“女性”を前面に押し出した新作の聴き所とは?MELLインタビュー

MELLの2ndアルバム『MIRAGE』は「受難の時代を生きる男の子たちのための“愛”」がテーマ。“女性”を前面に押し出した新作の聴きどころを聞きました!

 MELLが、約2年2ヶ月振りとなる2ndアルバム『MIRAGE』をリリースする。攻撃的なロック・ナンバーで展開する前作『MELLSCOPE』とは大きく異なるテーマ=“愛”“女性らしさ”を意識して制作に挑んだという今作。I'veの高瀬一矢・中沢伴行・C.Gmix・井内舞子、ゲストクリエーターに元SOFT BALLETの森岡賢と共にクリエイトした全13曲は、“進化し続ける歌姫、MELL”ならではの強力作となっているが、どんな気持ちの変化があって、"ここ"にたどり着いたのだろうか──MELLに訊く。

●本能を求めずらい現代だからこそ“愛”であふれた『MIRAGE』が生まれました

──まず、ニュー・アルバムが完成した率直な心境を教えて下さい。

MELL:前と違う子供を産んだ母親の気持ちのような、そんな心境で非常に満足してます。前作『MELLSCOPE』は、とってもアンダーグラウンドで、メッセージも暗くて(笑)、「ここまで言われて、どうしたらいいの!?」っていうくらいなところまでを描いた女性の歌が多かったんですけど、今回は決してそうではなく、ヒューマンの人生の中に必要なモノ──思いやり、愛、恋愛、人を好きになる気持ち、トキメキ──そういうところを描いています。……意外でしょ?(笑)

──確かに、『MELLSCOPE』の印象とはガラリと変わりましたよね。一体どのような変化があって、今のモードに突入したんでしょうか?

MELL:……えーっと……私、1999年にMELLという名前で活動を始めて曲を出していたんですけど、2008年までアルバムを出さなかったんですね。それでやっと1stアルバム『MELLSCOPE』をリリースしたんですけど、1曲目「SCOPE」が〈未来はない〉(和訳)って言葉から始まってるんですよ。ヒドいでしょ?(笑)。10年、ファンの皆さんを待たせておいて、〈私たちには未来はないの〉って(笑)。まるで囚われのお姫様のようだっていう感想をたくさん頂きましたね。

──ジャケットのビジュアルも正にそういうイメージでしたよね。でも、(if…No future)の一文には、MELLさんの10年分の熱いメッセージがこめられてるわけで。

MELL:そうです、すごく気持ちが強かったんです。でも、自分の中にあるさびしさ、孤独を詰め込んだ作品だったので、今度は“愛”をテーマにした曲を歌ってみたいな、と。重さを取り除きたかったというか、もっと気軽に聴ける曲を増やしたかったと言うか……。

──確かにそういった意味ですごくふり幅が広くなってますよね。でも、前作のエネルギーはいい形で残ってるように感じましたが、どうでしょうか。

MELL:うん、そうですね。そこにもっとフィメール──女性の視線を入れたくなって。『MELLSCOPE』っていう潜望鏡の中にいる女性を描きたくなったんです。

──なぜ今そこを歌いたかったんでしょう?

MELL:……なんて言うんだろうな。例えば、前作の中に“いわゆるラヴソング”はないでしょ?(笑)

──う~ん……(笑)。でも、ある意味ラブソングだと私は思います。もっと大きな意味での愛の歌というか。

MELL:なるほどね!まあ、確かにそういうところはあるかもしれません(笑)。 と、いうかその見方はすごく嬉しいんですが、なんで今回愛を歌いたかったかって言うと──現代のヒューマンの人生って、豊かになったように見えると思うんですけど、愛したい・愛されたい・愛し合いたいっていう人間としてごく普通の本能を求めづらい世の中になってるように感じているんです。元々、女性と男性は別の生き物で、その別の生き物を無理やり結合させて、これだけのものを作り上げてきて……でも、地球の環境は確実に崩壊してきてるじゃないですか? 環境が崩壊するってことは、生物も崩壊するってことだと思うんです。魚がいなくなって、花が咲かなくなる、オスとメスをひとつのオリの中に入れておいても繁殖しない動物も出てくる……っていうふうになっていってるってことは、私たちヒューマンもそういう方向に向かってるってことなんですよ。ヒューマンも、その環境に生きてる“動物”ですから。で、実は650万年後にオス絶滅説っていう話が上がってまして──。

──えっ!? オス絶滅説ですか?

MELL:そうなんです。それを知ったときはすごくショックでした。今は婚活ブームとか、草食系とか(笑)、男の人は特に色々言われている時代じゃないですか……自分ひとりで生きていくことすら大変な時代なのに、大そうなビルが立ってて、インターネットも発達してて、確実に良くなってて──なのに、すごくさびしいんですよ。愛情に満たされてない人が多いんです。愛情って言葉が分かってても、たどりつけないというか、“愛”が蜃気楼のようなモノになってしまってるように感じたんですよ。だからこのタイトルにしました。例え、その愛が『MIRAGE』(蜃気楼)でも、愛したこと、愛されたことを遺伝子として残したいなと。そういう2枚目にしたいなと思いました。

──そのテーマを敢えて女性目線で描かれたんですね。

MELL:そうです。いろいろな意味で世の中の犠牲になっているのは男性だと思うんです。常に戦争に行かされて──例えば、女だけの世の中だったらそんなコトにはならないと思うんです。……何が言いたいたいかっていうと、優しい世の中にしたいんですよね。だから、今回のMIRAGEのロゴで丸みを帯びた部分があるんですけど、それは650万年後の卵子の着床をイメージしました。命ってすごく尊いモノだと思うんです。遺伝子が確実に減り、子供が減っていく中で、その命を650万年後まで、いかなる形で残していくか──そういう思いを込めて作りました。


●ツアーで気づいたんです。“私、女として見られてないな”って(笑)

──そういうテーマがあった中で、どういう気持ちで歌われたんでしょうか。

MELL:すごく前向きな気持ちで歌えました。例えば、ダメならダメでいいけど恋も含めてもっと頑張りたいっていう気持ちで歌ったのが「砂漠の雪」(6曲目)で、その続編が「Love illusion」(9曲目)なんです。「Love illusion」に関しては、ホントは“続・砂漠の雪”って言ってもいいくらいの曲で、「砂漠の雪」では女性の片思いを描いてますけど、「Love illusion」ではその数年後を描きました。その2人が結ばれたその後というか……「砂漠の雪」の主人公が、“砂漠に雪なんて降るわけない。私は子供だったわ”っていうことが分かったそのあとの話ですね。

──そう言われてから歌詞を見るとすごく納得です。では、曲のことを具体的に聞いていきたいんですけど、疾走感あるロックなサウンドと生のストリングスという、対照的な2つが組み合わさったバック・トラックで展開されるタイトル曲「mirage」(1曲目)にはどんな思いを込められたんでしょうか。

MELL:13曲目の「MY PRECIOUS」以外は、森岡(賢)さんのメロディーを聴いてから歌詞を書いていったんですけど、「mirage」の場合は自分の中でテーマを“mirage”って決めてたんです。なんでそんなに「mirage」なのか熱く語れば語るほど男性陣は黙ってしまいましたけど(笑)、女の人のほうが元気があって男の人は疲れている時代だからこそ、“オス絶滅説反対”の歌と言うか──愛の歌を歌いたいなって。で、曲の仕上げの段階で、高瀬(一矢)さんがすごいストリングスを入れてきて、自分の中でこの曲が完成しましたね。「出来た!」って。

──ストリングスは入れる予定じゃなかったんですか?

MELL:入れる予定じゃなかったんです。なので、「SCOPE」の延長線上にあるかのような、もっとロックな曲だったんですけど、豊かなストリングスが入ることで女性らしさが出てきたんですよ。

──ああ、すごく分かります。ストリングスの部分は、まるで羊水に浸かっている時を思い出すかのような、包み込むかのような優しさを感じさせます。

MELL:そう、まさにその通りなんです。“MELLSCOPEツアー”を周って気付いたんですけど、ハードな「Red fraction」「no vain」で圧倒的に男性ファンが興奮しているのは、私のことを女性と見てないからだな、と。男の闘争本能に火をつける存在なんじゃないかなって思ったんですけど、私は元々性が違うのでそのままハードなモードで突っ張れないんです(笑)。そういう意味では自分らしい自然な歌詞が描けたんじゃないかなと思います。

──確かに、MELLさんならではのオリジナリティが出てますよね。今作は、TVアニメ『ハヤテのごとく!』エンディングテーマ「Proof」、TVアニメ『学園黙示録 HIGHSCHOOL OF THE DEAD』第7話 挿入歌「Infection」、TVアニメ『RIDEBACK』オープニングテーマ「RIDEBACK」というアニメソングも入ってますけど、アニメというテーマがある中で、どういう風にオリジナリティを出していこうと考えているんでしょうか。

MELL:コミックやアニメ作品にはセリフがありますよね。歌詞はそこから引用すれば、出来るといえば出来るんです。でも、それではオリジナリティは出ないから、それを濾すフィルターが必要なわけで、そのフィルターが私なんです。私の気持ちや、経験、希望、想像でそこを搾り出して考えるんですけど、絶対に壊しちゃいけないのはアニメの世界だと思うんです。アニメが9割主役だとしたら、いかに1割で勝負するか、自分のオリジナリティを出すか……そこを考えていつも歌ってますね。

──その中で、いかにポップに、いかにロックに躍動させるかというか。

MELL:そうですね。メロディーを大事にした中で、それを凄く意識しますね。

──それは全曲いえることだと思うんですが、今回収録されている「MY PRECIOUS」は中でもすごくポップですよね。少し異色の曲というかメッセージ色が強い曲で、この曲が次作に繋がっているような気がしたんですが、いかがでしょうか。

MELL:次作はまだどうなるか分からないですけど(笑)、そう言っていただけると嬉しいですね。あれは唯一のメッセージ・ソングで、難しいことは言ってないけど大事なことを歌ってます。ここ数年で海外でライブをやらせてもらうようになって、その中で色々と感じたことを「MY PRECIOUS」に込めて、“あなたたち一人一人が世界の主役なんだよ”ってことを伝えたかったんですよ。"自分は完璧じゃないけど、あなたに出会えたことが幸せだった。だから輝いて下さい"っていう、MELLを応援してくれている皆さんに対しての感謝の気持ちなんです。

──早く、多くの人に聴いてもらいたいですね。

MELL:そうですね。音楽だから、長く長くゆっくりと付き合っていただけたら嬉しいです。

<TEXT:逆井マリ>

>>MELL GENEON UNIVERSAL OFFICIAL SITE

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