夕焼け空を見上げる神谷トウマの過去に迫る！「ツキノ芸能プロダクション」所属『劇団アルタイル』ショートストーリー連載第24回！

2.5次元芸能プロダクション「ツキノ芸能プロダクション」に設立されたバラエティタレントユニット『劇団アルタイル』。歌もダンスもお芝居も……というマルチなタレント活動をする彼らの日々を、ショートストーリーと音楽でお届けする連載です。

今回は、良家の御曹司であり、なんでもソツなくこなす天才肌・神谷トウマにスポットを当てた物語です。明るく社交的な性格なのに、時折冷めた表情をするのはなぜなのか……トウマの過去と、現在の心情に迫ります！

劇団アルタイル『くれないの想い』
【あらすじ】
神谷トウマは、夕焼け空が苦手だった。それは、彼が経験した過去の出来事に起因する――。年月を経て劇団アルタイルに加入し、あらためて仲間とともに見上げた夕焼け空に、トウマは何を想うのか……。

【ストーリー】
――ダンスレッスンの帰り道。
「あ、見ろよ。スゲー夕焼け」
隣を歩くショウゾウが明るく言い、トウマは思わず顔を上げた。しまった、と思ったときには、もう遅い。
「おっ、ホントだ。きれー！」
ノブアキからも感嘆の声が上がる。
「え、まだ五時なんだ」
腕時計を確認したジュンペイが、大きくまばたいた。
「日が落ちるの、ずいぶん早くなったんだな……」
「ま、そろそろ冬だし？」
素っ気なく肩をすくめるイズモの後ろで、トウマはちいさく息をつく。
寒い季節は面倒だ。気をつけないと、ため息が見えてしまう。
（それに……夕日はあんまり好きじゃない）
だって、胸がギュッとする。

またね、と手を振り、別れる。
夕焼けを背にする、あの瞬間のことを思い出す。

「毎日あいつと遊ぶの飽きたよなぁ」
「あいつ、女子にキャーキャー言われて生意気だしな」
「でも、神谷とは仲良くしろってお母さんが言うし」
「あ、うちも」
「あいつん家の親、すっごい偉い人なんだって」
「まあ、新しいゲーム貸してくれるし、いーじゃん？」
「それもそっか」

そんな内緒話がたまたま耳に入ったのは、小学生のときだった。
クラスメイトが近づいてくるのは『そういうこと』なんだと、幼いトウマでも気がついた。
みんなが家に帰ってしまうから、手を振って別れるからひとりになるわけじゃない。
最初からひとりぼっちだったのだ、と。
（……夕日は、好きじゃない）
昔は、ひとりで見る夕焼けが寂しくて、こっそり泣いた。
中学に上がる頃になると、気にするのを止めた。
悩んだって、努力したって、どうにもならない。だったら、考えたって意味がない。
どうせトウマ自身を見て、選んでくれる他人なんていやしないだろう。それなら表面を取り繕って、浅く広くテキトーに仲良くして、その場だけ楽しく過ごせればいい――。

「情熱的な夕焼けだね。昼と夜のあわいが、とてもきれいだ」
ユウリの呟きにノブアキが首をひねる。
「あ、あわい……？」
「ええと……間とか、境目、ってことですよね？」
ジュンペイの助け船に、イズモはすかさず渋面を作る。
「オイ待て、スウェーデン出身。なんだその語彙力は」
「はー。俺、日本人だけど、その単語いま初めて聞いたわ」
感心するショウゾウに、ユウリがおっとり笑う。
「ふふ。僕は、日本が大好きなんだよ。もちろんトムテさんもね」
「オイバカそっち方面の話は積極的に止めろ！」
「えー。なんでですかぁ、イズモ先輩？　俺、めっちゃトムテさんの話聞きたいですけどぉ」
「ノブアキてめー……そーゆーときばっか先輩とか言うんじゃねえ！」
「イッテ！　暴力反対！　助けて、ダンス番長～」
「はぁ？　なんだ、その変なあだ名は。だいたい誰だよ」
「誰って、トウマに決まってんでしょー」
「……俺？」
ビックリして見回すと、ショウゾウとジュンペイが笑って頷いた。
「確かに！　トウマ以外にいないだろ、ダンス番長。俺はアクロバット番長だけど、ダンスはまだ全然ダメだー。おっつかねー」
「俺なんて、いつか追いつけるのかな、って不安になるくらい……」
「だよなー！　……って、トウマ。なんでそんなビックリした顔なわけ？」
「あ、いや……うん」
「なんだよー。なんでそんな弱気？　レッスン中は鬼コーチじゃんか！」
「番長じゃねーのかよ」
「イズモいちいち細けー！」
「ははっ」

賑やかに、穏やかに、他愛のない話をしながら。並んで歩く。
同じ道を、同じ場所に向かって、一緒に歩いていく。
彼らはトウマに媚びないし、色眼鏡で見てくることもない。メリットを求めて近付いてくることも、掌を返して突き放すこともない。
ただ、肩を並べて同じ景色を見ている。

「今日の夕焼け、本当にきれいだ」
ユウリが、ぽつんと呟く。
「……うん。きれいですね」
自然と口をついで出た自分の言葉に、トウマは思わずちいさな笑みをこぼした。

今回登場した人物をご紹介！
◆神谷トウマ（CV：糸川耀士郎）
良家の御曹司で、何でもソツなくこなせる天才肌。明るく社交的で人懐こい性格なのだが、たまに冷めた目をすることが…？