
閉じるのではなく開ける──「ずっと残響が残り続けるような、心の中に残っていくような終わり方に」劇場アニメ『最終楽章 響け!ユーフォニアム』後編 小川太一監督インタビュー
2026年9月11日(金)から公開中の『最終楽章 響け!ユーフォニアム』後編。2015年にスタートしたアニメ『響け!ユーフォニアム』のシリーズ完結作で、2024年4月~6月に放送されたTVシリーズにおける最終作『響け!ユーフォニアム3』の終盤エピソードをブラッシュアップ。シリーズ構成と脚本を務めてきた花田十輝さんが新たにシナリオを執筆した新作シーンも数多く追加され、総集編ではない堂々たる劇場完結作となっている。
アニメイトタイムズでは、先日公開したメインキャスト3人の鼎談に続いて、小川太一監督にもインタビュー。本編のネタバレもすべて解禁し「つなぐ」「つむぐ」という『最終楽章』のテーマや、シリーズを締めくくるエンディング映像に込めた想いなども語ってもらった。
※本記事は映画本編のネタバレを含みます。
タイトル回収をしていくことに、劇場版を作る価値がある
── 『最終楽章』の方向性は、すぐに決まったのでしょうか? それとも複数の案で検討を重ねて、現在の形になったのでしょうか?
小川太一監督(以下、小川):結論から言うと後者ですね。総監督の石原(立也)さんもよく言ってることですが、毎期「ここで終わる」つもりで作ってきたし、3期も「これで『響け!ユーフォニアム』をちゃんと終わらせるぞ!」という気持ちで作っていました。
作るのなら、しっかりと意味を持って作らないと、蛇足になってしまう。それは、ファンの皆さんに対しても失礼だし、作る意味のあるものにするってことは大前提。やれる勝算が付くまで本当に悩んで、時間をいただきました。
── 原作小説と『響け!ユーフォニアム3』では、展開や結果が異なります。劇場版では、テレビとは違う結果にしようという案も?
小川:たぶん、視聴者の中にはそれを期待している方もいるのだろうと思いつつ、それをやってはいけないということは僕の中でひとつの軸でした。(3期の制作時の)作品の軸として、あそこの決断は大きくくさびを打ったところなんです。そこを変えてしまったら「じゃあ、3期は何だったの?」ということになる。色々な案を出しながら話し合う中で、僕は変えるべきではないと強く思っていましたし、みんなもそうでした。そこはTVアニメ一期の頃から描いてきたものがある中で、信念をもって作っています。
── 改めて今回は、どのような方向性で制作が始められたのでしょうか。
小川:すごくシンプルに言えば「タイトルの『響け!ユーフォニアム』って何なんだろう?」「『響け!』って何なんだ?」をしっかり回収する、表現しきるということです。もちろん、3期は3期でしっかりとまとまった作品だと思っていますが、この路線では描き切れていないと感じていて。
── 3期は「黄前久美子の物語」という印象が強かった気がします。
小川:そうなんですよね。だからしっかりとタイトル回収をしていくことに、劇場版を作る価値があるんじゃないかと思いました。
あとは、音周り。今回は再アフレコをしただけではなく、音(演奏)も録り直しているところがあるし、音楽も新たに作っていただいています。そんなこともあって、音周りがとてもリッチになりましたし、それでしか感じられない気持ちも表現できたかなと。
そういう意味では、劇場版をやる価値は、制作作業の後半になってからの方が、さらに大きく付いていった気がしています。
3期で画竜点睛を欠いていたところを埋められた
── 『最終楽章』は、前編のテーマが「つなぐ」で、後編のテーマは「つむぐ」だと伺いました。このテーマも制作を進めていく中で見えてきたものですか? それとも、早い段階から固まっていたのでしょうか?
小川:きっかけは、3期の13話(最終回)のシナリオです。最後の最後に「これは、紡がれていく物語」と書いてあったんですよ。セリフでもト書きでも無く、花田さんの気持ちみたいな感じで。
── 花田さんの想いが溢れて、おもわず漏れ出てきたような?
小川:そうです。それを読んで、僕も「そういうことだよね」と思ったし、(音響監督の)鶴岡(陽太)さんとも(劇場版では)「もっと、これを表現していかないといけないんじゃないか」と話しました。「紡がれていく物語」であることを、もっと象徴的に見せられるんじゃないかと感じたんです。それがまさに、劇場版を始めるにあたってのコンセプトになりました。
その軸が決まったから、この路線なら何かできそうだと思えた。そこが最初に決まってからようやく、具体的にどんな構成にしようかと考え始めることができたんです。
── 「つなぐ」の前に「つむぐ」の方が先に決まったのですね。
小川:「『つむぐ』って何?」と自問自答しているとき、辞書で改めて意味を調べたんです。もちろん日本語としての意味は分かりますが、細かなニュアンスを知りたくて。「つむぐ」は「つなぐ」と似ているようで、やはり違うなって思ったし「まずはつながないと、つむげないよな」と思ったんです。それが前編と後編に分けることになって(二部構成にする)必然性を考えていたとき、ぴったりハマった。「後編は『つむぐ』だから、この流れだと前編は『つなぐ』だよね」となりました。
ふたつの言葉が対になっていて、非常に良いなと思ったんです。「つなぐ」と「つむぐ」というテーマが出てきた時は、この劇場版全体の指針が見えた瞬間でもありました。
── この取材の前に、『最終楽章』後編のほぼ完成バージョンの映像を見せていただいたのですが。黄前久美子と高坂麗奈と黒江真由に焦点を絞って物語が進行していきながらも、終わってみると、北宇治高校吹奏楽部の物語になっているという構成に驚きました。
小川:そういう印象を抱いてくださったのは、この『響け!ユーフォニアム』が長く続いていて、そもそもの情報のベースが積み上がっているから、という理由が大きいと思います。そのおかげで自信を持って、あえて描かないという選択もできました。
久美子や麗奈に集中した上で、3期で画竜点睛を欠いていたところを埋められたというか、久美子が(久石)奏にノートを渡せたんです。これがまさにタイトル回収だし「つないで、つむいでいく」ことの大きなゴール。『最終楽章』での具体的な到達目標でした。
── あのノートは、久美子が先輩の田中あすかから譲られたもの。あすかの父が作った「響け!ユーフォニアム」という曲の楽譜が書かれています。久美子が先輩から受け取った大切なノートを後輩の奏に託すという展開は、先ほど仰っていた「やりたいこと」のひとつですか?
小川:そうですね。奏にノートを渡すのって「あのノート、どうする?」とピュアに考えたとき、真っ先に出てくるような規定路線的な展開ですが、それをド直球でやりたいと思いました。
同じような理由で、卒業式をちゃんと描きたいという気持ちもありました。鶴岡さんも前編の舞台挨拶で仰っていたのですが、終われるってことは幸せなことなんですよね。だからこそ、最後の作品で卒業式を描かないのは『響け!ユーフォニアム』の終わりとして違うのかなと思いました。












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