ノブアキたちに知らされた劇団アルタイルの新企画とは……!?　ツキノ芸能プロダクション」所属『劇団アルタイル』ショートストーリー連載第20回！

2.5次元芸能プロダクション「ツキノ芸能プロダクション」に設立されたバラエティタレントユニット『劇団アルタイル』。歌もダンスもお芝居も……というマルチなタレント活動をする彼らの日々を、ショートストーリーと挿絵でお届けする連載です。

お披露目イベントの翌日、ノブアキ、カズキ、ジュンペイの3人は、タツヒコに声をかけられて会議室へと向かいます。そこでいち早く発表された、劇団アルタイルの新企画とは……！？

劇団アルタイル『新企画、始動』
【あらすじ】
お披露目イベントが無事に終わり、社長への報告も終えたノブアキ、カズキ、ジュンペイ。3人は社長室からの帰り道でタツヒコに出会い、話したいことがあると会議室に連れていかれる。彼らを待つ驚きの発表とは……？

【ストーリー】
　――お披露目イベントの翌日、ツキノ芸能プロダクション。
　挨拶を終えて社長室から出てきたジュンペイは、思わず大きなため息をついた。
「はぁ……緊張した」
「あはは！　ジュンペイって、けっこう緊張しいだよな！」
　ノブアキが、笑いながらジュンペイの背中を叩く。
「わっ……！」
「ずっと緊張してたら疲れちゃうぜ？　イベントはちゃんと成功したんだからさ。な、もっと気楽にいこ！」
「う、うん」
　そうできたらいいんだけど、と言いかけて、慌てて飲み込む。すると、
「俺も緊張した」
　俯きかけたジュンペイの隣で、ぽつんと呟く声がした。
　驚いて顔を上げると、カズキが神妙な顔でこちらを見ていた。
「イベントの本番と同じくらい緊張した」
　カズキの言葉にホッとして、詰めていた息が自然にほどける。
　自分だけじゃない――当たり前のことが腑に落ちて、やっと、少しだけ笑えた。
「――あ、いたいた」
「あ……タツヒコさん！　お疲れさまです」
　廊下の角を曲がり、タツヒコがこちらへやってきた。
「社長に、昨日の報告に来たんだろう？　三人だけか？」
「ですです！　この時間は俺たちしか、都合がつかなくて。な？」
　ノブアキが言い、ジュンペイも頷いて、続けた。
「ビックリしました。俺達みたいな新人が突然社長から呼び出されるなんて……何か怒られるのかと」
　その言葉にタツヒコは苦笑してみせた。
「普通はそう思うよな。けど、うちの場合はちょっと特殊なんだ。俺も事務所に入りたての頃は、あんまり気軽に声をかけられて戸惑ったよ。だけど、そのうち慣れた。社長は純粋に現場の生の声が聴きたかっただけで、深い意味はないんだ。そういう人なんだよ。気さくで気まぐれで行動が読めない。だけど、悪い人じゃないってことだけは保証できる。あまり考えすぎるな」
　「はぁ……分かりました……」
　三人の戸惑い顔を懐かしいような気持ちで眺めた後、タツヒコは少し考え込む仕草をして、頷いた。
「じゃあ、せっかくだし三人には先に話しておこう。これからちょっとだけ時間をくれないか？」
　そう言ってきびすを返したタツヒコに、三人は首を傾げながらついていく。

「おっ。お疲れーッス」
　小さめの会議室に入ると、明るい声が飛んできた。
「ヨウスケさん。……サクヤくんに、ユウリさんも」
「社長ンとこ行ってたんだろ？　どーだった？」
「めっちゃくちゃ緊張したっ！」
　力いっぱい答えたノブアキに、ジュンペイとカズキは思わず顔を見合わせる。ふたりの視線に気づいたノブアキは、悪びれもせず笑ってみせた。
「俺が緊張してないとは言ってないだろ？」
「なんだ……そうだったんだ」
　思わずジュンペイが吹き出すと、ノブアキは少し顔を赤くにした。
「だってさ～、しょうがなくね？　相手は社長だぞ、社長っ！」
「ふふ。社長は少し独特の雰囲気があるからね」
「お前が言うなよ、ユウリ……」
　黙って聞いていたサクヤが呆れたように言って、頬杖をつく。
「で？　タツヒコ。話ってなんだ？　俺、このあとボイトレ入ってんだけど」
「長い話じゃない。すぐに済むよ。昨日、少し話をした新しい企画のことだ」
「おお！　待ってましたっ！」
　ヨウスケが、身を乗り出す。
「で、今度はどんなことすんの？」
「ヨウスケ、うるさい。黙って聞けよ」
「え～！　いいじゃん、サクヤだって気になるだろ～？」
「取り急ぎ、今いるメンバーだけにでも話をしておきたい……と。ふふ。タツヒコも、かなりワクワクしてるね？」
　ユウリの言葉にタツヒコが笑顔で頷き、続けた。

「メンバー全員のソロ曲がリリースされることになった」

「！！」
「えっ……」
「うおお！　やったー！！」
　一瞬、室内の空気が止まり、その直後ヨウスケが嬉しそうに立ち上がった。
「全員って、19人分ってことだろ！？　マジスゲー！」
「詳細はみんな揃ったときに改めて話すが、期待されていると思ってくれ、と社長からの伝言だ」
「そう言われると気合いが入るな」
　サクヤが口端を上げて呟く。
「きっとうまくいくよ。トムテさんもそう言ってる。……ん？　どうしたの、ジュンペイ？」
　ユウリが不思議そうに首を傾げた。
「顔が真っ白だよ？　もしかして具合が悪い？」
「……いえ、あの」
　それ以上言葉が出て来ないジュンペイの隣で、カズキが気遣うように椅子を引いた。
　が、手許が狂い、折りたたみ椅子同士が派手にぶつかって派手な音を立てる。
「すみません……」
「ん？　どーした、お前ら？　急にギクシャクしちゃって」
「……いきなりソロとか言われて、一気に緊張したんだろ」
　そんくらいわかれよ、と呆れ顔でサクヤが言うと「ああ！　そーゆーことか！」とヨウスケが膝を打ち、明るく続けた。
「あんま緊張すると疲れちゃうぞ？　大丈夫だって、もっと気楽にいこーぜ！」
　どこかで聞いたようなその言葉に、ノブアキが会議机を思いっきり叩き、声を張り上げた。
「む、無茶言うなぁっ！！　そんなん、緊張するに決まってんだろーっ！！」