音楽
ReoNaが日本武道館という約束の場所での“一対一”を振り返って今、想うこと/インタビュー

出会い 別れ それでも生きていく、歌い続ける。逃げて逢えた日。日本武道館という約束の場所での“一対一”を振り返って今ReoNaが想うこと。アルバム『HUMAN』のこと――ツアーを間近に控えたReoNaに話を聞く

「ようこそ、日本武道館。逃げて、逢えたね」。今年デビュー5周年を迎える“絶望系アニソンシンガー”ReoNaが、2023年3月6日、“約束の地“日本武道館公演「ピルグリム at 日本武道館 ~3.6 day 逃げて逢おうね~」で、見事に“一対一”のエンターテインメントな空間を作り上げた。

今回公開されるインタビューは日本武道館公演後、しばらく経ってから行われたものである。

日本武道館での軌跡と奇跡の舞台裏を振り返りつつ、2ndフルアルバム『HUMAN』のこと、現在放送中のNHK みんなのうた 4-5月「地球が一枚の板だったら」のお話、5月からはじまる“HUMAN”ツアーについてと、ReoNaの“今”と“これから”を対話から探っていく。まっすぐに筆者の目を見て、誠実に応えてくれた。

「逃げて逢おうね」と言い続けた先に、逃げて逢えた日。

――3月6日(月)に開催されたReoNa初の日本武道館ワンマン公演「ReoNa ONE-MAN Concert 2023 「ピルグリム」 at 日本武道館 ~3.6 day 逃げて逢おうね~」からしばらく経ちましたが、思い返してみるといかがですか?

ReoNa:日本武道館という約束の場所に向かって走っていた期間でした。日本武道館公演は終わりましたが、2日後にはアルバム『HUMAN』のリリースがありましたし、翌日には生配信番組があって。そのすべてを“日本武道館公演”として走っていました。それを加味しても怒涛の日々だったなと思います。

――では今やっと日本武道館公演が終わったと言っても過言ではない?

ReoNa:そうですね。数日経ってやっと終わったなと。

――その後、息をつく暇はあったんです?

ReoNa:そうですね。お休みをいただき実家にも帰りました。

――奄美大島に帰られていたんですか?

ReoNa:そうです。奄美大島に帰ったり、皆さんからいただいたお手紙を読んだり。いただいたお手紙はまだ全部は読み切れていないのですが、「どういう人たちがReoNaのライブに来てくれているんだろう?」という想像をよくしているんです。例えば学生さんだったら、自分が過去を歩んできたああいう時期にいるのかな……とか。私が思い描いてきた人たちの、生身の言葉が綴られているので「こういう人生を歩んできた人が、ライブという空間でReoNaという存在と同じ時間を過ごしてくれているんだな」と想いを馳せながら……、内緒話をしてくださっているような感覚を噛み締めていました。

――日本武道館公演について改めて振り返らせてください。ライブ本編がはじまる前には、ReoNaさんが準レギュラーとして参加されていたFM802「802 Palette」の出張ラジオがありました。盟友である豊田 穂乃花さんのお言葉がとても温かくて。

ReoNa:私自身はモニターでその様子を見ていたのですが、ほのちゃんが一緒に「ピルグリム」の時間を作ってくれて、とても尊いなぁと感じていました。

――1曲目は約束の歌「ピルグリム」。あの日のセットリストはどのように決められたのでしょうか。

ReoNa:関わっている人の数だけあの日にやりたい楽曲があったんです。「初めての日本武道館なんだからこれはやりたいよね」という曲を並べただけでも時間がオーバーしてしまうくらいたくさんあって。じゃあ「ピルグリム」ってどういう日になるんだっけ?と改めて思ったときに、初めての日本武道館でもあり、新たなスタート地点となる場所でもあり……そういったことを何度も何度も話し合い、悩みながら完成したセットリストでした。いつかまた大きな約束の場所が未来にもあるはず、と思い、そのときに取っておく楽しみも持ちながら作っていきました。

――「ようこそ、日本武道館へ」という言葉を何度も放っていたReoNaさんがとても印象的で。

ReoNa:日本武道館へのまわり道「De:TOUR」で全国10都市16公演をまわり、「逃げて逢おうね」と言い続けた先に、逃げて逢えた日。あの日にしか言えない言葉だったので思わず言いたくなってしまいました。

――ReoNaの瞳から見た、あの日の景色ってどういうものでしたか。

ReoNa:今までも“リスアニ!LIVE”さんなどで日本武道館のステージには立たせていただいてきていましたが、すごく大きい場所で、すごく大きいステージだけど、一人ひとりを近くに感じやすい場所だなと常々感じてました。ライブを見に行く側としても……それこそ“リスアニ!LIVE2023”のときに客席からステージを味わってみたいと思い、客席からステージを見ていたのですが、そのときに客席側からでもステージや演者の存在を近くに感じられるんだなって。

――ReoNaさんの掲げる“一対一”を実現するにぴったりな会場というか。

ReoNa:ありがとうございます。まさにあの空間で“一対一”を感じてもらえていたらいいなと思いながら、一人ひとりのお顔を見ていました。

――ReoNaさんの軌跡を表したような曲が並んでいたように思います。

ReoNa:はじまりのお歌「ピルグリム」からスタートして。軌跡のようなものが詰まっていましたね。

――しかもその次に「怪物の詩」。ReoNaさんが17歳のときに毛蟹(LIVE LAB.)さんからもらったはじめてのオリジナル曲であり、はじめてのアニメーションMVでした。南方研究所さんが作られたその映像が一緒に届けられて。

ReoNa:南方研究所さんの映像や『ソードアート・オンライン』のアニメーションを背負わせていただいたり、たくさんのダンサーさんと一緒に舞台に立たせていただいたり。本当にさまざまなことがありました。REAL AKIBA BOYSさん、タップダンサーさんたちも含め、ダンサーさんだけで50人近く参加してくださっているんです。写真を見返すとすごくたくさんの方と一緒に舞台に立たせていただいていたんだなぁ……と思います。

――当たり前ですけど、ReoNaさん自身はリアルタイムでその様子を見られないわけですものね。自分の顔が自分の目では確認できないように。

ReoNa:そうなんです。ReoNaのライブはReoNaが見ることは叶わないんだよな、と常日頃から切ない気持ちになります。あとから写真や映像を見て「客席から来てくださった方々からはこんなふうに見えていたんだな」としみじみ思っていました。いろいろな方と物理的にも、精神的にも一緒にステージに立っていたように思います。神崎エルザ、作品、いろいろな方の記憶や想いとも一緒に。

――あれだけ大勢のメンバーと、どのようにライブを作られていったのかも気になっていました。

ReoNa:たくさんの方が関わるステージになるので、いろいろな形でリハーサルを重ねました。Band Masterの荒幡亮平さんが最終リハーサルの後に「バンドの方にわがままを言っていい日」を作ってくださったんです。これまでの経験値から「ReoNaのやりたい曲だけをやる日を作らないか」という提案をしてくださったんです。それで「ぜひお願いします」と。

それでまるっと通しでやってみたり、1曲を何度も繰り返したり。あの日がなかったらまた違った当日になっていたと思います。荒幡亮平さん、バンドメンバーさんの思いに助けられました。バンドメンバーさんはたくさんの方の前で演奏してきた経験値があるからこそ、自分ごとにしていろいろなアイデアを提案してくれたり、共有してくれたりして。ありがたいという言葉では形容しきれないくらい、感謝をしています。

――「人はひとりだけど、独りじゃない」。ReoNaさん自身もそれを感じながらの、日本武道館への準備期間だったんですね。

ReoNa:ReoNaとしてデビューをして、今年の夏(8月29日)で5周年。その中でたくさんのはじめましてをさせていただいて、その中から「ただいま」「お久しぶりです」も言える存在ができて。人はひとりだけど、独りじゃない。ひとりでは生きていけない。でも、やっぱり自分という存在はひとり。だけど出会い、別れ、それでも生きていく。「HUMAN」の中にもあるこのテーマは、今のReoNaだからこそ「本当にその通りだな」と思える言葉です。

――日本武道館でのMCの「今日だけは独りぼっちじゃなかった、って思ってくれるかな」という言葉には、生身の人間・ReoNaさんの思いが特に詰まっていたような気がします。

ReoNa:そう言っていただけるのはとてもうれしいです。普段苦しみや悲しみを抱えて生きているかもしれない方がいるあの場所で……かつて自分自身も居場所がなかったり、誰に打ち明けて良いか分からない悩みを抱えていたりしながら、ライブという非現実的な場所に「その時間だけは」と逃避していたので。そういう人がひとりでもいるなら、そしてその人たちが「ひとりぼっちではなかった」と思ってくれていたら良いなというのは、アーティスト・ReoNaとしても、人間・ReoNaとしても心の底から思っていたことです。

――3月1日(水)に発売された初となるアーティストブック『Pilgrim』で、その時代のReoNaさんのことも明かされていて。これまで心のなかに鍵をかけていたであろうお話も含めて赤裸々に語られていました。覚悟も必要だったと思います。

ReoNa:思い出せる限り、今までの経験を余すこと無くお伝えしました。傷ついたことや痛みを受けた経験は、渦中にいるときに言葉にすること、形にすることってすごく難しいものだなと思っていて。ひとつの本というモノになって……そこで初めて、自分の中で折り合いがついた部分もあったかもしれない。

――改めて読んだことで?

ReoNa:そうです。今になって「あの時、私はこういう気持ちだったんだな」と気づきがありました。

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