
「これからも二人の日常は続いていく」──『僕の心のヤバイやつ』完結! 桜井のりお先生が語る市川京太郎&山田杏奈の成長と最終回に込めた想い【インタビュー】
最終回に込めた想いと二人の未来
──ここからは卒業を描いた最終回についてもお伺いできればと思います。「Karte.197 私はやってやる」で卒業式まで“あと2日”となっていましたが、次の「Karte.198 僕たちは旅立ちの日に」で卒業式当日を迎えています。この空白の1日に二人は何をしていたんだろう、と個人的に気になっていました。
桜井:確かに、何をしていたんだろう(笑)。実はそこまで深い意味はないんです。でも翌日が卒業式というよりも、2日くらいあったほうがワンクッション置けるのかな、とは思いました。読者の方の気持ちも少し和らぐというか、そういう効果はあったのかもしれないですね。
──あの扉絵も、ネット上ではざわざわしていました。私も気になっていました(笑)。
桜井:まあまあ……という感じで(笑)。あくまでイメージではあるんです。もらった卒業アルバムを見ながら、“こんなことがあったね”といろいろな思い出を語り合っているうちに寝ちゃったのかな……といった解釈ですね、一応。そこはそれぞれの想像にお任せします。
──そして、最終回では山田の答辞も。以前のエピソードと対になっているような描写もありました。山田の「うん」が「フン」になっているところもすごく良かったです。
桜井:(笑)。自然に言っている山田を想像すると、あんなふうに聞こえるということで。
山田の答辞は、結構前からどうしようかなと悩んでいました。答辞は山田にしたほうがいいとは以前から考えていたのですが、山田は言葉を自分の中でちゃんとつなげられるタイプの人間ではない。とすると、どういう言葉で学校生活を締めくくるんだろうと。
答辞はみんなに送る言葉でもあるし、自分自身の決意表明でもあるじゃないですか。だからすごく難しいなと思っていたんです。
何かと対にするというよりも、やっぱり自分自身と向き合うということ。市川の送辞もそうだったんですけど、自分自身を認められるような言葉にしたい、という想いがありました。どういう言葉にするかは、直前まで悩んでいましたね。
──先ほど、先生としてはもっと傍若無人な山田でもいいと思っていた、というお話がありましたが、山田も市川も、先生が思っていた以上に自然と成長していったような感覚なのでしょうか?
桜井:こういう人間にしたい、こういうキャラクターになってほしいという願望はあるんです。でもどうすればそのキャラクターが成長していくのかについては、わからないんですよね。
だからそこは自然に身を任せたというか。物語の中ではいろいろなイベントが起こるわけですが、そのときに彼らがどう動くのかということを自然に考えていました。
──以前のインタビューで、当時の担当編集の方が“頭の中に箱庭を持っているようなイメージがある”とおっしゃっていたのを覚えています。どうやってネームを組み立てていらっしゃるんだろうと……。
桜井:ネームを一度作ってから練り直す、ということはあまりしないんです。このシチュエーションだったら、この子はこうするだろうな、そうしたらこっちの子はこうするかな、というやり取りを自然に考えている感じですね。
──そうしてキャラクターの動きに身を任せた結果、当初の想定とは意外な方向に進んだキャラクターもいたのでしょうか?
桜井:そうですね……半沢さんなんかは、もともとはもう少しミステリアスなキャラクターとして登場させたんです。でも自然に任せて描いていたら、ちょっと面白くなっちゃうんですよね。変な人だよなあって(笑)。私はミステリアスなキャラクターを描くのがあまり得意じゃないので、結局変な人になっちゃいました。
──でも、そこが半沢さんの魅力でもありますよね(笑)。ちなみに、卒業式の最後にアンジェラ・アキさんの「手紙~拝啓 十五の君へ~」の楽曲を使うことも、以前から決めていらっしゃったのでしょうか?
桜井:結構前から決めていました。大好きな曲なんです。歌詞も、かつての市川と今の市川に通じる部分があるので、ぜひいつか使いたいなと思っていました。
──最終回まで読んで改めて、中学校という場所はいいものだな、と感じたんです。すごくシンプルな感想なのですが……。
桜井:やっぱり高校生くらいになると自分の進路が見えてきますし、それぞれ得意なこともあって、みんなが自分の目指す方向に向かって頑張っていくじゃないですか。でも中学生って、そういう部分がまだ曖昧なまま、みんなで一緒に過ごしているんですよね。
だから……なんていうんですかね。一体感ではないですが、みんなで一緒に何かを作り上げるという意味では、中学校は一番良いシチュエーションなのかなと思います。
──せっかくなので福田さんにも伺いたいのですが、最終回の原稿を受け取ったときは、どのような気持ちでしたか?
福田:やはり構成力がすごいなと思いましたね。15ページでこの濃密さ。いつも「このページ数なのに、よくこれだけのことをやりますよね」と先生に言っているのですが、最後も本当にそうでした。神がかっていましたね。
それから、二人が巣立っていく様子を見て、なんだか親のような気持ちになりました。純粋に感動しました。入稿作業をしているときに文字を追いながら読んでいたら泣いてしまって。文字の力も素晴らしいなと思いました。
──長年一緒に作ってきた作品の最終回を受け取るというのは、特別な重みがあるんじゃないかと思っています。
福田:本当に大好きな作家さんなので。その最終回を受け取れたことが、すごく光栄でした。ただ原稿をいただいた時は一刻を争う状況でしたので、「ありがとうございます!」って感じでした(笑)。
桜井:(笑)。実は最終回は本来14ページの予定だったんです。
──そうだったんですか!
桜井:ただ、さすがに14ページだと詰め込みすぎてしまうなと思って。それに、最後は大ゴマで終わりたいという気持ちもあったので、1ページ増やしてもらいました。
──15ページとは思えないほどの内容で素晴らしかったです。そして、さまざまな漫画家の先生方からも卒業を祝うメッセージやイラストが寄せられていましたが、ご覧になったときはいかがでしたか?
桜井:本当に嬉しかったです。皆さんお忙しい中、ちゃんと描いてくださって。しかも皆さん本当にお上手なので、恐縮するばかりです。
──最終回が収録された第14巻の特装版は第十二中学校卒業アルバム画集付き。こちらも気になっているのですが、どのような内容になっているのでしょうか?
桜井:ただただ卒業アルバムを作りたいと思っていました。ちゃんとした卒業アルバムのような装丁で、表紙もハードカバーになっているものがあったらいいなと思って。そういうものを作っていただきました。
──クラスメイトそれぞれのプロフィールなどは、自然と思い浮かんできたのでしょうか?
桜井:そうですね。プロフィールやクラスメイトの名前を考えるのも、すごく楽しい作業でした。もともとキャラクターの設定を考えるのが一番好きなので、楽しかったですね。
──第14巻特装版の卒業アルバム画集の作業ではこれまでを振り返る機会もあったと思います。その中で、特に思い出深かったり、思わず手が止まったりしたところはありましたか?
桜井:そうですね。第42話(「Karte.42 僕は利用された」)あたりは結構暗い展開だったなと思いました。市川が山田に利用されているんじゃないかと疑って、ちょっと疎遠になってしまうところですね……扉絵も暗いです(笑)。でも、そういう場面を見返しながら「ああ、こんなこともあったな」と思い出すのが楽しかったです。
──ナンパイ(南条ハルヤ先輩)が登場したお話でしたね。あのすれ違いを描いていた当時は、どのような気持ちだったのでしょうか?
桜井:こういうすれ違いってあるよな、と。中学生くらいだと、つい疑心暗鬼になって、相手がこう思ってくれているのに本当は違うんじゃないかと考えてしまうこともある。そんな中学生にありがちなこととして描いていたので、楽しかったですね。
──先生は以前からラブコメを描きたいとおっしゃっていましたよね。しかし『僕ヤバ』はラブコメでありながら、想像以上に人間讃歌としても深い作品になったように感じます。
桜井:彼らが経験したことって、誰しも通ったことがある道なのではないかと思うんです。「すれ違っちゃったな」「あのときはそうだったけど、今は違うよな」「あのとき、ちゃんと言えばよかったな」。そういうことは誰にでも起こり得ると思うので、人間関係のややこしさを描けたことが楽しかったです。
──このインタビューをさせていただいている段階では第14巻の作業をされているところだと思います。漫画家の皆さんは連載が終わっても単行本の作業がありますから、なかなか一息つけないですよね。
桜井:そうなんです。全然「終わった」という実感はなくて、逆にどこでそう言えるのだろうかと(笑)。
──さらに、来年はTVアニメ第3期も始まりますね。こちらも楽しみにしているのですが、先生はいかがですか?
桜井:すごく楽しみです。第3期は二人がお付き合いを始めてからのお話になるので、声がつくことによって、原作よりもさらに甘々な感じになるのかなって想像しています(笑)。
──ありがとうございます。改めて8年半にわたって二人を見守ってきた読者の皆さんに、メッセージをいただけますか?
桜井:8年半。毎回見守ってくださった方もいれば、途中で読むのをやめてしまったという方も、もちろんいらっしゃると思います。でもまだまだ間に合うので、ぜひ読んでいただきたいですね。私自身も含めて、こんなにたくさんの方に二人を見守っていただけたことが、本当に嬉しいです。
こうしてちゃんと祝福されながら連載を終えられるということも、なかなかできないことだと思っています。卒業というタイミングに合わせて「おめでとう」と言っていただけて、すごく嬉しいです。「完結するのは寂しいけれど、おめでたいね」という雰囲気の中で終わることができたのは、本当にありがたいことだなと思います。
──確かに「おめでとう」と祝福されながら終わる作品というのも、なかなかないですよね。個人的には山田と市川のその先も気になってしまうのですが……。
桜井:二人はまだ15歳ですから、これから先もいろいろなことが起こると思うんです。中学生の間にもいろいろなことがありましたけど、もっともっと大変なことも起こるんだろうなと。
でも、そういうことも含めて、楽しみながら人生を送っていってほしいなと思います。二人以外のキャラクターもみんな、どんなことがあっても乗り越えられるような人になってほしいですね。これからも二人の日常は続いていくので、その先のことも想像しながら楽しんでいただきたいです。
[インタビュー・逆井マリ]
『僕の心のヤバイやつ』完結記念フェア

○開催期間
2026年11月6日(金)~2026年12月6日(日)
○開催場所
全国アニメイト(通販含む)
○フェア内容
期間中、対象商品を1冊ご購入ごとに【桜井のりお先生の一言コメント入りB6サイズリバーシブルビジュアルボード(全5種)】を1枚プレゼントさせて頂きます。
※お選びいただけません
○特典内容
桜井のりお先生の一言コメント入りB6サイズリバーシブルビジュアルボード(全5種)
○対象商品
■2026年11月6日(金)発売
[コミック]
・僕の心のヤバイやつ 通常版 14巻
・僕の心のヤバイやつ 特装版 14巻
・僕の心のヤバイやつ ラブコメディが始まらない 2巻
■好評発売中
[コミック]
・僕の心のヤバイやつ 通常版 1~13巻
・僕の心のヤバイやつ 特装版 3~13巻
・僕の心のヤバイやつ ラブコメディが始まらない 1巻
○注意事項
※特典はなくなり次第終了となります。
※施策に関わる景品・特典・サイン本他・応募用紙・引換券等は、全て第三者への譲渡・オークション等の転売は禁止とさせていただきます。
※アニメイト通販をご利用のお客様につきましては、下記URLからアニメイト通販の対応方法をご確認ください。
コミック『僕の心のヤバイやつ』
11月6日(金)発売


































