約1年間カズキのなかに輝き続けているリンタロウとの思い出とは……？「ツキノ芸能プロダクション」所属『劇団アルタイル』ショートストーリー連載第39回！

2.5次元芸能プロダクション「ツキノ芸能プロダクション」に設立されたバラエティタレントユニット『劇団アルタイル』。歌もダンスもお芝居も……というマルチなタレント活動をする彼らの日々を、ショートストーリーと音楽でお届けする連載です。

今回は、何事にも動じない冷静さの裏に、熱い心を秘めている蔵前カズキのストーリーです。カズキにとっての憧れの人である、市ヶ谷リンタロウとの出会いのエピソードが描かれます。なぜカズキはここまでリンタロウを尊敬しているのか、その理由にご注目ください！

■□■□■□■□■過去の連載はこちらから！■□■□■□■□■
・【第1回】ついに連載スタート！
・【第2回】ヒジリとサクヤの心境は？
・【第3回】今回の主役は東雲ユウリ！
・【第4回】霞サクヤが主人公！
・【第5回】千川リツ視点で描かれる

・【第6回】グループ結成前が語られる！
・【第7回】劇団アルタイルとの出会い
 ・【第8回】劇団アルタイルの思い出
 ・【第9回】面接官は誰だ!?
・【第10回】続・面接官は誰だ!?

・【第11回】最終審査スタート！
・【第12回】オーディションは続く！
・【第13回】三次審査直前の一幕
 ・【第14回】最終審査終了直後の物語
 ・【第15回】劇団アルタイルにようこそ

・【第16回】先輩＆後輩禁止！
・【第17回】お披露目に向けてレッスン開始！
・【第18回】ボイストレーニングをするも……
・【第19回】タツヒコから語られた言葉とは？
・【第20回】知らされたアル劇の新企画とは!?

・【第21回】19人全員でのソロ曲制作の真意とは？
・【第22回】ソロ曲の資料が送られてこない!?
・【第23回】ついにソロ楽曲配信がスタート！
・【第24回】夕焼け空を見上げるトウマの過去！
・【第25回】ユウリの手紙の内容とは？

・【第26回】千川リツが大崎イズモと出会い
 ・【第27回】同級生に再会したリンタロウは……。
・【第28回】ギャップや軋轢を感じるイズモ
 ・【第29回】自身の熱意に気付かされたミカド
 ・【第30回】朝が苦手だったサクヤ

・【第31回】音楽番組のソロ出演が決まったマキ
 ・【第32回】挑発的な態度のモデル仲間にヒジリは
 ・【第33回】ムードメーカー・ヨウスケの悩み
 ・【第34回】オーディションでアクシデント!?
・【第35回】タツヤの心境に迫る！

・【第36回】ノブアキのアル劇に対する思いとは？
・【第37回】ダイスケからの甘い差し入れ――
・【第38回】心ない言葉を耳にしてしまったタイキ
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劇団アルタイル『Carry on』

【あらすじ】
蔵前カズキは、市ヶ谷リンタロウに憧れて劇団アルタイルに入団したという。憧れるきっかけとなった出来事は、なんと一年近くも前にさかのぼる。今もカズキのなかに輝き続けている、リンタロウとの思い出とは……？

【ストーリー】
　いまでも、これは夢なんじゃないかと思うことが、ときどきある。
「おはようございまーす！」
「リンタロウくん、おはようございます」
　憧れたひとがすぐそこにいて、普通に朝の挨拶をしてくれる。
「あ、カズキくん。おはよう！　昨日のファンイベントお疲れさまでした」
「はい、お疲れさまです」
「カズキくん、最近すごくダンスが上手になったよね。……あ、なんか偉そうに聞こえたらごめん」
「いや全然。それ、本当です……本当に？」
「ほんとほんと。昨日、改めてビックリしちゃった。目が離せなかったよ」
「体の使い方がうまい。最近のカズキ」
　隣にいたタツヤがぽつんと言う。
「最初はなんか変だったけど。リンタロウの真似っぽかったし」
「ああ。憧れだから、真似してたと思う」
　頷くと、リンタロウくんが困ったふうに笑う。
「昨日はカズキくんらしさ、ちゃんと感じたよ。俺より背が高いからかっこよく決まるし、羨ましいな」
　笑って、そんなことを言う。
（羨ましいとか、目が離せなかったとか）
　嬉しいことを、自然な仕草で差し出してくれる。
（全然、変わらないな）

　もう、一年近くも前の話になる。
「みなさんこんにちは、Rigelです！」
　ショッピングモールを歩いていると、マイクを通した声が聞こえた。
（……男のアイドル？）
　なにかイベントをやっているようだった。
「今日はリリースイベントに来ていただいてありがとうございます！」
　アイドル……というか、芸能人に興味はなかった。劇団アルタイルという名前も聞いたことがない。だけど。
（もっと、近くで見たい）
　明るく素直な声に誘われて、気づけば、ステージに足を向けていた。
「劇団アルタイルのメンバーを代表して、Rigelが、精一杯歌います！」
　いま思うと、あのとき聴いた歌声は少し震えていたし、狭いステージで踊りながら目配せしあう四人は、どこか必死だった。
　でも、惹かれた。一生懸命さ、ファンに向ける笑顔、パフォーマンス。
（あのひとと、話がしたい）
　曲が終わったあと、思わずＣＤを買って列に並んだ。
（さっき挨拶をしてた、あのひとと）
　つい、目で追ってしまう。そんな経験が初めてだったから。
　ただ、女性ファンが多く並ぶ列に続くのは気恥ずかしい気持ちもあって、かぶっていたキャップのつばは深く下げて--。

「こんにちは！　市ヶ谷リンタロウです」
　笑顔の眩しさにビックリした。だから、俺は焦って、つい、
「あなたたちのことは、俺、全然知らないんですけど……あ」
　いきなり、失礼なことを言ってしまった。
　一番言いたいのはそこじゃない。その先なのに。
「あの、すいません。話すのうまくなくて、俺」
　もうダメだ、失敗した、やり直したい、そんな気持ちでいっぱいになった--その瞬間。
「そっか。じゃあ、今日知ってもらえたんですね！」
　正面から、新しい笑顔が飛んできた。
「すっごく嬉しいです！　あ、えっと、お名前聞いてもいいですか？」
「……蔵前カズキ、です」
「じゃあＣＤに、カズキくんへ、って書きますね。今日は俺たちの曲を聴いてくれて本当にありがとうございました！」
　何ごともなかったように、笑顔とサインの入ったＣＤが差し出された。
（言わないと）
　思ったことを、嬉しさを伝えたい。
（いま、このひとに）
　でないと、一生言えないかもしれない。だから、
「あなた、すごいです」
　いま一番言いたいことを、今度こそ、一番最初に言った。
　目の前の彼がきょとんとする。また、おかしなことを言ったのかもしれない。でも、続けた。
「笑顔が。声も、聴いてると楽しくなる。そういうの、すごい。憧れます」
　全部、言った。それから、自分の口から転がり出た言葉に、自分がビックリした。
（憧れ）
　考えるより早く心が言葉に乗って、真っ直ぐ、目指す場所へ走っていった。
「俺のほうこそ。あなたのひと言で、笑顔になっちゃいました。ありがとうございます」
　しかも、相手にちゃんと届いた。
（すごい）
　なにもかもが、初めてで。とても眩しかった。

「えっ……ど、どうしたの！？　カズキくん、なんで笑ってるの？」
「リンタロウくんは全然変わらないなと思って、嬉しくて」
　その後、テレビで観たときも。こうして同じユニットメンバーになっても。
　きっと、ずっと一生、リンタロウくんは憧れの星だ。

（こんなふうになりたい）
　誰かの胸に輝く、一番星に。俺も。
「これからもよろしくお願いします」

今回登場した人物をご紹介！

◆蔵前カズキ（CV：寺下知輝）
外見・内面ともに大人びており、真面目で芯の強い性格。口数が少なく、感情表現も苦手だが、そのぶんストレートな言動をとる。

◆市ヶ谷リンタロウ（CV：井上雄貴）
マネージャー職を希望していた、素直で明るく人懐こい、常識的な考え＆視点を持つ一般人代表。

◆中野タツヤ（CV：飯塚達哉）
独創的な思想と言動によって、周囲を惑わす超絶マイペース人間。時折、表現者としての才能を垣間見せることも。

『劇団アルタイル』最新情報

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「劇団アルタイルソロシリーズコレクションアルバム -a galaxy of new stars-」
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●最新ドラマCDが1月26日（金）発売！
・劇団アルタイルユニットドラマ「Twinkling stars RED」