新コンテンツ『BeeMANGA』の制作キーマンにインタビュー

“激アツ”電子書籍シーンに新潮流!BeeTVから登場した『BeeMANGA』は「電車を乗り過ごすほど夢中になれる」映像でもマンガでもない新コンテンツ――キーマンの3人にインタビュー

 携帯電話でドラマやお笑い音楽などを好きなときに好きな場所で楽しめるBeeTV。そのなかにあるコンテンツのひとつが『BeeMANGA』だ。名作文学をマンガ化した「まんがで読破」シリーズや、現在『ヤングマガジン』で好評連載中の克・亜樹氏原作のラブコメ『熱いぞ!猫ヶ谷!!』、祥伝社より出版されている桜沢エリカ原作『アロマチック・ビターズ』などが現在配信されている。

 この『BeeMANGA』。マンガを単純にケータイで読めるようにしたコンテンツではなく、BGMやSEなどの音声や、動き、色などといった演出をほどこし、作品ごとに企画の段階から違ったアプローチで制作することで、単なる電子書籍の枠を超えた新たなエンタテイメントコンテンツになっているのが特徴だ。

 今回、この『BeeMANGA』のコンテンツを制作している、株式会社東通の高橋利明取締役副社長、同・山崎悟CG部長、そしてエイベックス・エンタテインメント株式会社の龍貴大プロデューサーに『BeeMANGA』を立ち上げた経緯、コンテンツの制作などについてうかがった。

写真左より、山崎氏、エイベックスでBeeTVの制作を担当している龍氏、高橋氏

写真左より、山崎氏、エイベックスでBeeTVの制作を担当している龍氏、高橋氏

――まずは『Bee MANGA』を立ち上げられた経緯をお聞かせください

高橋副社長(以下高橋氏):『BeeTV』は会員の方の携帯電話に映像配信をしていく新しいメディア。今までの価値観とはまったく違うメディアだと思ったので、その中にあるコンテンツというのも、今までになかったような、新しい価値観を持ったコンテンツを置いてもらいたいと考え、演出をしている山崎君とも相談しながら、どういった新しいモノをBeeTVさんに提案できるか試行錯誤しました。
 そして『BeeMANGA』のサンプルを作り、柳崎さん(BeeTV制作部部長)に売り込んだのです。「せっかく『BeeTV』という新しいメディアがスタートしたのだから、そこに今までなかった新しい形のコンテンツをぜひ置きましょうよ」と。
 1年前くらい前の話なんですけども、当時はこういったコミックを切り取って、絵を色々積み重ねることによって新しい価値観を生み出す、というのがまだなかった時代だったので、「ぜひやりたいんですけどどうですか?」という話をしたら、たまたま柳崎さんが『まんがで読破シリーズ』『名作シリーズ』をお持ちになっていたので、まずはこれでやってみようという話になって、いくつか作り始めたというのが経緯になります。


―― 一般的な携帯コミックと違って、コマに動きがありますし、声や効果音が入っていたりしていて、どちらかというと映像に近い形なので、コストも手間もかかると思います。電子書籍ではなく、あえて今の形にした理由というのは何でしょうか?

高橋氏:携帯で見るコミックスってありますよね。でもあれは必ずクリックして次に送っていかなくてはいけないという部分があって、そのクリックというのが僕の中ではちょっとジャマな感じでした。そのタイミングを、もっと演出的に流れる形にしてみたいというのが、根本の部分なんです。
 そしてもう一つは携帯コミックスの場合、ソフトに依存してしまうのですが、東通という会社は映像の制作会社で、映像の場合はソフトに影響されずに、どんなものにも出ていけるというメリットがあります。まさに『BeeTV』さんがお考えになっているマルチウィンドウ展開を考えたときに、すごく良いのではないかと思って、それを含めてご提案させていただきました。

――もっと“映像寄り”にも、反対に“電子書籍寄り”にすることもできたと思いますが、今のバランスにしたのはなぜでしょう?またどのように今のバランスになったのでしょう?

高橋氏:実際にやってみた結果なんですけど、マンガ家の方のコマ割りの意味、コマの大きさや形がすごく重要だということに気がついたんです。それを最大限活かして、新しい形にするのには今の形が一番だと思いました。
 あれ以上やってしまうとアニメーションのようになってしまって、それでは意味がなくて、マンガ家の方が考えに考え抜いたコマ割りを、いかに大事にするかというのがポイントだと思っています。

山崎部長(以下山崎氏):普段通常のドラマや映像をやっているので、このコマ割りというのは、我々からしてみたら非常に新鮮で面白く、それをいかしたやりかたをしました。

――マンガのセレクションですが、最初の名作シリーズ7作品は柳崎部長が権利を持たれていたのでしょうか?

龍プロデューサー(以下龍氏):柳崎がイースト・プレスと話をしていて、その時にちょうど山崎さんと出会ったんです。

高橋氏:ちょうど良い出会いだったね。

――『名作シリーズ』の後に、『アロマチック・ビターズ』と『熱いぞ!猫ケ谷!!』の2作品が追加されましたが、これは後から選ばれたのですか?

龍氏:後からなんですが『熱いぞ!猫ケ谷!!』は講談社のヤングマガジンさんからお話がありました。

高橋氏:企画に柳崎さんと僕の名前が入っていて、プロデューサーに龍さんのお名前が入っているのは、この作品の決定に関しては龍さんのハンドリングでやっていただいている、そういう理由なんです。

龍氏:高橋さんからお話をいただいて、それから講談社さんにお話を持ちかけた感じです。出版社さんにとっても初めてのことだったので、どういったものなのかも分からないので探りさぐりの部分はありました。

――話は変わりますが制作の際一番苦労した点はどんなところですか?

高橋氏:『BeeMAMGA』には5分という尺があるのですが、話自体は必ずしも5分で終わるわけではないので、5分のなかで話が盛り上がって次につながるように、どこで切ったらいいのか?というのが一番難しいんです。
 作者のイメージをこわさないということと、視聴者の方の興味を次につなげるためには、あまり短すぎても長すぎてもいけないので、“間”を詰めたり延ばしたり効果もつけて尺をあわせるので演出が難しいですね。

――その切り方というのは電子書籍と違うところでもあり、『BeeMANGA』の見所になりますね。

高橋氏:そうですね。まさに見所ですね。


――『BeeMANGA』を知らない方は単純に紙を電子化したものというイメージを持たれている方も多いと思います。『BeeMANGA』ならではのポイントというのはなんでしょうか?

高橋氏:ひとことで言うと『BeeMANGA』はリッチなんですよね。リッチコンテンツに仕上げているつもりなんです。僕も経験があるのですが、『BeeMANGA』は夢中になりすぎて自分が降りる駅を過ぎてしまう。それぐらい流れを大切にしているんです。
 あとは3インチの画面の中で勝負をしたいんです。『BeeTV』の場合はドラマもハイビジョンで作られてますけど、『BeeMANGA』もハイビジョンで作ってあるので、当然40インチの画面で見ても綺麗なんです。ただ3インチの中で勝負をするというのが僕達の合言葉になっています。

――名作シリーズに続いた『アロマチック・ビターズ』と『熱いぞ!猫ケ谷!!』はそれまでの方向性とは違った作品になりますね。

山崎氏:躍動感とテンポ感を常に意識して作ったのが『熱いぞ!猫ケ谷!!』です。『アロマチック・ビターズ』は龍さんのほうからテレビドラマ的な雰囲気が欲しいという話を頂いて、色味や絵の構成をゆったりめに作ってあります。

高橋氏:『アロマチック・ビターズ』の原作はモノクロなんですが、『BeeMANGA』ではパステルカラーにして配信をしています。ターゲットである女性の方が好きそうな淡い色を入れつつ、この物語や桜沢さんのイメージを損なわないようにしました。

――作品ごとに演出もコンセプトも変えているということは、企画の段階から手間がかかっているんですね。

高橋氏:だから龍さんは大変だと思いますよ(笑)。

――音声の収録はどのような形で進められたのですか?

高橋氏:アフレコだけでなく原作のマンガを見ながらのプレスコをする場合もあります。台本もあるのですが、声優さんはマンガを見てやったほうがやりやすいとのことでした。

山崎氏:マンガを読むことによって感情移入した演技が、絵作りとリンクしているということですね。

高橋氏:最初台本でやったのですが、それがやりにくかったのでマンガでやり直したら、ものすごく上手くいったんです。マンガを拡大コピーするのですが、そうすると紙がこすれる音がして難しいとかいろいろあったんですけど、今のところ絵を見ながらやるというのが一番上手く早く良いものができるみたいです。

――今後はどのようなマンガを展開していきたいですか?

高橋氏:私達からお願いしているのですが、良いホラーものがあったらやりたいと思っています。

――iPadも登場し、今後電子書籍の分野が広がっていくと思うのですが、『BeeMANGA』が目指すモノというのはなんでしょうか?

龍氏:電子書籍・携帯コミックの市場がかなり広がってきて、iPadも発売され電子書籍の市場はさらにに広がってくると思います。その中でも『BeeMANGA』は見せ方が他とは違うと思うので、新しいマンガの見せ方というものを追求していって、ムーブメントを起こしたいですね。

高橋氏:iPadってどんなにがんばっても手の中で見えないんですよ。さっき3インチの中で勝負するといったのもまさにそこで、『BeeTV』『BeeMANGA』の場合は、手のひらの中で物語が進んでいく、手のひらの上で色々なことが起きてしまう、それが素晴らしいと思うんです。3インチでどこまで勝負ができるか制作者側としてはとても興味があります。
 私どもは40インチで見るようなテレビ番組を日常作っているのですが、携帯電話というのはまったく違うメディアなので作っていてすごく楽しいですね。
 BeeTVはこれからさらに進化すると思うので、そのなかでどのような提案ができるかが、すごく大事なことだと思っています。

<聞き手:だーくまたお>
<撮影・文:藤本 厚>

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