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映画『ジェミニマン』声優・江原正士&山寺宏一インタビュー

映画『ジェミニマン』2人のウィル・スミスを演じる江原正士さん&山寺宏一さんインタビュー|おふたりが感じる吹き替えの魅力、そして“声の仕事”に対する想いとは?

1つ1つのことを極めていくことが“道”

――ちなみに、おふたりが初めて共演された作品は?

山寺:アニメだと『いきなりダゴン』(1988年)ですよね?

江原:TVシリーズの吹き替えで初共演した感じもするけど……『ダゴン』は覚えていない(笑)

山寺:『ダゴン』で僕、何回か現場に行きましたよ!

江原:ごめん、全然思い出せない(笑)

山寺:(笑) 小宮和枝さんが主役のダゴンの声を担当されていた『いきなりダゴン』というTVアニメシリーズがあって、どちらかというと洋画に出ている人がアニメシリーズをやっていた作品です。

僕は当時デビュー3年目ぐらいで、そのアニメに江原さんがメインで出ていらっしゃいました。

江原:そのくらいから頭角を表していましたね。さっきお話した画と声がぴったり合った山寺の逸話は、そのときの話なんです。

――そうなんですね!

山寺:洋画で江原さんがたくさん吹き替えを担当されていたことを知っていたので、アニメもやられるんだ!とびっくりしました。江原さん、洋画とアニメでは全然違うんです。

江原:アニメは全然画とセリフが合わなくて(笑) また、当時のアニメは線でした。僕はまだレギュラーの中でも末端で、映写機も暗くて線が茶色っぽく見えづらかったんです。

なので、端っこから見るとどこのシーンか分からなくなっちゃって、適当に喋っていました(笑)

一同:(笑)

山寺:和枝姉さんにいろいろと突っ込まれていた覚えがあります(笑)

江原:そうそう。そんなこともありました(笑)

山寺:僕はガヤみたいなもので、その後に洋画に出るようになったんです。

江原:洋画の吹き替えでスタジオでよく会うことになって、すごく印象に残っています。洋画でもすごく喋っていたので「流石だな」と。

山寺:ありがとうございます。

江原:その後はみなさんご存知の通り、飛ぶ鳥を落とす勢い(笑)

山寺:(笑)

江原:あと、後の彼につながる逸話としては……

山寺:もういいです(笑)

一同:(笑)

江原:とあるシリーズの打ち上げの際にカラオケに行ったとき、彼が「安全地帯」の歌を歌ったんですが、本当にそっくりで、みんなびっくりしていました。たぶん、あの時からモノマネが得意だったんでしょうね。歌もすごく上手なんです。

山寺:宴会で仕事を取る男と言われていました(笑)

江原:本当に玉置さんそっくりだった。相当前の話ですけど、すごく印象に残っています。

――そこから共演作が増えていったのですね。

山寺:アニメ、洋画の吹き替え、人形劇(※1)でも渉(高木渉さん)と3人でたくさんの役をこなしたり、いろいろなことをやりましたね。

江原:人形劇やったね!あれは楽しかった(笑)

 
※1:2009年~2010年までNHK教育テレビで放送されていた人形劇『連続人形活劇 新・三銃士』。山寺さんはアトス、江原さんはアラミス、高木さんはボルトスの三銃士を演じていました。

 
山寺:最初、アニメでいろいろとお仕事をいただきましたが、なかなか洋画でメインの役を演じることがなくて、何年か経ってから洋画にも出させていただけるようになりました。

洋画の世界では、すでにどの役にもはまってしまう“江原正士”という大きな存在がいて。そこに追いつきたい!という気持ちでやっていたので、“何で江原さんはどの役にも合うんだろう”と思っていたんです。

特に、役者の中でトム・ハンクスが大好きで、自分に吹き替えが来た時はものすごく嬉しかったんですけど、江原さんが吹き替えされている声を聞くとトム・ハンクスが喋っているようにしか聞こえません。

トム・ハンクスも作品によっていろいろなお芝居をされているんですが、やっぱり江原さんの声を聞くと説得力があるんです。何で江原さんはどんな役にも合うんだろう?と疑問ばかり感じています。

江原:そんなことないよ(笑)作品によって声はまったく違いますから。

山寺:いやいや、今聞いても目を閉じると江原さんの声でトム・ハンクスが見えてきます。江原さんが吹き替えをしている役者さんはいろいろなものを持っているので、対応力や芝居の深さ、とにかく“表現力”がすごいんだろうな、と。

なので、何とか追いつけるように頑張ろうと思っています。

江原:山寺宏一に言われると照れちゃいますね、どうしていいのか分からなくなる(笑)

山寺:今回はそんな先輩に胸を借りる感じで参加できた作品ですので、年齢は違いますが、同じウィル・スミスを演じるということで、みなさんに見られるわけです。

なので、正直、嬉しさもありますが怖い気持ちもあります。

江原:そう言われたら、こっちも身構えますね(笑)

山寺:江原さんはたくさんのウィル・スミスを演じていられるじゃないですか。

本当に僕が演じるのは23歳のウィル・スミスでよかったな、と。今回の作品に関しては、もうちょっと上だったら、絶対ほかの人のほうが良かったと言われるんじゃないかと思っています。

江原:いや、“俺だったら両方やるぞ!”という気持ちを持って(笑)でも、今回は現在と若い頃といったそれぞれのウィル・スミスを演じるということで、楽しみが2倍になりました。
 
▼本予告映像

 

――確かに、すごく楽しみです!また、おふたりがポスターに出てPRされたように、どんどん声優さんの活躍の場が広がっていますね。

江原:“山ちゃん”という愛称で彼が広めてくださいました。声優さんの中には“スター”と呼べる方がたくさんいらっしゃいますが、“一般”という大きな枠としては、彼が1番最初に切り込んでいった人だと思っています。

そういう意味では、彼に感謝している人が多いのではないでしょうか。

そういえば、「おはスタ」は何年続けたの?

山寺:18年半やらせていただきました。

江原:すごい! 18年半も続けて、その間に一般の方々に浸透していって。その中でアニメや洋画の吹き替えをやって広げたわけですから、とても大きい存在だと思います。

なので、(山寺さんに)ついていきたいと思います!(笑)

山寺:(笑) たまたま番組をやらせていただいたおかげで広がったのはとても嬉しいことです。でも、やっぱり声の仕事のときは声優として“顔”が思い浮かばないのが1番いいので、何も気にしないで観ていただきたいと思います。

僕個人の意見かもしれませんが、“職業・声優”というのは言いやすいから言っているだけで、役者の仕事の1つとしてやっていると思うんです。

みんなルーツもやりたいことも違いますし、歌手も俳優をやったり、俳優も歌を歌ったり、みんな自分がやりたいことをやっていいと思います。

声優の世界が広がったとしても、いろいろな人が声優をやっているので特別な線引きはないのかな、と。

ただ、たくさんの方に観ていただくために宣伝して興味を抱いてもらえたら幸いですし、観ていただくときは僕たちの顔を忘れるぐらい没頭してもらえるような芝居をしなければならないなと思っています。

実は、最近、「山ちゃんいいんだけど、顔がちらつくからなぁ」と書かれるようになったんです。

江原:売れすぎちゃったんだよ(笑)

山寺:いやいや。それじゃダメだと思うんです。

江原:それはそれでいいんじゃない?

山寺:でも僕、トム・ハンクスの声を聞いているとき、江原さんの顔思い浮かばないです。それだけハマっている証拠だと思いますし、友達ですら顔がちらつかないのが声優としての手腕かな、と。ちょっとでもはまっていないと顔が浮かんじゃいます。

江原:とにかく、売れすぎちゃったの!(笑)

一同:(笑)

山寺:プロモーションで表に出ることはありがたいことですが、マイナスに走らなければ良いな、と。「声だけやっていればいい」と言われるんじゃないか、といろいろ心配しながらやっています。

江原:いろいろと大変なんだね。

山寺:大変なんです(笑)

――最後になりますが、それぞれの“声優道”についてお聞かせください。

江原:僕、“声優道”という言葉にびっくりしたんです。“声優道”ってなんだろう?と。なので、僕はあえて“声の仕事”という形に置き換えてみました。

山寺:おぉ!

江原:僕らの声の仕事は、洋画の吹き替えもあればナレーション、アニメ、CMなどたくさんの仕事があります。それぞれの仕事を特化した技術、表現を極めていくことが“道”なのかな、と。

たとえば、彼(山寺さん)はいろいろな“道”を持っています。1つ1つの仕事を極めていくことや、今回の映画では吹き替えの表現を深めることが“道”だと感じますが、“どう”でしょう?

山寺:“道”と“どう”をかけたんですね(笑)

一同:(笑)

山寺:僕は、たまたま声優の仕事をしているときが“声優”であって、“声優はこうあるべき”というのはまったくないと思っています。

声の仕事をしているときは、その仕事を極めることはプロとして任されたわけですので、しっかりと極めていかなければならない、江原さんとまったく同じ考えです。

また、“声優”は職業についての言葉ではなくて、やっている“行為”に近いような感じがしますが、声の表現者として大切なことはいっぱいあると思います。

あとは、“自分を知ること”が1つ大事なことなのかな、と。

江原:それは深いな。

山寺:やっているつもりでも自分のことが1番分からない。自分が参加した作品で、謙遜しているつもりでも贔屓めで見てしまっていますし、自分の中で言い訳もできてしまいますが、それをフラットに見ることが大切です。

特に、吹き替えやアニメでは自分の“個”を表現するよりもキャラクターが大事。結果的に自分の個性が良い意味で出ていればいいのですが、役者ではなくキャラクターが生き生きと見えることが必要であれば自分をしっかり知って、その喋り方が癖なのか個性なのか演技なのか、ちゃんと分かっていなければならないのかな、と思います。

だからこそ、声優は面白いんです。声の仕事は自分とかけ離れたことができるので、そこを表現するためには己を知ることが大事なのかな、という気がします。

 
[取材・文・写真/福室美綺]

 

『ジェミニマン』作品情報

10月25日(金)全国ロードショー!

■監督:アン・リー(『ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日』
■製作:ジェリー・ブラッカイマー(『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズ)
■出演:ウィル・スミス、メアリー・エリザベス・ウィンステッド、クライブ・オーウェン、ベネディクト・ウォン
■全米公開:2019年10月11日
■配給:東和ピクチャーズ

公式サイト
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