
リボ払いより怖いのは「明示されない強制徴収のルール」!?――弁護士が解説する、アニメ『貸した魔力は【リボ払い】で強制徴収』の面白さと怖さ!
「断空の剣」のメンバーはどうするべきだったのか?
──少し視点を変えて、ガイたち債務者視点からもお話を伺えたらと思います。ガイたちはどうにかレントとの契約を無かったことにしようとしますが、本来であればどのように対処すべきでしょうか?弁護士として何かアドバイスはありますか?
前野:まずは踏み倒しを考える前に、現在の借入状況を正確に把握することが大事だと思います。「借りている総額」「利息・手数料」「毎月の返済額」という正確な状況を把握しないことには、次の判断ができません。
ガイたちのケースでいえば、自分たちのステータス画面に、借りている魔力量は表示されているものの、リボ払いの詳細な条件までは見られない仕様になっているようです。そうすると、まずはレントに直接確認して正確な現状を把握するしか手段はないでしょう。その上で、今の返済条件を変更してもらうようにレントと交渉するしか道はないと思いますね。
作中のエムピーによるリボ払いの設定では、いくら払っても一向に元金が減らない条件になってしまっています。真摯に謝罪して、利息の引き下げや返済期日の猶予など、返済条件の見直しを相談する方法、あるいは債務の一部を免除してもらうように交渉することになるでしょう。
なお、現実の世界であれば、どうしても返済が不可能な場合には、「破産」という制度により、一定の条件下で債務の支払義務を免れることができます。本来はこれも検討すべきなのですが、レントたちの世界とこのスキルに、破産のような制度はおそらく無いでしょう。そうすると、借りた魔力を返済するほかありませんので、やはり今の自分の状況を確認した上で、レントあるいはエムピーに交渉するしか、助かる道はないかなと思いますね。
──幼馴染としてパーティを組んだ頃であれば、対話によって解決できた可能性もありそうですが、ガイは高圧的な態度のまま突っ走ってしまいました。
前野:レントはとても善良な性格ですから、ガイが真摯に謝れば、リボ払いの条件を変えてくれる可能性はあったと思います。そういった意味でも、ガイの行動は良くなかったといえますね。
──もし仮に「断空の剣」から前野さんに弁護依頼がきたら、どう対応されますか?
前野:これは、非常に難問ですね(笑)。
真面目に考えるとしたら、やはりまずはレントのスキルの詳細を知りたいです。なぜなら、弁護士というのは「ルールの専門家」なんですね。現実世界であれば、法律という基本的なルールは全て公開されています。また、契約書についても、内容を見ればルールを把握できます。その中で適切に戦う手段を探していくことができるわけです。
しかし、レントの持つ【強制徴収】はユニークスキルであり、ルールが外部に公開されていません。他の人にはステータスすら見えない状態なので、まずは詳細を把握できないと戦いようがない状態なんです。
この【強制徴収】というスキルは非常に強いものですが、もしかしたら「このような場合の強制徴収は無効である」といったルールがあるかもしれませんし、「破産」のようなルールがあるかもしれません。また、先ほどもお話ししたとおり「断空の剣」のメンバーは、もともとリボ払いや利率に合意していないので、そこも戦える要素になるかもしれません。だからこそ、もう少しスキルの詳細を知りたいわけです。
もしルール上で戦うのが難しいとなると、あとはレントやエムピーと交渉するほかありません。第2話でも、エムピーがレントに対して「契約プランは後から変更可能ですから」と説明していましたよね。ということは、レントが納得すれば変更できるわけですから、交渉での解決の余地はあるといえます。
作中では、レントとエムピーは、「断空の剣」のメンバーの1日あたりのMP回復量の上限まで強制徴収を行っています。しかし、これをしてしまうと、ガイたちの貯金が尽き、回復薬が買えなくなった段階で彼らはMPを使うことができなくなります。そうすると、冒険者として立ち行かなくなり、最終的には回収不能になってしまいます。これは、レントとエムピーからしてもメリットが薄いはずです。
つまり、ちゃんと返済することを約束した上で、「断空の剣」が活動できるレベルまで返済額を減らすことや、利息を引き下げることは、お互いにメリットのある交渉になるわけです。
ただし、そのためには「断空の剣」の3人が、レントに謝罪することが大前提になりますね。それを彼らが本当にできるのかという問題は大いにありますが、私が彼らから依頼を打診された弁護士の立場だったら「何よりも先にちゃんと謝罪しなさい」という話をすると思います。その時点で、依頼されないかもしれないですね(笑)。
弁護士目線で欲しいギフトは?
──作中では様々なギフトが登場しますが、もし前野さんがスキルを授かるとしたら、どんなギフトが欲しいですか?
前野:これも難しいですね(笑)。私自身は『逆転裁判』をきっかけに弁護士を目指した人間ですので、「みぬく」も欲しいですけど、やはり「困っている人を検知できるスキル」とかが欲しいですね。
弁護士って怖がられがちで、相談のハードルが高いと思われる方が多いのですね。ただ、だいたいの法的な困りごとは、早めにご相談いただくほど解決しやすくなります。ゲームのクエストのように困っている人が分かれば、こちらから声をかけて問題の解決に導けて良いなと思います。
さらに、エムピーのような、可愛いサポート妖精がパートナーとしてついてきてくれたら、より日々の仕事も楽しくなりますね。
──TVアニメは、ただいま4話まで放送されていますが、印象的なキャラクターや展開はありましたか?
前野:やはり一番好きなキャラクターは、主人公のレントですね。もちろんエムピーも可愛いんですけど、勝手に契約を成立させて強制徴収する能力が凄すぎて、弁護士目線で見ると少し怖いんですよ(笑)。
レントに関連して、少し「借金」についてお話ししますと、もしかすると、視聴者の方の中には、「借金」を、怖いものや悪いものといったマイナスイメージを持つ方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、例えばベンチャー企業が新しい事業を立ち上げる際に、まずは銀行などから融資を受けて資金を作り、それを基に事業を軌道に乗せていくことは、ごく一般的な流れです。そういった融資を行う銀行もたくさん存在します。
作中の「魔力貸し」も同様で、たとえば、パーティの立ち上げ段階にレントから魔力を借りて、支援を受けながら成長し、成長した後に利息を付けて魔力を返済できれば、それは双方にとってWin-Winの取引になるはずです。つまり、決して「借金」という仕組み自体が悪いものではないんですね。
といいつつ、善良なレントの傍らで、エムピーが時折見せるニヤリとした表情や恐ろしい言動をするのですよね…。
──エムピーが名乗る「まじかる☆プランナー」という肩書も気になるんですよね。
前野:その肩書も絶妙に怪しいんですよ(笑)。なにか事業や私生活で困っているタイミングに、公的な資格を名乗るのではなく、馴染みのない独自の肩書きを名乗る人物が出てきた場合、一般論としては注意が必要です。レントもエムピーの名乗りに対して、「カワイイ…」とか考えていないで、気を付けた方がいいですね。
ただ、個人的には、そういったエムピーの底知れなさや不気味さも、作品をより面白くしている要素だと思います。
──視聴者の皆さんも「断空の剣」がどんな結末を迎えるのか、ぜひ彼らを反面教師にしつつご覧になっていただきたいですね。では最後に、改めて読者に向けて、リボ払いの危険性や本作の魅力をまとめてメッセージをお願いします。
前野:本作は現実の法制度と異世界ファンタジーの要素を見事にミックスした、非常に面白い作品だと思います。
リボ払いが持っている危険性なども上手く表現されていますので、エムピーを味方につけたレントに追い詰められていく「断空の剣」が一体どうなるのか、この先の展開もぜひ楽しみにしていただけたらと思います。
私自身も今後の展開がアニメでどのように描かれていくのか、いちファンとして非常に楽しみにしています。
──メインビジュアルでも公開されているリンカというキャラが、今後どう物語にかかわってくるのかも注目ですね。本日はありがとうございました!
取材・記事:岩崎航太、写真:佐藤ポン
>>TVアニメ『貸した魔力は【リボ払い】で強制徴収』公式サイト
>>TVアニメ『貸した魔力は【リボ払い】で強制徴収』公式X
シティライツ法律事務所 弁護士 前野孝太朗さんプロフィール
前野孝太朗(まえの こうたろう)
シティライツ法律事務所 弁護士
ゲーム・ネットコンテンツなどのエンタメ法務と、AI・IT法務を主に扱う。ゲーム会社やゲーム開発者からの契約、著作権などの知的財産権、利用規約、ゲームの法律監修等の相談に対応。CEDECなどでの講演、各種メディアへの寄稿などを通じ、ゲーム・エンタメに関する法律問題を解説する活動にも取り組む。2026年7月に『ゲームと法律 攻略ガイドブック』(技術評論社)を刊行。
作品情報
あらすじ
辺境の村に暮らす心優しい少年・レントは、自分の魔力を仲間に“貸し与える”ことができる極めて稀有なサポート能力《魔蔵庫》を授かる。
村の幼馴染たちと共にパーティー『断空の剣』を結成し、サポート役としての使命を胸に冒険の旅へと踏み出していく。
しかし、いつまでも弱いままのレントはお荷物と見なされ、無情にもパーティーから“追放”されてしまう!
激しい怒りと復讐心が芽生えたレントのギフトは進化を遂げ、真の能力を開花させる――
それは、貸し続けてきた膨大な魔力を【強制徴収】するスキルだった。
裏切った“元仲間”たちから魔力を取り立て、それを糧に成長していくレントの“復讐”の物語が、今、始まる!
キャスト
(C)まさキチ・飯島しんごう・フレックスコミックス/「貸した魔力は【リボ払い】で強制徴収」製作委員会






































