声優・花守ゆみりさん朗読のオーディオブック『かがみの孤城』独占インタビュー｜聴いた後の世界観から抜け出せない余韻を楽しんでほしい

2018年本屋大賞第1位を受賞した辻村深月先生著書の『かがみの孤城』。

不登校になってしまった主人公が、あるとき部屋の鏡を通じて別世界に吸い込まれ、同じように何らかの理由で学校に通えていない7人の子供たちと出会い、心を通わせていくファンタジー＆サスペンス作品です。

そんな本作がこのたびオーディオブック化！　7人の子供たちの中心となる女子中学生・こころを声優の花守ゆみりさんが演じます。

この度、アニメイトタイムズでは、収録を終えたばかりの花守さんにインタビューを実施しました。19時間にも及ぶ大ボリュームの朗読に挑戦したことで、キャラクターと密に寄り添うことができたという花守さん。

作品の魅力や聴きどころだけでなく、オーディオブックを通して花守さんの声の表現や大切にしていることなども語っていただきました。

キャラクターたちに寄り添える素敵な作品

――19時間という大ボリュームの朗読だとお伺いしましたが、今回の朗読に挑戦してみていかがでしたか？

花守ゆみりさん（以下、花守）：私が演じさせていただいたこころちゃんのセリフだけじゃなく、ほかの地の文（会話文以外の文字）も朗読させていただいたので、実際にかかった収録は19時間の2～3倍という長時間になりました。

中学生の年相応の悩みや環境の問題もあったので、こころちゃんは心苦しいシーンが結構多かったな、という印象がありましたが、最初にそういう壁があったからこそ、どんどん彼女の心が解けていく様子がこの作品の魅力のひとつになったのかなと思います。

セリフの部分だけではなく、ほかの地の文からもこころちゃんの心境が変化する様子が見えるように読ませていただくことができたかな、と思っています。

個人的にはすごく大変ではありましたが、とても色の濃い素敵な思い出をもらえた時間でした。

――先ほど、序盤のほうを少し聴かせてもらいましたが、花守さんの声と同時に『かがみの孤城』の雰囲気にすぐ引き込まれました。

花守：ありがとうございます！　序盤はこころちゃんの気持ちが少し沈んでいるので、収録しているときに自分もどんどん気持ちが沈んでいってしまって（笑）。

そのたびにディレクターさんが「もうちょっと（気持ちを）上げてください」とディレクションをしてくれたからこそ、皆さんも聴いていただいてより世界に引き込まれる作品になっていると思います。

――花守さん自身、作品を読まれてどのような印象を受けましたか？

花守：自分の学生時代と重なる部分も少しありましたし、子供たちが抱えている悩みは決して人ごとではないという印象を受けました。

だからこそ、「怖かったよね」「そうだよね」と自分が勝手に寄り添ってしまう部分もあったり、素直に大変だな、と感じるシーンもたくさんあったり……。

――確かに。メインキャラクターとなる7人の子供たちが抱えている悩みは、どこか人ごとではないような感じがします。

花守：はい。読み進めていくうちに、こころちゃん以外にも同じような状況に置かれて同じような悩みを抱える子供たちが集まって、じゃあその中で単純に傷の慰め合いが行われるのかと思ったら違って。

それぞれが抱える問題や悩みは同じようなものに見えがちですが、絶対に同じということはなくて、寄り添える部分と受け入れられない部分がそれぞれにあると思うんです。

そのぶつかり合いがあるからこそ、みんなが少しずつ一歩を踏み出すことができるのではないのかな、と。

自分も読んでいて最初の部分は辛いところがありましたが、後半になればなるほど、逆に子供たちのことを“1人の人間”として見られるようになって、応援とは別で「大丈夫！いけるよ！」と彼らに寄り添うことができる素敵な物語だと思います。

――キャラクターたちが抱えている悩みに触れて、どのように感じられましたか？

花守：すでにできあがってしまっている家庭環境の中で「どうやって生きていけばいいんだろう」と悩んでいる気持ちが、他人だとどこまで干渉できるものなのか難しいところだな、と読んでいてすごく感じました。

こころちゃんのように心に大きい問題を抱えている子や、環境的に悩んでいる子もいて、同じように見えて全然違う問題を抱えている子供たちが集まっています。

彼らが新しい環境へと踏み出していく一歩一歩の描写が、すごく繊細な作品だなとずっと感じていたので、その歩みを大切にしながら演じさせていただきました。