代々木アニメーション学院

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日本ナレーション演技研究所出身 洲崎 綾さんインタビュー 後編

2019-01-08 10:00:10

PROFILE

洲崎 綾(すざき あや)

12月25日生まれ。石川県出身。アイムエンタープライズ所属。2010年に『バクマン。』でアニメデビュー、2013年にアニメ『たまこまーけっと』のヒロイン、北白川たまこ役を務める。2018年10月から放送中のアニメ『RELEASE THE SPYCE』では八千代命役を、同じく2018年10月から放送中のアニメ『ひもてはうす』では本郷たえ役を演じ、2019年1月からは主人公の大鳥居あすかを演じる『魔法少女特殊戦あすか』がスタート!

今回、ご登場いただく洲崎綾さんは10月より放送中のテレビアニメ『ひもてはうす』『RELEASE THE SPYCE』で活躍しており、2019年1月放送開始のテレビアニメ『魔法少女特殊戦あすか』では主人公・あすか役に抜擢された人気声優です。

そんな洲崎さんのインタビューを前後編に分けてお届けします。インタビュー後編では声優をめざしたきっかけや、日本ナレーション演技研究所(以下、日ナレ)で学んだこと、今後の目標など、社会人を経てから声優になった洲崎さんならではのお話を伺いました。

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——声優になろうと思ったきっかけを教えてください。

洲崎さん:小学生の時から『名探偵コナン』がずっと好きで、中でも灰原哀ちゃんというキャラクターが大好きだったんです。そこで「この声の人って誰なんだろう」と思って調べたことがきっかけで、彼女を演じられていた林原めぐみさんの存在を知りました。中学に上がったくらいの頃、アニメが好きな子と話している中で、林原さんがラジオをされていることを聞いたり、ちょうどその頃に林原さんのアルバムが数年ぶりにリリースされることも発表されたので手にとってみたりと、そこから興味を持つようになってラジオも毎週聴くようになりました。

声優はアニメの仕事のイメージしかありませんでしたが、林原さんの活動を通して「ラジオもあるんだ」「イベントも出演するんだ」と、声優がどんな仕事をしているのかを知っていきました。なので、最初は声優に憧れたというより、林原めぐみさんに憧れていたんですよ。

——林原さんへの憧れがきっかけとなり、声優をめざすようになったわけですね。

洲崎さん:ただ、地元には養成所などもなく、最初はぼんやり考えているだけでした。高校に上がったときに、NHKのラジオで声優の方と生電話で相談できる番組があって、林原さんがゲストの際にたまたまお話する機会を得て、そこで将来についてお話をさせていただきました。そこから本格的に養成所に通いたいと思い、高校卒業後に上京して大学に通い始めてから日ナレに入所しました。

――では大学生活と両立しながら日ナレに通っていたと。

洲崎さん:そうですね。大学1年生のときにバイトをしてお金を貯めて、2年生の春から通い始めました。

——そこで日ナレを選んだ理由は?

洲崎さん:安かったからですかね(笑)。

——金銭的な面も大事ですよね(笑)。

洲崎さん:あと林原さんが特待生で日ナレに通われていたことを聞いたので、大手だし安心だと思って日ナレを選びました。レッスンが週1回という点も、大学生活と両立しなくてはならない私にとって嬉しいポイントでした。

——両立するとなれば、どちらかが疎かになってしまうといけませんからね。

洲崎さん:社会人を経ているのも、家が厳しかったので「大学を卒業したあと、3年は社会人経験を積みなさい」という約束が家族とあったからなんです。そうすれば声優になれなかったときにも備えられると言いますか、大学を出てから何もしていない期間が長いと、新たに会社に入るのが難しいんじゃないかという懸念があったんだと思います。結局、社会人は2年しか経験していませんが。

——日ナレではどういったレッスンを受けていたのでしょうか。

洲崎さん:基礎科・本科・研修科という3つのクラスに分かれており、基礎科・本科は発声・滑舌と、舞台で立ち回るように身体を動かして、役者としてセリフを覚えて発するレッスンが主な内容でした。研修科に進むとマイク前のレッスンが増えますが、そのレッスンにあたり、基礎科・本科でしっかりとお芝居を学ぶことができたのは良かったと思います。

やっぱり、ちゃんとお芝居をしたことがないままマイク前に立ってしまうと、口先だけになってしまったり、演技のいろはが分からないままのお芝居をしてしまうので、日ナレで得られた経験は大きかったと思います。

それから、レッスン自体は週1回ですが、お芝居の練習はほぼ毎日していました。週1回のレッスンのためにどれだけのことをやってレッスン当日に臨めるか、私の中では講師との勝負の場のようなイメージでした。また、レッスンでは率先して手を挙げるタイプでした。ここで遠慮したらダメだと思って、常に負けないぞという気持ちを持って臨んでいましたね。

——入所してからも意欲的に取り組む姿勢が必要になってくるんですね。

洲崎さん:はい。そこから本科に上がったくらいのときに“芝居とは何か”ということがうっすらと分かり始めました。基礎科のときは、セリフを覚えて読むくらいの感覚なんですよね。でもそうじゃないんだと、後に気が付きました。

また、講師の方に「表現したいものがないと何も出てこないんだよ」と言われたときはまさにその通りだと思いましたし、今でもその言葉はとても印象に残っています。

――と、言いますと?

洲崎さん:当時の自分ができていたのかは分かりませんが、その役のことだけではなく、作品を通して作り手が何を伝えたいのか。観る人に何を伝えたいのかという観点がないと、受け手の方には伝わらないと言いますか。行間を読んで、ト書きに書いていないところでその人が何を考えて、どういう経緯でこのセリフを言ったのかなど、その結末に至るまでにどんな心情の変化があったのか、書かれていないことを想像して埋めていく作業が大事だと実感しました。

また、その時の講師の方が仰られていた「僕らは下手くそでもいいから真っ白なキャンバスに大きく絵を描け」という言葉も心に残っています。今でも教訓にしていますが、出演する作品や舞台など、話の流れや結末は知っているものでも、演じるときは一度それを真っ白にして一から描いていく作業が大事なんだと教えていただきました。

言われたときは「たしかにその通りだ」と思うものの、身に染みて実感するまで私は2年かかりました。ただ、それらは現場のマイク前に立つ前の在学中に実感できて良かったと思います。

――ちなみにクラスの雰囲気はいかがでしたか?

洲崎さん:すごく良かったです。クラスメイトには恵まれていたので、今でも仲がいい人はいっぱいます。専門学校と違って年齢層の幅が広く、私が入所した19歳のときに30歳ぐらいの人がいることもありました。社会人の方も多かったですし、私と同じように学生の方もいました。ちなみに同じ大学に日ナレ生がいたので、キャンパス内で一緒に練習したこともあります。

——すごい偶然ですね! では事務所に所属してデビューするまでの経緯についてお聞かせください。

洲崎さん:アニメのデビューは養成所生のときで『バクマン。』という作品です。早見沙織さんがヒロイン役で、そのヒロインがアイドルとして組んでいるユニット3人組のうちのひとりとして、アフレコやレコーディングに参加しました。

――養成所の頃にデビューされたということは、そのままアイムエンタープライズに?

洲崎さん:養成所の方からお仕事をいただくことがありましたが、それがきっかけで所属したということではなく、私が所属オーディションに合格してアイムエンタープライズに入ったのは入所5年目の終わり頃でした。デビュー後は名前のない役をいただくことはありましたが、なかなかメインの役どころが決まらなくて。

そんな中、初めて主人公としてオーディションに合格したのが『たまこまーけっと』というアニメ作品の主人公・北白川たまこ役です。だから、事務所に合格してから彼女の役を掴み取るまで、1年半くらいかかっていると思います。それまでオーディションを受け続けていたので、合格したときは腐らずに続けて良かったと本当に思いました。

親もずっと反対していましたし、事務所に受かったこともなかなか言えなくて。仕事を辞めたこともあとから言った気がしますね(笑)。それでたまこ役が受かってようやく認めてもらえたところはあると思います。

——なるほど。当時の収録の雰囲気はいかがでしたか?

洲崎さん:私もメインの他の役の方も新人だったので、わりと温かい雰囲気で周りのみなさんに育てていただきました。特にデラ・モチマッヅィという鳥を演じられている山崎たくみさんが、色々なことを優しく教えてくださって。でも「ここをもっとこうしたらいいよ」といったお芝居に関するアドバイスはなく、逆に「初めて主演を務める作品だから」と見守っていただきながら、私も自由にやらせていただきました。

マイク移動も慌ただしかったのですが、それで私がテンパってしまうことが分かっていたのでずっと同じマイクを使わせていただきましたし、本当に温かい現場でした。

——それはいいお話ですね。

洲崎さん:実は養成所の頃に目標を立てたとき、当時から数えて10年後に主役をやりたいと書いていたんですよね。

それは研修科で教わった講師の方から、ある日のレッスンで、ノートに自分が10年後どうなりたいかを書くように言われたことがきっかけでした。10年後にどうなりたいかを書いた後、その目標をめざすには5年後どうなっていないといけないのか。それを3年後、1年後、半年後と近づけていって、最終的に明日は何をしないといけないのかを具体的に書いていきました。私は10年後に主役をやりたいと書いて、5年後は主役の友達と書いていて(笑)。

でもそのときは事務所にも受かっていないので、将来のビジョンを刻んでいくと1年後には所属していないとダメだと思って。そのために明日やらなきゃいけないこととして、滑舌を良くするとか、もっと演劇を観に行ったりして芝居を勉強するとか具体的なことをいっぱい書きました。

きっと声優になるという意識をしっかり持たせるためのレッスンだったと思いますが、とてもいい機会になったと思います。

――事務所の所属こそ予定通りにいかなかったものの、主役は10年も経たないうちに掴み取れたわけですね。

洲崎さん:ちなみに私は毎回のレッスン終わりに、日記やそのとき教わったポイントなどを全部書いていたんです。この人のこの演技は良かったとか、自分のここがダメだったとか。多いときはノート6ページ分くらい書いていました。

そのときのノートは実家にあって、見返すと今でも当時のことを思い出して頑張ったなって感じることがあります。そう思えるくらい頑張っておいて良かったですし、事務所に所属してから1年半で主役をいただくことができて、私はとても運が良かったと思っています。

そして今では、若いときにメインの役を経験して、逆に年を重ねていくことで主役の人を支えてあげられるような人になっていくべきなんだと思うようになりました。逆に養成所の頃は、何年も経験を積んでからやっと主役ができるという認識でしたが、デビューしてから見方が変わりましたね。

——そんな日ナレで受けたレッスンの中で、実際に現場で役に立っているスキルは?

洲崎さん:お芝居とは少し離れてしまいますが、研修科の時に受けたレッスンで今でも現場で活きているものがあります。そのレッスンでは、みんなの家にある変な服を持ち寄ってスタジオに広げて、その中で好きなものを自由に着るんです。そこで講師の方がピエロがつけるような赤い鼻を人数分持ってきて、その鼻をつけたまま3分間みんなの前で何かをやるというレッスンが1か月に渡って行われました。

当時は「そんなレッスンある!?」と思いましたね(笑)。しかも、家で何かネタを用意してはいけなくて、頭を空っぽにしたままその場で出てきたものを表現しなくてはならないんです。

特におとなしい人からすればこのレッスンはキツかったと思いますし、私自身も大変でした。でも、このレッスンを通して、恥ずかしいとか、体裁を整えることに対して吹っ切れたと言いますか、度胸がついたと思います。

それに意外と何も考えずに出したものがウケたりするんですよね。ちなみにレッスンでは見ている人が気を遣って笑ってはいけないというルールがあったので、みんなムスっとした顔でこっちを見ていて……本当に大変だったんですよ(笑)。だからこそ、そのレッスンは印象に強く残っています。

そこで普段はお芝居でパッとしなかった人が輝くこともあるんですよね。その人の面白さや新たな魅力に気がついたり、それで自信のついた人が普段のお芝居や自分で台本を書く課題のときに輝いたり、色々なアプローチ方法があるんだということが明らかになって。そういうお芝居をする上でのヒントのようなものが掴めるレッスンだったと思います。それこそ収録現場でアドリブを求められることもあるので、役を固め過ぎずその場で出す表現も大事だと考えるようになりました。

——収録はもちろん、イベントなどでもアドリブ力が求められる機会は増えたように感じましたが、そういったレッスンも現場で活かされているんですね。それでは実際に学んだからこそ感じる日ナレの魅力を教えてください。

洲崎さん:お芝居って自分の内面が出てくるものだと思います。得意なキャラクターだって人によって違いますし、演じているうちに「やっぱり私ってこういう人が得意なんだ」とか、なんとなく分かってくると思うんですよね。キャラクターによっては演じる際に自分が持っていないものを想像することがありますが、やっぱり自分が経験したことがある感情はとても表現しやすいんです。

そういった引き出しが求められる中、自分はどういう人間なのか、自分の売りはどういったところなのか。多くのクラスメイトや講師の方と過ごすことによって客観的に理解できるようになってくるので、その点は魅力的だと思いました。

また、週1回のレッスンは人によって良し悪しがありますが、仕事をしながら通っている人にとってはとてもありがたいことだと思います。私は社会人になった後も日ナレに2年間通っていたので、週に数回レッスンがある養成所だったら継続して通うことは難しかったんです。そういった点も含めて、日ナレで良かったと思います。

——今後の洲崎さんの声優としての目標について教えてください。

洲崎さん:ある程度の年数は重ねているものの私はまだまだ若手だと思うので、演じたことのないようなキャラクターはいっぱい存在します。そのため得意な役柄だけではなく、これからどんどん役の幅を広げていきたいです。

それこそ大鳥居あすか(※『魔法少女特殊戦あすか』で洲崎さんが演じるキャラクター。インタビュー前編参照)は、また新たな自分のお芝居をお見せできると思います。なんでも演じられるようになることは難しいと思いますが、やっぱりお芝居の魅力は自分じゃないものになれることだと思うので。

普通の目標ではありますが、色々な役を通して地道に経験を積み重ねていきたいです。ゲームも含めると、本当に様々な仕事、色々なキャラクターを演じる機会がありますが、どの役を演じるときも「これはこのパターン」のような型に当てはめることはしたくないので。どんな役をいただいたとしても1からイメージを膨らませて、例え似たようなセリフ・似たような見た目だとしても、それぞれ違うお芝居でキャラクターを想像する作業を丁寧にしていきたいと思います。

——声優をめざしている方にメッセージをお願いします。

洲崎さん:やっぱりお芝居ってすごく奥が深いと思うんです。私も未だによく分からないところもありますし、先輩方と私の見ているところでは全然違うこともあって、まだまだ道のりは長いと感じています。きっと今、スタート地点に立っている方や、登っている途中の方、そこに立ちたい方など、いっぱいいると思います。私はお芝居を楽しいと日々実感しながらお仕事していますが、それはプロになったからではなく、養成所時代から楽しいと思いながら演じていて、今のお仕事はその延長線上にある気がしているんです。

なので、養成所に通っている方にはお芝居を楽しんでほしいですし、掛け合いや気持ちの動きを大切に感じ取ってもらいたいです。私もオーディションに受からなくてツラいと思っていた時期がありましたが、常にそのように考え込んでしまうと、お芝居をやっているときですらマイナスな気持ちになってしまうと思います。そんな気持ちになってしまうときもあると思いますが、とにかく腐らないで頑張ってほしいです。腐らないで頑張っていたら私も仕事をいただけたので。

養成所時代の私は全然上手ではありませんでしたが、やっているうちに分かってくることがいっぱいあります。日々の生活を大事にして色々な感情を経験しつつ、それを自分の引き出しにして歩んでもらえたら嬉しいです。

——ちなみに養成所に入るまでにやっておいた方が良いということはありますか?

洲崎さん:とにかくいろんな経験をするのが一番良いと思います。あとは様々な作品を観ることでしょうか。それはアニメに限らず映画やドラマとか、日常にいるいろんな人とか。例えば学生さんだったら高校にいる変な先生とか色々な人を見ていたりすると、もらった役によっては「あの先生に近づいていくとこの役が紐解ける!」と気がつくようなことがあるんですよね。自分の中にないものの想像は難しいですが、見たことがあるものなら近づけやすかったり参考として思い出すこともできます。

だから、とにかく色々な人生経験を積むことが良いと思います。私はデビューが遅かったものの、その分早くにデビューした方にはできない役が演じられていたのかもしれないと思うことがあるんです。その数年の差も決して無駄ではないと思いますし、スタートの年齢に早い遅いはないと思います。

———何気ないシーンでもいつか役に繋がることもあると。

洲崎さん:はい、ぜひ前のめりに生きてほしいです。高校で体験した行事、文化祭とか運動会とか、そのときに自分が前のめりに参加したことって記憶が鮮明に残っているじゃないですか。私は日ナレでのレッスンの思い出が鮮明に残っています。きっとお芝居はそういった経験の積み重ねだと思うので、能動的に日々過ごすということが重要だと思います。

――ありがとうございました。

<取材・文:鳥谷部宏平>

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