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『異世界チート魔術師』原作者・内田健先生インタビュー

『異世界チート魔術師』原作者・内田健先生インタビュー|「楽しい」からこそ、ここまで書き続けられた

書籍化で一番大変な作業は、内容を「削る」こと

――プロとしてのデビューを意識されたのは、どのあたりのタイミングでしたか?

内田:だいたい、連載を初めてから半年くらいでしょうか。

当時は「なろう」のランキングも40位くらいだったと思いますが、累計ランキングにも乗るようになってきたあたりで、「これはもしかすると、プロになれるかもしれない」と。

――そこからヒーロー文庫さんから、書籍化の話が来たと。

内田:ええ。出版社の中で一番最初に声をかけてくださったのがヒーロー文庫さんだったんです。でも、やっぱり最初はちょっと「大丈夫かな?」と思ったんですよ(笑)。

――(笑)。当時のヒーロー文庫(※3)さんといえば、レーベルが立ち上がってから間もない時期でしょうしね。

内田:そうなんです。ただ、「僕を騙したところで誰が得をするんだ?」という話になりますし(笑)。

それでまずは実際に編集さんと会って話をしてからということになり、それからあれよあれよという内に本が出来上がって。

最初に書店の店頭に並んだ本をみた時に、ようやくあの話は本当だったんだと実感が沸いて、店頭で売れ行きをこっそり見守ったりもしていたのですが、思い返せば完全に不審者でしたね(笑)。


※3ヒーロー文庫
2012年9月に主婦の友社により創刊されたライトノベルレーベル。『異世界食堂』、『ナイツ&マジック』、『薬屋のひとりごと』など、WEB発の人気小説を多数書籍化している。
『異世界チート魔術師』の書籍版1巻の発売は2013年6月であるため、創刊からほぼ間もない時期に書籍化の企画が動いていたと推測できる。


――WEBを書籍にする上で、手を加えた部分というのはあったのでしょうか?

内田:それは結構ありましたね。というのも、先程も少しお話しましたが、一回WEBに掲載した後から読んでみて、「ここはこうしておけばよかった」と後から思うことってよくあるんです。

そういった反省を反映させたり、当時読者から反応が良くなかった部分とかは、書籍化の際に書き直したり加筆したりと手を加えています。

――そうした書籍化の作業の上で、一番苦労した部分はどこでしょうか?

内田:ページ数の関係から、内容を削らないといけない場合も出てくるのですが、文章を削るのが一番シンドイですね。

やっぱり自分としては、不要だと思って書いているシーンは一つもないので。

逆に加筆する分には、前後との整合性さえとれれば、当時使えなかったネタを入れたりできるので、まったく苦にはならないんですが、削れと言われた時は、もう「どこを削ればいいんだ」と(笑)。

苦肉の策として、文庫の行数にあわせて改行を減らしてギリギリまで文字を詰めて……ということもやったりしています。

今まで書いた中で、とくに長いのが3巻あたりなのですが、最初の段階では400ページを超えていたと思います。

ヒーロー文庫さんはページ数の制限についてはそれほど厳しくないのですが、さすがに400を超えると長すぎるぞと。

ただ最近は自分も、書籍一冊分くらいの分量が書きながら大まかに分かるようになってきて、「なろう」に掲載する時点で、ある程度書籍化を想定した分量で書けるようになってきましたね。

 

――なるほど。「なろう」で主流になっている異世界モノは、本作のような異世界転移よりも異世界転生モノが多い印象があるのですが、なぜ転移の方を選ばれたのでしょうか?

内田:これはあくまで好みの問題なのですが、主人公が赤ん坊の頃から始まると、序盤のストーリーがエスカレーター式になって、物語の変化というのが少しつけにくいという印象がありました。

ただ、正直それほど深く考えていなくて、単に自分自身が好きだったから転移の方を選択した記憶があります。

――そのあたりは、「なろう」ならではの良さでもあるのかと感じました。細かい理由を抜きに、最終的には「自分が好きだから」というシンプルな方向性で作品の方向性を決定できるというか。

内田:そうですね。おっしゃる通り、基本的に編集から構成、執筆まで全責任を作者が負うからこそ、好きなように作品を書くことができるのは、「なろう」発の作品の強みであり、良さでもあると思っています。

人気があっても、あまり第3者の手を入れたくないから、書籍化の選択をしない…という作者さんも、中にはおられるのではないかなと。

――「なろう」に投稿する前と後で、作品の作り方を変えた部分などはあったのでしょうか?

内田:まず異世界モノという題材は当時の「なろう」でとても人気のあったジャンルですから、それを選ぶ際にはある程度は意識しました。

ただ、そこさえ抑えていれば、ある程度自由にやっても大丈夫だろうという予想もあったので、そこまで作風を変えたりはしていません。

連載という形式上、続きが気になるように「引き」のポイントというのはある程度意識していましたが、個人的には1話分を短く区切れるのはむしろ書きやすかったですね。

自分の場合ですと、だいたい1話分5000文字を目安にしていました。話によっては、1万5千文字を超えたりすることもありますが。

書籍だと、1節分の区切りをほぼ好きなように調整できる分、どこで区切るのが難しかったりもするので。

――本作を読んでいて、地の文での設定などの解説の比率が比較的高めだなと感じたのですが、このあたりは先生自身の趣向が反映されたりもしているのでしょうか?

内田:その部分に関してはあまり自分では意識はしていなくて。

ただ、小説として会話文ばっかりなのはどうなのかなという思いもあり、そのあたりが地の文の比率に影響しているかもしれません。

最初に書いた時は、もっと地の文の比率が高いこともあって、蛇足だと感じる説明はカットしたりして調整をして今の配分になっています。

実際、僕自身も、世界観が壮大だったり、膨大な設定量の作品が好きでもあったのですが、作品を作る側になって、(設定が多すぎると)これはコントロールしきれないなと(笑)。

1つの場面に登場人物が増えるだけでも、主に喋るのが2〜3人に偏ってしまうと、他のキャラがいる必要があるのか分からなくなることもあったりして。

作家さんによってキャパシティは違うと思いますが、あくまでも自分で制御しきれる範囲に留めておくのがちょうどいいと考えるようになりましたね。

僕自身は放っておくと設定を増やしたがるタイプなので、「これ以上は制御しきれないな……」と自制したりもしています(笑)。

魔法の種類とかも、増やしすぎると整合性を取るのがどんどん難しくなっていきますから。

――本作に関していえば、最初に投稿される段階では、どの程度設定を練りこんでいたのでしょうか。

内田:キャラクター周りや世界観周りの基本的な設定から作っていったのですが、設定を作っている途中で、「主人公が最強の異世界モノを、自分なりの形で書いてみたい」という想いを我慢しきれなくなってきて。

それで設定を作りきるよりも先に連載をスタートさせてしまったので、実は結構見切り発車で、連載を進めながら固めていった部分も大きいんです。

正直、今同じものを書くならもっと設定を練りこんでから書き始めると思いますが、当時は勢いのままに書いていたからこそ、ここまで続けられたという面もあったのかなと思っています。

 

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