
「ここからは物語が一気に真相へ近づいていきます」──TVアニメ『【推しの子】第3期』黒川あかね役・石見舞菜香さん【連載インタビュー第3回】
覆された“言わない信頼”
──あかねの愛情に母性を感じる、とおっしゃっていたのが印象的でした。
石見:収録の段階から「ママ味を出してください」というディレクションをいただくことも多かったんです。それを聞いて「やっぱりそうなんだな」と。
あかねちゃんはたくさん恋愛をしてきたタイプではないので、本人も愛情の感じ方がよく分かっていないと思うんですよね。本人は恋愛感情だと思っているかもしれないけれど、色々な感情が混ざった結果、母性かそれ以上に強い愛情に見えているのかなと。
──ときに少し怖いと感じてしまうくらいの感情なのかなと。
石見:そうですね。あかねちゃんの愛情が行き過ぎてしまう危うさは原作でも印象的に描かれているので、どのように表現すれば良いのか悩みました。
ただ、ゾッとするような台詞であっても、あかねちゃん本人にはそんな意図はないので、そこはお芝居で強調しすぎないようにしていました。印象は絵や演出に委ねて、あえて普通に言った方が逆に怖さが出るのではないかと思っています。
アニメは共同作品なので「ここは印象を変えて聞かせたい」といった演出意図については制作側の方とディスカッションを重ねながら作り上げていきました。例えば第2期の「一緒に殺してあげる」のシーンなどは、何度も話し合って作っていきました。
──第3期第7話で描かれた「一言言ってくれてたら、こんなの(GPSタグ)何百個でも付けてあげたのに」のシーンについてもお聞かせください。
石見:あのシーンは、原作を読んでいる中で一番と言っていいくらい理解が難しかった場面でした。これまでのあかねちゃんの感情や言動は、共感できるかどうかは別として理解できていたのですが、この場面だけは「これはどんな感情なんだろう」と悩んだんです。急に感情が高ぶったかと思えば取り繕おうとしたり汗をかいたり……その汗も何の汗なのか分からなくて。
色々なことを深読みしてしまって、テスト前に「この解釈で合っていますか?」と確認したこともありました。そこで改めてこのシーンについて説明をしていただき、ようやく納得して演じることができたんです。
──それはどのような解釈だったのでしょうか。
石見:それまでのアクアくんとあかねちゃんには、ハッキリ言葉にしなくても察し合っているという信頼関係があったんです。お互い賢いですし、決定的なことは言わなくても相手の状況が分かっていて、その上で一緒にいる。あかねちゃんも、アクアくんがかなちゃんを気にかけていることは分かっていながら、恋人として向き合ってくれているアクアくんを尊重していた……そんな“言わない信頼”がありました。
その関係性を踏まえた上で、あのシーンをあかねちゃんから見たら「それなのに」なんだと思います。「一緒に殺してあげる」と言うほど覚悟を示していたにも関わらず、勝手にGPSを付けられていたことで「これまでの関係を否定された」のような気持ちになった。それが怒りにつながったのかなと。
そもそもあかねちゃんは、未来が見えているのではないかと思うほど察しのいいキャラクターです。だから初めて予想外のことが起きたことで焦りもあったと思いますし、アクアくんに対して「復讐の道へ戻ってほしくない」という気持ちも強くあったと思うんです。
だからこそ「(GPSタグくらい)何百個でも付けるのに」という台詞につながった。そういった解釈で演じました。
──そのシーンのアクアの表情はとても冷たい印象を受けました。
石見:そうですね。これはアニメならではの作り方だと思います。漫画ではアクアくんが、かなちゃんやあかねちゃんに対して少し冷たく見える表情で描かれることが多いのですが、アニメは「アクアがそれぞれにかける優しい言葉は本心である」という前提で作られています。
「巻き込む気はない」というアクアの言葉は突き放しているのではなく、あかねちゃんを本当に大切に思っているからこその言葉として描きたい、という説明もしていただきました。だからアニメでは、漫画で読んだ時の印象とはまた少し違った雰囲気になるんじゃないかなと予想しています。
































