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- 五六七八千代
- 徳島出身のフリーライター&歌人。現在は、特撮、アニメ、DOMOTOが生きがい。

2026年10月9日より公開中の『バイオハザード』。SNSでも話題の本作をさっそく観に行ってきた。
そもそも私が『バイオハザード』に触れたきっかけは、ミラ・ジョヴォヴィッチ主演の映画シリーズだった。大学時代にはゲームも少し遊んだことがある。たしか『バイオハザード6』だったと思うのだが、ゾンビに襲われている後輩を助けられずに私が先に死んでしまい、今でも心の中で謝り続けている。
ゲーム実況もいくつか見たことはあるものの、シリーズに詳しいわけではない。シューティングゲームもほとんど経験がなく、武器の扱いなんて分からない。
そんな私が今回の映画を観ようと思ったのは、Xで「狩野英孝さんのゲーム実況を見ているような映画」といった感想を見かけたからだ。実際に鑑賞すると、想像していたほどゲーム実況っぽさはなかったものの、とても面白かった。
すごいな、ブライアン……。私だったら、確実にもっと早い段階で死んでいる。
※本記事には映画のネタバレが含まれます。
主人公のブライアンは、口が悪くて、どこにでもいそうな普通の配達員。特殊な訓練を受けたエージェントでもなければ、超人的な能力を持つヒーローでもない。そんな彼が、医療品を届けるために向かったラクーンシティで、突然ゾンビだらけの世界に放り込まれてしまう。
仕事へ向かう途中、車で血だらけの女性をはねてしまう場面では「電話じゃなくて運転に集中して!」と思ったものの、ブライアンはきちんと彼女を助けようとする。足跡をたどって森の奥まで追いかけ、見つけた女性を病院へ連れていこうとするのだ。
私だったら、急ぎの仕事もあるし、はねた人が動ける様子なら「ごめんなさいね……。動けるってことは大丈夫ってことね……?」と、深追いせずに逃げてしまうかもしれない(もちろん冗談です)。
さらにブライアンは、変異し始めた子どもを助けようとしたり、明らかにヤバそうなおじさんに「大丈夫?」と声をかけたりする。
いや、優しすぎなのでは!?
もちろん、人を助けようとする姿勢は立派だ。人間としてとても正しい。でも、目の前にピンチやゾンビが迫っている状況で、私に同じことができるだろうか。
おそらく無理だ。怖くて逃げることしか考えられないだろう。しかも、焦って逃げる方向を間違え、あっという間に死ぬだろう。
ゲームに詳しくない私にとって、作中に登場するアイテムも何となくしか覚えていない。
ハーブってどんな見た目? 救急スプレーって何だっけ? タイプライターは確かセーブポイントだよね?
ゲーム経験者ならおなじみの要素なのだろうけれど、こちらは分からないことだらけである。
そもそも、バイオ以外のシューティングゲームもほとんどやったことがない。画面の中で敵を狙うだけでも大変そうなのに、実際に対面する相手はゾンビ。走って逃げれば足がもつれ、銃を構えれば弾が当たらず、焦って撃ちまくった末に弾切れになって死ぬだろう。
ゾンビ犬も怖くて切ない。犬を飼っていたことがあるので、いくらゾンビになっていても撃つのはつらい。ためらっている間に襲われて、絶対に「YOU DIED」になる。
人を取り込んで大きくなるローリングゾンビも、ゾンビネズミの群れも無理。ブライアンですら苦戦しているのに、私がどうにかできるはずがない。
そもそも、武器を手に入れたところで使い方が分からない。銃を構える前に、安全装置がどこにあるのかも分からず、暴発させて死ぬのがオチだ。
ブライアンは危険な状況に追い込まれながらも、なんとか生き延びようとする。殺された仲間の腰に付いた鍵を諦める判断も、そのひとつだ。
鍵がなければ車を動かせない。取りに行きたい気持ちも分かるが、危険な場所で深追いするくらいなら諦めて別の手段を探すべきだ。
私だったらどうするだろう。たぶん、無理やり鍵を取りに行く。だって、鍵がなかったら困るし……。そして、待ち構えていたゾンビに襲われて死ぬ。
ブライアンは完璧なヒーローではないけれど、危険な状況で何かを諦め、次の行動を選ぶ判断力がある。私にそれができるかと聞かれたら、自信がない。
下水道の場面では心拍音が響き、まるでゲームをプレイしているような緊張感がある。こんな状況で冷静に行動しなければならないなんて、考えただけで心臓がもたない。深呼吸してむせて、そのまま死ぬかもしれない。
ブライアンが恋人のミシェルに向けてメッセージを録音し始めたとき、バイオ初心者の私でも思わず「こいつ、死ぬのでは……」と思ってしまった。
こういう状況で大切な人へのメッセージを残すのは、どう考えても死亡フラグだ。
ブライアンは突然、恋人の妊娠を知らされ、最初は戸惑っていた。それでも、少しずつ家族との未来を思い描くようになっていく。
遅いよ!!!!!!
……と言いたくなる一方で、気持ちは分からなくもない。ブライアンは裕福な暮らしをしているようには見えないし、彼女のことが大好きでも、突然「父親になる」と言われて責任を持てるかと聞かれたら、戸惑うのも無理はない。
ブライアンが望んでいたのは、ただ家に帰ること。ミシェルに会って、これから生まれてくる子どもと穏やかに暮らすこと。
もし自分が同じ状況になったら、そんな未来を思い描く余裕はあるだろうか。恐怖で頭がいっぱいになり、恋人へのメッセージを考えている間にゾンビに襲われてあっけなく死にそうだ。
鑑賞後、Xで「ブライアンは、ゲームに登場する中ボスがゾンビになる前の人間だったのでは?」という考察を見かけた。公式設定ではないものの、もしそうだったら……と考えると、さらに悲しくなる。
ゾンビたちにも、私と同じようにかつては仕事があって、帰る家があって、大切な人がいたのかもしれない。
今回の映画は、超人やエージェントが華麗にゾンビを倒す話ではない。普通の人間が、理不尽な状況のなかで必死に生き延びようとする物語だ。
だからこそ、ブライアンの行動を見ながら「私だったら……」と考えずにはいられなかった。そして、考えれば考えるほど、自分が生き残れる気がしない。
ゾンビを撃てる自信はない。シューティングゲームの経験もほとんどない。危険な場所で冷静に判断できる自信もない。人を助けるどころか、自分の身を守るだけで精いっぱい。そんな私は、あの世界に入ったらあっけなく死ぬだろう。
だけど、あっさり死ぬのもやっぱり悔しい。だからこそ、万が一のバイオハザード発生に備えて、まずは原作ゲームをプレイしてサバイバル術を身につけるべきかもしれない。ハーブの見た目を覚え、調合方法も調べ、今度こそ後輩(と自分)が生き残るための予行演習をするのだ。
……いや、その前に。ゾンビを目の前にして叫ばないようにするところから始めないと、やっぱり最初の角で「YOU DIED」になりそうだ。