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『特別編 響け!ユーフォニアム』石原立也(監督)×小川太一(副監督)インタビュー【スタッフ&声優 短期連載:第1回】

『特別編 響け!ユーフォニアム~アンサンブルコンテスト~』石原立也監督×小川太一副監督インタビュー|今まで“森”を見ていた久美子が、“林”も見るようになった――彼女がどこへ着地するのかの指標にもなる作品【スタッフ&声優 短期連載:第1回】

今まで“森”を見ていた久美子が、少し“林”も見る感じになった

――絵コンテは、前半パートを小川副監督、後半パートを石原監督が描かれたそうですが、その他の作業に関しては、お二人とも全体を見ているわけですね。

小川:はい。ただ、『アンサンブルコンテスト』に関しては、僕は演出としては入っていません。演出は、石原さんと北之原(孝將)さんがています。なので、僕としては、『久美子3年生編』に向けてのキャラクターのバランス感を特に気にしていて、調整をしていました。あとは、さっき石原さんも仰ったみたいに「監督、本当にこれでいいんですか?」みたいなことも言いながら、アイデアを出す役。他の作品でもわりとそうなのですが、疑問があると監督にガシガシ言うタイプなので、ウザがられつつ、時にはありがたがってもらえるみたいな立ち位置かなと思います(笑)。

――関係性としては、自然とそうなったということでしょうか?

石原:そうですね。

小川:やっていること自体は、僕が演出を担当する時とそこまで変わらないと思います。

石原:ただ、今回は副監督だから、作品全体に対しての意見を言える立場ということで、色々気にしてもらっています。

――演出の場合、担当の話数やカットの範囲内での関与にとどまるわけですね。

小川:はい。今回は、本読み(シナリオ打ち合わせ)にも入らせてもらいましたが、演出は基本的には本読みには入らないので。演出の時から監督とはけっこう距離が近かったんですが、今回は、打ち合わせの回数もかなり多くなっていて、さらに全体が見られるようになりました。

――原作小説の『アンサンブルコンテスト』を読んだ時の感想を教えてください。

石原:『響け!ユーフォニアム』シリーズでは元々の知識として知らないことが多くて、日々勉強なんですけど、今回も「アンサンブルコンテスト」という実際のコンテストがあるんだなって初めて知りました(笑)。

小川:今回の話で一番大きいのは、やっぱり久美子が部長になったことだと思うんです。部長になった久美子は、やることがすごくたくさんあって、一部員だったときにはあまり気にしていなかった部内政治みたいなことも考えるようになる。個人的に、社会派的なドラマは好きなので、そういうところを上手く見せられたら面白いんじゃないかなと思いました。

石原:久美子が部長になったことにより大きな視点で見えるところと、少人数でやるアンサンブルだからこそのより近い視点。今回のストーリーは、その二つの視点があると思います。

小川:たしかに、久美子が一人一人の部員としっかり絡んでいくのって、実は、これまであまり無かったですよね。

――加藤葉月、川島緑輝、高坂麗奈の仲良し4人組以外だと、田中あすか、傘木希美、久石奏のように、シーズンごとに一人か二人とだけ濃く関わっている印象です。

小川:今までなんとなく森を見ていた久美子が、部長になって森の解像度が上がり、少し林も見る感じになっている。そこが面白いですよね。

石原:そうそう。林を見つつ、さらに1本1本の木も見るみたいなお話です。

――本作は、時間にするとテレビシリーズ2本分の中編作品ですが、原作の『アンサンブルコンテスト』を約1時間のアニメにまとめる上で、脚本やコンテ作りの段階で苦労したことなどがあれば教えてください。

石原:(原作の内容を)削ろうみたいことは無かったですね。もちろんアニメで踏襲していないエピソードには焦点を当てずに主題を絞る、という調整はしていますが。

小川:脚本の段階で、むちゃくちゃ削ろうという話はなかったです。今回、コンテを半パート描かせていただいたのですが、むしろ僕は、そこでいろいろと悩みました。

石原:そうだったんだ。

小川:劇場で上映する1本の映像としてまとめるにあたって、起承転結的な意味合いで、どこに気を付けるべきかはけっこう悩んだところです。話の内容的にも「世界が崩壊して俺たちはどう生き残るか」みたいな話ではないし(笑)。久美子たちに、すごくセンセーショナルな出来事が起こる話でもない。そんな話にどうやって1本の映像としての意味を持たせるか、落としどころの見せ方に関しては、ギリギリまで悩んで、台詞も最後まで調整をしていた気がします。

石原:たしかに、派手な展開はない話なんです。でも僕は、物語って最後に登場人物の気持ちの整理が付けば良いのかなと思っていて。逆に言うと、どれだけ派手なアクションや展開があっても、最後、キャラクターの気持ちに変化とか落ちどころが無いと面白くない。だから、今回はこの形で良かったと思っています。そういう意味で久美子の気持ちに寄り添うためにも、小川さんのくれたアイデアを入れ込んで、モノローグを足したところもあります。

久美子はちゃんと優子を見ていたから、部長ができる

――本作で、部長になったばかりの久美子を描く際、特に意識したことなどを教えてください。

石原:『アンサンブルコンテスト』では、まだまだ四苦八苦しているかな。

小川:そうですよね。コンテを描く時にも意識したのは、部長の久美子をちゃんとしすぎないってことでした(笑)。

石原:そうだね(笑)。

小川:まだ高校2年生ですからね。自分がそうだった時を思い返しても、そんなに賢くできなかったですし(笑)。ちゃんと、1期、2期、『誓いのフィナーレ』と繋いできた久美子の流れのまま繋いでいきたいなと思っていました。どうしても、「部長になった」というバイアスのかかった描き方になっちゃうこともあって、その見極めが難しかったです。

――まだ、しっかりした部長になりすぎてはいけないわけですね。

小川:でも、しっかりとした部長になろうとしている久美子もいるわけで。アフレコの時には、その辺りの話をキャストさんにさせていただいたりしました。久美子役の黒沢(ともよ)さんは、とても良い感じの芝居をしてくださったので、すごく安心しましたね。

――少しネタバレになるのですが、小川副監督がコンテを担当したパートで、久美子が前任者の吉川優子の真似をする場面があって。映像も含めて可愛かったです。

石原:前の部長の真似をしているという話で言えば、実は私も高校の時、部長をやっていたんですよ。

小川:そうなんですか?

石原:恥ずかしいから、あまり言っていないんですが、SF同好会です。はちゃめちゃな部長だったはずなんですが、それなりにはできていたとも思うんです。それは、たぶん前の部長のやり方をちゃんと見ていたからで、久美子が優子の真似をするのも、ちゃんと見ていたからだと思うんですよね。そうやって周りを見ているから、まがりなりにも部長ができているのだと思います。それに、僕のときも後輩や周りの部員が協力してくれたのですが、この部の1年生たちも、みんな久美子の言うことをよく聞いているよね。

小川:それが、(北宇治高校)吹奏楽部の良いところですよね。でも、逆にそれが悪い方向に出ることもある。組織ってそういうものだったりするじゃないですか。

――素直に上に従わない人が組織のカンフル剤になる場合もありますね。

小川:部内政治みたいな話も同じだと思うのですが、そこをリアルに描き過ぎると、(エンタメとしては)嫌がられてしまうこともある。ただ、個人的には、それも上手く描けたら、さらに面白いのかなと思っていて。だからこそ、久美子の描き方のバランスは、特に難しかったです。最終的には、声優さんに声を当ててもらってみないと分からない部分もあったのですが、少なくとも映像を作っている段階では、そういうところを意識していました。

――石原監督は部長経験者として、今作の久美子に共感するところは多かったのでしょうか?

石原:前にやっていた人のやり方をちゃんと見ていたんだなとは思ったりします。あと、これは共感ではなくて共通点ですが、僕も久美子も、しし座のA型なんですよ。しし座のA型って、たいていの占いとかで「リーダー的な素養がある」って書いてあって、見る度に本当かよって思うんですが(笑)。そんなこともあって、久美子にはちょっと親近感があったりもします。

(C)武田綾乃・宝島社/『響け!』製作委員会
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