アニメ
西川貴教『学園BASARA』『TBF 東離劍遊紀2』主題歌インタビュー|コラボで新たな革命を

表現への飽くなき欲求と好奇心──『学園BASARA』『Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀2』主題歌を歌う西川貴教さんインタビュー

西川貴教さんが本名名義でのヴォーカルプロジェクトをスタートさせてから約1年。その勢いは止まることなく、TVアニメ『学園BASARA』テーマソングをFear, and Loathing in Las Vegasと、さらに日台合同映像企画の武侠ファンタジー人形劇『Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀2』のOP/EDを澤野弘之氏とのタッグで制作。前者は10月5日に配信限定シングルとして、後者は11月14日にシングルとしてリリースされる。それぞれどんな想いから生まれた曲なのかを教えてもらった。

「つまらない男だったら、誰もコラボしてくれないから(笑)」

──西川貴教プロジェクトで初となったデジタルシングル「BIRI x BIRI」(feat. shuta sueyoshi(AAA))をリリースされてから約1年が経過されましたが、振り返ってみていかがでしょうか。

西川貴教さん(以下、西川):昨年9月の段階では海の物とも山の物ともつかないような感じではあったんですが……。「BIRI x BIRIのリリースをして、今年の2月の1stシングル「Bright Burning Shout」で本格的に西川貴教としての活動が始まって。これまでのT.M.Revolutionの活動、バンド(abingdon boys school)の活動とどこが違うのかってことをよく聞かれるんですけど、もう一回いちシンガーとして自分の可能性を広げたいなと思ったことがきっかけで。
常日頃、自分の限界を決めたくないと思っていた中で、なんの因果か舞台にも出させていただけるようになったんですけど……自分の軸足はやっぱり音楽にあると思っていて。でも(舞台『ZEROTOPIA』の脚本・演出を手掛けた)岸谷五朗さんから、役者として見ていただけて、それがすごく嬉しかったんです。自分のことを役者と表現するなんておこがましいとずっと思っていたんですけど、自分がどういう者であるかって、結果的に人が決めてくれるものあって。受け止めてくれる人によって色々な風に変わるんだな、それで良いんだな、と思えたというか。

──そこで振り切れたものがあったんでしょうか?

西川:そうですね。もちろん一生ひとつの武器で貫き通す生き方もあると思うんですけど、僕は「太刀も使えればハンマーも使いたい!」みたいな願望を持っているタイプなので(笑)。せっかくそういう機会を与えていただける稀有な場所にいるので、他の人が見ていない景色、見られないような景色をなるべく見たいなと。そのひとつが、西川貴教としての活動なんですね。コラボレーションによって自分でも想像し得ないような新たなケミストリー、2つのアーティストが引き立たせ合うシナジーみたいなもの……そういうものを生み出せることを目指して音楽を作り出すことで、これまでに聴いたことのないようなものをみなさんに提供できるんじゃないかと思っています。

──西川さんの常に挑戦し続ける心が本当に凄いと思うんですが、そのバイタリティの源ってどこにあるんでしょうか。

西川:えー……なんだろうなぁ(笑)。ひとつは、自分が何かしてて楽しいと思えることよりも、人が喜んでいるところを見ていると「ああ、なんか良いことしているのかもしれないな」って思える性分なので、そこでしょうね。

──ああ、なるほど。でも西川貴教作品で行われているコラボレーションは、西川さん自身がすごくワクワクしている感じも伝わってきて。

西川:そうですそうです!でもそれって、自分からラブコールを送っても相手が「ええ~そんなに興味ないけど」って言ったらそれでおしまいじゃないですか。その時に「やってみたい」って思ってもらえる自分でいられているかどうかっていうか。もしくは、ラブコールを送って応えてくれたとき「一緒にできて嬉しいです!」って言っていただけるか……それが僕にとっていちばん楽しいことなんですよね。クリエイティブの源になれるような要素が僕にあるかどうか……ある種試されている気がします。つまらない男だったら、誰もコラボしてくれないから(笑)。そんな自分で在らなければいけないし、そう在りたいなと思うことは、僕にとってのモチベーションになってると思います。

──お話を聞いていると、表現者としての使命感を感じます。

西川:いやぁ、そんな大層なものではないんですけどね(笑)。

「遊び心で打ち返すのが正しいアプローチなんじゃないかなって」

──まずは10月5日に配信リリースされるTVアニメ『学園BASARA』テーマソング「Be Affected」について教えてください。コラボレーションされているFear, and Loathing in Las Vegas(以下、ラスベガス)は、イナズマロック フェスで交流があったとは存じているんですが、西川さんからラブコールを送られたんでしょうか?

西川:はい。『戦国BASARA』自体は、ゲームとアニメでたくさん関わらせていただいて、シリーズを通して随分と長いお付き合いで。そのなかで、『学園BASARA』のお話を小林(裕幸)さん(『戦国BASARA』シリーズプロデューサー)からいただいて。どんなものが良いのかなぁって色々考えていたんですけど……本線とも違うし、これまでの系譜ともまったく違うアニメ作品なので……もちろん正統派で攻めても良いんですけど、関わる方も遊び心で打ち返すのが正しいアプローチなんじゃないかなって感じていたんです。アニメでいうところの前作になるんですけど、『戦国BASARA Judge End』という作品がありまして……この時は酒井忠次という役で作品に関わらせていただいたんですけど、テーマソングを「誰にお願いすればいいかな?って小林さんから相談を受けて、ラスベガスを推薦させてもらったんです。
それでテーマソングをラスベガスが担当することになったという経緯があって。そういう意味でも、ラスベガスは『BASARA』ファミリーなんです。仲間としての繋がりがあるんですけど、(音楽的には)一見混ざらないようなものが『BASARA』を通じてコラボレーションすることで、今までにない遊び心が生まれるんじゃないかなと。こういう風に作品を作ることが、『学園BASARA』にとって良いんじゃないかなと思ったんです。

──小林さんにそれをお話しされたときはどのような反応だったんでしょうか?

西川:小林さんは、僕が良いなと思ったものは基本オッケーしてくれるんですよ(笑)。「こういう気持ちで曲を作りたい」って話をして、楽曲を聴いてもらったら気に入っていただけて。

──ラスベガス側は西川さんからのオファーをどのように受け止めていたんでしょうか?

西川:最初はおっかなびっくりで「そういうのって……できるのかなぁ~?」って感じで探りを入れて(笑)。そしたら「タイミングとモノによっては」と言われたので「誰に話せばいいのかな?その人の連絡先教えてもらっていいかなぁ~?」って。

一同:(笑)

西川:それですぐに(自分のスタッフに)連絡先を投げて、連絡取ってもらって。急な思いつきだったので、「これ、いけるかなぁ……」って不安もあったんです。「やります」って言ってくれた時には、もうひとつ仕事済んだなって気になってましたね(笑)。

──作詞作曲はラスベガスが手掛けていますが、西川さんからお願いしたことはあったのでしょうか?

西川:「お前ららしいのが良い」って。その一言しかなかったんですが、これだけカラーのハッキリとしたものが出てくるというのは『BASARA』というひとつのテーマで繋がっているからこそなのかなと思います。

──異種格闘技戦ともいえる楽曲ですが、西川さんのボーカルが入ってきた瞬間にパッと開いて夏に変わるというか……。

西川:リリース秋ですけど大丈夫ですかね(笑)。

──(笑)もちろんです!夏というと語弊があるかもしれないですが、それくらい眩しさを感じるエネルギッシュな歌声で。レコーディングはどんな感じだったのでしょうか。

西川:音録りしてるスタジオに行ったんですけど、そのときにオケを聴いて。めちゃくちゃカッコよくて、僕の中でボーカルのSoくんの声が聴こえてきた。これをどう超えて自分らしくするかっていうのが自分の中の大きなハードルだったと思います。バンドとして完成している音の中で、ある種ボーカルを押し退けて、僕自身の楽曲として成立させていかなきゃいけないので……そこは難しかったですけど、これまでなかったような楽曲ですし、それぞれのファンのみなさんが楽しめる楽曲になってくれたらいいなと。

──西川さんは『BASARA』シリーズで顔ともいえる存在ですが、だからこそ『学園BASARA』でどんな映像と重なるかが楽しみです。

西川:僕自身も楽しみなんです。10年以上続くシリーズが長く愛されている理由って、やっぱりキャラクターの魅力ですよね。かつ、キャストのみなさんが本当に素晴らしい。『BASARA』のキャラクターのどうしようもない熱量が、まっすぐだからこそコミカルに感じるところもあって。それが『学園BASARA』という作品に活きるんじゃないかなって思うので、凄く楽しみです。実際にどんなモノになっているのかは小林さんに伺うしかないんですけど、元々のコミックがかなり飛ばしてたので、相当ブッとんだものになってるんじゃないかなと(笑)。これまでの『戦国BASARA』シリーズをゲームやアニメで触れたことがない方が、突然触れたらどんな反応をするのかなってところも気になります(笑)。

澤野さんの楽曲は「いちファンとして聴いていた」

──さらに11月14日には『Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀2』OP&EDテーマが2ndシングルとしてリリースされます。作曲は澤野弘之さん、作詞は藤林聖子さんという最強のタッグで。

西川:そうですね、間違いないなっていう(笑)。

──お二人の曲を歌われるなかで、西川さんが感じられたことなどはありますか。

西川:以前から澤野さんの楽曲が好きで、『進撃の巨人』『アルドノア・ゼロ』『七つの大罪』『甲鉄城のカバネリ』などのサントラをいちファンとして聴いていたんですね。それで澤野さんの楽曲と女性ボーカルって凄く相性がいいなと思っていたんです。澤野さんの音楽プロジェクトのヌジーク(SawanoHiroyuki[nZk])で男性のシンガーの楽曲もあるんですけど、比率からすると圧倒的に男性の曲は少ない気がしていて、例えば自分の声が合わさったらどうなるのかなぁと勝手に妄想していたんですが……そんななかで『Thunderbolt Fantasy』の2期が始まることになって。1期がはじまる前から「絶対2期もやりたい!」って虚淵(玄)さん(Thunderbolt Fantasy Project原案・脚本・総監修)が仰っていたんです。

──1期のときはT.M.Revolutionの「RAIMEI」が主題歌を彩っていましたが、その時から2期への想いはあったんですね。

西川:そうなんです。1期、劇場版と続いて、2期が決まった時に「またぜひ楽曲を」というお話をいただいて。だったらより親和性が高い楽曲作りができないかなってところから、「そうだ!『TBF』の音楽担当は澤野さんですよね。ダメ元でリクエストしても良いですか?ってお願いしたんです。
それでスタートしたのが今回のプロジェクトでした。本当に念願叶ったというか。オープニングだけじゃなくて、エンディングも担当させていただくことになり、かつキャストとしても出演させていただけるとのことで、夢のようだと思っています。

──作品ファンにはお馴染みの『Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀』のメインテーマに、新たに歌詞とメロディがついた「His/Story」は、どんな気持ちで歌われたんでしょうか?

西川:第1期のメインテーマといわれていた楽曲を再構築して「His/Story」に生まれ変わったわけですけど……こういったアプローチもなかなかないことですし、より作品の一部になれている感じがします。聴けば聴くほど作品が観たくなるし、藤林さんの一言一言の言葉が作品の展開をさらに期待させるというか。

──藤林さんは「予言者

と呼ばれているほど、この先を楽しみにさせる歌詞を書かれる方ですよね。

西川:そうなんです。だから自ずと楽曲がストーリーを引っ張っていくようなところがありますよね。

──個人的には<自分の足跡が歴史になる>という言葉にグッときたんですが、作品への気持ちや、西川さん自身の想いなどにも重ねているんでしょうか。

西川:ああ、嬉しいですね。もちろん僕自身のってところもあるんですが、作品への想いが大きいです。この作品が始まって日本では3年くらいですけど、布袋劇自体は台湾では30年近く愛され続けている作品で、向こうの方とお話すると感覚的には「サザエさんのような存在なんだそうです。
そういったところにも長い歴史を感じますし#### ──そこに甘んじず、「日台合同映像作品」という新たな作品作りに取り組んでいるところに新たな歴史を感じます。色々なものをこの楽曲が象徴してくれている気がしますね。

──エンディングテーマの「Roll The Dice」は直訳すると「一か八か」ですが、どんなお気持ちで歌われたんでしょうか。

西川:自分の判断が正しいかどうかなんて誰も分からないわけで、どの目が出てくるかなんて分からないんですけど、それでも歩むしかない。そういう強さって誰のものでもないですよね。みんなが主人公で、それぞれの物語を一人一人が紡いでいる。そういった想いと、僕自身もキャストとして出させていただくので(浪巫謠/ロウフヨウ役)、殤不患(ショウフカン)たち登場人物の信念……さらに自分自身の信念を楽曲で表現できたらいいなと。誰かに照らし合わせて聴いていただければいいなと思いました。

──西川さんが演じられる浪巫謠の活躍も楽しみです。

西川:ありがとうございます。現場で鳥海浩輔さん、諏訪部順一さんのアフレコを生で聴かせていただけるっていうのは贅沢な経験だなと。他の作品と違って、『TBF』ならではの節回しといいますか。『TBF』って作り方がすごくて、日本語の台本が台湾語になって、台湾語で収録されたものが今度は日本語になるっていう。一つ一つのセリフが詞のようでドラマティックなものばかりなんです。これを豪華なキャストのみなさんが演じられることで、魅力のあるキャラクターに息が吹き込まれていく。この作品の独創性といいますか、アニメが全盛のなかで一個突き抜けたまったく違った作品になっていて。虚淵さんが携わられることで、本国・台湾のものとも違う新たなものが生まれていると思うんです。そんな映像としての美しさはもちろんなんですけど、声優のみなさんの演技力の素晴らしさを改めて感じることができる素晴らしい作品だと思います。僕自身ももっと流暢になりたいです。自分の至らなさを本当に痛感します。好きだからこそもっともっと勉強したいなと思っています。ありがたいことに、第一線の音楽監督さんに厳しいご指摘をいただけて。実践で勉強させていただいている感じで贅沢ですね。緊張しますけど(笑)。

──楽しみにしております。(インタビュー時)もうすぐ誕生日を控えられていますが、新たな歳を迎えるにあたってチャレンジしたいことはありますか。

西川:まだまだたくさんあります。年末から年明けにかけて『サムシング・ロッテン』という舞台にも立たせていただくんですが、一年に2つ舞台に出演させていただく機会ってなかなかないんです。福田(雄一)監督がどんな演出をされるのか非常に興味深いところもあります。西川貴教として新たに音楽を表現することに凄く惹かれているので、できるだけ早くアルバムまで持っていって、ツアーなり、ライヴなりで表現できることを目標に頑張っていきたいなと思います。

──ありがとうございました!

[取材・文/逆井マリ]

 
オフィシャルWebサイト

おすすめタグ
あわせて読みたい

西川貴教の関連画像集

関連商品

おすすめ特集

今期アニメ曜日別一覧
2024年春アニメ一覧 4月放送開始
2024年冬アニメ一覧 1月放送開始
2024年夏アニメ一覧 7月放送開始
2024年秋アニメ一覧 10月放送開始
2024春アニメ何観る
2024年春アニメ最速放送日
2024春アニメも声優で観る!
アニメ化決定一覧
声優さんお誕生日記念みんなの考える代表作を紹介!
平成アニメランキング