大人になってから読む絵本は「あの頃の優しい気持ちを思い出すきっかけ」│声優・伊藤美来さんのフォトブック『みっくのえほん』発売記念インタビュー

“いとう先生”初の絵本は壁一面に!?

――そして、最後のブロックには“伊藤さんがもし絵本を作るなら？”というテーマで撮り下ろしカットが掲載されていますね。

伊藤：（写真を見て）思った以上に真剣な表情だ（笑）。

――巨大なキャンバスにペンキで絵を描いたそうですが、これは伊藤さんが自由に描いているんですか？

伊藤：そうなんです。事前になにも考えず、その場のフィーリングだけで描きました。

スタッフ：色を作るのがお上手でしたね。

――色ですか？

伊藤：黄緑とかピンクがなかったので、ペンキを混ぜて色を作ったりしました。

――描いてる途中はどんな心境でしたか？

伊藤：描いてる途中、スタッフさんたちが「あれなんだ？」と考えている姿を見て、クイズを出している気分でした（笑）。

――誌面にはストーリーや制作秘話について、作者として“いとう先生”から解説がありましたね。

伊藤：結構いいお話になったと自分でも思うんですよ。でも、出来上がった文章を確認させてもらったとき、この撮影にいなかったマネージャーさんが「これで合ってます？」「これってなんの話ですか？」みたいに、なかなか意味を理解してくれなくて（笑）。

マネージャー：絵本の説明ってシュールだよね（笑）。

――（笑）

伊藤：「海からフルーツが出てくるんですか？　空から降ってくるんですか？　どっちですか？」みたいに聞かれて、絵本の説明を事細かにするという（笑）。でも、ホロッと感動できるお話になっていると思うので、ぜひ楽しんでもらえたらいいですね。それに今回は1ページで完結するお話になりましたが、1ページ絵本というのもまた可愛いと思います。

――改めてこの連載において、撮られる側・モデルとして意識していることはあるのでしょうか？

伊藤：どれも絵本の世界観を重視して撮影に挑んでいます。モデルに関しては、絵本の登場人物ひとりに絞ることもありますし、絵本の雰囲気全体に合わせることもあります。大人になると絵本を読む機会ってなかなかないので、この連載をきっかけに魅力が少しでも伝わるといいなと思っています。

大人になってから読む絵本は「あの頃の優しい気持ちを思い出すきっかけ」

――大人になると無意識に絵本にふれる機会は格段に減ると思うんですが、改めて大人になってから読む絵本の魅力はどんなところだと思いますか？

伊藤：大人はよく考えるので、絵本を読むときも作品に込められたメッセージを読み解いたりして、すごく考えると思うんですよ。でも絵本は「こうなるだろう」「こう進むだろう」という予想を思いっきり裏切るんです。「急に空飛んだ！」とか「急に星が降ってきた！」みたいに、現実では起こり得ない展開がたくさんあって。

でもそこで気が付くんです。現実に囚われ過ぎていると想像力が乏しくなってしまうことに。小さい子向けの作品を見ると、意外にも忘れかけていた気持ちに気が付けることがたくさんあると思うんですよ。例えば……「友だちにはおもちゃを貸してあげないと」みたいな（笑）。そんなあの頃の優しい気持ちを思い出すきっかけを与えてくれるのが、大人になって絵本を読む魅力かなと思いますね。

――絵本って小さい子が初めて手に取る本、後の成長に大きく影響を与えるコンテンツだからこそ、丁寧なワードチョイスだったり、先ほどおっしゃられたように、想像力をかき立てるために、あえて結論を出さない内容の本もあって。柔軟な思考を養うという意味では、大人だからこそ、読むと心の栄養になるのかなと連載を通して実感しました。

伊藤：答えが無く、想像で楽しめますからね。答えがある実用書とは違って、ちょっと変な世界観を前提に話が進んでいくところが好きです。

――ちなみに、絵本情報はどこから入手するんでしょうか？

伊藤：本屋さんの絵本コーナーに行って、今の流行りを確かめたりしています。連載のテーマは、季節ごとに提案してもらった中から選ぶこともあるし、昔から好きなものを提案することもあります。

実はまだまだ紹介したい絵本があるんですよね。今後は読者のみなさんからの意見をもとに、これまでとはちょっと異なる形で絵本を紹介していけたらと考えています。