
巨匠が挑む20年ぶりのカブトは「特撮ホームドラマ」ーーVシネクスト『仮面ライダーカブト20th 天を継ぐもの』石田秀範監督インタビュー
「人生=演技」一番大事なのは役者が輝けるかどうか
──今作では、加賀美結役・荒木飛羽さんや天道ヒカル役・小寺結花さんの新たに参加する役者のお芝居も注目です。年齢の若い役者に対して、撮影現場ではどのようにディレクションされたのでしょうか?
石田:佐藤たちにも、芝居のアドバイスというものはほぼしなかったね。自分達でもう考えてきてるから。その役のことは、僕よりも彼らが一番よく知ってるんです。演出家よりも、役者本人がその役のことを一番理解してるんで、演出家があれこれと言う必要はないんですよ。
今回の若い荒木くんにしても、子役からやっているのでベテランなんです。だから台本読んでどういう趣旨なのか、どういう意味なのか、理解できる子なんで、彼に対してもあれこれと言うことは、あまりなかったですね。まだ若いので、芝居の経験じゃなくて人生経験が浅いんです。本人が気づいていない部分の「大人はどう君のことを見てるのか」とか、「今後、君にどういうことが人生の中で起こりうるのか」ということについてのアドバイスをしました。
「人生=演技」です。それがその人の演技ですから。日々の生活なくして演技は成り立たないので、そういう部分のアドバイスはしましたね。演技そのものについては、ああしろ、こうしろというのはありません。それは役者が考えることだから、お任せしています。
──監督として撮影現場ではどういったことを意識されているのでしょうか。
石田:一番大事にするのは、「役者が輝けるかどうか」なんです。役者が楽しんで、喜んでその役を演じられるかどうかは“表現”に直結します。それはお客さんの評価にも繋がるので、役者がやりやすいように、楽しんでやれるように、その辺は腐心しました。
お客さんは役者が楽しんでやってるのか、嫌々やってるのかを見抜きます。伝わるんです。スクリーンに映っちゃうんですよ。その辺は大事にしなきゃいけない。そこが演出家の一番の仕事じゃないかな。カット割りとかそういうことじゃなくて、いかに役者を気持ちよくさせるか、楽しませるか、そういうことがようやく分かってきました。
佐藤たちは『仮面ライダーカブト』という作品を愛して、自分のことも愛してるからね。そういう意味で、人生で一番輝いてる時期だったんじゃないかな。20年前は怖いもの知らずだし(笑)。いろんな事情なんてお構いなしだから、あの頃は一番いい時期ですよ。
その後に20年経って色々あって、人間誰しも色々なものが見えてくるわけじゃないですか。それが演技に反映されて、当時はできなかった演技が今はできるようになっている。当時は考えもつかなかったような表情が出せるようになっている。それを見る楽しさが演出家としてありましたね。楽しかったな。
──今作では、20年後という展開含めて当時見ていたファンが心打たれるカットが沢山ありました。
石田:今回の企画はそこを見せるのが大事。
20年後どうなってるかはお客さんも見てみたいと思うんです。20年経ってどう変わったのか。加賀美も歳をとって、ダメ親父になったりね(笑)。でもその代わり息子が頑張る。親父をフォローする。そういうのが、親子でしょう。
──当時の作品の空気感を大切にした演出が随所に感じられました。かつて天道総司と加賀美新が出会ったあのロケ地も印象的です。
石田:あの場所は是非とも使いたかった。1話のあの場所から始まっているからね。お客さんも「そう来たか!」とか「予想通り!」ってなるじゃないですか。
──BGMや効果音も『カブト』の世界観を作り出すポイントかと思います。
石田:昔のテイストをもう一度味わいたいお客さんもいるわけだから。昔の懐古的なところも残しつつ、また新しい風も入れていく。アニバーサリー作品はその辺のバランスが難しいんでしょうね。音にも時間かけて作ったんで、スクリーンで楽しんでいただきたいです。
──テレビと映画のスクリーンの演出では、監督として意識の違いはありますか?
石田:時間やお金の問題は全然違います。あとメディアの大きさ。。やっぱり僕は映画青年だったから映画館のスクリーンのサイズでやりたいという想いは強いですね。
若者達へ継ぐ「人を育てること」の価値
──「仮面ライダーシリーズ」の仕事をしていて良かったと思うのは、どういったところでしょうか?
石田:申し訳ないけど、僕自身は「特撮」好きの人ではないんです。
若い人とやるのが好きなんです。ベテランの役者は、任せると好き勝手やっちゃうでしょ(笑)。監督は単なる交通整理になっちゃう。そうなると「監督、いらないだろ」って思うんです。そういうことを経験したので、ベテランとやることに興味がないんです。若い人の方が新しいものを作ろうっていう意欲があるし、いいものを吸収しようとする意識がある。いい意味で尖っているし、やっていて楽しいんです。
1年間という長丁場で、成長度合いを見るのも楽しい。たった1年でもやっぱり成長はしますし、ガッと伸びる人もいるので、そういうのを見るのが楽しいです。親心に近いものはありますよね。それを見てると、人を育てるというのは一番価値のあることなんじゃないのかな。
「財を残すは三流、事業を残すは二流、人を残すのが一流」って有名な言葉あるじゃない?お金を残すより、人を残して後世に繋げることの方が、意味があるのかなって。実際に僕もその方が楽しいと思っています。
──石田監督の弟子にあたる監督も、現行の仮面ライダーシリーズで活躍されています。
石田:僕は、杉原輝昭や上堀内佳寿也に、こういう風に撮れとかお前の演出はダメだということは一切言わない。言う立場にないし、言う権利もないし、好きなようにやればいいんじゃないですか。それぞれ自分たちの思うところがあると思いますよ。それを貫いていけばいい。
好きなようにやって、それで失敗して、怒られて、干されて。それで成長していくわけだから、思うようにやればいいんです。人が成長させるんじゃなくて、成長ってのは自分でするものですから。他力では成長なんかできません。
──今作の上映を楽しみにしている『仮面ライダーカブト』ファンの皆さんへメッセージをお願いいたします。
石田:キャッチコピーをつけるなら、今回は「特撮ホームドラマ」です。
仮面ライダーのアクションや新キャラクターを楽しみにしてもらう見方もありますし、普通の平場の人間関係や親子関係を、リラックスして肩肘張らずに観られる作品です。
今回は20年後を描いたから、また10年くらい経って今回の続きの映画ができるといいですね。
[インタビュー/田畑勇樹 編集/小川賢人]
作品情報
あらすじ
キャスト
矢車想/仮面ライダーザビー:徳山秀典
風間大介/仮面ライダードレイク:加藤和樹
加賀美結:荒木飛羽
天道ヒカル:小寺結花
ゴン:馬場ふみか
三島正人:弓削智久
田所修一:山口祥行
加賀美陸:本田博太郎
町田悠宇
高岩成二
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