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『デジモンtri. 第6章』細谷佳正×山口眞弓インタビュー

デジモンアドベンチャー tri.第6章「ぼくらの未来」細谷佳正×山口眞弓インタビュー「受け入れてもらえるという形をひとつ大きな作品で経験できた」

5月5日(土)から劇場上映となる『デジモンアドベンチャー tri.第6章「ぼくらの未来」』。2015年11月21日に上映された第1章「再会」から約2年半。ついに完結を迎える本作を振り返り、石田ヤマト役を演じた細谷佳正さんと、テレビアニメ『デジモンアドベンチャー』からガブモン役を演じてきた山口眞弓さんにお話を伺いました。

和田光司さんにも「終わったよ。」と言いたい(山口)

ーー第1章「再会」の上映から約2年半、『デジモンアドベンチャーtri.』を振り返った今のお気持ちを聴かせてください。

細谷佳正:もう3年経ったのかという感覚もありますし、もっと長い時間やっていた感じもしていて。無事に全部の章を録り終えることができて良かったなと思っているんですけれども、でも「終わったな」という実感もあまりなくて。

これから上映があって、舞台挨拶があって、この『デジモンアドベンチャーtri.』をお客さんに観ていただかないといけないなということを考え始めています。

山口眞弓:感慨深いものがありますね。私はお台場でイベントをやったとき「デジモンアドベンチャーをまたやりますよ」という発表でデジヴァイスの音が鳴ったところから始まっていて。あのときはまだ和田光司さんがご健在で、ライブがあったんですよね。

だから、あれから無事『tri.』を終えられて、和田光司さんにも「終わったよ。」と言いたい気持ちがありますね。みんなと再会できて、細谷さんたちとの新しい出会いもあり、「Butter-Fly~tri.Version~」のおかげで素晴らしい最後を締めくくれたので。

私は和田光司さんとの思い出がいっぱいあるんですよ。和田さんって歌を聞くと力強いイメージなんだけど、実際はすごく低姿勢な優しい方で。一度『デジモンテイマーズ』のイベントのときに和田さんが体調崩されて私がピンチヒッターで行ったんですけど、その後にすごく謝られて。本当に良い方だったんですよね。

二人がアフレコで感じたこと

ーー山口さんから見て、細谷さんが引き継がれたヤマトにどんな印象を持たれましたか?

山口:私は「ナイスキャスティング」って思いましたね。こんな大人になったヤマトを違和感なく演じられる人がいたんだなっていう。かっこいいのに、みんなが笑っちゃうようなものを演じられる人が他にいたんだなって。ただ成長したヤマトがそこにいただけでした。

ーー細谷さんは前任者がいる役を演じてみていかがでしたか?

細谷:“声優が代わることの違和感”っていうのは自分もわかるんですよ。例えば、あるレギュラー番組を録っていて、相手役の方が体調を崩されたりとか、スケジュールの問題で収録現場に来られないってなったときに、スタジオの後ろから代読をしてくださる役者さんがいるんです。そのとき「あれ、やっぱりちょっと違う」という違和感があるんですよ。

テレビアニメの放送が終了してから、『tri.』が制作されるまで時間があったにせよ、山口さんがガブモンを演じているときの相手はヤマトなわけで、そこの違和感はあるのではないだろうかと僕は思っていたんですね。

最初に「いくぞガブモン!」「おう!」って応えてくれるシーンがあったんですけど、それをやってからは安心して、こっちの方向だろうなというのを探りながらやってはいたんですけど、回を追うごとにお互いのキャラクターの関係性が変わってきたというのはあまり感じなくて。

それよりも、マイクから離れて待機しているときに話すようになった山口さんとの関係が変わってきたような感じがします。

山口:イベントで会っても楽屋が男女別だもんね。女同士のコンビはずっと一緒だから仲良いけど。

細谷:観てる人のことを想像してしまうんですよね。お台場のイベントで『デジモンアドベンチャーtri.』の製作が発表されたときにお客さんの盛り上がりがすごくて、「Butter-Fly」が流れるとみんなが曲を口ずさんでいて。

それこそ『デジモン』を観ていた世代のお客さんって子どもの頃に観ていて、いまは大人になっている。その大人たちが純粋に応援しているのを見て、余計に自分が子どもだったら違和感を感じるのではないかと。それがいつも付きまとっていたことではあったと思います。

ーー山口さんはガブモンの声を久しぶりに演じるにあたって、緊張はありましたか?

山口:私は『デジモンアドベンチャー』がデビュー作だったので、ガブモンに向かうと、あの頃の緊張が蘇ってきて、だいぶ硬くなるんだなって。キャラクターを演じるときって声を作ったりするかもしれないんですけど、私がガブモンを初めて演じたときは何にもやったことがなくて。何かを作るとか、キャラクターを作るというところまで至らなかったんですよね。

『デジモンアドベンチャー』の50話を通じてガブモンというキャラクターを作っていったんですけれども、久しぶりにガブモンを演じてくださいと言われたときに、「あのときこういう声の出し方をした」とかはなくて。「ガブモンだいぶふんわりしてるな、どうしよう」って。笑

それで『tri.』に挑んだんですけど、全6章通して固かったかなと。何もしなくてもその当時のことが思い出されて、演じていた感じですね。だから「ガブモン出てこい!」みたいな。

ーー『tri.』のアフレコで印象に残っている思い出のエピソードはありますか?

細谷:僕は一時期休業させていただいたんですけど、休業に入ると決めた年に、体調が優れない中、点滴を打つことで体力を一時的に回復させるみたいな方法があるんですけど、そんな応急処置をしながら「僕にとって」という曲を歌って。最初声がジャリジャリだったんですけど、点滴を打ったらことのほか調子がよかったっていう。笑

山口:私も点滴打って歌ったことある!『デジモンテイマーズ』のときの歌なんですけど、点滴打ったら声が出るようになって。私の今回のガブモンの歌はそのときのキーの高さを元に作られていたんですよね。あのときの声は点滴打ったときだったって言うのを忘れて大変でした。笑

『tri.』でのヤマトとガブモンの友情

ーー細谷さんはガブモンのどんなところが好きですか?

細谷:「放っておき方」だと思いますね。ヤマトのことを過保護にもならず、ベタベタもせず。かといって、やっていることを全部何も知らないわけではなくて。ヤマトの姿を見ていて知っているんですけど、必要なときにしか必要以上に立ち入らないようにするっていう。それがすごく“昔の男同士っぽい友情”みたいな距離感をいつも取っている印象があるので、面白いなあと思っていました。

ーー第6章では、ヤマトとガブモンがベランダで抱き合うシーンがありますが、このシーンも『tri.』でのヤマトとガブモンの関係性を表しているように見えました。

山口:丈とゴマモンはがっつりと抱きつく親愛のギュッなんだけど、ヤマトとガブモンは「よしよし、大丈夫大丈夫」っていう。

細谷:男同士のスキンシップでしたよね。

山口:ヤマトがまだ小学生のときは母親の気持ちでやっていたんですけど、今は母親じゃなくて、友達くらい対等な感じで。「お前、ちょっと、わかるな。」くらいで通じるような。笑

細谷:そうですね、昭和くらいの男同士はそれで通じたかもしれない。笑

ーーストーリーのターニングポイントにもなった第3章ラストの「リブート」後、山口さんがガブモンを演じる上で気をつけた点や変化はありましたか?

山口:「ヤマト…“くん”」ってセリフがね。“くん”って、うわどうしようと思って。

細谷:あった「ヤマト…“くん”」。山口さんがすごい違和感を感じているんだろうなってことが手に取るようにわかりました。

山口:リブートされているから気持ち悪くないはずなのに。気持ち悪いって思ってもいいのかなと思いながら演じましたね。

細谷:全然違う話ですけど、『ボーン・アイデンティティー』っていう映画を観ていて、主人公の記憶が全部無くなるんですけど、身体だけは格闘の感覚を覚えていて、敵を倒しちゃうんです。記憶は無いのに何となく違和感を感じてしまう感覚みたいなものがガブモンにもあったのかもしれないですね。

山口:“くん”って呼ばなきゃいけない人だと思っちゃったんだろうね。呼び捨てで言ったら「そこは“ヤマトくん”だろ、お前」みたいに返されると思って。

細谷:リブート後のガブモンから見てヤマトは感じ悪かったんですね。笑

山口:もしかしたら、ガブモンから見て尊敬の念が入っていて“くん”付けなのかなとか。どの“くん”かなと思いながら演じていたんだけれども、やっぱり染み付いているものが出ちゃって、結局、私がリブートされた演技ができなかったのかなと思って…。

細谷:それがいいんだと思います。

“受け入れてもらえる”という形をひとつ大きな作品で経験できた(細谷)

ーー最終章をご覧になっていかがでしたか?

山口:私は物語が終わった感じがしなかったんですよ。エンディングも一応区切りなんだけれど、「あれ、これまた始まってもいいんじゃない」という音が鳴るので。最終章なんだけれども、最後じゃないと思える締めくくりだったかな。

細谷:僕はヤマトをずっと演じてきて、第5章までのヤマトの雰囲気は、身体は大人っぽく見えるんですけど、大人だなと感じることはなかったんですよね。

ヤマトは自分の思っていることとか、気遣いとか、相手を勇気づけることというのを、全部表面的に行動や言葉に出すことが正しいことだと思っていた節があったんですけど、第6章ではちょっと大人になって、あえて言わないことも優しさだったり、伝えないことが結果的に周りの人間を安心させるっていうことを覚えたように感じました。

ーー作中を通じて、大人に近づく選ばれし子どもたちの「葛藤」と「成長」がありましたが、好きなシーンやセリフはありますか?

細谷:僕は第6章の「俺たちが太一の分も」っていうセリフが好きですね。他の仲間が泣いているシーンで、タケルだけにしか聞こえない声で言ったセリフで。なんか「あら、大人になって」と思いました。

山口:私は第1章を最初観たときに、太一とヤマトの立場が子どもの頃と逆転しているなと思いました。太一が感情的に行動するのを、ヤマトが止めていたという印象でしたが、大人になって逆になったんだなって。

細谷:第1章のときに、戦ってビルを壊すか壊さないかっていうシーンがあったじゃないですか。あのときに、ビルを壊してしまう可能性がある。それを壊してしまうと人がケガをしたり死んだりする可能性があるから、そこは踏みとどまったほうがいいって言う太一と、そんなの関係ないから今すぐ戦おう、それが一番大事なんだ、と主張するヤマトがいて。きっとそれを『俺たちの青春』みたいに思っていて。

ただヤマトは直情的に「あの頃に戻ろうぜ」みたいなことをただ言いたいだけで。それは全然大人じゃないなと思いましたね。笑

山口:そうだね。そこから考えると第6章では大人になったね。笑

ーー最後に、お二人にとって『デジモンアドベンチャーtri.』はどんな作品になりましたか?

山口:私は初心を思いださせてくれた作品になりました。

細谷:僕は“受け入れてもらえる”という形をひとつ大きな作品で経験できたなと思います。

原作ものでアニメをアフレコするとなると、原作のイメージがあって違和感があったりとか、この人に合っているとか、色々な意見があると思うんですけど、『デジモンアドベンチャー』に関しては、アニメで前任者の方がいらっしゃったので、そこを心配していたりとか、違和感なく観てもらえるんだろうかという思いがずっとあったんです。

だけど、第6章まで続けてこられているということは、賛否両論あったとは思いますけど、うまくいったということなんだろうと自分では今思っていて、何よりも第6章の最後みんなでの「Butter-Fly~tri.Version~」に参加できたことは、自分にとってもすごく特別なことだなと。

この名曲に、後から入った選ばれし子どもたちを加えてもらえるというのは、すごく特別なことだと思うし、応援してくださった皆さまからすると、エンディングで「Butter-Fly~tri.Version~」が流れることは、すごく特別な意味を持つんじゃないかと思うんですね。

それを最後に持ってきたことで「こういう受け入れられ方もあるんだな」ということを覚えた作品でした。

ーー素敵なお話ありがとうございました!

インタビュー・文:吉野 庫之介

【衣装協力】
・Iroquois Headshop
TEL:03-3791-5033

・BICASH
TEL:03-3871-1855

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デジモンアドベンチャー tri. 第6章「ぼくらの未来」作品情報


3週間限定劇場上映/劇場限定版 Blu-ray 先行発売/先行有料配信
2018年5月5日(土)同時スタート!

【CAST】
花江夏樹、細谷佳正、坂本千夏、山口眞弓 ほか

【STAFF】
監督:元永慶太郎
シリーズ構成:柿原優子
キャラクターデザイン:宇木敦哉

※一般販売版 Blu-ray&DVD 2018年6月2日(土)発売!

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