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『聖戦士ダンバイン』富野監督が今だから語れる真実とは?

『聖戦士ダンバイン』HDリマスターがアニマックスで初放送!富野由悠季監督が今だからこそ語れる真実とは?

 西洋的ファンタジーの世界観と巨大ロボットというジャンルを融合させた異色の作品『聖戦士ダンバイン』(以下、ダンバイン)。『機動戦士ガンダム』『伝説巨神イデオン』を始めとした数々のロボットアニメを生み出してきた富野由悠季監督が手がけた作品であり、オーラマシンと呼ばれる昆虫をモチーフとした兵器や、生と死の堺にあると言われる異世界・バイストン・ウェル等の独特の世界観は今もなお根強い支持を得ています。

 2016年9月5日からは、『ダンバイン』のHDリマスター版が、アニメ専門チャンネル『アニマックス』にて初のTV放送される予定です。今回はそれを記念し、HDリマスター版の先行上映会と、原作の富野由悠季監督と、大の『ダンバイン』ファンだというモデルの市川紗椰さんによる対談が行われました。本稿では、メディア向けに行われた対談インタビューの模様を中心にレポートしていきます。

 

対談では、当時の貴重なエピソードがいくつも語られることに

 まずは、富野監督と市川さんの対談の模様からレポートしていきます。メディア向けに行われた『ダンバイン』第1話の上映の後、お二人の対談がスタート。

 市川さんはアメリカに住んでいた時に観た『新機動戦記ガンダムW』からロボットアニメに興味をもつようになり、その中でも独自の世界観をもっていた『ダンバイン』がもっとも印象に残り、その魅力に引き込まれていったのだとか。

 市川さんのような若い女性が古いロボットアニメに興味をもつはずがないと、当初は半信半疑といった様子の富野監督でしたが、「バイストン・ウェルや聖戦士といったネーミングに引き込まれた」「トッド・ギネスが家に帰ったときにつまみ食いをするシーンが東海岸的リアリティーがあって気に入っている」など、『ダンバイン』を熱く語る市川さんを前に、次第に対談は白熱。

 中でも市川さんを引きつけたのは、バイストン・ウェルから地上へとショウたちが戻ってくるというストーリー後半の展開で、他の異世界ものには無い現実味を感じさせてくれたのだとか。これは「アメリカと日本」を行き来していたという、特殊な境遇の市川さん自身の現実に、「バイストン・ウェルと地上」という2つの世界を股に掛けた物語が重なったからではないか? との富野監督のコメントに市川さんも今更ながら納得していました。

 その他にも、当時発売されたプラモデルの表面を、作中のオーラバトラーと同じような凹凸のある梨地にしようとしていたが技術的に難しく断念せざるを得なかったことや、当時はロケハンにいくことが難しかったため、舞台としてボストンを登場させる際、家の中までは描けても外の景色を完全に想像で補わねばならず大変な苦労をしたことなど、貴重な当時のエピソードがいくつも語られることに。

 この『ダンバイン』HDリマスター版は、アニマックスの放送に先駆けて、サンライズが主催する「サンライズフェスティバル2016」の9月1日の回(TOHOシネマズ新宿)で上映予定です。いち早く感動を味わいたい方は要チェック!

 ファンにとってはたまらない内容となった対談の模様は、特別番組『緊急ニュース!富野由悠季と市川紗椰「聖戦士ダンバイン」HD化計画を語る』として、2016年9月2日の23時30分からアニマックスにて放送予定です。ぜひ、お見逃しなく。

 

オーラバトラーを実写化しようという驚きの計画も……!?

 最後に、今回の対談終了後に行われた、富野監督と市川さんへのインタビューの模様をお届けします。

──市川さんとお会いするのを楽しみにされていたと聞いていたのですが、実際にお会いしてどういう印象を持たれましたか?

富野由悠季監督(以下、富野):二つの文化にまたがった人から意見が聞けて、ようやく一息つけたなと。これまでやってきたことが、おそらく間違っていなかっただろうという保証がもらえたので、市川さんのような人が見てくれて助かったと思っています。

市川さん(以下、市川):私としては、たまたま海外に住んでいてよかったなという感じで……(笑)、本当に光栄です。

富野:もう少し付け足すなら、アニメは良く無国籍モノだと悪口を言われますが、それが一種のサブカルとして市川さんのような人にも引っかかるような時代になった。ポピュリズムに迎合するわけじゃないけど、それは素直に受け止めたいなと。

──対談では、作品の全部は気に入っていないということを話されていましたが、逆によかったと思う部分はありましたか?

富野:これだけの数の登場人物を一気に組んだというのは上手いなと今でも思います。ただ同時に、それを足元から崩すような関係者が沢山いたことも思い出せたのが楽しかった(笑)。

──逆に、当時のいい思い出が蘇ったことも……。

富野:残念ながら、それほど人間めでたくはできていません(笑)。

──『ダンバイン』の作中では、現実の国家、とくにアメリカの存在が非常に重要なポジションを果たしますよね。西洋的ファンタジー世界観の中で、現実の国家の存在があれだけ強調されるのは珍しいのではないかと思うのですが。

富野:本当はヨーロッパも出したかったんだけど、当時の僕はパリにすら行ったことがなかったから、出したくても出せなかった。ロボットアニメで描くにはECの軍事勢力圏は複雑過ぎて難しく、当時はロシアもソビエトだったこともあって、描けるのがアメリカしかなかったわけです。リアルにやろうとすればするほど、考えないといけない部分も増えてきて、アニメといえどそう無神経に作れるものではないということも学習させてもらいました。

 

──その後の『リーンの翼』では、今度は日本が大きくピックアップされていますよね。

富野:まったく別の意味になりますが、もちろんあれにも大変な苦労がありました。ああしたことをきちんと調べもしないでやっちゃうわけだから、それはもう地獄ですよ(笑)。

 

──市川さんはお気に入りのキャラクターにトッド・ギネスを挙られていましたが。

市川:異性としてタイプというわけではないのですが、物語上善人とも悪人とも言えない中途半端なところが好きなんです。地上に戻ってきたシーンとか、国籍というのが浮き彫りになってくるというのも面白くて、彼の出てくるシーンは何度も見返しました。

富野:それは僕にとってもありがたいことで、トッドは東海岸の人間ということをかなり意識していたんです。ボストンなんて一度も行ったことがなく、小説も読む時間がなかったものだから、全部想像で作るしかなかった。「本当にこれでいいのか」と自問自答しながらだったので、今回の話で胸をなで下ろしました。

──登場メカについてはいかがでしょうか?

市川:一番のお気に入りはダンバインで、その中でもトカマクの機体が好きです(笑)。ビルバインは正直、想像していたものがデザインと違ったので、戸惑いの方が大きかったですね。

富野:ちょっとじゃないですよ。あれは(笑)。オーラバトラーについてはサイズが小さくなってしまった部分など反省点が多いのですが、近年のガンダム系のスタッフの仕事ぶりを見て思うのは、やっぱり慣れだなと。あそこまで習熟度が上がってくると、もう誰がやっても新型のガンダムを出せるわけです。だからオーラバトラーも、もう1回くらいやらないと形ができてこないのかなという思いはあります。

──作中には、オーラバトラー以外にもオーラシップなど異なるサイズの兵器がたくさん登場します。サイズの異なる兵器同士の混戦を描きたかったということは……。

富野:そういう意図はないです。むしろオーラバトラーという名前に囚われすぎて、ダンバインをあの大きさにしてしまったことで、全体が手詰まりになってしまった。あれにOKした時の気分は今でもよく覚えていますが、ガンダム的な感覚に慣れていると、あのサイズでも有機的に見えてしまったんです。そこでこのまま終わるのはいやだと思って出てきたのがハイパー化だったんだけど、結局はあれもメカっぽくて、何か違うんだよね。

──放送から30年を経て、富野監督が考えるダンバインの魅力とはどこでしょうか?

富野:それは僕には全く分からない。逆に市川さんのような若い人にむしろ聞きたいくらいなんだけど、果たして見てもらえるんだろうか……。

市川:それはもちろん見ますよ!

富野:僕は仕事柄、絶対に自分の作品は見直さない人間なんだけど、今回渋々見返してみて、やり方は考えないといけないけど、今の時代に合わせた作りようはあるなと感じました。

実は、今のデジタル技術でオーラバトラーの実写化をできないか考えたこともあったのですが、どうしてもメカ論として突破できない部分があって、コックピットのデザインが分かりそうで分からない。『パシフィック・リム』に出てくるような操縦方法ではなく、あそこからもう少し突き詰めていけば、通用するような時代になってきたのかなという感覚はあります。

 

──最後に、対談を通して改めて感じた『ダンバイン』の魅力や、初めて『ダンバイン』を観る視聴者の方々に向けて、注目して欲しいポイントなどがあれば。

市川:自分自身の話になるんですけど、改めて注目したいと思ったのはフェラリオです。富野さんとお話させていただき、私自身まだまだ作品を理解しきれていないことも分かったので、それぞれのキャラクターの小説版での立ち位置なども組み合わせて、もう一度見直してみようと思っています。

富野:僕の立場から言わせてもらうと、正直あまり良いサンプルではないんだけれど……。ファンタジーと巨大ロボットを組み合わせて、こういう面白い作り方もできるかもしれないと感じられるような、見ていただければ損をしないポイントもあるのではないかと思います。

──ありがとうございました。

[取材・文/米澤崇史]

 

TV 聖戦士ダンバイン Blu-ray BOX 特装限定版

TV 聖戦士ダンバイン Blu-ray BOX I 特装限定版

 

≪収録内容≫ 【TVシリーズ28話収録】
第01話「聖戦士たち」
第02話「ギブンの館」
第03話「ラース・ワウの脱出」
第04話「リムルの苦難」
第05話「キーン危うし」
第06話「月の森の惨劇」
第07話「開戦前夜」
第08話「再び、ラース・ワウ」
第09話「天と地と」
第10話「父と子」
第11話「キロン城攻防」
第12話「ガラリアの追跡」
第13話「トッド激進」
第14話「エルフ城攻略戦」
第15話「フラオン動かず」
第16話「東京上空」
第17話「地上人たち」
第18話「閃光のガラリア」
第19話「聖戦士ショウ」
第20話「バーンの逆襲」
第21話「逃亡者リムル」
第22話「戦士リムル・ルフト」
第23話「ミュージィの追撃」
第24話「強襲対強襲」
第25話「共同戦線」
第26話「エレの霊力」
第27話「赤い嵐の女王」
第28話「ゴラオンの発進」

≪キャスト≫
ショウ・ザマ:中原茂
マーベル・フローズン:土井美加
ニー・ギブン:安宅誠
チャム・ファウ:川村万梨阿
キーン・キッス:高田由美
リムル・ルフト:色川京子
バーン・バニングス:速水奨
ガラリア・ニャムヒー:西城美希
ドレイク・ルフト:大木正司
ナレーター:若本紀昭(現:若本規夫)

封入特典:Blu-ray BOX I 仕様・特典内容

・映像特典(ノンクレジットOP(前半版)、CM集)
・音声特典(オーディオコメンタリー)
・特製100Pブックレット
・湖川友謙描き下ろし特製BOX
・オリジナルスタッフ描き下ろしインナージャケット

※特典・仕様は予告なく変更になる場合がございます。

 

TV 聖戦士ダンバイン Blu-ray BOX II 特装限定版

 
≪収録内容≫ 【TVシリーズ21話+OVA3話+TV編集版3話収録】

TVシリーズ
第29話「ビルバイン出現」
第30話「シルキーの脱出」
第31話「黒騎士の前兆」
第32話「浮上」
第33話「マシン展開」
第34話「オーラ・バリアー」
第35話「灼熱のゴラオン」
第36話「敵はゲア・ガリング」
第37話「ハイパー・ジェリル」
第38話「時限爆弾」
第39話「ビショットの人質」
第40話「パリ炎上」
第41話「ヨーロッパ戦線」
第42話「地上人の反乱」
第43話「ハイパー・ショウ」
第44話「グラン・アタック」
第45話「ビヨン・ザ・トッド」
第46話「リモコン作戦」
第47話「ドレイク・ルフト」
第48話「クロス・ファイト」
第49話「チャム・ファウ」(最終話)

OVA
第1話「復活」
第2話「七百年の野望」
第3話「地上に近き者」(最終話)

TV編集版
第1話「風鱗の章」
第2話「天魔の章」
第3話「羇愁の章」(最終話)

≪キャスト≫
[TV]
ショウ・ザマ:中原茂
マーベル・フローズン:土井美加
ニー・ギブン:安宅誠
チャム・ファウ:川村万梨阿
キーン・キッス:高田由美
リムル・ルフト:色川京子
バーン・バニングス:速水奨
ドレイク・ルフト:大木正司
ショット・ウエポン:田中正彦

[OVA]
シオン:中原茂
レムル:鷹森淑乃
ラバーン:速水奨
シルキー:横沢啓子(現:よこざわけい子)
ショット・ウェポン:田中正彦

封入特典:Blu-ray BOX Ⅱ 仕様・特典内容

・映像特典(ノンクレジットOP(後半版)、ノンクレジットED)
・音声特典(オーディオコメンタリー)
・特製100Pブックレット
・宮武一貴描き下ろし特製BOX
・オリジナルスタッフ描き下ろしインナージャケット

※特典・仕様は予告なく変更になる場合がございます。

 

「サンライズフェスティバル2016満天」開催概要

開催期間:
第1部:2016年7月30日(土)~8月12日(金)
第2部:2016年8月20日(土)~9月10日(土)

レイトショー
7月31日(日)~8月5日(金)、8月7日(日)、8月10日(水)、8月12日(金)、8月21日(日)~8月26日(金)
※21:00~上映

通常上映
8月9日(火)/8月11日(木)19:00~上映
8月29日(月)~9月2日(金)/9月4日(日)~9月9日(金)19:30~上映

オールナイト
7月30日(土)、8月6日(土)、8月20日(土)、9月3日(土)、9月10日(土)
※ゲストトークあり

会場:
・テアトル新宿
・新宿ピカデリー
・TOHOシネマズ 新宿

サンライズフェスティバル2016満天公式サイト
アニマックス公式サイト

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