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『Tokyo 7th シスターズ(ナナシス)』茂木伸太郎インタビュー|0.7、5.0を振り返る

『Tokyo 7th シスターズ』茂木伸太郎総監督インタビュー|“真正面から愛を描いた0.7”“未来に恋する5.0”はどうやって生まれた? そして今後の展開、長編アニメ化など語る。


※このインタビューは2020年2月20日に行われ、3月下旬に公開予定でしたが、新型コロナウィルスの影響により公開を2020年4月29日へ延期しました。


アプリゲームは1年続けるのが難しいと言われている昨今、サービススタートから今年で6周年を迎えた『Tokyo 7th シスターズ』(以下、ナナシス)。ドラマチックなストーリーとハイクオリティな音楽群が話題を博し、多くの支配人(ゲームプレイヤーの総称)に愛されている。

アイドルを描く物語だが、アイドル作品ではない。アイドルを中心とした人間ドラマは、どこか温かく、どこか哀しく、そして希望に満ちている。

こと音楽となるとそのセンスはピカイチだ。『ナナシス』のライブに足を運べば、その凄さが理解できると思う。心が動く体験ができるはずだ。

アニメイトタイムズでも長い間『ナナシス』を追いかけてきた。特に『ナナシス』の生みの親であり、監督/脚本/音楽プロデューサーなど、あらゆる意味でクリエイターとして『ナナシス』を作ってきた総監督・茂木伸太郎さんには何度もインタビューを行った。

今回はその中でも特別貴重なインタビューになったように思う。だが、これが『ナナシス』、これが“茂木伸太郎”の魅力なのだ。

茂木監督にはこの1年を振り返っていただいた。EPISODEシリーズからは『0.7』と『5.0』について、そして待望のアニメ化や今後の展開についてだ。

これまで『ナナシス』を応援してきた支配人には必ず読んでほしい。あなたたちが追いかけてきた物語は本物だった、と気づくことだろう。

物語と音楽、原点に帰ろう

――『ナナシス』6周年、そして長編アニメ化決定もおめでとうございます。この一年を振り返ってみていかがですか?

茂木:ありがとうございます。特報動画を見ていただいても分かるように、ロゴをはじめ、集大成になるようにと思って作りました。「EPISODEシリーズ」の完結編をやるということと完全新作アニメ化。特にアニメに関してはこれまでずっと待っていてくれた皆さんに向けて、嬉しい報告ができたかな、という感じです。2019年の春頃からずっと準備をしてきたものなので、僕も嬉しいです。

また、この一年について言えば、アニメ化の件と同時並行で、『4.0』、『0.7』、『5.0』と立て続けに「EPISODEシリーズ」を続けてきました。それは5周年記念のコメントでも述べたように「一回、原点に帰ろう」というのがテーマだったからです。原点というのは「物語と音楽」の2点。それを実直に進めていく、というもの。そもそも『ナナシス』とは何か? と聞かれたら、僕ならそう答えるというものです。これは自分でも不思議と、6年前も現在も変わらなかったみたいです。

まぁ、それは建前として、個人的にはQOPソロライブ、5thライブもあり、CDも限界まで出して……と、いつにも増してしんどかったです。

――(笑)。

茂木:作品としての形態と、コンテンツと呼ばれるもの、あるいはアプリゲームとしての形態を同時に進行していかなくてはならないのが、『ナナシス』制作のキツいところですね。連載型といいますか。エピソードを心血注ぎながら作り、その裏で同時に全然関係のない音源のリリースやライブもできる限りやっていかなければならない。たとえば底抜けに明るいものでないといけないものを作っている最中に、別件ではヘビーなシチュエーションを描く必要があってとか、そういうことが普通にある状態です。まず作り手として精神的なバランスをとるのが非常に難しいし、単純に体力的にもキツいです。

――ああいった力の入ったエピソードだけでも大変でしょうに、さらに同時並行の制作をしているということで想像を絶します。

茂木:そうですね。でも、そういう頑張りをやってきたおかげで7年目を迎えられているという見方もできます。それに関しては、純粋に頑張ってやってきた甲斐があるものだとも思っています。

――今も変わらず、ゲームの監修までされているのでしょうか?

茂木:どこまでを監修と呼ぶかにもよりますが、アプリゲームとしての運営方針、企画には携わっていません。アップデート内容や企画についての確認はありますが、あくまで確認程度です。ゲーム開発・運営側にもゲームのプロデューサーやスタッフが大勢いるので。

ただ、これまで通り、ゲーム側で表示されるテキストやゲームシステム内の何かしら世界観に関するテキスト、あるいはカードイラストなどの、所謂「クリエイティブ」と呼ばれるものについては自分が統括する「スタジオ」と呼ばれるコンテンツ・クリエイティブの制作チームが作っているので、すべて監督しています。カードイラストで言えば、制作リストや企画自体はゲームチーム側からやってきて、スタジオ側はその要望を元に打ち合わせしながら精査し、実際にイラストとテキストを制作する。それで出来上がった成果物をゲーム開発・運営側に渡すという形です。逆に「EPISODEシリーズ」や「PVや音楽」に関しては、こちらが企画・制作をします。

――毎回、EPISODEのクレジットで茂木さんのお名前をたくさん拝見します。

茂木:本当はたくさん名前が出るのは美しくないのであまり好きではないんですが、実際にやっているということもあり、仕方ないと諦めています(笑)。

ただ、正直に言えば、ナナシス全体を見たときに昔ほどガッツリと監修できなくなっているのも事実です。2019年は特にコンテンツ展開だけでも膨大な数があったので、「まるで見ることができませんでした」という部分もあります。だから、監修に関しては「これまで通り、すべてやりました」と口にするつもりは全然なくて。

――監修業というのは茂木さんにとってどんなものでしょうか?

茂木:人それぞれだと思いますが、僕にとっての監修というのは「それはダメです」と言うことではなく「ならどうするのか?」も一緒に提案することですね。なので当然、時間もかかります。

そういう意味で、最初に「もう無理だな」と思ったのは4thライブ(Tokyo 7th シスターズ 4th Anniversary Live -FES!! AND YOUR LIGHT- in Makuhari Messe)のBlu-rayの監修の作業でした。ちょうど僕が『4.0』の作業をしている最中だったので、そもそもチェックする量が膨大になる長尺のライブ動画の監修は非常に厳しかったんです。できる限りやりましたが、それでもそれまでのライブ映像商品と比べるとほぼしていないレベルかと思います。それもあり、QOP1stライブと5thライブのBlu-ray制作に関しては、初めて「監修」というクレジットから自分を外していただきました。

――それは気が付きませんでした。

茂木:ただ、それが悪いことだとも思っていません。できる限り自分でやりたいという気持ちも未だありますが、無理をしてでもみんなで頑張った制作物に対して、自分がボトルネックになって発売を遅らせる、時期を逃すなどは、やはり避けたいと思います。もっと具体的に言うと、七花少女やCASQUETTE’Sなどの新ユニットの音源、Le☆S☆Caのミニアルバムに関してもそうですね。レコーディングに顔を出せなかった時も多々ありました。総合的な監修はしていますが、かなりの部分をスタッフに任せています。

――2年ほど前のインタビューで、自分の手から放していきたいということは言っていたと思うんですが、まさにそれが現実になってきていますね。

茂木:そうですね。じゃあその中で僕は何をしていたのかといえば、先程も言った通り、基本に立ち返って「物語と音楽」を実直にやった一年となりました。とはいえ、やはりこちらもそう簡単な話ではなく……。

――(笑)。

茂木:実は『0.7』の制作中に、今回の長編アニメのプロットや脚本作業が重なってしまったりもしたんです。そういう個人としての作業は、個人的な頑張りの範囲内でどうにかなります。が、脚本完成以降のアニメの監修業に関しては、諸々恐ろしいことになりそうだったので、『5.0』は一部の作業を他のスタッフに任せる形にしました。

――そういえば、『5.0』は総監督・脚本・演出でクレジットされていました。

茂木:一番の違いはスチル部分のコンテを自分で描いていないことですね。基本的にはイメージを伝えて、スタッフにコンテを描いてもらって、それを修正してもらってという感じで進めました。これに関してはずいぶんと助かりました。また、いつも膨大な量となっている表情差分制作の指示出しも、基本的には本読み(脚本読み)の時点でスタッフにイメージを伝えて、あとは任せました。その上で、どの表情をどこで使うか、音楽はどこで鳴るのか、声の演技はどうするのか、映像編集は、などの演出と呼ばれる部分は、これまで通り自分で監督しました。

――今のお話を聞くと、より通常の監督業というか、制作進行においてはいいバランスになっている、といった感じでしょうか?

茂木:そうですね。それというのも実は去年、夏のライブ後と『0.7』終わりの『5.0』初期制作の段階で、二度ほど過労で倒れたりもしまして。さすがに身体的にこれはちょっと危ないなと感じまして……昔よりもいろいろバランスよく、しかし厳密にセーブしないとダメだなと、真剣に。

――それは本当に心配です……。

茂木:だから夏以降余計に、きっぱり自分でやることやらないことを分け始めたということもあります。ちょっとなら、と自分でやり始めると、結果どっぷりというのがこれまでだったので。そこはもうきっぱりと。

――このタイミングで言うのもなんですが、ライブなども「もっと見たい」という人もいるかと思います。

茂木:はい、そうだと思います。だからいつの頃だったか……QOPライブが終わった頃だったかな。ビクターさんにはそういう事情もしっかりお話ししましたね。もし、今後もっとライブをやりたいという話であれば、「自分は深く関われませんが、自由にやってくださって結構です」と。

――え? そのお話はとても意外です。

茂木:そう思われてるんだろうな、と思っていました(笑)。僕個人の気持ちはともかく、「たった一人」が企画・制作に携われないからやらない、というのはビジネス的には不健康なんですよ。だから結構昔からそのスタンスでした。なんだかそうじゃない見え方をしてるなぁというのは自分でも感じていたので、いま言えてよかったです。結果的に自分がやってきましたが、ライブというものは本当にしんどいんですよ。1回で心身共にボロボロになるんです。だからビクターさんにお伝えした言葉も本音です。

ただ、以前にもお話したかと思いますが、うちの場合、「ライブをやる」というハードル自体がものすごく高い。会場もそうですし、キャストさんとのスケジュール連携もですね。特に大きな規模となるアニバーサリーライブは、その難易度がソロ系ライブの比ではありませんし、ソロ系ライブでも今や十分にハードルが高い。5thライブ以降、ビクターさんも「では、やります」とならないのは、そういう理由だと思います。

個人的には自分が制作を背負う場合は、心血を注げるタイミングで、心血を注いだものをお見せしたいと思うので、現状は致し方ないというのが本音です。

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