『珍遊記』スッポンポンの山田太郎役・松山ケンイチさんインタビュー

伝説のギャグ漫画『珍遊記』 まもなく実写映画が公開!! 松山ケンイチさんに聞く、スッポンポンの主人公・山田太郎とは!?

 1990年より週刊少年ジャンプで連載され、シリーズ累計販売部数約400万部を記録した、漫☆画太郎さんによるギャグ漫画『珍遊記~太郎とゆかいな仲間たち~』。破天荒な内容で、もはや伝説となっている同作が、脚本にお笑いトリオ・鬼ヶ島のリーダーであるおおかわらさんと、『銀魂°』『おそ松さん』で有名な放送作家・松原秀さんを迎え、まさかの実写映画化! 映画『珍遊記』として、2月27日(土)より新宿バルト9他にて全国ロードショーとなります。

 坊主頭にパンツ一丁の主人公・山田太郎を演じたのは、『デスノート』のL、『デトロイト・メタル・シティ』のヨハネ・クラウザーⅡ世、『ど根性ガエル』のひろしなどでおなじみ、俳優の松山ケンイチさん。今回の記事では、そんな松山さんにインタビューを実施! 映画の見どころはもちろん、山田太郎という規格外のキャラクターについて、そして松山さんが俳優としていま考えていることなども含めてお届けします!

■ 裸になる恥ずかしさは……数分で慣れた!?

――漫☆画太郎さんの原作『珍遊記~太郎とゆかいな仲間たち~』は、もともとご存知でしたか?

山田太郎役・松山ケンイチさん(以下、松山):知っていましたが、僕がまだ小さい頃の連載ということで、読んではいませんでした。漫☆画太郎さんの作品は、(山口雄大監督が同じく実写映画を手がけた)『地獄甲子園』から入ったんです。

――主人公・山田太郎役のオファーが来た時にどう思いましたか?

松山:漫☆画太郎さん作品の実写化ということ自体、珍しいことだと思いますし、その中で山田太郎を演じるのはもちろん戸惑いがあるというか、これは大変だな……とは思いました。でもいろんなことに挑戦して、いろんなことを感じたいという気持ちが自分の中にあって。「これはちょっと……」と言ってやらないよりも、やったほうがいいかなと。挑戦できるきっかけは逃したくないので、思いっきりぶつかってみようと思いました。

監督が(山口)雄大さんだからというのも大きいですね。映画『ユメ十夜』(2007年)の短編のひとつで初めて一緒にやらせていただいたんですが、それ以降なかなか合わなくて……。今回ご一緒できてすごくうれしかったですね。

――これはちょっと……と思われた理由のひとつに、「裸になる」ということもあったと思います。

松山:普段は服を着てるわけですから、それを全部脱いでカメラの前に立つというのは、最初はちょっと恥ずかしさがあるんですけど、すぐになくなるんですよね。慣れちゃうんです、数分後にはもう。裸って気持ちいいなと……。

一同:(笑)

松山:裸で前貼りしかしてないのに、股開いて座ってたり……普通になっちゃうんですよね(笑)。環境って怖いなと思います。例えば渋谷の真ん中で裸になれと言われたら全然違うと思いますけど、こういう作られた世界観の中で裸になっていいんだよって言われたら、全然なれちゃうんです。

――裸になるにあたって、体作りなどはありましたか?

松山:山田太郎の風貌って、お腹がポヨンと出てる子どもなので、監督からは「男らしい身体には絶対しないでくれ」と言われていました。だらしない体型にしないと山田太郎じゃなくなってしまうんです。なのでこの作品の期間はたくさん食べたり飲んだりして、腹が出るようにずっとがんばってました。あとは毛がない感じにしてほしいということで、全身の毛を剃りました。

■ 「野性的」に演じた山田太郎! ドラゴンボールばりのアクションシーンにも注目

――山田太郎はかなり個性的なキャラクターですが、役作りで参考にしたものなどはありますか?

松山:子どもである山田太郎を、僕みたいな30歳の大人がどうやって演じればいいのか悩みどころでした。監督からは『七人の侍』で三船敏郎さんが演じる”菊千代”みたいな、サルっぽいイメージがあるとうかがって、自分としても参考にしましたね。

漫画に似せようとするとどうしても限界があるので、山田太郎を形作る精神的な要素を考えて、その中のどこを自分につなげていくのか……というやり方をとるんです。結局、ファンタジーな感じではなく、より生身の人間というか、動物的・野性的な感じの表現になるかなと思うようになりました。自分の中でそれがうまくつながって、割とスムーズに演じられたと思います。

――実際に演じ始めてから最後まで、その方向性は変わりませんでしたか?

松山:自分の中では腑に落ちていて、始まってから「これどうしようかな……」みたいなことはあまりなかったですね。もう一回やっても同じ感じになるんじゃないかなと思います。

――野性的な山田太郎を演じる中で、特にここがしっくりきた! といったシーンなどはありますか?

松山:温水洋一さん演じる中村泰造とのアクションシーンですね。しっくりきたというか、自分の中ではドラゴンボールっぽいなと思いました。今回の映画ではあまりないんですが、原作は結構ドラゴンボールネタが入っているんです。当時の感じをイメージしたら、自然にドラゴンボールっぽくなっちゃいました。考えてみたらドラゴンボールも、(悟空は)サルがモチーフですよね。

――ものすごくスピーディーで、すごい迫力のアクションシーンでした。

松山:アクションって本当に殴っているとかそういうことよりも、見え方がすごく大事なんですよね。毎回アクションシーンは勉強になるんですけど、今回もいろいろ得られるものがありました。『珍遊記』の世界では中村泰造が一番の強者なので、温水さん中心でアクションが繰り広げられていくんです。自分はそこに合わせていく……という感じで、とても勉強になりました。

――映画全体でみると、山田太郎はあまり物語を引っ張っていくタイプの主人公ではない印象なのですが、演じていてそのあたりはいかがでしたか?

松山:僕はこういう役がやっぱり多いんです。何かを背負っている役だとか、引っ張っていかなくちゃいけない役だとやり方が違って、そっちはそっちですごく楽しいんですけど。自由に引っかき回す役のほうが好きですね。今回も楽しんで演じられました。

■ 俳優・松山ケンイチさんの今

――本当にいろんな役柄を演じられている松山さんですが、出演する作品を決める間口は、とにかく広く広くと意識されているのでしょうか?

松山:そうですね。あんまり方向性を決めないほうが、おもしろいかなと思っています。

――『珍遊記』も含めて、松山さんへのイメージのひとつに「おもしろいこともやっていただける方」といった部分があると思います。昔のご自身と比べて、仕事や表現に対する変化を感じますか?

松山:こだわらなくなったんですかね。もともとの自分の性格って、食わず嫌いというか、偏見を持ってしまうようなところがどうしてもあるんです。でも、やっぱり経験しないと何事もわからないですよね。やらなかったらわかる可能性はゼロなので。だからあんまり偏見を持たずに、できる限りいろいろ動きまわりたいなって思ったんです。いろんなジャンル・役をやりはじめたのも、そうしたところがきっかけです。

もちろん、自分が観ていて好きな作品はいろいろあるんですけど、「だからそれに出たい!」ということではないんです。挑戦……なのかもしれないですが、いろんなものの間で揺れていたいというか、固めたくない気持ちはあります。イメージを作ったほうが楽だとも思うんですけど、どこかでそこに反抗している自分がいて。自分自身もどんどん裏切っていきたいし、お客さんもどんどん裏切っていきたいなっていう気持ちはずっとあります。

――いつ頃からそう考えるようになったのでしょうか?

松山:『デスノート』(2006年)の頃、21歳くらいの時にすごく思ってましたね。でもそこから、「イメージを作らないことがイメージ」になってしまっていると感じることもあって、それも壊したいなと思い……。なんか、何周もしてるんです。

そういう反抗があったんですけど、それもどうでもいいやって思えて演技できているのが今の僕なのかもしれません。でも結局、今も昔も、目指してるところは同じなんだろうなと思います。いろんなジャンル・役の間で揺れている時が幸せですね。

――そんな松山さんから見て、今回の『珍遊記』のような”漫画ジャンル”はどういった存在ですか?

松山:漫画って、ひとコマごとにセリフがありますけど、そのコマにはひとつの表情しかないじゃないですか。「このセリフを表現するための最適な顔」っていうことだと思うんですけど、それがすごく参考になりますね。僕ら俳優は動いていて、手ぶりとかもいろいろ使えますけど、漫画の登場人物は使えないですからね。だから漫画の中の顔って強いと思うんです。いい表情がいっぱいあるし、このセリフをこの顔で言うか! という感覚だったり。すごく参考にしますね。

漫画、アニメ、実写映画もそうですけど、その時々に観るものに自分が影響されるんです。だから今回は『七人の侍』を観ながらやっていましたし。漫画やアニメはもう、アイデアがすごいので、自分の勉強のツールとしてずっとありますね。

――ご自身で普通に楽しんでいる漫画やアニメで、演じてみたいと思うものはありますか?

松山:たまに本屋めぐりをして何か実写映画にできないかなって探したりするんですけど、「実写化決定!」の帯がたくさん出ていたりして、最近はうまいこと見つけられていないですね。去年TVドラマで主演させていただいたオノ・ナツメさん原作の『ふたがしら』(IKKI COMIX)は、それこそ本屋で見つけて、これを映像にしたらおもしろいだろうなって思ったのが出会いでした。

ここ最近はちょっと違う方面ですけど、「行動科学」の本がおもしろかったですね。人間はどこで幸福を計るのか……というテーマの本なんですけど、こういうものからも映画やドラマが生まれないかなと思いながら読んでました。ちょっと想像つかないですけど。

――ちなみに松山さんが幸せを感じるのはどんな時でしょうか?

松山:やっぱり僕は「家族」になっちゃいますね。家族に意識がいっていたり、仕事に意識がいっていたり、その時々によりますけど。友達とかも全部僕にとって必要なものなので、うまく付き合っていければいいなと思っています。

■ 『珍遊記』では、死=スッポンポン! 子どもにもぜひ観てほしい

――ご家族といえば、松山さんのお子さんから『珍遊記』への反応はありましたか?

松山:完成した映画を一緒に観ました。ワッ! て言って笑ったり、夢中になっていたので、この演じ方で良かったんだなと改めてちょっと思いました。

――原作者の漫☆画太郎先生のリアクションも良かったと聞きました。

松山:残念ながらまだ直接お会いしたことはないんですが、監督経由でうかがっています。漫☆画太郎さんの中でもおもしろかったみたいで、うれしいです。

――最後に、映画を楽しみにしている方にメッセージをお願いします。

松山:『珍遊記』の原作が好きな人には、もしかしたら物足りないかもしれないです。やっぱりあの原作には、真似できない激しさがありますからね。今回の映画は一応、原作を整理整頓して、ちゃんと終わるようにストーリーが組み立てられているので、そのぶん観やすくなっています。原作ファンの方にはぜひ、「あ~こういう形になったのね!」と確認しに来てもらいたいなと思います。

あとは子どもですね。現実には死とかいろいろありますけど、『珍遊記』の世界の中では「死=スッポンポン」なんです。裸になっちゃった! イコール死っていうか。そこもすごくおもしろいし、危険な場面がない映画なので、子どもにぜひ観ていただきたいです。ただ、あんまり太郎の真似をしちゃダメですけど(笑)

――ありがとうございました!


■ 「珍遊記」 作品情報

<STORY>
天竺を目指して旅を続けていた坊主・玄奘は、偶然立ち寄った家のじじいとばばあに、天下の不良少年・山田太郎を更生させて欲しいと頼まれ、宝珠の力で恐るべき妖力を封印するが、嫌々ながら太郎を引き取り、何の因果か共に旅をすることに――果たして、彼らは無事に天竺まで辿り着くことが出来るのか?(いや、出来ない!)

<CREDIT>
出演:松山ケンイチ、倉科カナ、溝端淳平、田山涼成、笹野高史、温水洋一、ピエール瀧
監督:山口雄大
原作:漫☆画太郎「珍遊記~太郎とゆかいな仲間たち~」(集英社刊)
脚本:おおかわら/松原秀
企画・総合プロデューサー:紙谷零
制作プロダクション:DLE
配給:東映

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(C)漫☆画太郎/集英社・「珍遊記」製作委員会
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