
「普段は見えていなかった誰かの心に気づくきっかけに」映画に込めた想いと制作秘話! 上田華子監督、脚本を手掛けた成田良美さん、中川真緒P、多田香奈子Pが登壇『映画名探偵プリキュア!不思議な庭と2人の秘密』スタッフトークイベントレポート
あの名シーンはいかにして生まれた? 今だからこそ明かせる制作秘話
続いて、制作にあたってこだわったところや、お気に入りのシーンをそれぞれ紹介。
上田監督が最初に挙げたのは、「シーン21……」という現場ならではのシーン番号で、「じゃなくて」と言い直し、笑いに包まれた。しかし、制作から月日がたった今も、その番号がすらりと出てくるところに、作品の細部まで向き合ってきた監督の姿が垣間見える。
改めて監督が挙げたのは、超巨大ダメダメの体内へ入っていく場面。体内という設定上、少し気味の悪い印象にもなりかねないため、美術や撮影スタッフと何度もやり取りをし、より美しい映像に仕上げることを目指したという。作画にも自ら手を加えたそうで、観客から「素敵でした!」という声が送られる一幕もあった。
成田さんが最も大切にしたのは、かりんの気持ちの流れ。何に落ち込み、どのような言葉をかけられ、再び前を向いて一歩を踏み出すのか、その心情を丁寧に描くため、何度も脚本の修正を重ねたという。
中川プロデューサーは、映画後半、名探偵プリキュアが映画限定のフューチャーフォームへとパワーアップしたあとに、石井あみさんの歌う挿入歌「First Step」が流れるシーンがお気に入りだと明かした。まだセリフの入っていないコンテ撮の段階で涙が出てしまったそう。さらに、楽曲のデモが届いたときには、歌詞を見ながら自分で歌ってみたところ、次第に泣けてきてしまったというエピソードも飛び出した。今も、「First Step」を聴いただけで涙が出てしまうという。
そして多田プロデューサーが選んだのは、序盤、バスの中でレインがかりんを「彼女は僕の光だ」と表現する場面。「友だちでもなく、家族でもなく、大事な人でもなく、“光”という表現をみんなで出した」あのセリフがとても気に入っていて、レインの表情も含めて大好きなシーンだと語った。
かりんの名前の由来から幻のシーンまで! 制作秘話が続々
ここからは、事前に「#教えて映画たんプリのナゾ」のハッシュタグで募集した質問に答えるコーナーへ。
まず寄せられたのは、かりんの名前がどのように決まったのかという質問。成田さんによると、当初は呼びやすく、かわいらしい女の子の名前を5つほど候補に挙げていたそう。その中から最終的に名前を選んだのが上田監督だった。
上田監督は、劇中に登場する花の花言葉を一つひとつ調べていたそうで、カリンの花言葉のひとつである「努力」が、努力家の彼女にふさわしいと考えて命名したという。これを受けて中川プロデューサーは、今後公開される予定のもののなかで、キュアアルカナ/森亜るるか役の東山奈央さんから、かりんの花言葉には「努力」があると教えられたものの、その場では「花言葉は気にしてなかったですね」と答えてしまったことを告白。その後、上田監督が花言葉をもとに名前を決めていたと知り、「この場で訂正しておきたい」と話して会場の笑いを誘った。
さらに、当初の候補には「こはる」という名前もあったことが明かされるなど、キャラクターが形作られていくまでの意外な裏話が披露された。成田さんによると、キャラクターの名前が決まっていたほうが脚本を書くにあたって気持ちが入るため、早い段階で決めることが多いという。今回も当初は「こはる」という名前だったが、その後「かりん」に決まったそうだ。
続いては、制作途中で変更された場面や、映像化されなかったアイデアを尋ねる質問。初期の構想には「名探偵」らしさを意識した謎解きやクイズの場面もあり、古城内で仕掛けを使った展開を検討していたが「消えましたね(笑)」と上田監督。クイズの参考に、脱出ゲームに行ったエピソードも飛び出した。
また、かりんが過去に経験した出来事も、尺がもう少しあれば、もっと深く描ける余地があったかもと多田さん。ただし、そこを掘り下げすぎると物語が暗くなってしまう懸念もあり、成田さんは結果的に現在の形で良かったと話した。
かりんに強い思い入れを持つ多田プロデューサーは、劇中に登場するテストの点数にも頭を悩ませたという。上田監督が絵コンテで描いた際には「29点」だったが、努力家のかりんがどのような結果に悔しさを感じるのかを考え、最終的に「49点」を提案したそうだ。「監督のコンテはいつも最高!って感じで、普段はなにもいうことがないんです。でも29点だけは(口を出してしまった)。もちろん29点が悪いわけではありません。先ほども努力の話が出ましたが、かりんちゃんはいつも一生懸命に努力している子なんですよね。だから、50点を超えて62点、むしろ70点以上にして、100点に届かないことに苦しんでいるという描き方もいいのかなと思ったんです。でも、彼女はまだ努力の途中でもあるので、いろいろと悩んだ結果、これが正しかったかは分からないけど、49点を提案させていただきました」と、その理由を明かした。
次の話題は、かりんと出会う以前のアランの境遇。成田さんは、「ひとりぼっちで暮らしていたことは、映画のカットでも描かれていましたが」と前置きした上で、テレビシリーズに登場するウソノワールを引き合いに、人間とうまく関われず、人間を攻撃する道へ進んだノワールに対し、アランはかりんと出会ったことで、そうならずに済んだキャラクターだと説明した。
多田さんの「石を綺麗にするってすごい能力だけど、その能力がなぜ周りから認められなかったのか」など、アランの過去には、まだ描けるエピソードが数多くあるという話から、スピンオフの構想にまで話が広がり、観客からは期待を込めた熱い拍手が。
さらに、かりんと出会う前のアランが、ボロボロの姿で身を潜めていた場面にも話が及ぶ。上田監督は、その姿を絵コンテで描き、キャラクターデザインとして起こしてもらったと説明。中川プロデューサーは、色の付いた映像で初めてその姿を見たとき、想像以上に傷ついた様子に驚き、アランに感情移入して涙を流したという。
上田監督曰く、アランが妖精の姿でいたのは、人間の姿では隠れにくく、誰にも迷惑をかけないようにするためだったという解釈もあったそう。かりんにありのままの自分を受け入れてもらったことで、妖精の姿が自然体になり、一方で、誰かを守るために行動するときには人間の姿に。そうしたアランの心情も語られ、キャラクターへの理解がさらに深まる時間となった。

































