声優
「声優・森川智之が語る“帝王が目指すもの”」トーク&サイン会レポート&インタビュー!

帝王・森川智之さんが初の出版イベントを開催!「声優・森川智之が語る“帝王が目指すもの”」トーク&サイン会レポート&インタビュー!

1987年のデビューから30年以上、第一線で活躍し続ける人気声優・森川智之さん。アニメから洋画の吹替え、ナレーション、ドラマCDまであらゆるジャンルで活躍し、その類まれなる存在感から声優界の「帝王」と呼ばれています。自ら声優事務所・アクセルワンの社長も務める森川さんが、4月に岩波書店より著書『声優 声の職人』を出版しました。

そんな森川さんが2018年6月24日、芳林堂書店高田馬場店にて、「岩波新書創刊80年記念イベント 新宿地区連動企画第3弾 声優・森川智之が語る“帝王が目指すもの”」トーク&サイン会を開催。声、演技のプロフェッショナルとして、著書への思いや会場に集まった読者の質問に答えました。

運命的な思いから著書出版

この日のトークショーは、事前に寄せられた観客からの質問に答えていく、質疑応答形式で進行。『声優 声の職人』の編集を担当した岩波書店・新書編集部の中山さんが進行役を務めます。

人生初の出版イベントということで、喜びと感謝を語る森川さん。まずは出版経緯について。

これまで数々の出版オファーを受けつつも、「今は自分が出す時期ではない」と断ってきたが、本を出したいという思いはあったという森川さん。学生の時から歴史が好きで、『インカ帝国』などの岩波新書を読んでいたので、「いつか岩波新書から出版のお話が来るかもしれないと思っていた(笑)」と語り、客席の笑いを誘います。

そんな森川さんの思いを知っていたかのように、中山さんから出版の提案がなされます。森川さんは「アクセルワンまで来てくれ、たくさん話をしました。これは何か運命的だな」と思って出版を決意したそうです。

「帝王」と呼ばれるようになったわけ

質疑応答では様々な質問が寄せられました。今や帝王として名高い森川さんですが、読者の中にはその理由を知らない人も。「帝王と呼ばれたのは、いつ頃からですか?」という質問に、記憶をたどりながら森川さんが答えてくれます。

それはまだオーディオ作品がCDではなく、カセットテープで制作されていた頃のこと。森川さんが「雑誌『JUNE』(男性同性愛をテーマとした漫画小説混合雑誌)が本の中で(森川さんのことを)「帝王」と書いていて、それを周りの人から教えてもらって知りました。それから帝王って言われていて……。(自身の中では)ミドルネームみたいなもの。そんな感じがします」と伝えると、客席から笑いが起こりました。

森川さんのナチュラル&ハートフルなお人柄が伝わり、会場内はリラックスムードに。続いて「若い頃と比べて、変わったなと思うところはありますか?」という質問に、森川さんが「老けたなと……」とつぶやきます。

早くおじさんになりたかったという森川さん。「早くネクタイ締めたいとか、早く車の運転をしたいとか思っていました。なので、小学校のあだ名が社長でしたから!」とひと言。現在の姿を現すあだ名に読者も納得している様子でした。

また、パン屋さんだという森川さんのおじいさん、詩吟や老人会の会計をしていたため、近所のおじいさん、おばあさんが自宅に多く出入りしていたそう。森川さんは「小学校の頃から、お年寄りの相手をずっとしていたので、お年寄りに好かれるタイプでしたね」と話します。

続けて、「この業界に入った時に、(業界の)年齢幅が広いので、(目上の人とも)付き合うのが自分の中ではすごく楽で、他の人に比べるとだいぶ僕は得をしているなと思います」と語りました。

このお話から、森川さんが同世代だけでなく、先輩、後輩からも愛されるわけが少しだけわかったような気がしました。

森川さんの演技へのこだわり

質疑応答をきっかけに、著作本『声優 声の職人』の内容についても触れることに。一音一音にこだわることを、森川さんは本の中で「一ミリ、二ミリを変える」という言い方で表現しています。

会場では「演技のこだわり」について、森川さんが「空気ですね。周りの反応も含めて、空気感を味わうということです」と答えます。それは演技を行う際に、人(共演者やスタッフ)がどう感じているかということを感じ、一ミリ、二ミリのレベルで声を出す。その場の空気を感じ、応えて演じるということ。

しかし、そういったことを感じやすい人は多くないと話します。森川さんは「三木眞一郎って、僕は大好きな役者なんです。彼は僕が一ミリ、二ミリ(の調整で声)を出すと、すぐに感じる人なんです。そうすると、お互い目を見つめ合って、「うわぁ~!」ってなるんですよ」とコメント。信頼を寄せる役者仲間とのエピソードを披露してくれました。

声優という文化ができて60年。森川さんは「人の出会いから、今の自分がいるんです」と話し始め、これまでの人生を振り返りながら、「みんなが僕を帝王にしてくれたという思いがある。今こういう幸せな場所に立たせていただいているという感謝の気持ちも込めて、これからは声優を文化として、みなさんにもっとより深く知ってもらいたいという思いがあります」と語ります。

さらに、「僕が目指すものというのは、声優としての文化をもっと盤石なものにすること。先輩たちが作ったシステムを受け継いで、次の世代に繋げていきたいと思うんです。声優としての本質の部分をしっかり作っていけるように、精いっぱい力を注いでいきたいと思います」と力強いメッセージを伝え、トークを締めくくりました。

その後のサイン会では、森川さんの厚意で、サインの他に握手も行われることに。笑顔でファンと会話し、大阪から来たという読者には、大阪北部地震を心配して声をかける姿も見られました。この日の出版イベントには、日本全国だけでなく、アメリカや中国からも駆け付け、大盛況のうちに終了となりました。

次の世代に繋げる役目

ここからはイベント後に行ったインタビューの模様をお届け。森川さんに熱いお話をうかがいました。

──この本をどんな人に読んでほしいですか?

森川智之さん(以下、森川):声優が好きな人、僕のファンのみなさん、声優に興味のある方、携わっている人はもちろん読んでいただきたいですけど、全く声優に関係ない、「声優って聞いたことあるな」という人たちにも、「こういう仕事をしている人なんだな」と読んでいただければ嬉しいです。

──著書を執筆される際に、心がけた点はありますか?

森川: 基本的には自分が今思っていることや今までやってきたことを嘘偽りなく表現できれば、読み物として面白いのかなと思いました。

本はその人の人生だったり、その人だけのオリジナルなものだったりしますよね。読者のみなさんからすれば、興味深いところもあるかなと思いながら、それを面白おかしく演出して書くというよりは、ありのままのものを出したいなという思いで書きました。

スタッフのみなさん、岩波のみなさんが協力してくださったので、それはうまく表現できているかなと思います。

──森川さんが思う本作の読みどころを教えてください。

森川:読みどころとしては、アクセルワンという事務所を設立するにあたってのところですかね。そこは僕の中で、今回の本の肝になる部分でもあり、僕の声優人生としても大きなターニングポイントのひとつであったりするので、ぜひ読んでもらいたいですね。

まずはこの本をきっかけに、メディアなどで取り上げられている声優像ではなく、声優という職業としての本来の姿を感じ取ってもらえるといいなと思います。

──森川さんは声優生活30年間の中で、常にトップランナーでいます。森川さんの活動を見ていると、先輩とも後輩とも楽しくお付き合いされていることがわかりますが、ご自身から見て「他の声優、役者と違う自分の持ち味はどこにある」と思われますか?

森川:どうなんでしょうね。たぶんそれは周りのみなさんが判断するものなのでしょう。何にしろ、たくさんの業界の先輩、後輩、同期の仲間も含めて協力してくれたり、共感してくれたり、そういうことがあったので、今の場所にいるのかなと思っています。

──人の関わりといえば、今回のトークでは森川さんの子供時代のお話もされていましたね。

森川:実家がパン屋だったりもして、普通におじいさん、おばあさんと一緒にいましたからね。ウェルカムな環境で育っていて、自分も店番したり、常にオープンでしたから、人と話したり、関わったりするのは自然と身についていました。

そういう環境だったので、表現とかアクターとしての土台作りには直結していないけども、自然にそんな環境にいたのかなと思いますね。

偶然ですけど、内海賢二さんも山田栄子さんもすぐ近くにいてね。山田さんは実家が牛乳屋さんで、家がすぐ近くなんですけど、栄子さんのおじいさんと僕のおじいさんが友達で、栄子さんのおじいさんが琵琶を歌って、僕のおじいさんが詩吟を歌ってとかね。

蓋を開けると、僕の周りに声優のパーツがいっぱいあって、「何で小さい頃から声優になろうとしなかったの?」っていうぐらい(笑)。

──最後にファンのみなさんへメッセージをお願いします。

森川:この本は僕の分身でもあるので、いつもお手元に置いていただいて、何かあったら読んでいただければ嬉しいですね。僕の中では今回とってもいい経験をさせてもらえたので、もっとより深く知りたいと思う人がたくさんいるのであれば、第2弾を出せるといいかな。少しでも多くの人たちがこの本を読んで、職業として声優を知ってもらえるといいなと思います。

僕自身はプレイングマネージャーでもあるし、いろんなレジェンドたちに育てられて、次の世代に繋げるという役目も自分にはあると思っています。本の出版もひとつの縁ですから、ぜひ熟読して楽しんでください。

──ありがとうございました。

[取材・文/宋 莉淑(ソン・リスク)]

『声優 声の職人』商品情報

著:森川智之
シリーズ:岩波新書
出版社:岩波書店
価格:842円(税込)
発売日:2018/04/20

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