連載してるの? えっ、フランス!?」という驚きが第一印象ですね(笑)。

日本のマンガの技法をリスペクトし、アートとして落とし込む形で表現しているというお話を聞いて、そのクオリティの高さに驚きました。

福岡大生さん(以下、福岡):僕は、前にやっていた作品の終わり頃に「来年どうしようかな」と話していた時、岸さんに「福岡くん、少年マンガものやらない?」と言われて、「やりますやります!」と。

「それで、どんな作品なんですか?」と聞いたら「フランス原作の少年マンガなんだけど」と言われて、「えっ、フランスの少年マンガ!?」ってビックリしました。ファンタジーって言われても幅が広すぎるので、Lerche(ラルケ)さんに来て中身を見せてもらったら、日本の少年誌で連載していてもおかしくない作品だなと思いました。

後にトニーと話をしたら、これはフランスのバンド・デシネと日本の少年マンガが培った技術の融合なんだなと。フランスでは、バンド・デシネは芸術なんですよ。アート本みたいな感覚なんです。

7月にパリのジャパンエキスポに行った時に、ファンがトニーや僕に「本にサインしてくれ!」と言ってきてくれたんですけど、彼らにとってはバイブルともいうべき、貴重なアイテムになっているんです。

――逆に、これが日本人作家の作品だったら、この作風はどう受け取られたのかなと。

岸:日本人が描いていたら、この内容にはならなかったと思います。やっぱりフランスの作品なんだなと思うのは、差別が普通に存在するものとして描かれているところです。

福岡:ひととは違う特徴を持った人に対して差別意識を持っていることが、ちゃんと描かれていますね。

岸:フランスに行かせていただいた時に、向こうは移民の方や難民の方の問題が、日常としてあるわけです。その環境下にいた人間が描いた作品であるというのが、特徴として出ていますよね。我ら日本人では、この発想はまず出てこないだろうなと。

もちろん日本でも、作品に若干の差別表現が入ることはありますが。

福岡:どちらかというと、日本は学校内でのいじめとか、そういう問題になるんですよね。この作品は民族そのものに対しての差別を描き出しているから。

岸:民族間の紛争とか、被差別者の存在が普通にある空気感がそのまま描かれているから、作品内でもそれに対して疑問は抱かないんですね。差別している側もさらに差別されていたり、問題が根深くて広いのが大陸ならではというか。

――そんな作品を日本のアニメにする上で、日本人向けにアレンジした部分もあったのでしょうか?

福岡:ありますね。一番はセトの立ち位置、スタンスをどこに置くか。

元気な少年冒険活劇をやりたいということで、最初の1巻から2巻辺りのセトをベースにして、そこからだんだん成長していくように、段階を踏む描写には気をつけています。

岸:わかりやすい少年マンガの主人公として、構築しようとしています。原作のほうは世界観の複雑さがあっても、ページをめくるスピードは読み手のペースに委ねられるので、じっくり読み込むこともできるわけです。でも映像だと情報がどんどん流れていってしまいますので、もっとわかりやすく、はっきりと少年マンガ的に描きましょうというチューニングはさせていただきました。ただ、大元の設定を破壊しているわけではないので、印象は変えず、より元気なキャラクターになっているかなと思います。

――アニメ用に手を加えた部分について、トニーは何か言っていましたか?

福岡:「ストーリーを進めるためにこぼしてしまった、本当は描きたかった部分を、アニメで描いてもらえた」という感想をいただきましたね。シナリオをトニーにもチェックしてもらっているんですけど、「ここはいいですね!」ってどこがいいかを言ってくれるんです。

「ここは実はこうなっていて」と、注釈を加えてくれるのも助かります。

岸:あれはいい驚きだったよね。日本でも当然ながら、原作者サイド、スポンサーサイドとか色々なチェックがあるわけですが、褒めてくれるというのは初めてですね。これがフランス人の流儀かと!

福岡:「ここだけがダメ!」とか言われるより、「ここがいい!」って言ってくれるほうが素直に嬉しいし、わかりやすいんですよ。

岸:ぜひ、ほかの原作者さんも真似して頂けましたら(笑)。


セトの演技指導は「もっと何も考えてない感じで!」

――セトというキャラクターを描く上で気をつけたことはありますか?

福岡:アニメのセトはモノローグがないんですよ。だから自分の内に入らないように、思ったことはしっかり口に出す。セリフもシンプルにという感じで、キャラクターを形作っていきましたね。

岸:内に入らない人物にしようというのは、先ほど話した少年マンガ的なチューニングという部分とリンクしますけど。わかりやすい快活なキャラクターとして描くなら、モノローグで「僕はどうしたら……」なんてセリフは一切なし。ちゃんと前を向いて突き進むキャラクターにしましょうということです。

福岡:アフレコのディレクションで、「もっと何も考えてない感じで!」って言ってましたよね(笑)。「本能で考えてください」みたいな。

岸:「考えるな、感じるんだ!」ってやつです。ブルース・リーの「Don't think. Feel!」ですね。要は考えすぎてしまうと、内に内に入っていってしまうので、そこは思いきってやってくださいと。

福岡:物語にはシリアスな側面もあるから、演者としてそこを気にしてしまうことはあると思います。

――先日アフレコを見学させていただきましたが、花守さんだけセリフが図抜けて多かったんですよ。毎回こんな感じなんですか?

福岡:こんな感じです(笑)。この前はもっと多かったですよ。

岸:セトには主人公として暴れ回ってもらっているので。中盤以降はセト、メリ、ドクの3人の仲間を中心にして、物語を回していく。その中でも引っ張るのはセトであるというところでがんばってもらっているので、自ずとセリフも増えてくるわけです。

――アドリブをしてもいい回だったのか、みなさん芸の出し合いがすごかったですね。

岸:キャラクターに応じて「走ってください」とは言っています。掛け合いが楽しい、あの空間に行ってみたいと思ってもらいたいので、特にドクには「走り回ってください。いいから好きにやってください」と。

――メリはアニメでどんなキャラクターになりましたか?

福岡:けっこう難しかったですね。悠木さんとキャラを作っていく際も、こちらも探り探りで。裏メリと呼ばれる、人格が変わったほうはわかりやすいんですけど、表のメリがどんな感じなのか。天然なんだけど、どこにベースを置くかとか。

岸:結果的には、フワッとした面白い子として描いてみようということになったんですけど、暴れ回るセトについていくやり方が難しくて。ボケ役なんだけど、セトもボケるから大変なんですよ(笑)。

――裏メリはツンデレかなと思ったのですが。

福岡:ツンデレとまではいかないですね。そう見える描写はたしかにあるんですけど、どこまでもストイックで厳しい人で。

岸:さらに言えば、サディスティックなキャラクターとして描かれていますね。女王様やアマゾネスのような、きつい印象を立てるようにしています。

――セトへの好意は、裏メリのほうがわかりやすい気がするのですが。

岸:そんな感じはしますね。

福岡:裏メリのほうがストレートですよね。

岸:表のほうが引っ込む感じがありますから、たしかにわかりやすい部分はありますが。とはいえ、恋愛関係を描くつもりはあまりないので、あくまでも仲間として。男女でも友達として見るくらいの精神年齢で描いています。恋愛観としては、小学生くらいのところから飛び出ない。

福岡:メリにとって友達はとても大事なファクターなんです。裏メリになるという特徴から、なかなか親しい人が出来ない。そんな中、物怖じしないでちゃんと付き合ってくれるセトに対して、初めて友達らしい友達が出来た喜びというほうに持っていきたいなと。

――それと、序盤の重要キャラであるアルマなのですが、セトの関係については?

福岡:親子に近い感じで描きましたね。

岸:やっていること、言っていることすべて、完全に母親としてアルマは描かれています。3話辺りまでで、旅立つ少年を見送る母親としての役どころは一旦終了させていただきますけれど。

何があっても負けないセトの前向きさが魅力!

――次に、世界観について伺います。ネメシスという正体不明で強力な敵、魔法使いを嫌う一般人など、主人公を取り巻く状況が厳しすぎる気がするのですが。

岸:日本の感覚とは少し違いますよね。

福岡:難しいですよね。ネメシスとかも、トニーに色々聞きながらやっているんですけど。魔法使いを嫌う一般人たちというのは、たとえば角が生えていたり、身体に変な紋様が出ている人が、自分を殺せる不思議な力を持っていたら、少し距離を置いてしまう感覚はあると思うんです。

あとはプロパガンダで「あいつらは危険だ!」って植えつけられているんですね、この世界の人たちは。

岸:反社会的とレッテルを貼られたり、差別による決めつけなど、二重三重に追い込まれていますよね。それが当たり前にある社会として描かれている。

――娯楽作品として考えると、日本人にはきついと感じかねない気がします。

福岡:その辺はシナリオ会議でも、わりと戦いがあったところなんです。そのまま描くのは難しいかもしれないが、そこを描かないとこの作品をやる意味がない。じゃあどうするか。

主人公がヒーローとして活躍する中で、差別とも戦っていく姿をちゃんと描こうと。主人公は負けない、くよくよしない。そうするだけで、物語に希望というか、少年マンガとしての正しい方向性を与えてくれるんです。

岸:もしもセトが悩んでしまうタイプだと、世界が深刻なだけに、物語もより暗い部分が浮き彫りになってしまうから、それはやめようと。そこは少年活劇なんだし、セトが前を向いて走ってくれるから、差別問題を描いたとしても極端にきつい感じにはならない。セトにはその辺りのバランサーになってもらっている感じですね。

――魔法や船で空を飛ぶというのは、アニメ的にすごく派手に描ける要素かと思いますが、その辺りはいかがですか?

福岡:久々に空中戦というか、ずっと空にいて、地面をあまり描かないので――。

岸:アニメ的にはありがたい(笑)。

福岡:ロボットものでも、地面で戦うより空中戦のほうが助かるんですけど。

岸:早く宇宙に行かないかな、みたいな(笑)。

福岡:それをめっちゃ味わいました(笑)。

岸:とはいえ、中盤以降は舞台的にはエライことになるんですけど。

福岡:いや~、どうしようかなぁ。

岸:それまでは存分に空飛ばしてくれよと(笑)。舞台として爽快感もありますし、原作がいい世界をくれたと思いますね。

福岡:空をメインにした話も用意しています。せっかくなので、空を思いっきり飛んでみたいなという子供の頃の夢を表現するつもりで描いていますね。

――いよいよ放送開始ということで、意気込みをお願いします。

岸:スタッフみんな、死にそうになるほどがんばっているので、大丈夫です!

福岡:死に物狂いで作っています(笑)。

――序盤の見どころは?

岸:何はともあれ元気な主人公のキャラクターと、世界観を楽しんでいただくのが一番ですね。それが入口ですから、そこからどういう物語が派生していくのかは後のお楽しみです。

まずはキャラクターたちに触れていただき、第1話からスペクタクルな展開も起こったりと、昔ながらの「続きが楽しみになるようなテレビ番組」の構成になっていますので、続けて観ていただけると嬉しいです。

福岡:やっぱり「楽しい第1話」というのを意識して作りました。原作にいないオリジナルキャラクターも出てきます。その子もトニーの了解を取りながら、ちゃんと世界観に馴染めるように作りましたので、楽しんで欲しいです。

あとは何といっても、セトのタイタンパンチ! タイタンパンチがどういう扱われ方をされているのかを見ていただきたいですね。原作も、第1話の冒頭はタイタンパンチなんですよ。アニメもやっぱり冒頭はタイタンパンチかなと。

「不思議な力“ファンタジア”ってこんな感じなんだ」と見ていただけると嬉しいです。

番組情報
『ラディアン』
Eテレにて2018年10月6日(土)より、毎週土曜日午後5:35~ 放送スタート

【あらすじ】
カッコいい大魔法使いになることを目指す少年・セト。空からやってくる怪物・ネメシスを倒すため、毎日魔法の特訓に励むが、うまくいかずトラブル続き。住人たちに迷惑をかけ、育ての親・アルマからも叱られてしまう。

そんなとき、超巨大ネメシスが町を襲う! 世界を救うためネメシスの根絶を決意したセトは、ネメシスの巣があるという伝説の地“ラディアン”を探す旅に出る。新たな仲間との出会いや、強敵との戦い、待ち受ける困難に立ち向かうセトの冒険が今、始まる!(全21話)

【スタッフ】
原作/トニー・ヴァレント
監督/岸 誠二
シリーズディレクター/福岡大生
シリーズ構成/上江洲 誠
脚本/重信 康、蒼樹靖子、菅原雪絵
キャラクターデザイン・総作画監督/河野のぞみ
プロップデザイン/沙倉拓実
モンスターデザイン/廣瀬智仁
アクション作画監督/アミサキリョウコ
美術監督/鈴木友成
色彩設計/竹川美緒
撮影監督/中川せな
音楽/甲田雅人
オープニングテーマ/『Utopia』 歌:04 Limited Sazabys
エンディングテーマ/『ラディアン』 歌:ポルカドットスティングレイ
アニメーションプロデューサー/宮﨑裕司、比嘉勇二
プロデューサー/藤田裕介
制作統括/米村裕子、八木雪子
アニメーション制作/Lerche
制作/NHKエンタープライズ
制作・著作/NHK

【キャスト】
セト/花守ゆみり
メリ/悠木 碧
ドク/大畑伸太郎
アルマ/朴 璐美
ミスター・ボブリー/小市眞琴
ドラグノフ/遊佐浩二
グリム/子安武人
マスター・ロード・マジェスティ/山口勝平
ヤガ/吉野裕行
ミス・メルバ/東山奈央
トルク/三宅健太
フォン・ツェペシュ/寺島拓篤
ウルミナ・バグリオーレ/早見沙織
リゼロッテ/佐倉綾音
サントーリ/緒方賢一
ピオドン/木村良平
ボス/稲田 徹
ナレーション/速水 奨

>>アニメ「ラディアン」公式サイト

(C)2018 Tony Valente, ANKAMA EDITIONS / NHK, NEP
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