
春アニメ『ガンバレ!中村くん!!』撮影監督・若林 優さん&ビジュアルディレクター・神田智隆さんにインタビュー| 第6話はなだらかに浅い夕景から深い夕景へと変わっていくようになっています
内気な男子高校生・中村くんの同級生・広瀬への“片想いをめぐる妄想と暴走”を、どこか懐かしい80~90'sタッチでコミカルに表現した「ガンバレ!中村くん!!」。本作のTVアニメーションが、2026年4月1日(水)より放送・配信中です。
アニメイトタイムズでは、アニメーションのスタッフに制作秘話をお聞きするインタビュー連載を実施。第4回は撮影監督の若林 優さん、ビジュアルディレクターの神田智隆さんに、“違和感をなくしてストーリーを立たせる”プロフェッショナルな作業などについてのお話を聞きました。
アニメーターさんが描いた線よりもGペンっぽい感じで撮影処理しました
──最初に原作を読んだときの感想を教えてください。
撮影監督・若林 優さん(以下、若林):最初は発売日など一切調べずに読んだので、けっこう古い作品なのかなと思っていたら、2017年が初版でビックリしました。特に表紙のデザインですね。自分が中学・高校生のころに読んでいた雰囲気の装丁だったので、懐かしいなと思ったんです。内容的にはギャグ要素が多いという印象を受けたので、アニメではどこをどう拾おうかなと考えていました。
ビジュアルディレクター・神田智隆さん(以下、神田):絵柄や内容が自分世代の漫画に近いなと思いました。ギャグと恋愛要素のバランスがとてもよく、コマ割りも1ページに大枠をドンと置くような構成が少なくてシンプルだったので、とても読みやすかったです。漫画だと広瀬だけ髪の毛の色が白抜きでパッと目がいくんですよね。これはあくまで僕の考えなのですが、あれは中村視点で広瀬の存在が目立っているという設計なのかなと思いました。
──おふたりが本作でどんなお仕事を担当されたのか教えてください。
若林:基本的には背景やアニメーターさんが描いてくれたセルを重ねてひとつの映像にしていくという作業になります。あとは、撮影で色々な効果を加えることもあって。本作で言うと、たとえばキャラクターの主線。『ラブ弁!』のアニメーションパート以外は、アニメーターさんが描いた線よりもGペンっぽい感じで漫画のような線になるよう撮影処理をしました。
神田:ビジュアルディレクターの役割は作品によって異なるのですが、本作においては入口と出口の部分のビジュアル面の作業をしました。たとえば、入口の部分では先ほど若林さんからお話が出た主線の処理の仕方の方向性を決めたり、出口の部分ではカラーグレーディングという作業を担当したりしました。
──カラーグレーディングとはどのような作業ですか?
神田:映像の色合いやトーンなどを調整して、作品の世界観を統一するといった制作フローです。ドラマや映画などで行われることがある作業ですが、TVアニメではけっこう珍しいんじゃないかなと思います。正直、「その工程を入れて本当に大丈夫ですか?」と最初にお聞きしました。
──なんと!
神田:カラーグレーディングって、通常の制作フローにはないので、その分時間もお金もかかるんです。だから、余計な負担にならないかと少し心配で……。ただ、ドライブさんが新しいことにチャレンジしたい、作品をよくしたいという意向で僕に依頼してくださって。その熱意を受けて、これは一生懸命に取り組まなければと思いました。こういう作業は理解がないとなかなかうまくいかないのですが、ドライブさん、そして撮影の若林さんも協力的で、とても助かりました。
ニューレトロってなんだ……?
──おふたりが担当した作業でこだわった点を教えてください。
若林:そもそもの前提として、視聴者の方にはまずストーリーに集中してほしいという思いがあって。撮影は前に出ない、目立たないをモットーに作業をしています。そのなかで監督や演出の方が決めたプランをなるべく叶えたいという思いのもと、作業をしています。なので、自分の考えどうこうではなく、その前工程の人たちが作ったもの・作りたいと思ったものを感じ取って結果に残すことにこだわっていますかね。そういう意味では、最初の監督からのオーダーとしては、確か「ニューレトロ」というものがあったと思います。
神田:そうでしたね。僕も同じ言葉を伝えられた記憶があります。
若林:「ニューレトロってなんだ……?」と少し戸惑いました(笑)。レトロ感を出すとなるとノイズ感やフィルムっぽさをイメージしがちですが、そこは控えて欲しいというリクエストもあったので、より一層どう表現すればいいのかと悩みましたね。
──レトロっぽさを表現するために、先ほどお話しいただいた主線をGペンっぽくする処理をした?
若林:そうですね。あとは色の使い方で、古くないけれどレトロな感じを出せればと思いました。今回、カラースクリプトの担当さんがいて、ある程度色の方向性は設計されていたので助かりましたね。撮影的には、フレアやパラなどの効果をどう入れるのか、どういう色味を使うのかも大事なポイントだったかもしれないです。本作はストーリーと原画や動画の動きでしっかり見せていく作品と思っていたので、撮影効果はなるべく入れないスタンスではいたのですが、第6話の夕景のシーンなど、見せ場では効果を入れるようにしました。
──神田さんはいかがですか?
神田:今回のカラーグレーディングは、撮影さんからあがってきた納品テイクと、その後に僕が「こうしたほうがよりよくなるんじゃないか」というテイクを見比べて選んでもらう提案型のフローでやったんです。監督は全工程をチェックしますが、僕は作画などの作業を見ていないので、いわば第三者に近い目線から納品データを見ることができて。その立場の人間だからこそ、見えてくるものもあるんです。たとえば、「このシーンで笑って欲しい」というところにはちょっとコントラストを付けたほうがいいかもとか、逆に色がガチャガチャしていて話が入りづらいカットは、もう少し整理したほうがいいんじゃないかという提案をしました。
──いい意味で、俯瞰して作品を見られるというか。
神田:そうですね。少し厳しめの視聴者みたいな感じでしょうか(笑)。今回は提案型だったので、僕の意見を採用するか、それとも元々の納品データのまま進めるのかは監督をはじめとするスタッフのみなさんにお任せだったのですが、結果的にほぼ採用いただけたのでありがたかったですね。

































