「映像にする時、我々がどう料理するのかも見てほしいところの1つです」──春場ねぎ先生の新作『戦隊大失格』がアニメ化決定！　アニメ化を手掛ける『TIGER & BUNNY』や『いぬやしき』でおなじみのさとうけいいち監督インタビュー！

『五等分の花嫁』の大ヒットも記憶に新しい春場ねぎ先生の新作『戦隊大失格』（『週刊少年マガジン』連載中）がアニメ化決定！

アニメ化を手掛けるのは『TIGER & BUNNY』や『いぬやしき』などのアニメや、『ハリケンジャー』や『アバレンジャー』などのスーパー戦隊作品を世に送り出してきたさとうけいいち監督。

現在、制作進行中のさとう監督に、作品に関わることになった経緯やアニメ化で意識されている点などお話をうかがいました。

タイトルに『戦隊』が入っていたからオファーが!?

――どういった経緯で本作の監督を務めることになったのでしょうか？

さとうけいいち監督（以下、さとう）：タイトルに「戦隊」と入っていて、私も長く実写の戦隊作品に関わってきたので、薦められた感じでした（笑）。

当時発売されていた原作コミックを読んでみた率直な感想を聞かれたので、「日曜の朝に放送されている戦隊もの（通称：ニチアサ）の番組とはカメラやドラマの向いている方向が違うんですね」と。

また近年ではヒーローものに対するアンチテーゼ的な作品は日本だけでなく、海外でも描かれていますし、私も過去にヒーローものを数多く手掛けてきて、時代の先を見据えたものを作ってきたので、こういう作品があってもおかしくないし、いまの読者の方に読まれているんですねとお伝えしました。

そして映像にするというタイミングでは「このキャラをもう少し理解してもらえるように表現できたら」というお話しさせていただいたら、そこからスルスルと決まっていきました（笑）。

――制作する際に意識した点や改めて感じた魅力とは？

さとう：『戦隊大失格』というタイトルなので、戦隊がどれくらい失格なのかをどう描こうかという部分が大きかったですね。

主人公である戦闘員Dがどういう目的を持ってヒーローたちに挑んでいるのかや、どう心変わりをするのか、しないのかをもっと明確にしようと。

マンガではキャラを通して、縦横無尽にお話を広げることができるのですが、アニメでは限られた話数と尺の中で表現しないといけないので、既に原作を読んでいる人やこれから読む人に対して、戦闘員という格下の立場から失格気味の戦隊の連中にどう挑んでいくのかを明確に提示できたら良いなと。

そしてブレないで最後まで作れたらというのは制作しているスタッフ陣に対しても言っていることでもあります。

原作を読んでいると、「コイツ、本当はいいヤツなのかも」と感じてしまう部分がありますが、映像にする時、我々がどう料理するのかも見てほしいところの1つです。

――原作を読んでいるとストーリーが複雑ですよね？

さとう：我々オジサンには複雑です（笑）。でも原作の春場（ねぎ）先生の思うところを隠さずに出しているんだろうなと思います。

僕が意識したのは、今回はTVフォーマットになっていますから、ドラマを進行させる上であまり回り道はできないので、キャラの内面が削れてしまわないようにすることと、コミックが進んでいくと「あのキャラどうだったかな？」と見落としがちになるところも元の道へ戻す、やや難解なブロックを整理することですね。

週単位の連載でこれだけピースを広げていくと、初期に伏線を張ったものが（読者に）どれだけ記憶されているのかという部分がありますが、アニメでは気持ちが変わっていく部分を丁寧に描くことで、突然「変わったの？」と思われないようにしたいです。

この物語を大まかに捉えるとまずDという主人公がいて、戦隊側にはレッドがいて、Dが知り合った桜間日々輝という3人の男たちの行く末を描いていて、あとリベンジものとしてうまく表現できたらと思っています。

――長く続けられるマンガと12話や24話でまとめなくてはいけないTVアニメーションの特性の違いもあるかと思います。

さとう：作品は現在進行中です。僕らのミッションはズルズル作れませんから、原作のどこまでを描くのかも現在話し合っているところです。例えば僕らが少しお話をアレンジするとしてもちゃんと元の時間軸に戻れるようにしますし、まずアニメーションとしてどう終わりに持っていくのかを考えています。