ぼくらの人生を変えたアニメ11選【2017年編】｜『妹さえいればいい。』は爆笑している瞬間にふと突き付けられる現実に震えた

何気なく笑っていた編集者とのシーンで身につまされた

筆者がこの作品で真っ先に気に入ったキャラクターは、主人公の羽島伊月でもヒロインの可児那由多でもなく、ライトノベル作家をしている伊月の担当編集・土岐健次郎(CV：鳥海浩輔)でした。

本作の第1話「料理上手の弟と全裸の美少女と気の合う友達さえいればいい。」は伊月の新刊のプロットについて土岐と話し合いをする場面から始まるのですが、そのプロットの内容が頭のネジが吹っ飛んだ狂気に満ちた展開となっており、苦言を呈する土岐の姿が初っ端から非常に印象に残るのです。

思えばこのプロットに土岐が入れた「なんじゃこりゃ！」というツッコミがこの作品の第1声となんですよね(正確には伊月のプロット内のキャラクター・アリスを演じる國府田マリ子さんなのですが今回は割愛)。主人公やヒロインよりも先に喋っていることから、あえて存在感を出しているキャラクターであることがわかると思います。

土岐は伊月を「この馬鹿が！」「ちっげーよバァーカ！」など結構荒っぽい言葉で怒鳴りつけるような人物ではあるのですが、相対している伊月のおかしさが際立っているため、ただただ作家に編集が振り回されていることが嫌というほどわかってしまいました。

土岐を演じる鳥海さんの演技がまた絶妙で、くたびれたサラリーマン感は出しつつもどこか常に余裕がなさそうな苦労人っぽさが出ています(ちなみに、風●マニアという一面もあるのだとか)。

第1話以降もちょくちょく登場するエピソードが存在しています。例えば第3話「取材でさえあればいい。」では、今月刊のイラストをまだ納品していないイラストレーター・恵那刹那の居場所を知らないかと電話をかけたり、第4話「仕事さえすればいい。」では伊月の自宅を訪れたりと、登場シーンはいくつかあります。

第4話については、伊月が「やばい、編集者だ、逃げろ！」と恐怖のあまり叫ぶくらいに怒気をはらんでいたのですが、なんと3話で刹那の居場所が北海道である突き止めた後、わざわざ現地まで追いかけイラストを仕上げさせたというのです。

さらにこの時点で伊月も既に締め切りが過ぎていたようで、「これ以上遅れたらどうなるかわかっているだろうな？」と釘を刺すのも忘れていませんでした。

筆者はこの「やばい、編集者だ、逃げろ！」が本作で最高に笑った場面のひとつだったのですが、ここでふと背筋が凍るような感覚を覚えました。

そうです、編集者と関わらなければならないのはライターも一緒。原稿をあげられずにいた場合、土岐のように編集の方は怒りを抱いているのでは無いかと想像せずにはいられなかったのです。

それ以来このシーンで笑うことができなくなってしまったのですが、なるべく原稿を急ぐようにという心構えを持つようになりました。とはいえ、書けない時は書けないのでどうしようもないんですけどね。

ちなみにこの原稿を執筆している時点でも既に遅れてしまっていたり……石橋さん、すみません（間に合ったからいいよ、石橋より）。

先述した伊月の締め切りについても結局ギリギリまで引っ張ってしまい、第5話「小説さえ書けばいい。」では土岐に自宅まで乗り込まれないようカラオケボックスで作業しようとするのですが、携帯にGPSを仕込まれていたため居場所が筒抜けであり、書き上げるまで帰さないと編集部に捕らえられてしまいます。

伊月はそれでも書けず刹那の誘惑に負け温泉へと足を運ぶのですが、それすら見越していた土岐は伊月の服に発信機を仕込んでおり、またもや追いかけて来たのです。曰く「本を出すためなら犯罪すら厭わない、それが編集者だ」「本を出すためなら“何でも”する」だそうで、その執念深さたるやといったところ（うちはそんなことまではしません、石橋より）。

さらにこのあたりから筆者は、締め切りに間に合わないとしても逃げてはならないということを学びました。連絡を断って雲隠れなんかしようものなら信用問題ですし、「やばい、編集者だ、逃げろ！」なんて言っても逃げ切れる訳がないのです（どうにかして回収します、石橋より）。

遅れていたとしてもキチンと報告して、何日までに仕上げると約束しそれをなるべく守る。この作品が学んだ心がけをこれからもなるべく守っていきたい所存です。

よく考えたら、社会人として当たり前なんですけどね。