影木栄貴先生・蔵王大志先生 漫画家デビュー25周年記念インタビュー｜大人気BL作品『LOVE STAGE!!』『BACK STAGE!!』の制作秘話に迫る

2021年、商業漫画家デビュー25周年を迎える影木栄貴先生・蔵王大志先生。アニメイトではそんなお二人を記念して、「『LOVE STAGE!!&BACK STAGE!!』オリジナルボイスドラマ」の発売と「影木栄貴先生＆蔵王大志先生ミュージアム」の開催を企画しています。

そして今回、オリジナルボイスの特典小冊子に掲載予定の影木先生・蔵王先生ロングインタビューを一部抜粋。ＴＶアニメ化・実写映画化され、タイでのドラマ化も決定している大人気ＢＬコミック『LOVE STAGE!!』と同作のスピンオフ作品で現在絶賛連載中の『BACK STAGE!!』のお話をお届けします！

『LOVE STAGE!!』が始まった経緯、連載が途絶えていた『BACK STAGE!!』再開の裏側、影木先生の弟・ＤＡＩＧＯさんとの関係（!?）、蔵王先生の好みを詰め込んだキャラクター、『LOVE STAGE!!&BACK STAGE!!』オリジナルボイスドラマについてなどなど、貴重な裏話をたっぷりお聞きしました。

実はモデルが存在した瀬名家。『LOVE STAGE!!』誕生秘話

――２０１０年に雑誌「CIEL」にて連載開始した『LOVE STAGE!!』。物語を着想したきっかけまたは発端となったキャラクターを教えてください。

影木：実は『LOVE STAGE!!』に登場する瀬名家は、私の家族である「内藤家」をモデルにしたお話です。

当時の編集者さんから「アニメ化を目指しませんか？」と話を持ちかけられたのが『LOVE STAGE!!』の始まりでした。アニメ化を目指すのなら華々しいテーマの方がいいだろうし、何より『LOVE STAGE!!』の連載を開始するちょっと前から弟のＤＡＩＧＯがブレイクし始めたんですよ。それを見て、新しい作品を描く上で芸能界は無視できないと考え、物語の軸に「芸能界」を設定しました。

とはいえ、全員芸能人というのは取っつきにくさもあります。そこで「内藤家」をモデルにしようと考えました。内藤家は私がオタク・弟が芸能人・７歳差の姉弟をモデルに、瀬名家は兄が芸能人・弟がオタク・７歳差の兄弟として描いています。

――まさか影木先生ご自身がモデルになっていたとは（笑）。『LOVE STAGE!!』がBL初心者でもライトに楽しめる展開なのは、アニメ化を念頭に置いていたからでしょうか？

影木：ボーイズラブを知らない人でも取っつきやすいように、と考えていましたね。例えば、初めから主人公の二人ともゲイ同士で、１話目に出会ってすぐエッチしてしまうお話だと、アニメ化は100％無理じゃないですか。だから、『LOVE STAGE!!』は少女漫画的な流れを意識しています。例えば、冒頭に龍馬が泉水を女の子と間違えていたとか。

一方、『BACK STAGE!!』は、出会ってすぐにエッチする流れなので、しっかりボーイズラブ的な展開になっています。『LOVE STAGE!!』と『BACK STAGE!!』にはそういう差がありますね。

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――『LOVE STAGE!!』は２０１４年にアニメ化、２０２０年に実写映画化。さらに、タイでのドラマ化も決まっています。これほど大きなコンテンツになったことについて、どのように感じられていますか？

影木：アニメ化までは計画通り（二ヤリ）だったのですが、実写映画化とタイBLドラマ化は本当にラッキーだと思います。予想もしていなかった話が来るもんだなぁと、ありがたくお話を受けている感じです。初心者向けにしたことで、メディアミックス化がしやすかったのはあるのかもしれませんね。

蔵王：正直、実写は難しいのではと思っていたので、いつの間に！　という感覚です。影木さんの言うように、何より間口が広いからBLだけど入りやすい取っつきやすかったのだろうなと思います。

影木：あと、時代がBL推しになってきたよね。まさか連載終了してこんなに月日が経ってから実写映画やタイBLドラマ化の話が来るとは思っていませんでしたよ。そのおかげで、『LOVE STAGE!!』は完全版が出せましたし、『BACK STAGE!!』も再開しやすかったのはあります。

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『BACK STAGE!!』連載再開を後押しした影の立役者とは

――「CIEL」２０２０年11月号から『BACK STAGE!!』の連載が再開されました。『BACK STAGE!!』の始まりについて教えていただけますか？

影木：『BACK STAGE!!』に関しては、KADOKAWA（当時：角川書店）さんから「『LOVE STAGE!!』の連載開始と同じタイミングで『BACK STAGE!!』の小説を進めましょう」と言われたのがキッカケです。

実は、泉水と龍馬よりも玲と聖湖のストーリーの方が先に出来ていました。龍馬のキャラデザなんて、１話を描き始めるギリギリのタイミングでできたよね？

蔵王：そう。最後に出来上がったのが龍馬のキャラデザだったんですよ（笑）。その上、龍馬のデザインは二転三転しましたね。

影木：「CIEL」２０１０年７月号の表紙と『LOVE STAGE!!』act.1のカラーイラストに泉水と聖湖しかいなかったのは、それが理由なんですよ。

そこからなぜ『BACK STAGE!!』の漫画版を描き始めたのかというと、『LOVE STAGE!!』の原稿を落としそうになったからです（笑）。

その時、『LOVE STAGE!!』アニメ化に合わせて「CIEL」で３号連続表紙だったのですが、あまりにも忙しくて……。それですでにお話を作っていた『BACK STAGE!!』のプロローグ17ページなら描ける！　と言ったのが始まりでした。

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――それが「CIEL」２０１４年11月号に掲載された『BACK STAGE!!』act.0だったわけですね。そして、２０２０年から連載開始。影木先生のブログには「編集担当さんのおかげ」と書かれていました。

影木：まさに現在の編集担当である内藤さんのおかげです。『LOVE STAGE!!』のアニメが終了して１年後くらいから私が体調を崩し、『LOVE STAGE!!』の連載を終わらせるだけで精いっぱいで。『LOVE STAGE!!』の連載終了後も『BACK STAGE!!』の続きを描ける状態ではなく、そこから長い時間が経ってしまったため、続きを描くことは諦めていました。

ところが、２０１８年にスペイン・バルセロナで開催されている「バルセロナ サロン・デル・マンガ」で『LOVE STAGE!!』が芸術貢献賞を受賞し、イベントへご招待いただき、私と蔵王くんと（編集担当の）内藤さんと３人でスペインに行ったんですよ。その時、内藤さんが「私『BACK STAGE!!』好きなんです。続き描いてくださいよ！」と言い出して。私としては、「え、描いていいの!?」と（笑）。

イベントでもスペインのファンの方たちに「『BACK STAGE!!』の漫画版読みたい人いますか？」と聞いたら、みんな「はい！」と手を挙げてくれて。私自身、描けていなかったことは気がかりだったので、描かせていただけるなら描きましょう！　と連載を再開することになりました。聖湖＆玲カップルの物語を待ちに待っていた皆様、内藤さんのおかげですよ！　あと内藤さんが好きになったので一緒に仕事をしたかったのもあります。

――感謝してもしきれません……。

影木：内藤さんは私より16歳若いのですが、そんな彼女が昔読んでいた『BACK STAGE!!』を編集者となり再開させてくれたり、私たちの作品を読んで育ったライターさんがいま私たちをインタビューしてくれているのを見ると、25年間頑張ってきた甲斐があったなと思います。私たちが蒔いた種が見事に花開いているなあと（笑）。

蔵王：たしかにそうですね（笑）。

――連載再開から約５年という期間が空きましたが、改めて描き始めてみての心境はいかがですか？

影木：小説版『BACK STAGE!!』は『LOVE STAGE!!』連載中に完結しているのですが、『LOVE STAGE!!』の物語を終えて振り返ると、小説版『BACK STAGE!!』と『LOVE STAGE!!』の玲の性格に違うなと思う部分が出てきちゃったんですよ。『LOVE STAGE!!』の物語の中でキャラが勝手に立ってしまったので、そこら辺を漫画版『BACK STAGE!!』では全体的に直しています。
蔵王くんはスパンが空き過ぎて、絵を忘れていたよね？

蔵王：とにかく間が空いていたので、ちゃんとキャラクターたちを描けるかな!?　と絵の心配をすごくしていました。特に聖湖が上手く描けるかちょっと不安でしたね（笑）。タレ目のキャラを描くのが苦手で、全く描けない時期があったんですよ。いざ連載が始まってみたら、意外とちゃんと描けているなと思いました。まあ、影木さんの修正はたくさん入りましたけど（笑）。

影木：act.2は一番大変だったよね。『LOVE STAGE!!』の時系列の10年前のお話なので、玲は18歳なんですよ。なのに、『LOVE STAGE!!』の最終話よりも玲のガタイがよくて（笑）。そんなにガタイがいいのはおかしいから！　とすごく修正しましたね。肩幅広すぎ、身体デカすぎ……と全部直してもらいました。

蔵王：特に肩幅の修正が多かったです。なので、最近は自分の絵を模写して描いています（笑）。
私、その時々で影響を受けている漫画によって、コロコロ絵柄が変わってしまうんですよ……。そのたびに、影木さんに修正を受けています。その分、出来上がりはとても安心できますが。

影木：すっごく顔が長くなったり短くなったり、すっごく胴が短くなったりひざ下が長くなったりするのを全部直しています。基本的に蔵王くんには原稿の下書きを描いてもらった段階で、絵柄が問題ないか一度FAXを送ってもらっています。なので、出来上がりはある程度のクオリティを保っているのではないでしょうか（笑）。