アニメ
『フリクリ オルタナ』上村泰監督インタビュー

劇場版『フリクリ』公開記念連続インタビュー企画 Vol.1『フリクリ オルタナ』上村泰監督インタビュー! 伝説のアニメが復活!

2000年にGAINAXとProduction I.Gの共同制作によるOVAシリーズとして発表された『フリクリ』。鶴巻和哉さんが監督、キャラクターデザインは貞本義行さんという、『新世紀エヴァンゲリオン』の主要スタッフが手掛け、ポップでスタイリッシュな映像とスピード感あふれるアクション、作中で流れるthe pillowsの楽曲などで一躍話題になり、現在でも伝説のアニメとして語り継がれています。

そんな『フリクリ』の続編が劇場版アニメとして『オルタナ』、『プログレ』の2編で公開されることに! 9月7日の『オルタナ』公開を控えて本サイトでは連続インタビュー企画をお届けします。

第1弾は『オルタナ』で監督を務める上村泰さんです。GAINAX出身で、監督として『パンチライン』や『幼女戦記』などの話題作を手掛ける注目のクリエイターに『オルタナ』の見どころや制作秘話など語っていただきました。

OVAの鶴巻和哉さんからも背中を押されて本作の監督に!

――『フリクリ オルタナ』で監督を担当されることになった経緯を教えてください。

上村泰監督(以下 上村):経緯は突然でした。お仕事ではほとんどご縁の無かったProduction I.Gさんからお電話いただきまして。「フリクリの続編をつくりませんか?」みたいな(笑)。続編の制作発表があったことは知っていましたが、まさか自分にオファーが来るとは思っていなかったので「僕でいいんですか!?」と。大きな作品でもあり、何より好きな作品でもあったので決断するにはプレッシャーもあって……。鶴巻さん※にも個人的に相談しました。「やってやればいいんだよ」というお言葉をいただいて、やらせていただこうと決意しました。

※:OVAシリーズの監督で、今作でもスーパーバイザーをつとめる鶴巻和哉氏。

――上村さんにやってほしい理由は聞かれましたか?

上村:詳しくは聞いていませんが、『パンチライン』やももいろクローバーZのMVなど、当時監督を務めた作品を見て、僕にオファーしたと聞いています。

GAINAXフリークだった当時、衝撃を受けて何度も見直した『フリクリ』

――今作に関わる前に『フリクリ』をご覧になったことはありましたか?

上村:もちろん見ていました。こんなことを言うとGAINAX大好きっ子だとわかってしまいますが、『王立宇宙軍 オネアミスの翼』を見て衝撃を受け、『ふしぎの海のナディア』を見て完全にオタクになり(笑)、当然『トップをねらえ!』や『新世紀エヴァンゲリオン』は夢中で観ていました。『フリクリ』も発売前から待ち遠しくて。実際に見てみたらおしゃれでスタイリッシュな作品に衝撃を受けました。あんなに何度も見直した作品はたぶんないですね。

2000年代には様々な素晴らしい作品が登場したと思いますが、『フククリ』はその中でもスタイリッシュな作風で尖っていた印象です。「オタクなのにおしゃれって何だ!?」と(笑)。

――ポップでスタイリッシュなのに、オマージュや小ネタも満載で、オタク心をくすぐられました。DVD-BOXなども出るたびに書き込みや考察サイトが多数見られて。

上村:僕も人に薦めたくなる作品でしたね。オタク友達に限らず、周りの人達にも。あと『フリクリ』を見て、the pillowsが好きになったという方も結構多くて。音楽と映像の絶妙な融合が胸を乗算的に熱くさせていく作品だと思います。

一番もやつく世代の女子高生・カナを中心に『フリクリ』の叙情的な要素を描く

――『オルタナ』の世界観、ストーリーはどのように構築されたのでしょうか?

上村:『オルタナ』を作り始める段階で、すでに『プログレ』の制作は進んでいて、『プログレ』は大暴れする方向になりそうというお話を伺いました。同じ時期に2本『フリクリ』をやる意味を考えたときに、テイストを同じにしてもおもしろくないなと思いました。I.Gさんからも元々「サイドストーリー的なものや外伝的な方向はどうですか?」というお話も頂いていたので、『オルタナ』ではOVAシリーズの叙情的な部分をピックアップして描いていこうと決めました。

――キャラクターについてはいかがでしょうか。

上村:キャラクターについては、OVAシリーズでは小学生のナオ太、『プログレ』は中学生が主人公と伺っていたので、だったら高校生でと(笑)。安直ですが叙情的なところも含めて、高校生なら描けると思ったんです。一番もやもやしているというか、自分を探しているけど見つからない時期かなと。僕自身も高校生の時はそういう感じでした。あの頃は将来のことなんて考えてなかったんですよ。ただ『エヴァンゲリオン』がおもしろくて、「死海文書って何だ?」と本屋さんに行って探したり。そんな中でも、友達はプロのミュージシャンになると言っているヤツもいたし、大学生と付き合っているヤツもいて、自分はどう進んでいいのかってことを考えないといけないのかなぁという漠然とした不安みたいなものがありました。

また、仕事をする時によくラジオを聴いているんですが、お悩み相談のコーナーで、女子高生が「夢がないのが悩みです」と言っていたのを聴いてハッとさせられました。僕の学生時代と何も変わってない、変わったのは世界の状況だと。僕が高校生だった頃よりも与えられる情報が多過ぎて自分を見失う時代だよなと。そういうことを考えながら少しずつ話を構築していきました。

――カナとクラスメイトのペッツ、ヒジリー、モッさんの4人を中心に、それぞれのキャラのエピソードもしっかり描かれていますが、どのような意図でこのような構成にしたのでしょうか。

上村:OVAシリーズが発売された当時はストーリーや演出がわかりやすい作品のほうが多くて、逆に難解なアニメが少ない感じでしたが、今はアニメ作品の作品数そのものが沢山あることもあり、ジャンルも多種多様です。何でも沢山ある時代だからこそ、わかりやすい『フリクリ』があってもいいんじゃないかと思いました。『オルタナ』の各話数のエピソードをカナはどう見て、受け取って、考え、そして終盤でどう答えを出していくのか、その道筋を考えたときにペッツ、ヒジリー、モッさんは生まれました。ペッツに関してはすごく難しい子でした。一番重い事情を抱えているのですが、それを表に出さないという子で。描く側として難しいなと悩んだし、デザインも内面も難産でした。

▲左からペッツ、カナ、ヒジリー、モッさん

▲左からペッツ、カナ、ヒジリー、モッさん

OVAシリーズから引き続き登場のハル子は本作でもパワフルに! しかし主人公との関わり方に変化も!?

――そしてハル子の登場ですね。出てきた時、「キターッ」と心の中で叫ぶ人がたくさんいると思います。ベスパに乗ったり、ギターで戦う姿も懐かしくて。

上村:やっぱりハル子という存在の威力ですよね。現れた瞬間から「何かしでかすのでは?」と思わせる期待やドキドキがあると思うんです。僕自身もハル子は大好きですし、そこは崩したくなくて、どういうセリフ回しをするのか、どんな動き方をするのかはすごく気を遣いました。ハル子役の新谷真弓さんにも絵コンテの前段階から協力していただいて、かなりディスカッションさせていただきました。アフレコの時も「こういう風にしゃべってみたけど、どう?」という感じで新谷さんから提案いただいたり。OVAシリーズでのナオ太に接するハル子ではなく、「女子高生って面倒くせえな」という接し方をする新しいハル子が見られておもしろいかなと思います。

10~20代に刺さるファッションやメカなどはデザイナーの素晴らしいセンスに感謝

――ビジュアル面についてですが、本作もOVAシリーズ同様にポップで、デザインや色合いは女子中高生の感性にドハマりしそうだなと思いました。

上村:ハル子のデザインはOVAシリーズを踏襲するとしても、僕が大学生の時に『フリクリ』に受けたくらいの衝撃を、初めて観る人にも感じてもらえたらいいなと思いました。当時、大ファンだった人はもちろんですが、映画をよく見る10代、20代の子にも見てほしいと思って。

『フリクリ』の魅力はオタクっぽいようでオタクっぽくない、でも実はオタクというラインなので、デザインやファッション、色使いには気を遣いました。今、女子高生の間で流行っているものをリサーチしたり……それをやる時点でもうおじさんなんですけど(笑)。専属で洋服のデザインをしてくださった谷口宏美さんに流行りなども意識して作っていただきました。

――各エピソードに出てくるロボットもポップであり、サイケでもあって、まさにキモカワで。

上村:メカデザインの押山清高さんの圧倒的なデザイン力ですね。僕は絵描き出身ではないので、基本コンセプトや、やりたいことまでは伝えたのですが、ああいうデザインが上がってくるとは想像もしてなくて。押山さんのデザインセンスのすごさに、頭の中を覗いてみたくなるくらいです(笑)。ビジュアルに関しては全体的にデザイナーさん達に助けられっぱなしでした。


『フリクリ』を彩るthe pillowsのパワーのある楽曲の使い方に苦悩!?

――そして『フリクリ』といえばthe pillowsの楽曲で、今作でもカッコよく、シーンにもハマって、テンションが上がりました。

上村:『フリクリ』はthe pillowsから逃れたくても逃れられないというか、抗いたい気持ちと抗いたくない気持ちが混在していて。特にOVAシリーズで使われた曲の威力がすごくて、曲を聴くと自然とOVAの映像が頭に浮かぶんですよね。そこで悩みまして。キャラクターデザインの高橋裕一さんに「OVAシリーズの曲はなるべく使いたくないんですよね」と話したら、「でもファンは喜ぶんじゃない? あれが『フリクリ』でしょ」と言われて。それを聞いて少し肩の荷が下りた気がしました。でも威力があるだけに使いどころを間違いたくないので、悩んだ末に前半はなるべく使わないで、後半でどんどん使っていく構成にしました。

わかりやすい『オルタナ』は入門編に。ぜひ『プログレ』とセットで見てください

――では『オルタナ』の見どころと注目ポイントのご紹介をお願いいたします。

上村:今回初めて『フリクリ』をご覧になる方には、構成としてもわかりやすいと思うので、『オルタナ』が入門編としてオススメです(笑)。『オルタナ』から『プログレ』、そしてOVAシリーズという見方もいいかなと思います。

OVAシリーズの頃からのファンの方には、大暴れするハル子やthe pillowsの曲を思う存分楽しんでほしいです。予定調和かもしれないけど、ギターで暴れるなど「やっぱり『フリクリ』だよね」というところや、新しいアプローチも楽しんでもらえればと思います。

『オルタナ』と『プログレ』はセットで見てほしいと思って作っているので、ぜひ両方楽しんでほしいです。伝説になった作品に触れる機会、新作を見られる喜びを感じてもらい、見終わった後に、友達に勧めたり、熱く語り合ってもらえたらうれしいです。

劇場版『フリクリ オルタナ』は9月7日~9月27日、『フリクリ プログレ』は9月28日~10月18日に全国劇場公開!

映画情報

劇場版『フリクリ オルタナ』
9月7日(金)公開

■INTRODUCTION
モヤついている高校生・河本カナ。嵐のごとく登場するハル子。その時カナの額にお花が生えた! 煙を吐きながら街をぶっ潰すアイロン。毎日が、毎日毎日続いていくと思っていた・・・ 力を手に入れたカナはアイロンをぶっ飛ばせるのか!?

■スタッフ
監督:上村泰
副監督:鈴木清崇
脚本:岩井秀人
キャラクター原案:貞本義行
キャラクターデザイン:高橋裕一
メカデザイン:押山清高(スタジオドリアン)
衣装デザイン:谷口宏美
プロップデザイン:細越裕治/秋篠Denforword日和(Aki Production)
美術監督:藤井綾香
色彩設計:中村千穂
CGディレクター:さいとうつかさ
撮影監督:頓所信二
編集:神宮司由美
音楽監督・音楽:R・O・N
音響監督:なかのとおる
主題歌:the pillows「Star overhead」
スーパーバイザー:鶴巻和哉
総監督:本広克行
アニメーション制作:Production I.G × NUT × REVOROOT
配給:東宝映像事業部
製作:劇場版フリクリ製作委員会

■キャスト
ハルハラ・ハル子:新谷真弓
河本カナ:美山加恋
辺田友美(ペッツ):吉田有里
矢島聖(ヒジリ―);飯田里穂
本山満(モッさん):田村睦心
須藤 完:小西克幸
佐々木 門:永塚拓馬相田 弁:鈴木崚汰
河本静香:伊藤美紀
河本文太:真坂美帆
デニス用賀:森 功至
木滝真希:松谷彼哉
神田束太:青山穣

劇場版『フリクリ プログレ』
9月28日(金)公開

■INTRODUCTION
ありとあらゆる命題に明確な答えを用意せず、生理的欲動の充足のみをシコシコ満喫しその日暮らすような説得力ゼロ青少年たち。

その中でなんてことない日常を過ごすヘッドフォンの少女ヒドミ。彼女が轢かれた夜、クラスメイトの少年・井出の額から巨大ロボットが出現した!

ハル子から分裂したラハルとジンユと出会い、〝特別なことなんてない日常〟が終わりを告げる―!!!!!

■スタッフ
監督:荒井和人/海谷敏久/小川優樹/井端義秀/末澤慧/博史池畠
脚本:岩井秀人
キャラクター原案:貞本義行
キャラクターデザイン:久保田誓
サブキャラクターデザイン:米山舞
メカデザイン:押山清高(スタジオドリアン)
プロップデザイン:村山章子/久原陽子
美術監督:荒井和浩
色彩設計:有澤法子
CGディレクター:高柳陽
撮影監督:田中宏侍
編集:濱宇津妙子
音楽監督・音楽:R・O・N
音響監督:なかのとおる
主題歌:the pillows「Spiky Seeds」
スーパーバイザー:鶴巻和哉
総監督:本広克行
アニメーション制作:Production I.G
配給:東宝映像事業部
製作:劇場版フリクリ製作委員会

■キャスト
ハルハ・ラハル:林原めぐみ
ジンユ:沢城みゆき
雲雀弄ヒドミ:水瀬いのり
井出 交:福山 潤
森 吾郎:村中 知
マルコ野方:中澤まさとも
アイコ:黒沢ともよ
雲雀弄ヒナエ:井上喜久子
マスラオ:大倉孝二
アイパッチ:菅生隆之
屯吉:浦山 迅
花枝タミ:鈴木れい子

劇場版『フリクリ オルタナ』公式サイト
劇場版『フリクリ プログレ』公式サイト
劇場版『フリクリ』公式Twitter(@FLCL_JAPAN)

(C) 2018 Production I.G / 東宝
おすすめタグ
あわせて読みたい

おすすめ特集

今期アニメ曜日別一覧
2024年春アニメ一覧 4月放送開始
2024年冬アニメ一覧 1月放送開始
2024年夏アニメ一覧 7月放送開始
2024年秋アニメ一覧 10月放送開始
2024春アニメ何観る
2024年春アニメ最速放送日
2024春アニメも声優で観る!
アニメ化決定一覧
声優さんお誕生日記念みんなの考える代表作を紹介!
平成アニメランキング