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『ガンバレ!中村くん!!』音響監督が約200曲のフィルムスコアリングで表現した中村くんの心情【インタビュー】

春アニメ『ガンバレ!中村くん!!』音響監督・岩浪美和さんインタビュー|「音がよかった」と言われたら、失敗だと思っています

 

この作品は連続性のある音楽にしたほうがいいと思って

──続いて、音楽面についてお聞かせください。

岩浪:1クールのTVアニメって、だいたい40曲前後の劇伴を作ることが多いんです。ただ、原作やシナリオ、絵コンテを読んだときに、一人でも多くの方にこの作品の魅力を伝えるには、ふつうの音楽の作り方じゃ難しいだろうなと思って。そこで、本作では絵に合わせて音楽を制作するフィルムスコアリングという手法を取って、200曲近く作っていただきました。

──相当な数ですね……! フィルムスコアリングで制作したほうがいいと思ったのは?

岩浪:この作品って、広瀬くんを好きになった中村くんの気持ちが急激に上がったり、下がったりの連続な訳じゃないですか。感情が激しく動くんですよ。そうなると、40曲のなかから合う曲を探して当てはめて編集する形式だと、音的につながらなくなるんです。シーンごとに曲を書いてもらい、連続性のある音楽にしたほうが、見ている人が感情移入しやすいだろうと判断しました。また、中村くんと広瀬くんの関係性がどんどん変わっていくので、フィルムスコアリングを提案したんです。

──本作だからこそフィルムスコアリングという手法をとった。

岩浪:そうですね。あとは、視聴環境の変化もあります。いまは配信がメインになっていて、海外の方にも日本の作品が届きやすい時代になりました。特に本作は海外でも原作が人気なので、グローバルでもうけるようにと意識して音を作りました。

──グローバルで受けるためには、フィルムスコアリングがいい?

岩浪:必ずしもそうとは限りませんが、海外でヒットしているアニメ作品って、だいたいがフィルムスコアリングで制作されているんですよね。これは、いい・悪いという話ではないのですが、日本のアートはわりと「最小限の表現で伝える」のが表現者としてオシャレみたいなところがあると思っていて。料理で例えるとしたら、上質なかつお節と昆布で取ったダシにちょっとだけ塩を入れたお吸い物が“洗練された上質なもの”とされるというか。

──そういう側面は確かに無きにしも非ずかもしれないです。

岩浪:ただ、それが海外でも同じかというと、必ずしもそうじゃない訳で。なかには、「このスープ、味が薄いだけのお湯じゃん」という感覚になる方もいらっしゃるでしょう。国民性が違うので、むしろ「最小限の表現」とは対照的な考え方という場合だってありますからね。音楽も同じで、あまり音楽を付けないという日本のアニメもあります。でも、ぜんぶ音でも説明しちゃうよという方が、気軽には見られるじゃないですか。分かりやすいところで言うと、ディズニーやピクサー作品は見事に音楽演出がされています。すべてがフィルムスコアリングで制作したほうがいいということでもないですし、予算の問題とか色々とありますけれど、ユーザーの傾向を解析して、それに即した音楽の作り方をするべきかなと、僕は思いますね。

 

中村くんの心情を表現するには、小編成のほうが適している

──フィルムスコアリングで制作されたというお話でしたが、実際にはどんな方向性の音楽を作曲家の方に発注しましたか?

岩浪:大作の音楽を作るときには、いわゆるオーケストラの大人数な編成でというのが常套手段ではあると思います。ただ、本作は物語のほとんどは中村くん目線であり、しかも個人的なお話な訳で。彼の心情を的確に表現するには、小編成のほうが適していると思い、音楽チームのみなさんにリクエストしました。

──それが作用してなのか、個人的にはいい意味で音楽が物語を盛りあげすぎていない気がしました。

岩浪:あくまでも、中村くんの感情を表現するための音楽なんでね。使っている楽器はすごく少ないと思います。意外と大変だったのがクリスマスの回。何気に流れているクリスマスソングは、パブリックドメインになっている有名な曲をアレンジしてもらいました。そのほか、いろいろなシーンで細かく音楽を付けていますね。

──この場面にはこういう曲、というのを岩浪さんのほうでひとつ、ひとつ指定されている。

岩浪:そうですね。カットナンバーで「ここにはこういう音楽」と指定しています。

──相当、大変な作業だったのでは……?

岩浪:大変でしたけど、自分で言い出しちゃったことだし(笑)。この物語を最大限面白く楽しんでいただくには、この手法がベストだという確信があったんで、やり切るしかなかったですね。実際に曲を作る方も大変だったと思いますが、最終回のときに音楽チームの方々から「大変だったけど、やりがいがあった」と言っていただけて、結果オーライかなと(笑)。

 

音響監督は駄々っ子みたいなもの

──岩浪さんがアニメ制作で大事だと思っていること、大切にしていることを教えてください。

岩浪:コミュニケーションや人脈は大事かなと。音響監督はゼロイチで何かを作る訳じゃないですからね。音響監督って偉そうにしていますけど、駄々っ子みたいなもんですよ。

──駄々っ子!

岩浪:「これが欲しい、あれが欲しい」って、子供ならお母さんに怒られそうなことを平気で言うわけですよ。だからね、そんなにいばれるもんじゃないんです。

──そのわがままがあるからこそ、よりいいものができるのかもしれません。

岩浪:まぁね。もちろんいい作品を作るというのは大前提なのですが、できるだけ多くの人に届けられるかというのも大事で。僕たちの仕事は、音でいかに売上や視聴者数の伸びしろを増やせるか、というミッションが与えられていると思っています。だから、作品ごとに「この作品の場合はこういうやり方がいいんじゃないですか」と提案するのが、僕たちの役割なのかなと。

──最後に、読者のみなさんにメッセージをお願いします。

岩浪:これはいつも言っているのですが、「音がよかった」と言われたら、失敗だと思っています。それって、音が悪目立ちしているんじゃないかって。まずは純粋に物語を楽しんでもらって、面白かったって思ってもらえるのが、いちばんいい反応なのかなと。もし見返すことがあれば、ちょっと音楽にも注目して楽しんでいただければなと思います。正直、今回は予算がいつも以上にかかっているので、作品が当たってくれないと僕も困ります(笑)。たくさんの方に届くことを願っています。

 
[文・M.TOKU]

 

作品情報

ガンバレ!中村くん!!

あらすじ

「どうしよう、好きだ、大好きだ…!」

主人公・中村男久斗はどこにでもいる内気な男子高校生。

友人ゼロの彼の前に現れたのは、クラスメイトの広瀬愛貴。

何だこの気持ちは…!?

まだ会話もしたことがないのに、広瀬をみると毎日ドキドキがとまらない…!!

内気な男子高校生・中村くんの広瀬への“片想いをめぐる妄想と暴走”をどこか懐かしい80~90'sタッチでコミカルに表現し、高い人気を博す、春泥による王道BLラブコメディ「ガンバレ!中村くん!!」のTVアニメーション化が決定!

キャスト

中村男久斗:小林千晃
広瀬愛貴:榊原優希
乙切想:江口拓也
川村ひふみ:ファイルーズあい
武内剛太:野津山幸宏
向井亮:田丸篤志
浜岡ゆうか:小市眞琴
奥田マサコ:舞原ゆめ
大森司:笹翼
幕の内:山口勝平
宅:竹内順子
青木山麗子:大地葉
仁王馨:武内駿輔
田村亜乱堂:千葉翔也

(C)Nakamura-kun!! Animation Project

 

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