ド根性と閃きで運命を変えろ！　忘れかけていた“あの頃の熱”が胸に蘇る──「コロコロ」史上初の熱血ループ譚『運命の巻戻士』TVアニメ化決定記念レビュー

月刊コロコロコミックにて連載、コミックス10巻が好評発売中の『運命の巻戻士』。

“世界一わかりやすくて熱いループ漫画”として、2021年の読み切り掲載時から話題を呼び「月刊コロコロコミック」での連載開始と同時に注目度は一気に加速。さらに2025年にはアニメ化決定も発表され、ますます盛り上がりを見せています。

本記事では『運命の巻戻士』を徹底レビュー！　巧みに張り巡らされた物語の構成、キャラクターたちの熱量と成長……そして何より「ド根性」と「閃き」で道を切り拓いていくその姿勢には、忘れかけていた“あの頃”の熱を思い出させてくれる力がありました。

運命を巻き戻し、何度でもやり直す。そんな無謀とも言える挑戦の先に何があるのか──「コロコロコミック」初の本格ループ作品として新境地を切り開いている本作の魅力や、込められたメッセージに迫ります！

『運命の巻戻士』あらすじ

時空警察機動隊、通称「巻戻士（まきもどし）」。彼らは右目のタイムマシン「リトライアイ」を駆使して過去へさかのぼり不慮の死を遂げた人々を救う組織である。

新人巻戻士のクロノは、妹を救うために特級巻戻士を目指す14歳の少年。強盗、無人島に漂着、爆弾テロなどで命を落とす運命にある人たちを救うため、何十回、何百回、何千回と時を巻き戻す！

ループという「絶望」を克服した巻戻士たち

『運命の巻戻士』は、主人公・クロノとその仲間たちが、タイムマシン「リトライアイ」を使って誰かの運命を変えていく物語です。

運命を変えるということは、私たちが想像する以上に難しいこと。たとえば交通事故で命を落とす運命の人物がいたとします。事故が起きる前にタイムスリップし、別ルートで目的地に辿り着かせれば回避できる……というわけではありません。別の事故に巻き込まれてしまったり、そもそもルートが封鎖されていたり……様々な可能性を考えなければなりません。

一筋縄ではいかないのが巻戻士のお仕事。「誰かの運命」は、物語冒頭からクロノたちに厳しく立ちはだかります。

それでもクロノたちは諦めることなく、死の原因をひとつずつ潰していくために、何百回、何千回と「巻き戻し（リトライ）」を繰り返し、試行錯誤を重ねていきます。彼らが無謀にも見える方法や強引な手段で運命に抗っていく姿は、どこかギャグのような痛快さもあり、いわゆる“死にゲー”と呼ばれるゲームをプレイしているようです。

その痛快さや面白みはそのままに、より悲しい事件を担当したり、死の運命を背負う誰かの人生が明かされていくと、じんわりと胸が熱くなる……！　彼らが背負う命の重さや、彼らの並外れた精神力の凄みも増していきます。

そしてクロノによって「攻略未来（クリアルート）」が開かれた瞬間、張りつめていた感情が一気に解き放たれるような感覚に。ボロボロになりながらも誰かの生を喜ぶ彼らの姿に、思わず涙してしまうのです……！

また「世界一わかりやすい」と称される本作には、共に事件を解くルートを考えさせてくれる緩やかな誘導もありますが、最後にはしっかりと驚きの展開も用意されています。物語が進むほどに、事件の難易度が上がっていくので、その謎解きの気持ちよさ、物語から受け取るカタルシスもひとしお。筆者は読みながら「少年時代にこの作品と出会いたかったな」と今の読者たちを羨みつつ、忘れかけていたあの頃のドキドキや熱を思い出すような不思議な感覚を味わいました。

そして「ループもの」といえば、繰り返すことへの絶望感に苦しみと戦いながら運命に抗っていく姿が感動的なポイントのひとつ。しかし、仕事としてループを日常的に行っている彼らは「物語がスタートした時点からその絶望感を克服している」とも考えられるでしょう。クロノたちはその苦しさを了承し受け入れており、困難に対して決して諦めない！　救いたい人がいるから、彼らは巻戻士になったのです。

彼らがどんなに苦しいのか、ループがいかに過酷なのかは、これまで「ループもの」に触れてきた読者ならすぐに理解ができるはず。クロノたちがなんてことのないように言う「今、680回目！」というセリフの裏にある不安や苦しみ、乗り越えてきた絶望が、読み進めるほどに強く強く感じられ、そのたびに彼らの姿に感動します。

もちろん「諦めずに、何度でも挑戦する」というシンプルながら普遍的な行為のパワーも感じずにはいられません。そのような諦めない「ド根性」と、繰り返すことで開花する「閃き」が本作の魅力と言えるでしょう！